意欲を育てる効果的な授業づくりの研究 - 札幌市教育センター

中央区
中学校社会研究項目
研究主題
意欲を育てる効果的な授業づくりの研究
I 研究主題について
自ら迫っていけるかについて研究したい。さらに、
「知識・理解 j の力や、「思考・判断jの力を高め、
調査学習の実践交流、ワークシートの効果的な使い
生徒の意欲を喚起していくためには、意欲的に授業
方、評価資料や評価方法の工夫など、部員のニーズ
に取り組み学習していく日常的な活動が大事である。
を反映できる実践交流を図りたい。
そうした活動を充実させるため、今年度もこれま
での研究主題を継続することにした。中央地区では、
E 研究の歩み
日常の実践を交流しつつ、教材の開発や授業づくり
札幌市教育研究協議会中央地区では平成 5年度か
の研究を続けてきた。今年度も、そのかたちを継承
ら研究主題を「意欲を育てる効果的な授業づくりの
し、さらに工夫した日常の「意欲的に取り組める授
研究 j とした。以後、授業を大切にする観点から、
業づくり」を研究していきたい。また、その中での
研究主題を引き継ぎ、さらに発展・深化させてきた。
「評価・評定の在り方」も研究していきたい。
1 研究の概要
して研究してきたが、今年度も継続し、より意欲を
生徒の意欲が高まるような「教材 j や「資料j の
開発、生徒が生き生きとする「授業展開 I と「評価
活動 I という二つの柱で、「授業づくり
研究推進事業として組織が改変されたあとも継続
j
の研究を推
高める「授業展開 Jについて研究を深めていきたい
E 各学校研究主題一覧
白
キ
中
進していきたい。また、新教育課程を見据えた授業も
意識していきたい。
2 研究の視点
(1)視点 1 校内研究を基礎とした研究活動
を目指す授業作りの研究
中央中
基礎、基本の定着をめざす指導の工夫
中島中
意欲的に学び達成感が得られる学び
のあり方
札幌市教育推進事業の本来的な活動は、日常実践
を基盤とした研究で、ある。校内研究を基礎としなが
啓明中
向陵中
学ぶ喜びのある授業実践 学び合おう
とする心をはぐくむ学習集団づくり
で得た成果は一層効果的に、各校各会員に反映され
るようになる。今年度もこうした研究をさらに充実
思考力・判断力・表現力などを高め
る『学び合い』の工夫
ら、各校の研究をもち寄ることによって、地区単位
の独自性をもった研究を推進することができ、そこ
学習意欲を育て、基礎・基本の定着
伏見中
させていきたい
意欲的に学習に取り組み,自ら考え
を表現する学習 資料をし、かして考
(2)視点 2 日常に結び付く研究
え、進んで表現できる学習
研究は日常の授業と結び付くことが大事である。
宮の森中
毎日の授業に転用できすぐ役立てることができるも
の、生徒に社会科の授業が楽しいと感じさせるもの、
そのような日々の実践を交流し会える場としたい。
また、特別な授業ではなく日常実践している授業を
公開することで、「授業づくり」についての研究を推
進したい。さらに、定期テストや授業で使用した資
社会科的な思考・判断力を育てる授
業の研究
山鼻中
ひまわり分校中
基礎・基本を定着させる授業の研究
効果的な個別指導のあり方
町実践
1 全市研究集会
全体集会後の地区集会では、今年度の研究組織と
料の授業実践例も交流していきたい。
研究の方向性を確認し、各校で日常的に実践されて
(3)視点 3 部員のニーズに応じた交流
公開授業は、奇をてらうような特別な授業を公開
するのではなく、日常実践に結び付きやすい授業を
目指す。そうした条件の中で、どれだけ生徒の意欲
を高められるか、どれだけ社会的事象の本質に生徒
いる資料をもとに交流を行った。また、各校で使用
している資料集やワークなどの副教材についての交
J
市も行二なった。
※研究推進体制については、別紙参照
-中・社会 中央1-
2 実践研究日
(1)公開授業について 指導案からの抜粋
指導者:札幌市立相中学校(1年 5組)
漬田一則
① 単元名
歴史的分野古代国家と東アジア
「人類の登場から文明の発生へ」
② 単元について
本単元は、学習指導要領の歴史的分野である「人
類が出現し、やがて世界の古代文明が生まれたこと。
また、日本列島で狩猟・採集を行っていた人々の生
活が農耕の広まりとともに変化していったことを理
解させる。」をうけて設定した。
日本の豊かな自然環境の中における生活が、稲作
の伝来によって大きく変化し始めたことを考えさせ
ることができる。特に東アジアと深い関わりをもち
ながら、農耕の広まりによる生活の変化が、「むら」
から「くに」そして、統一された国家形成につなが
っていく一連の大きな流れのはじめの段階であるこ
とについて考えさせる教材として有効であると考え
る
。
③ 単元の目標(評価規準)
人類が出現し、やがて古代文明が生まれたこと、
また、日本列島で狩猟・採集を行っていた人々の生
活が、農耕の始まりともに変化していったことを理
解させる。
ア
【社会的事象への関心・意欲・態度】縄文時代
から弥生時代における人々の生活の変化に対する
関心を高め、意欲的に追究し、文化遺産を尊重し
ようとする。
イ
[社会的な思考・判断]縄文時代から弥生時代
における人々の生活の変化を多面的・多角的に考
察している。
ウ
[資料活用の技能・表現]縄文時代から弥生時
代における人々の生活の変化に関する考古の成果
をはじめとする様々な資料を収集し、適切に選択
して活用するとともに、追究し考察した結果をま
とめたり、説明したりしている。
エ
[社会的事象についての知識・理解]縄文時代
から弥生時代における人々の生活の変化を、我が
国の歴史とかかわる東アジアの歴史を背景に理解
し、その知識を身に付けている。
④ 指導観
視聴覚教材の活用や歴史資料の読み取りを通して、
社会的事象についての関心や資料活用の技能を高め
たい。そのため授業展開おいて、資料を使って「社
会的事象について内容をまとめる JI
理由を考えさせ
るj 等の活動を仕組んでいきたい。思考を深める場
面においては、小集団を活用して他の意見を聞くこ
とで自分の考えを整理しまとめさせる。また、それ
を表現させるとし、う言語的活動も含め授業展開をし
ていきたい。
⑤ 研究主題との関わり
数多くの教材を使用することにより「個の学習意
欲の高まり」を図りたい。 個の興味関心を高めた上
で、グループ。学習による意見交流において「さらなる
学習の高まり」が期待されると考える。
⑥
単元の構造
全 5時間
「東アジアに現れた人類」・・・ 1時間
「東アジアの先進国 中国文明」・・・ 1時間
「縄文・弥生時代のくらし」・・・ 1時間(本時)
・
・ 1時間
「むらとくにの登場1 ・
・
・ 1時間
「世界の 4大文明 j ・
⑦ 本時の学習
ア目標
様々な資料を活用し、縄文時代正弥生時代の特徴
を考察させる。また 2つの時代の類似点と相違点を
と捉えさせ、それぞれの時代について理解させる。
イ評価
-様々な教材を活用し、縄文時代の特徴を理解でき
たか。
・様々な資料を活用し、弥生時代の特徴(人々の生
活・社会の様子)を考察できたか。
・弥生時代の特徴について具体的な資料や事例に基
づいて推論し、説明ができたか。
-中・社会 中央2-
⑧
本時の展開
O生徒の活動/・教師のかかわり
導入 0縄文時代(前時学習)を確認
復習
0縄文時代の人々のくらしの VTR視聴
Oグループ のまとめを画用紙に書いて、黒
板に掲示する。
O
1
課題│・視聴覚資料を提示する
把握土器・食べ物・道具など)
0代表者が、各クマノレーブ の意見を発表す
D
る
。
OTV画面に映された資料を見ながら、気
が付いたことを発表する。
0発表を聞いて、理解を深める。
O学習シートに追加記入する。
-発表内容から、弥生時代の社会や人々の
まと│生活について、まとめてし、く。
め
│・規志倭人伝の説明を行う。
0学習シートをまとめる。
│縄文時代より人口が増えたのはなぜか
-次回の予告をする
O理由を考え、発表する
・資料についての補足説明をする。学習シ
ートを配布する。
-課題を提示する
考察
課題 1 弥生時代の社会や人々の生活の様子に
追究 1
H ついて考える
0資料を参考にしながら、グループ で、話し
合い、まとめていく
・各グループ1
こ助言を行う。特に根拠とな
る資料を提示することを強調する。
J
0
実際の授業では、まとめや貌志倭人伝の説明時聞
が不十分となったため、次回の授業で行うこととな
った。
⑨ 授業後の話合いから
授業者より
今回の授業では、視聴覚資料の提示の仕方や資
料の充実を重点のーっとしたが、成果はあったと
思う。さらに、資料から考察の根拠を明確にさせ、
自分の考えを発表させる言語活動も重点に考え
ていたが、発表の時聞が不足してしまい、不十分
だった点が課題として残った。
(0成 果 企 課 題 )
0資料の提示の仕方に工夫が見られ、たいへんよ
かったと思うが、その確認に時間がかかりすぎ
た
。
0討議の時間は不足したが、活発に意見交換がで
きて、普段の学級経営の賜である。
企資料が多すぎて、生徒が散漫になってしまい、
振り回された感があるので、教師側で十分に精選
する必要がある。
-中・社会 中央3-
に迫る授業形態などの工夫を行ない、生徒一人一人
3 各校の実践交流から
が生き生きと授業に参加し、意見交流なども活発に
(新教育課程へ向けての取組)
各校からの準備状況の報告や交流がなされた。特
に、地理的分野の「身近な地域」の扱いを中心に行
行なわれた。普段の学級経営が授業の雰囲気に与え
る影響が大きいことも改めて確認した。
視聴覚を用いた資料提示には生徒がイメージしや
なった。
各校ともかなり苦慮しており、取組が十分ではな
すく、意欲などを引き出す点には効果があるが、資
く、十分な計画ができていない学校が多いのが現状
料の多いと重点になる資料が暖昧なることなどが課
である。各校とも他校と情報交換しながら準備や研
題に残った。
究を進めている状況となっている。特に、フィール
さらに、個人の学習からグループ の学習とつなげ、
ドワークの時期や調査時聞が話題としてあがった。
生徒の「気付き」から「学習の深まり」への充実を
今後、中央地区でさらに情報交換をして、準備や研
図る十分な学習時間の確保が必要であると思われる。
O
究していくことが話合いの中でまとめられた。
4 研修
「新聞の具体的な授業への活用」
I
E
推進センターから
今年度、実践研究日に、道新N
講師をお招きし、「北海道新聞記事データベースの
使い方 j の研修を行った。どの学校でも自由に簡単
に利用でき、かなりの記事や資料を検索できること
やワークシートなど、の利用方法についても研修す
ることができた。
V 成果と課題
1 成果
中央区の研修主題である「意欲を育てる効果的な
授業づくりの研究」に基づく研究は、全市研究大会
(2) 日常実践の交流
今年度は、春の全市研究大会において、各校の補
や実践研究日で多くの参加者による活発な話し合
助教材、ワークシートや年間指導計画などの交流を
いによって充実したものとなった。春には、各校の
行なった。ワークシートの交流では、各校で工夫し
資料集やワークなどの副教材の交流を行い、秋には
たものが多数示され、すぐに普段の授業実践でき、
公開授業の他に、講師を招いた資料の検索や提示の
今後作成する教材のヒントとなったものが多かった。
仕方などの研修を行った。特に、新聞を利用した研
修は、教師の教材作成や生徒の調べ学習に大いに利
用でき、各校で日常実践できる内容となったと思わ
れる。
2 課題
来年度から始まる新教育課程に関しての研究が、
中央地区社会科の大きな課題である。特に、地理的
実践研究の授業公開では、研究主題に沿った生
徒の意欲を引き出すような資料の提示や自分の考え
分野に関しては、活発に意見交換や交流を行ない、
研修していかなければならない。
を表現(発表)させるなどの言語活動を重点に研修
を深めることができた。そして、多くの参加者と積
極的に意見を交わし、交流をすることができた。
(1)公開授業
中央地区中学校社会科研究主題の「意欲を育てる
効果的な授業 J や公開授業校柏中の研究主題「豊か
な人間性と学ぶ意欲をより高める教育の在り方の研
究
自他の学ぶ意欲が育まれる授業を展開する "
"
'
J
-中・社会 中央4-