舘山 勝 - 土木学会

 に伺いました
ん
2009年 月 日
(木)
(財)
鉄道総合技術研究所
平成
年春の紫綬褒章受章について、どの
受章功績は「発明改良」です。具体的
章式の様子などもお聞かせください。
─
舘山
には新 設 盛 土の盛 り 立てや既 設 地 山の切 り 取
りに用いる補 強 土工法の開 発が受 章 理 由でし
た。 ITや先端医療、
ナノテクなどの受章者が
並ぶなか、
土木の、
それも日の当たらない地盤工
学の分 野において、
しかも 受 章 者 として若い私
が 選 ばれた 理 由 はわか り ません。も しかした
ら、
このような分 野についてもきちんと見ている
という選定者からのメッセージだったのかもしれ
で、夫 婦同 伴で出 席しました。褒 章は都 内ホテ
ルでの伝達式において文部科学大臣から授与さ
[photo]永田 正男
[writer]駒崎 文男
のような感じをもっていたのですが、桃井さんが
えておりましたので、それまではどこか他 人 事
人というよりは開 発チームみんなへの評 価と考
場 合、土 木の工法 開 発による受 章であ り、私 個
されたことを 本 当に喜んでおられました。私の
ました。桃井さんはたいへん気さくな方で、
受章
に写 真 を 撮らせていただき、とても 嬉しく 思い
井かおりさんとお話ができただけでなく 一緒
過 ぎ ました。そんななか、同 時に受 章された桃
にて天皇 陛 下に拝 謁 するという日程で、慌しく
技 術 は閉 塞 した 状 況 を 壊 す 大 き な 手 段で
す。高度成長時代につくられた構造物の劣化・老
いくことが重要です。
されずに、自 信と責 任をもって役 割を果たして
が土 木の仕 事なのですから、世の中の風 潮に流
が続 くでしょう。しかし、人 を 支 える基 盤こそ
から人へ」のキャッチフレーズのもと、厳しい時 代
ていました。今は政 権 交 代により「コンクリート
で当 時は経 済も成 長しており、夢と希 望をもっ
舘山
果たす役割についてどのようにお考えですか。
私が国 鉄に入 社したのは1978年
心から喜ばれている様子を見ていたら私もだん
朽化は著しく、
これらに対する維持管理技術や
す。見 方 を変 えると、
低 位な技 術と思われがち
実は恒久ではないことを自覚する必要がありま
─
だんに嬉しさがこみ上げてきました。
延 命 化 技 術の確 立は喫 緊の課 題です。また、
高
名の方々とお話
度な計算を駆使し、
鋼やコンクリートを用いて断
現 在は土 木に厳しい時 代ですが、技 術が
編集委員
2009年の春の園
紫綬褒章受章の功績で、
遊 会にも 招 待 されました。当日は天皇 陛 下が
─
技術は閉塞した状況を壊す手段
喜多 直之
面を最 適 化してつくられた高 級な構 造 物ほど、
れました。その後、
受章者全員による会食、
皇居
聞き手
直々お話ししたいということで、
天皇、皇后両陛
下、
皇太子殿下をはじめ皇族
する貴重な機会を得ました。
12
土木学会誌 vol.95 no.3 March 2010
(財)
鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部長
舘山 勝
さ
複合構造体としての補強土を研究することによって、技術、そして土木を大きな
視 点 で 見ることがで き た。若い人 もこれからは大 き な 目 的のなかで土木 を 考 え
てほしい。
T A TE Y AMA
Ma s a r u
ように受け止められておられますか。また、授
─
紫綬褒章受章は 土木分野へのメッセージ
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授 章 式 当日は、人 生で初めてのモーニング姿
ません。
8
12
20
く
聞
に
人
の
こ
物かもしれません。今はつくる技 術から守る技
な盛土のような地 盤 構 造 物の方が恒 久な構 造
主 張 す るのではな く「 あ る 目 的のなかでの役
ある。若い人に対しても、
土木というものを強く
構築が必要で、
その中に基盤技術として土木が
ぐなど、多 様な分 野 を 複 合した目 的 型の分 野
をつくる、安 心・安 全 を 与 える、自 然 災 害 を 防
が適切ではない時代かもしれません。社会基盤
舘山
セージをお願いします。
とが大切なのではないでしょうか。
大局的にその先の姿を見据えて、力を蓄えるこ
のためにも 目 先の仕 事に追われるだけでなく、
にとらわれない若い力が必要となるでしょう。そ
同様に土木業界のシステムチェンジも従来の発想
新は若い革 命 者によって成 し得 たわけですが、
ませんし、そこには宝の山があ り ま す。明 治 維
木 業 界は旧 態からの脱 却が必 要な状 況だと思
術へと時代が変化しています。
以前はつくる技術
割 」、
たとえば新 幹 線 を 海 外に展 開 するための
土 木 分 野に就 く 人だけでなく、土 木 系 学
います。現 状では圧 倒 的に守る技 術が足りてい
が上で、
守る技 術は下と見られることもありま
技術という大きな目的の中で土木を選んでいた
これまで設 計や構 造の観 点から補
私 自 身は、
強土工法の研究を続けてきました。土構造物は
─
今は、
土木という 切り口でまとめるの
したが、
守る技術の方がもともと求められていた
だければよいと思いま す。後はそこにいる人 た
通常土でできていますが、
補強土というのは、
鉄筋
─
本質の技術ではないかと私は考えています。
ちからの夢の与え方だと思うのです。
コンクリートと同様に複合構造体であるというと
舘山 勝(たてやま・まさる)さんプロフィール
目先に追われず 大局的に先の姿を見据える
科を選ぶ学 生 も 少なくなっています。これから
つくる技 術から守る技 術へというように、土
(注)
らえ方もできると思います。
つまり鉄筋の代わり
がジオテキスタイルなどの補強材で、
コンクリート
の代わりが土です。
このように考 えると、
純 粋に
土質工学から入った人とは違ったアプローチでの
研究となります。
おかげさまでさまざまな技術
を世に送り出すことができました。
また、
最も性
能規定化に馴染まないと思われていた、
土構造物
に関する設計標準の性能規定化も、
限界 状 態 設
計法やライフサイクルコストの概念などを取り入
れて、
鉄道基準において実現することができまし
た。
これは世界で初めてのことだと思います。
これからも技術の前では決して保守的になる
ことなく、努 力を続けたいと思っていますし、若
い人たちや技 術 者にもそ うした気 持 ちを 忘れ
ないでほしいと願っています。
(注)
ジオテキスタイル:地盤補強用の繊維シート
土木学会誌 vol.95 no.3 March 2010
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技術の最前線に立とうとする若い世代へのメッ
1957年青森県生まれ、八戸工業高等専門学校卒業後、
1978年に日本国有鉄道入
社、構造物設計事務所を経て民営化後は鉄道総合技術研究所に所属。
この間、一貫
して地盤にかかわる研究・開発、
技術基準の作成業務に従事。2008年春紫綬褒章
受章。
土木学会フェロー会員、
土木学会特別上級技術者。