Kobe University Repository : Kernel

 Kobe
University Repository : Kernel
Title
転換期におけるコントローラー制度
Author(s)
溝口, 一雄
Citation
国民経済雑誌, 135(6): 1-19
Issue date
1977-06
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00172111
Create Date: 2014-11-11
転換 期 に お け る コ ン トロー ラー制度
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)カにおけ るコソ トローラ-制度 (
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p)紘, その管理会計 (
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ng)の発展過程を把握す る うえに欠 くことのできない ものであ
る と解 されてい る。筆者 もまた この観点か らコソ トローラ-制度の問題を扱 っ
てきた のであ って,す でに本誌 に も 「コン トローラ-制度 の動 向」 (
第1
2
4巻 4
早,昭 ・4
6・1
0)と題 して小論を発表 した。1
9
6
0
年頃を境 としてア メ リカの コン
トローラ-制度は転機を迎 えてい ると考 え られ,その行方 のいか んは実質的に
,
わが国の企業 の管理部 門組織 に も相当な影響を与 え るもの とい うことができるC
しか し,顧み る と, 同稿 では資料 の吟味 も十分ではな く,筆者 の判断 も満足す
べ きものではなか った。本稿は, それを補正す る意図を もって記 された続稿 で
あ る。ただ し,小論 の体裁 を整 え る必要か ら叙述の内容お よび使用す る資料に
ついて若干 の重複 の生 じている ことを諒 とせ られたい。
Ⅰ
は じめに, コン トp-ラーシップ問題 に接近す るにあた って必要 な 2つ の視
角についてふれ てお きたい。その 1つは, コン トp-ラーシップの機能的側面
であ り, い ま 1つは管理組織的側面である。 この 2つは往 々に して由一祝 され
て取 り扱われ る。具体的にいえば, コン トローラーシップ ・ファンクシ ョl
/即
コン トローラー部門の活動 として安 易に論議 され るき らいがあ るとい うことで
あ る。た しかに,両者は関連的に論ぜ られ るべ きであ るが,基本的には これ ら
1
を識別 してお く姿勢が必要 であ る。
第 135 巻
第
6 号
前稿で述べた よ うに, コン トp-ラーシップ ・ファンクシ ョンの本源的 な も
のは,歴史的 にみ ると 「会計枚能」 (
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on)にあった とみ られ る。
そ して,会計機能担 当の独立 の職位 として コン トローラーが ア メ リカ企業 にお
い て確立 された のであ る。 ことに,重要 なのは,財務機能を担当す る トレージ
2
ユア ラー (
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)か らそれが切 りはな された とい う事実 である。
ア メ リカ産業界において コン トローラ-制度の地歩が固め られたのが1
920年
3
代 の初頭 であった ことは, マ ッキ ンジィ← (
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y) の 「管 理会計」
な どに よって知 られ るが, 当時 の コン トローラー部門の典型的な内部機構 は,
(
1)
会計課 ,(
2)
予算課 , (
3)
統計課お よび (
4)
事務管理課 の 4部門か ら成 ってお り,
これ らが コン トローラ-シップ ・ファンクシ ョンの具体的内容を示す もので も
あ った。
コン トローラー制度が社会的にオ - ソライズされ る上にエポ ックをな した の
は,1
93
0年代 の初めにア メ リカ ・コン トローラ-協会 (
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J・H・Jacks
on)の調査に よれば,1
9
40年代 の初めには主
ざましく, ジャクソン (
4
要企業 の大半がなん らかの形 での コン トローラーの職位を設け ていた とされ る。
コン トローラーシップ ・ファンクシ ョンは1
93
0年代において拡充 の一途を辿
り, ことに 「税務機能」 と 「監査機能」 を包摂 した ことがあげ られ なけれ ばな
らない。以上 の経過は前稿で明 らかに した ところなので, ここでは省略す るが,
/ トロ-ラ-部門が最
とにか く第 2次大戦後の新時代 を迎 えた時期にお いて コ,
大かつ最強の スタ ッフ部門を形成 していた ことは銘記せ らるべ きであ る。
コソ トロ-ラーシップ ・ファンクシ ョンが複雑化 し,多様化す るのにつれ て
コソ トロ-ラーの企業 内での地位 も徐 々に向上 し, トップ ・マネジメン ト層 の
重要な一員 としてのそれを確保す るにいた った。た とえば, ア メ リカ ・コン ト
1 この点はすでに拙著 「
管理会計」 (
1
95
2) において強調 した (
同書,1
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転換期におけるコソトロ-ラ-制度
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6
0年 6月号に掲載 の記事に よる と,
ローラー協会 の機関誌 The Cont
1
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6
0年 4月現在 のア クテ ィヴな会員2
,
1
8
2名 (
会員総数5
,
1
2
8名) の うち副社長
の肩書 を もつ ものは 1
7
6名に達 してい る とされた。 この ことは,1
9
5
6年 当時が
7
4
名, さらには1
0年前 には皆無 であった ことか らみ ると急速な変化 であ るとコ
メン トされ てい る。 しか し, のちに述べ るよ うに, この頃す でに皮 肉な ことに
コン トp-ラ-制度 の 「かげ り」が次第に明 らか とな りつつあ ったのであ る。
Ⅰ
Ⅰ
ここで コン トp-ラーシップ ・ファンクシ ョンの意味 について少 しく考 えて
み よ う。 これは もとも とスタ ッフ ・ファンクシ ョンであ る とされてきた。すな
わ ち,会計数値 を中心 とした計数 の総合管理を担当す るスタ ッフ機能なのでめ
る。
かつ てア ンダ- ソソ (
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on) 紘, コン トp-ラーシップ ・ファンクシ
ョンを基本的 には 「経営 の諸記録に関す る企画 とその遂行お よびその記録に関
連す る情報 の報告 と解釈」 であって,要約すれば 「
記録お よび 報 告 の 機 能」
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る補助機能 として次 の 3つをあげた。
(
1) 経営財産 の管理 と保護
(
2) 報告な らびに記録についての法的要求 の充足
(
3) 業務の管理な らびに方針 の決定 についての経営管理者に対す る援助
1)
プロパテ ィ ・コン トロール ・ファソ クツ ョソ,(
2)リー
これ らを略称 して,(
ガル ・ファン クシ ョン, (
3)
マネジメン ト・ファンクシ ョンとす るのであ る。
この うちで, のちの コソ トロ-ラーシ ップの発展 の動向 との関連か らみ て重
要 な意義を有 してい るのほ, (
3)
であ るが, ア ンダーソンに よれば, マネ ジメン
ト・ファンクシ ョンは,生産 ・販売 ・財務に対立 した ア ドミニス トレーシ ョン
(
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on) を意味 してい るとされ, その内容は次 の よ うな経営者 の任務
としてあ らわ され る。
第 135 巻
第
6 号
(
1) 方針ない し計画の設定
(
2) 組織 の編成お よび維持
(
3) その組織 を して計画を遂行 させ るための指導
(
4) 各部門活動 の指揮 と調整
(
5) 計画に対す る業績 の評価
経営者が これ らの任務を効果的に行 うために必要 な情報を コソ トロ-ラーが
提供す るもの とされ る。 ここにスタ ッフ機能 としての コン トローラ-シップ ・
5
ファンクシ ョンの中心がある。
コン トローラーのスタ ッフ機能は, マキ ンジィに よって代表 され る戦前 の論
者においては,主 として対部門管理者 の関係 として理解 され てきた のであ るが,
戦後 の新時代においては,対 トップ ・マネ ジメン トの関係に まで これが拡大 さ
れ るにいた った。 この ことはす でに上述 のアンダ- ソソの叙述の うちに も うか
が うことがで きるであろ う。
9
5
0年代 の急
この トップ ・マネ ジメン トとコン トp-ラーとのつなが りは,1
速な企業成長期を迎 えるに及 んで, マネ ジメン トの重点が コン トロール中心か
ら経営意志決定 ない し経営計画-移動す るにつれ て よ り重要 となった。前掲 の
資料に示 された コン トローラーの地位 の向上 もこの よ うな情況に符合す るとこ
ろが多い とみ て よい。
9
6
0
年頃を境 として コン トローラシップ ・
しか るに,す でにふれた よ うに,1
ファンクシ ョンについで陵疑的 な見解が次第に表面化 してきた ことが注 目され
る。 これは会計機能に対す る要求が新たな事態に応 じて益 々拡大 されつつある
のに対 して,現実の コン トローラーシップが これに完全には即応 し得 な くなっ
てきてい るとい うことに起因す るものであ る。
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
コン トローラーの管理組織上 の▲
役割 りが相対的に低下 した ことに対す る警告
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転換期におけるコソトロ-ラ-制度
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0
年前後に相ついであ らわれたが,その代表的な ものは次 の 2つ
的 な論稿は1
であ る。
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これ らの論稿の内容についてはす でに前稿に紹介 したので, ここでは必要 な
限 りでその要点だけを示 してお く。両者の論法には共通点が多 く, ともに指摘
してい るのは, まず現実の コン トp-ラーシップ ・ファソクショソが,一般会
計 な らびに管理会計 の全般に及び, さらに システム計画, デ -タ処理,税務,
保険, 内部監査や事務管理にいた るまできわ めて広い範囲を含 んでい る とい ラ
事実 であ る。 この ことか ら コン トp-ラーの本来 の職務であるマネジメン ト情
報 の提供が不十分 とな り,その結果 として,計画 ・統制 ・解釈の機能に関す る
専門の管理者が コソ トロ←ラー以外 に設け られ るとい う傾 向を生 じた とい う。
その管理者は マネジメン ト情報 の責任者であ り,社長 のア シスタン トとしての
6
性格を もつ とみ られ てい る。
この傾 向が強 まれば,それは まさに コソ,
トローラ-シップの存立の意義にか
かわ る問題 とな るといえ るであろ う。 こ うした現象をひ き起 した ことの 占ソ ト
ローラ-側 の原因 としてほ, (
1)
コソ トロ←ラ-が財務的 (
貨幣表示的)報告に
重点をお きす ぎた こと, (
2)
業務 よ りも会計に関心を集中 した こと, (
3)
計画問題
よ りもライ ン的な問題 に注 目しす ぎた ことお よび (
4)
マネ ジメン トの必要 よ りも
7
会計上 の結果に支配 されす ぎた ことが述べ られ てい る。
コン トp-ラ-に対す る トップ ・マネジメン トの不満は,高度成長期におけ
る企業 の内外 の急激 な情況変化 に対応す る意志決定に必要 な情報, と くに長期
問題 の決定についての情報が コン トローラー部門か ら得に くい とい う点に集中
していた よ うであ る。 当時 ロッキ ー ド航空横会社の副社長 であ り, また ア メ リ
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第 135 巻
第
6 号
カ ・コン トローラー協会 の会長 で もあった ブラウンもこの点を指摘す るととも
8
に コン トローラ-が積極的に これに取 り組むべ きことを要望 したO また, ギ ャ
リテ ィ (コンサル タン ト)は, マネ ジメン ト情報 の提供が コン トローラーの最
1)
それ以
重要 な任務 であるか ら, これに恵念す るための今後 の在 り方 として,(
外 の仕事 (
た とえば標準の設定,税務,財務,対株主 関係業務)を他部門に委
管す ること, (
2)
適当なスタ ッフを もっ こと, (
3レレーテ ィンの仕事 はできるだげ
9
そのスタ ッフに委譲す ることをあげてい る。
Ⅰ
Ⅴ
以上に紹介 した のは, コン トPTラー白、
身あ るいは コンサル タン トとしての
実務家か らの危棟意識 の表 明, あ るいは警告 であって,未だ抜本的な改革の方
9
6
0
年代 の後半に入 ると,学
向は提案 され てほいない とい って よい。 しか し,1
界人か らの見解が連続 してあ らわれにいた った。その内容について共通す るの
は, コン トローラーシップに対 して よ り鋭い批判が加 え られ, したが って改革
の方 向もかな り明確に示 され てい るとい う点 である。 これ らをみ る と,半世紀
にわた る発展の歴史を通 じてア メ リカ企業におけ る最強 力なスタ ッフ部門の位
置を占め るにいた った コン トローラト部門の在 り方 について変革 の時期が到来
しつつある とい う印象を否めない。
コン トp-ラーシップ変革 の思考は,基本的には ア メ リカ会計学会 「
会計基
礎理論委員会報告」 (
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に よって代表 され る情報 システ ムとしての会計本質観に支 え られ てい る。 コン
トp-ラ-制度 と関連 させてみ る場合には,管理会計情報が よ り重要 であ り,
なかでも経営意志決定 のための会計情報の問題が中心 とな るが,その意味では
1
9
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9
年に公表 された ア メ リカ会計学会 「
経営 意 志 決 定 モ デ ル 委 員 会 報 告」
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転換期におけるコソ トローラー制度
この報告書 の うちに 「
経営意志決定 モデルの会計 システムな らびに会計責任
者 の役割」を論ず る箇所があ るが, 「会計責任者」を コン トローラーに読みか
委員会報告」は会計情
えれば, その内容を
貫きわめて示唆に富む もの とな る。 「
報 システムを統合化 された経営情報 システ ムの中心にお こ うす ることをその基
本的立場 としてい るのであ って,会計責任者は計量的意志決定 モデルの有効性
が経常管理者に よって次第に広 く理解 され るよ うにな るのにつれ て増大す るモ
デル ・イ ンプッ トとしての情報- の要求に応 えなければな らないが, これを多
元的な情報 システ ムを通 じて行 うよ りも統合化情報 システムの もとにおいて行
う方が よい とす る。要す るに,従来 の会計 システムは内部的に収集 された デ ー
タにその領域を限定 していたた糾 こ,特定 の利用者の要求す る外部 デ -タの収
集 ・分析は他の部門に委せ ていたわけであ るが,在 るべ き方 向 としてほそれ ら
を積極的に集中化情報処理 システムに統合 し,会計責任者 (コン トローラー)
がその責任者 とな るべ きであ るとい うことにな る。 もっ とも,そのためには会
計責任者は,数学的決定 モデルの前提条件について熟知 してい る必要があ るし,
1
0
そのための能力の拡充,開発が不可欠 とされ る。
将来 の会計責任者 の地位を意志決定者 のスタッフ ・スペ シャ リス 1
、として確
保 させ よ うとい うのが この 「
委員会報告」 で意図 され るもののひ とつであ るこ
とは明 らか であ る。そ こで,会計責任者 で もあ るコン トローラ-がひ きつづい
て計画 と統制のための情報 の主要 な供給者 としての地位を維持す るに紘,会計
システムの根本的な再編成が要求 され ることにな る。
この よ うな発展方 向を支 え るところの手段的な基底 として 「
委員会報告」は,
近代的 コンピュータ ー ・テ クノロジ-との結びつ きを強調す る。すなわち,会
計情報-の要求の多様化に応ず るには, コンビュタ- ・テ クノロジ-との結び
つ きを通 じて事後的な情報 の検索,組替,区分お よび統合のために, コ- ド化
した きわ めて基礎的な形態 の素材 としてのデ ータを含む デ ータ ・ライ ブラ リ10 A.A.A.
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第 135 巻
第
6 号
の構想を可能にす るとい うのであ る。す なわち,伝統的 な会計情報 システムで
は,要求 され る情報 の範囲が拡大 し, それが量的に もはなはだ し く増大す
るに
\
及 んで,情報 の収集 ・処理 ・伝達が困難 とな るので, コンビュ-メ- ・テ クノ
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ロジーの利用 な しには これが解決 され得ない とす るのであ るoそ して,会計責
任者は, たんにチ ーフ ・ライ ブラ '
)ンであ るだけでな く,彼が行 う分類,総合,
報告が意志決定 に どの よ うな影響を及ぼすかを知 らなければな らない。 また計
画お よび統制 の情報におけ る概念を拡げ るよ うに努めなければな らない。将来
の情報 システ ムには,た とえば, CVPデ ータや需給 スケジュ-ルの よ うな関
1
2
数 関係の情報がル -テ ィン的に含 まれ るか もしれない とす る。
しか し, コン トローラーシ ップを統合化 された経営情報 システムの管理に ま
で高め ることは近 い将来において可能 であ るか とい う点は根本的 な問題 として
改 めて問われ るであろ う. また, コン トローラーが この機能を現実に掌接 し う
るだろ うか, さらには,既存 の コン トローラ-部門の業務は どうな るのか とい
った ことが問題 として残 る。
Ⅴ
この 「経営意志決定 モデル委 員会報告」 の構想 とよ く似た ものを もちなが ら,
W.
よ り厳 しく伝統的 コン トローラ-シップを批判す るものに, ス ワィヤ -ズ (
1
3
E・Swyer
s
) の論稿が あ る。彼がその論文 で述べ よ うとした意図は,新たな企業
環境の下 で求め られ る統合的情報 システムの確立 こそが コソ トロ-ラーの責務
であ ることを明 らかにす ることにあった。 しか し,それ に よって経営組織上の
重要な地位を コン トローラーが 占め るための条件が容易な もの\
でない ことを併
せ て指摘 してお り, その意味では現実の コン トp-ラ-のあ りかたについての
きわめて鋭い批判が, 加え られ てい るとい うことができる。以下, その要 旨を
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筆者はルイジアナ州立大学準教授である。
転換期軒
こおけるコソ トローラ-制 度
紹介 してお く。
コン トローラーの現在 の地位は,有効かつ有意義 な会計的な らびに財務的情
報 のマネ ジャーとして築かれたが,近年においてほ情報 テ クノロジ-のイ ノべ
-ショソす港 わち EDPに よって コンビュタライズされた統合情報 システ ムの
設定に よって財務的 (
貨幣表示的)情報 であ る会計情報 システムは独立の情報
システ ム として存在す ることが困難 とな りつつあ る情況か らみて, コン トロー
ラーシ ップ ・ファンクショソはそのイ ソパ ク トを うけ とめて新たな もの-脱皮
しなければな らない とされ る。す なわち,経営者 の情報要求は巾広 く総合的 な
もの とな っていて, もはや伝統的な会計情報だけでは満足 されないのである。
その情報要求 の広が りは,財務的情報か ら非財務的情報-,過去的情報か ら現
在情報 あ るいは未来的情報-, さらには企業 内部活動 の情報だけでな く,社会
的,経済的,政治的,技術的情況にかんす る情報に まで及ぶ とい うよ うに理解
され る。その うえに,数学的,統計的技法を使 った OR情報-の要求 もあげ ら
れ る。
そ こで, ス ワイヤ-ズほ,従来 の よ うに分散管理 の もとにおかれた情報 シス
テ ムは もはや陳腐化 してい るとし, それに代 るもの として全経営的な ト-タル
情報 システムの必要性を強調す る諸論者の見解を紹介 してい る。 もっとも,他
方に デ ィアデ ン (
De
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de
n)の よ うに単一 の統合 システムとしての情報 システム
の可能性について消極的な意見のあ ることも併せて認めてい る。 しか し,彼は
結論 としてほ統合情報 システム論 の側に立つ とともに, それが経営組織上の新
たな独立 の情報担 当部門-の要求 と密接に結びつ くことを意味す る と指摘す る。
この部門に よって担 当 され る新 しい マネジメン ト・ファンクシ ョンは経営情報
システムの設計お よび運用か らなってお り,伝統的な生産 ・販売お よび財務の
ファンクションと対等 の もの とされ る。
ところで, その機能 の担 当部門についてはいろいろな提案があ りうるが, と
1)
システムの立案 とその展 開, (
2)
データ処理お よび, (
3)
疏
にか くその部 門は, (
制 とい う 3つ の主要領域を有す ることにな るであろ う。それ らの領域にわた る
1
0
第 135 巻
第
6 号
仕事 をす るにはテ クニカルな人材が必要 であ る。 ス ワィヤ-ズは,人員構成 の
問題に言及す る。 と くに,OR関係, システム関係あ るいは コンビュ-メ-関
係のスペ シャ リス トが必要 であ り, また会計情報 は統合的情報 システムを通 じ
て得 られ るので, コン トローラー部 の関係者 もこの新 しい情報部門の人的構成
に組み入れ られ るであろ うとされ る。第 2次大戦後,OR部門,組織 ・方法部
門,会計部門の 3部門はそれぞれ独立 の ものではあったが,共通 の 目標,す な
わ ち有効 なマ ジメソ ト障報サ ービスに方 向づけ られ てきたのであって, これ ら
3部門を単一 の情報部門に統合す ることこそが必要 であ ると強調 され る。 さら
に,数学,統計 の専門家やイ ソダス ト1
)アル ・エ ソジニヤあるいはェ コノ ミス
トたち も/
この グル ープに包含 され うるであろ うとい う。
次いで, ス ワイヤーズはア メ リカ企業におけ る実際 の現象に注 目し, コン ト
ローラシップの危機について警告す る。 それは ことに多数 の大企業においてみ
られ る懐 向であ るが,従来 コン トローラー部の支配下にあった EDPが次第に
これか ら離れ,管理組織上 ア ドミニス トレイテ ィヴ ・サ ー ビス部門に所属す る
とい うものであ る。新 しい意味 での情報部 門は 自然 の成行 として これに属す る
ことにな り, したが って事務量 の節約 とい う観点だけか らこの情報部門を コン
トローラ-部が掌握す るとい う根拠 は うすれつつ あ る。新たな システムの計画
と拡充は主 としてテ クニカルな努力に よって遂行 され るとみ られ るので, この
活動 は コン トローラーシップ ・ファンクションの関与 しない ところで行われ る
ことにな る。その結果 として,情報担 当のデ ィ レクタ -
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ラーの地位 は相対的に低下す ることにな るだろ うとい う。
しか し,それに もかかわ らず, ス ワィヤ-ズほ新たな統合的情報 システムの
責任者 とな る可能性, またその優位性 は コン トローラーにあ るとい う意見を も
ってい る。その根拠 とす るところは次の よ うであ る。
転換期におけるコントp-ラ-制度
l
l
(
1) コン トローラ部門で訓練 された者は,企業活動 のすべての面についての
広範な知識を有 してい る。
(
2) 彼は,財務的な らびに非財務的情報 の集収 ・解釈 ・提示 の プロセスにお
け る豊富な経験を有す る。
(
3) 彼は,従来最 も高度に発展 していた情報 システムす なわち会計情報 シス
テ ムに対 して責任を負 ってきた。
(
4) 彼 は, た とえそ の訓練が限定 されていたに して も, とにか くEDPにつ
いて次第にな じんで きてお り, また この新 しいテ クノロジーにかんす る可能性,
方法,問題点をあ る程度は理解 してい る。
これ らの理 由か ら,会計専 門家は統合情報部門の責任者た りうる優位性を有
してい るといわれ る。 だが, それ とともに ス ワィヤ-ズほ ここできわめて具体
的 な形 で率直に問題点を指摘 してい る。 もし, コン トp-ラ←が ORの トレー
ニソグを欠いていたな らば, コ ミニュケーショソが阻害 され るおそれがあ るし,
また OR専門家,統計専門家, イ ンダス トリアル ・エ ソジニヤたち とのディス
カ ッションに際 して弱味をみせ ることに もな りかねない とい うのであ る。いい
か えれば,統合情報部 門の管理責任者 としての コン トp-ラーの姿勢 の重要性
定っいて特別の注意を喚起 してい るわけである。
コソ トロ-ラ←シップの今後 の方 向づげについての彼 の意見表 明は さらに次
の よ うにつづ く。
す なわち,統合情報 システムが会計部門以外の情報部門に よって管理 され る
ことになれば,それは ドラマチ ックな組織上の変革を意味す る。おそ ら くこの
ことは企業全体に反響 を よぶにいた るであろ う。 しか し, それは コン トロトラ
- シップ ・ファンクシ ョソの終鳶を意味す るものではないO コン トローラ-紘,
自己の延命 をはか るために新 しい情報部門を無理に財務領域に引き込む必要 は
ない。む しろ,それ は情報部門を コン トローラーシップ ・ファンクションか ら
引 き離 して しま う公算を大 き くす る。反対に,その経験を活用 して積極的に O
R問題に と り組む ことが必要 であって, マネ ジメン ト・イ ソフォ←メイ ショソ
1
2
第 135 巻
第
6 号
のディ レクタ-と しての立場を確保すべ きであ るとい うo
以上 のス ワィヤーズの見解は, コン トp- ラーシップ ・ファ ンクシ,
ヨソを統
合的経営情報 システムの管理に まで高め よ うとす る点において前 出の意志決定
モデル委員会の考 え方 と大体共通す るが,やや異な るのは,伝統的な会計機能
中心の思考にかな り強 く反対 してい る点であ る。経営意志決定 モデル委員会 の
もつ データ ・ライ プラ 1
)-の構想に して も形 を変えた会計 デ-タが実質的に中
心をな していた。 ブラウンやギ ャ リテ ィの コン トp-ラ-シップの方 向づけが
一層伝統的な思考 の上に立 ってい ることはい うまで もない。
VI
「経営意志決定 モデル委 員会報告」では,経営意志決定 と情報 の関連が主題
をな していたが, ス ワィヤーズの論稿 では,情報棟能の内容がほ とん ど説かれ
ていないので,その論調は,具体的情況を扱 ってい るに もかかわ らず,一面に
おいて抽象的にす ぎるといえ る。 これに対 して, 同 じくコンビュ-タ一 ・テ ク
ノロジ-を基礎 とした マネジメン ト論 を もちなが ら,在 るべ き コン トローラー
シップの方 向を よ り多 くマネ ジメン トの諸機能 と関係づけて説 くものに, ファ
1
4.
タキス (
J・P・Fert
aki
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) の論稿 「システ ム志 向の コソ トロ←ラ-シップの概念」
がある。
彼は従来の コン トローラーシップにかんす る本質理解において システムズ ・
アプロ-チが欠けてい ることを指摘す るとともに, この観点か らのア プローチ
を意図 してい る。彼の論述は段階を追 って行われ てい るのであ るが,紙数 の関
係 もあるので,その意 図す るところを集約的に示す と思われ る次 の図を掲げ,
われわれ の関心を中心 として若干 の コメン ト行 うことにす るO
注意すべ き第 1点は,彼が コン トp-ラーシップをマネ ジメン トお よびオ パ
レーションとな らんで経営管理 システムの基本要素の 1つ とした ことである。
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筆者はワシソトソ州立大学助教授である。
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転換期におけ るコン トローラー制度
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1
4
第 135 巻
第
6 号
マネジメン トの ファンクションは諸計画の設定ない し承認,その実施のための
資源の配分,結果 の フ ォローア ップと評価か ら成 り,そのために各種の専門 ス
タッフ,諸委員会, OR グル ープお よび財務相当幹部 であ る トレ-ジュアラを掌握す る (
それぞれの機能の詳細については省略)
。 オペ レ-ショソほ,生産 ・
販売な どの実施機能を意味す る。 その結果は測定 され, コン トローラ-を通 じ
て, マネジメン トに報告 され る。 コン トローラーシ ップ ・ファンクションはわ
れわれの当面の問題 であ るか ら,やや くわ しく紹介す ると, まず これは,予算,
一般会計,特殊 な管理的原価分析お よび財務的原鹿計算に 4分 され る。
予算の使命は, マネ ジメン トに よって設定 された 目標,資源の配分 と諸制約
条件に関連 してオペ レーションの実行 プロセスを絶 えず監視 し,評価す るとこ
ろにあると考 え られ てい る。サ ブシステムとしての一般 会計 は,財務記録 ・財
務報告,監査お よび税務 な どか ら成 っていて,む しろ伝統的な コン トローラー
シップ ・ファンクシ ョンがそのまま維持 されてい る。財務的原価計算は,原価
計算 システム ・原価標準 の設定,差異分析お よび業績報告な どを含み,総 じて
制度的な原価管理をね らい としてい る。 ファクキスが重視 してい るのは特殊 な
管理的原価分析 であって, そ こでは意志決定志向的原価情報 の意義が論 じられ
てい るOそれは, いわゆ るプロジェ ク ト・プランニ ングにかかわ る特殊原価調
査にはかな らない。
ところで, ファタキスは報告書ない しその他の伝達手段に よる情報 の流れが,
マネジメン ト, オペ レーシ ョン, コン トp-ラーシ ップの 3着問でそれぞれ 2
方 向において確保 され る必要性を強調す る。それは図にみ る よ うに, 2重 の
(
それぞれ反対方 向- の)情報 の フ p-として理解 され る。そ して, この情報
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)が
の フロ-を可能にす るには,中央 に集中的 デ ータ処理装置 (
必要 であるとす る。
この よ うな組織構造を前提 として最後に コン トローラーの役割ない し機能が
論 じられ る。
それは,基 本的には,測定 と管理にか んす る報告 の領域におけ る情報 の フロ
転換期におけるコソトロ-ラ-制度
15
ーを容易にす る点にあるとされ, したが って測定 システムを デザイ ンし,計画
案 と実際 のオペ レ-シ ョンとの関係についての適切 な情報をマネジメン トに報
告す るための様式を設定す るとい う仕事はその任務に含 まれ ることになる。 コ
ン トp-ラーは,さらに マネ ジメン トが財務的計画を決定 した り,将来 の計画お
よび意志決定上 関心事 とな る領域におけ る特殊研究 の促進を援助す るとされ る。
以上 の ファタキスの論ず る ところを総括 してみ ると,第 1に コン トローラー
シップ ・ファンクシ ョンの内容は, ス ワィヤ ーズな どのい うよ うな経営情報全
般にわた るものではな く,む しろ伝統的な ものに近 い とい うことが知 られ る。
第 2には,それに もかかわ らず, コン トp-ラーシ ップをマネ ジメン トとオペ
レーシ ョンとな らんで,経営 の主要 セ クターの 1つ としてい ることを あげなけ
ればな らない。 そ こで,疑問 とな るのは, コン トローラ-シップ ・ファンクシ
ョンに と り入れ られなか った他 の情報, こ とに計数 的表現を もつ情報は どの よ
うに位置づけ られ るのか とい うことである。それ は彼 の場合には明 らかではな
い。
ⅤⅠ
Ⅰ
前節 までの叙述 で, コン トローラーシップをめ ぐる最近の論議 の状況が明 ら
かに されたわけであるが, それに よる と, アメ リカの コン トローラーシップが
転換期を迎 えてい る とい う印象が強い といえ るであろ う。それ では, ア メ リカ
企業におけ る コン トローラーシ ップは実際に どの よ うに変化 して きているであ
ろ うか。 これは残 された問題 である。いか んなが ら,今 日までの ところでは こ
れを的確に示す よ うな資料は得 られない。 この問いに若干答えて くれ るもの と
して,わずかに ス ク-セ ソお よび ジンマ - (
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)が NAAの 「マ
ネ ジメ.
/ ト・アカウンテ ィング」誌 に掲げた論稿 「コン トローラーシ ップの陳
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腐化, それは真実か虚構か」を あげ ることができるだけである。
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23・筆者はともにミネソタ大学準教授である。
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6
第 135 巻
第
6 号
この論 稿 は, 両 教 授
コン トロー ラーの職務 内容
第 1表
職務の ランクづけ
一
般
会
計
回答数
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1
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計
画
内 部
監
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財務結果 の解釈
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税
務
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ト ・ポ -ル, メ トロポ
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社 の コ ン トロ ー ラ ーに
つ い て の実 態 調 査 に 基
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ラ ー シ ップの実 態 を 明
第 2表
コン トロ- ラ-お よび トレ- ジュア
らか に す るだ け で な し
ラーに帰属す る職務
回
(芸 ン 下品 I ラ義)
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S の拡充 と教育
教 育 の仕 方 に も問 題 が
あ る とす るの で あ る。
しか し, こ こで は わ れ
わ れ の 関心 事 で あ る コ
ン トp - ラ ー シ ッ プの
実 情 を 知 る とい う観 点
だ け か らそ の 内容 を み
る こ とに した い。
まず , コ ン トロ ー ラ
ーの実 際 の職 務 内容 が
上 の第
1表 に示 され て
い る。 この表 に よれ ば ,
(
その他の職務)
資 本 予 算
デー タ ・プ ロセ シング
の 事 実 が あれ ば, 大 学
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対 銀 行 業 務
資
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繰
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金
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信用供与 と回収
短 期 財 務
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務
対投資家 関 係
資
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(去 レ- 窟
保 険 事
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資 産 の 保 金
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5
経済 的業績検討
他部門の業績評価 とコ
ンサル ティ ング
2 2
2
政府 関係報 告
1
務
に , も しそ の 「陳 腐 化 」
高
著)
(
5
税
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財務結果 の報告 ・解釈
数
革 ま 霊 芝 増加 減少 等 ら
0
コン トロ-ルのた獲)
の
計画設定
答
現 実 の コ ン トロ ー ラ の職 務 に な に が 含 まれ ,
また な に が 一 般 的 か が
転換期におけるコソトロ-ラー制度
1
7
判 ることはむ ろんであるが, 同時にその仕事に コン トp-ラ-の時間が どの程
度に注がれ てい るかが把握 できる。筆者 の コメン トでは,計画業務や EDP,
M IS関係の業務 の よ うな非伝統的な ものの重要性が高 まってい ることが指摘
され てい る。
コン トローラーの職務の変化 の傾 向を知 るのには,次の第 2表 を関連 して と
財務管理協会」 (コントロ-ラ-協会の後身)
り上げ る必要があ る。第 2表 では 「
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年当時に標準的な もの として想定 した (
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財務部長)
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) コン トローラーお よび トレ-ジュア ラ- (
の職務が掲げ られ てお り, さらに下 の 3項 目は両教授に よって重要項 目として
追加 された。 トレ-ジュア ラーの職務が併記 され てい るのほ,歴史的にみ て も
両者が しば しば類似の もの として扱われ るためであろ う。
ス ク-セ ソ等は,調査結果 として,財 務管理協 会が示 した各職務が引 きつづ
き コン トロ-ラ-シップの内容 とな ってい ることを認め る とともに,た とえば
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) な どの伝統的職務の ウェイ トが相
税務や経済的業績検討 (
対 的に低下 した ことを指摘 してい るが,私見に よれば, この調査表 の上では こ
れはそれほ ど明確にはあ らわれ ていない よ うに思われ る。た しか に 「計 画 設
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)や下に別記 した新 らしい職務に増加傾 向が認め られ
定」 (
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るが,一般会計の分野 と推定 され る ところの 「
財 務結果の報告解釈」 (
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)に も同様 な傾 向が著 しい ことに注意 しなければ
な らない。総 じて,む しろ依然 として伝統的会計業務が相当大 きな割合を 占め
てい る とい う事実を併せ て指摘すべ きであろ う。
調査事項 の第 3は, マネ ジメン ト中心 の職務を遂行す るのに必要 な近代的諮
技法について コン トp-ラーたちが どの程度 の知識 を もってい るか, その姿勢
は ど うか とい うことであ って,質問状には次 の よ うな項 目が掲げ られ ていた。
す なわ ち,変動予算,現在価値概念,LP,統計的サ ンプ リング,感度分析,
貢献差益分析, PERT・CPM ,シ ミュ レーシ ョン,最適化技法, マル コフ連鎖,
べ -ズ統計 な どである。 そ して, それ らの習得 の方 法について も回答を求め,
1
8
第 135 巻
第
6 号
それ らをすべ て表 に ま とめてい る。 これについては省略す るが,彼等は現実の
コン トローラーたちが陳腐化 の危険を認識 し, コン トローラ-シ ップの近代化
- の努力を行 っている と判断 し,将来 の コン トローラ-が行動科学,数学, コ
ンピュータ- ・サイエ ソスについて相当程度の知識 を もっ ことの必要性を強調
してその論稿を結 んでい る。
しか し,われわれの立場か らみ る限 り, ア メ l
)カの コン トローラーシップに
は未だ際立 った変化は生 じていない とい う印象を否 めない。新 しい時代の要求
に対 して, なぜ組織面での対応を考慮 しないのか とい うことも解 し難い ところ
である。 これはわが国の広義 の経理部門組織が戦後 に辿 って きた プロセスと比
較す る と興味があ る。
そ こで,今後 のア メ l
)カの コン トp-ラ-シップが機能 と組織 の上 で どの よ
うに発展 してゆ くか,その方 向についての可能性を整理す ると次の 2つのパ タ
ーンが考え られ る。第 1は,既存 の職務を分割 し, 他方に情報取扱 の範囲の拡
大をほか るとい う方 向であ る。拡大 され る情報は, 意志決定関係の ものであ り,
と くに外生的 ・環境情報が重要になるo この方 向では コン トp-ラー部の分割
す なわち再編成 も問題 とな りうる。 ブラウンやギ ャ リテ ィ等 の構想を推 し進 め
れば, この方 向が考 え られ るが, それは またわが国において管理部が経理部か
ら独立 した過程に大筋において類似す るものであろ う。 しか し,前 出のス クー
セ ソ等の実態調査に もみ るよ うに,現実 のア メ リカ企業 では,意外に この よ う
な再編成の方 向が うかがわれない。む しろ, ファタキスの よ うに コンピュータ
ー ・べイスの中央情報処理装置を使 って既存 の コン トローラ-シ ップ ・ファン
クシ ョソを維持 しなが ら, その拡充をはか るとい う考 え方が支持 され る可能性
が強い。 しか し,それで ブラウン等が危供 してい る よ うな, コン トローラー部
門の相対的 な地位 の低下が防げ るか ど うか とい う問題は依然 として残 る。
第 2は, コン トローラ-シ ップ ・ファンクシ ョンの本質を根本的に見直 し,
これを マネジメン ト・イ ソフォメイ シ ョン全般 の管理に まで高 め よ うとす るも
のであ る。 ス ワィヤーズの意見がその典型をなす.経営意志決定 モデル委員会
毒液 期におけ るコン トローラー制度
1
9
報告に もこの方向づけがあるといえる。 しか し, コン トp-ラ-は新たな経営
情報部門を掌握す る管理者に必然的にな るわけではな く, これには克服すべ き
困難な条件が伴 うことは前述の とお りである。 しか し,いずれに してもコン ト
p-ラーシップ ・ファンクシ ョンの見直 しとともに組織面でのかな りラディカ
ルな変草が必要 とされ るはずである。既存の コン トローラー部門を どう改変す
るのか,新 しい情報管理部門をそれ との関係で どの ように構築す るのか, これ
らの点については, ス ワィヤーズに よって提起 された方向づげは直ちに実現 さ
れ るか どうかは きわめて疑わ しい。 この発展方向は注 目すべ きであるが,可能
性については第 1の方向 よ りほむ しろ小 さいのではないか とい うのが現時点に
おけ る率直な判断である。