ス トレ~ンチングが疲労を伴う運動時のパフオーマンスに及ぼす影響

人間科学研究 Vol. 19, Supplement (2006)
修士論文要旨
ストレッチングが疲労を伴う運動時のパフォーマンスに及ぼす影響
Effect of Static Stretching on Maximal Force during Fatigue Exercise
金子 潤(JunKaneko) 指導:福永 哲夫教授
(緒言)
1)と20回目(終末値20)の値を用いて、各セットでの力積の
スポーツ現場においては疲労した筋肉をいかにすばやく回復
変化率を算出した。変化率についてコントロール試行と比較し
させられるかが重要である。その手段としてストレッチングや
たところ(図1)ストレッチング試行の変化率が有意に減少し
マッサージ、軽運動などが実施されているが科学的な根拠に乏
た P<0.05
しい。
また、被験筋である排腹筋内側頭(MG)、俳腹筋外側頭LG 、
そのような中で筋疲労に対するストレッチングの効果として、
ヒラメ筋(SOL の力発揮中の平均筋電位をセット間で比較し
血中乳酸の代謝の促進は期待できないが、作業能力に有意な回
たところ2試行問および各試行のセット問で有意な差は得られ
復がみられることが先行研究(山本ら: 1993)により示唆され
なかった。
ている。だが、疲労回復となった要因について明らかになって
MG、 LGおよびSOLのEMGミディアン周波数CPmed に
いないことや、ストレッチングによって局所の筋にどのような
ついては疲労傾向が観察されたが、いずれのパラメータにおい
効果があったのかは不明のままである。
てもコントロール試行との統計的に有意な差は見られなかった。
筋疲労の評価には筋出力を指標とすることに加えて、筋電図
組織酸素動態についてはMG、 SOLともにコントロール試行
分析や局所の酸素供給と消費状況を近赤外分光法(NIRS)で測
との有意差はみられなかった。
定するなど多面的に行う必要がある。
(考察)
そこで本研究では疲労を引き起こす運動を繰り返し行い、そ
の運動と運動の問に回復手段としてストレッチングを行うこと
筋疲労を引き起こす運動の回復手段として20秒間のスタ
ティック・ストレッチングが有効であることが示唆された。
で筋出力の低下を抑えることができるか検証する。そして、ス
MG、 LG、 SOLのセット間の平均筋電位は有意な差が見られ
トレッチングの有無が局所の代謝へどのような影響を及ぼすの
なかった。ストレッチング試行の方が筋出力の低下が小さかっ
かを検討することを目的とした。
たことから、コントロール試行の方が平均筋電位が高くなって
(方法)
いたことが考えられる。筋疲労がおきると放電量が増加する
健康な成人男性7名(年齢23.3±1.4歳、身長171.1±3.6cm、体
重64.1±7.0kg)が被験者として本研究に参加した。
(Kouzakiら1999)ことが報告されている。つまりコントロール
試行がより疲労していたことが考えられる。
筋疲労を評価するためにアイソメトリック足底屈を用いた。
(まとめ)
プロトコルはMVC (preMVC)を測定した1分後に、 3秒
高強度の筋力発揮を休息を挟んで繰り返した場合、筋疲労回
間のMVC発揮を行い、 1秒休息を挟む動作を20回繰り返した
復手段として20秒間のスタティック・ストレッチングを行うと、
(20Reps)。これを1セットとし、 1分間の休息を挟んで4セッ
次の運動での筋力発揮の低下率が5.2%、 8.9%、 10.4%とそれぞ
ト行った。 4セット目終了後、 1分の休息を挟んで最後にMVC
れ低くなることがわかったO これにより筋疲労時における回復
を測定した(postMVC)。そして、ストレッチングの効果を調
手段として20秒間のスタティック・ストレッチングが有効であ
べるために休息中に以下の試行を行った。
ることが示唆された。
1)コントロール試行: 1分間の休息中は何も行わない。
2)ストレッチング試行: 1分間の休息のなかで20秒安静の後、
20秒間スタティック・ストレッチングを行い、その後20秒安静
にした。なおストレッチの強度については最大底屈トルクの
20%とした。ストレッチングについては足関節トルク測定器の
モーターの負荷を背屈方向にかけることで行った。
(結果)
1 2 3
各セットの1回目と20回目の力波形を抽出し、力発揮中の単
位時間当たりの面積を求めたO この積分値から1回目(積分値
ー72-
set
図. 1力積変化率の比較(固まコントロール試行を,国はストレッチング試行を表す)
*Pく0.05