17 ハイピアにおける施工上の問題点 岐阜県土木施工管理技士会 小 川 正 司 ※ 橋脚工: 2 基 1 .は じ め に P1橋脚 H=69 コンクリート 2 , 232 私が携わったのは、岐阜県藤橋村(旧徳山村)で (30-8-25BB) 鉄筋 1 , 035t 現在急ピッチで施工が行なわれている徳山ダム建設 P2橋脚工 H=65 に伴う県道付替事業の内、山間部でのハイピア工事 コンクリート 2 , 108 である。 鉄筋 今回のハイピア工事では、安全面において、転 976t 落・墜落災害やクレーン災害、通勤や資材搬入時の 3.工事における課題 交通災害が考えられ、また施工管理面では、工期が この工事における課題は主に以下の 3 つが挙げ 厳しいため施工日数の削減や、構造物の品質確保に られた。 ①ハイピアであるがゆえにまず第一に、墜落落下 関する検討が必要であった。 2 .工 事 概 要 災害を防止する事。 ②当現場の橋脚構造は、中空式で壁厚さ1 . 2 、 当工事の主な概要は以下の通り。 鉄筋は主筋D51、帯鉄筋D32が緻密に配置されて 工期:平成16年 3 月18日 おり、工期短縮の為には、鉄筋組立に要する日数を ∼平成16年12月12日 極力減らす事。 ③品質の良いコンクリートを打設する為に、構造 全 景 施工状況 −54− 図−2 材例とひび割れ指数 や形状、気象条件に合った養生方法で施工する事。 度に吊上げ、落とし込む方法を採用した。 しかし、この方法で施工しただけで、鉄筋組立が これらに対して行なった対策を以下に述べる。 早くなるわけではなく、施工しながらもその方法に 3 .対 策 合う地組架台、吊り具の形状を検討し改良する必要 ①の対策として、墜落落下災害防止の為に、毎朝 があった。また、鉄筋組立においても、どの位置の の朝礼での連絡事項の伝達、作業場、使用機材、保 主筋をどれだけ建込んでから帯鉄筋を落とし込むの 護具等の始業前点検を確実に行う様心掛けた。 か、鉄筋作業時の人員配置、落とし込みに合った鉄 また、ハイピア工事は、一見同じ作業の繰り返し のように思われがちだが、細部を見ればそれぞれ違 筋の形状変更の承諾、これら一つ一つの積み重ねが 鉄筋組立に要する時間の短縮につながった。 ③の対策として行なったのは、まず事前にコンク った作業であり、危険予知訓練は、マンネリ化しな リートの温度ひび割れに対する 3 次元フレーム解 い様に現地で具体的に行うようにした。 設備においても、落下防止ネットを必要箇所に使 析による検討である。 当社では 2 年程前から自社受注のマスコンクリ 用したり、足場に巾木を設置し、小資機材の落下防 ート工事において事前の温度解析を実施し、施工管 止に努めた。 ②の対策として、鉄筋組立を効率良く施工するた めに、帯鉄筋鉄筋組立は、4 ∼ 5 段分の帯鉄筋を一 理に反映させており、今回も実績を踏まえて打設割、 養生対策を検討の上解析を実施した。 図−1 解析モデル図 コンクリート温度測定状況 −55− 図−3 解析結果と実測温度との比較 解析結果では、橋脚全13ロッド全てにおいてひ が20㎏/ が増加することとなり、ひび割れ指数が び割れ指数1 . 0を上回り、有害なひび割れは発生し どう変化するかが新たな問題となり、断熱温度上昇 ないと推測され、ひび割れ指数の最も低い 2 ロッ 量とひび割れ指数の関係を、更に計算した。 結果、温度上昇は +2 ℃、ひび割れ指数 1 . 08 と、 ド目では、コンクリートの最高温度は壁の中心部に おいて材令 2 日で発生(56℃)することとなった 当初配合時の1 . 13より若干低下したものの、目標 が、ひび割れ指数が最も低くなる時期は、次ロッド 指数1 . 0を上回ることとなった。これらにより、コ のコンクリート打設直後の時期(1.04)となった ンクリートが閉塞することなく、無事にクラックの (図− 2 参照)。これは、打設された新しいコンクリ ない良好なコンクリート打設を終えることができ ートが膨張し、前ロッドに引張り応力を加えている た。 からと考えられた。 4 .お わ り に このため、コンクリート温度の上昇抑制は勿論、 打設後の温度低下にも気を使い、解析に合ったコン 本年は、台風の襲来が多く、それによる工程調整 クリートの養生方法で養生し、実際のコンクリート にも苦労したが、工期厳守で工事期間内はほとんど 温度測定を行ったところ、ほぼ解析通りの温度上昇 休工することなく急ピッチで施工を行なった。この を得た。(図− 3 参照) ような状況の中、鉄筋組立の施工方法の工夫により また、本工事は 5 月から11カ月間の施工で、途 工程短縮を図り、無事工期内に無災害で工事を完了 中夏期にもかかるため、コンクリートの散水養生、 することができ、また充実した施工管理で品質の良 ポリフィルム養生を初め、コンクリート打設時の型 い構造物ができたのは、現場に携わる一人一人が忙 枠への散水を実施し、コンクリートの温度上昇の抑 しさに感けることなく安全や品質確保に対する意識 制を図った。 を持ち続けた結果であると思う。 また、打設箇所が高所になっていくほど、特に夏 季にはコンクリートのスランプロスが予想され、コ 今後も、今回得た技術的なノウハウを活かし、さ らに高く高度なハイピアに挑戦していきたい。 ンクリート配合を30-12-25BBに変更承諾を取った。 最後に本寄稿にあたって、施工中常に的確な指導 配合決定時には、早期施工の為、普通ポルトランド をしていただいた独立行政法人水資源機構の担当者 セメントとも考えたが、温度ひび割れ防止に有効な の皆さまに心よりお礼申し上げます。 高炉セメントのままとした。これによりセメント量 −56− ※ 株式会社 市川工務店
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