臨書学習を生かした作品作り -楷書一文字で創作しよう-

臨書学習を生かした作品作り
-楷書一文字で創作しよう-
1
科 目 名
書道Ⅰ
2
単 元 名
楷書の学習(創作)
3
教 材 名
楷書一文字の書
4
単元の内容
単元の目標
と評価規準
・評価方法
①単元の目標
ア 鑑賞により、書のもつよさや美しさを感じとるとともに、用筆法・運筆法との
関係について理解を深める。
(鑑賞の能力)
イ 自分のイメージを表現するための構成の工夫と、用筆法・運筆法、用具・用材
について考えて創作する。
(芸術的な感受や表現の工夫)
②単元の目標設定の理由
・創作活動を取り入れることで、臨書を通して学習した用筆法・運筆法と書の幅広い表現力の
関係について理解を深め、意図的な制作の力を付けていくことができると考える。また、
様々な用具・用材に触れ、表現に与える効果について考える機会としたい。
③中心となる学習活動
・一字書の鑑賞を通して既に学んだ運筆法・用筆法などの内容を振り返り理解を深める。また、
プリントに記入しながら用筆法・運筆法、用具・用材などの工夫を行い、自分のイメージに
近い表現を追求していく。
④評価
・「芸術的な感受や表現の工夫」「鑑賞の能力」
評価規準
評価方法
状況Cの生徒への対応
鑑賞 ①鑑賞により、書のもつよさ
の
や美しさを感じとるととも
能力
に、用筆法・運筆法との関
係について理解を深めてい
る。
意見発表
観察(机間指導)
・拡大したもので特徴的な部
分を指し示し考えさせる。
芸術 ①自分のイメージを表現する
的な
ための構成の工夫と、用筆
感受
法・運筆法、用具・用材に
や
ついて考えて書くことがで
表現
きる。
の
工夫
プリント提出
作品提出
・生徒作品を一部黒板に貼り
参考にして考えさせる。
・大げさに表現した作品を用
意しておき、比較すること
で理解を助ける。
・生徒一人一人がテーマとする言葉の意味を深く考え、イメージをふくらませて作品創作にお
ける工夫につなげることができたと感じられた。また、臨書から学んできた用筆法・運筆法
を意識しながら取り組む生徒も見られた。生徒全体へ定着していくよう、これからも繰り返
し振り返りながら進めるとともに、技術面の向上についても細やかな指導を行っていきたい。
アドバイス ① 用筆法・運筆法について振り返る時、具体的に学習した古典名と合わせて復習することで、
及び
生徒の理解が深まる。
留意点
② 今回は、テーマを設けて楷書に絞った制作を行ったが、様々な書体を学んだ上で、年賀状な
どに干支の漢字を題材として取り入れていくと面白い作品ができる。
成果と課題
5
単元の学習概要
時間
1
各時間の目標
○鑑賞により
書のもつよ
さや美しさ
を感じとる
ことができ
る。
主な学習活動の流れと指導上の留意点
評価規準
↓
評価方法
状況Cの生徒への対応
・井上有一と上條信山の「花」を鑑賞して 書の美に対する第一 ・拡大したもので
気付いたことを発表する。
印象を大切にし、積
特徴的な部分を
*留意点
極的に意見の発表が
指し示し、考え
・既に学んだ内容を踏まえた発表となるよう、 できる。
【鑑】
させる。
指示する。
↓
・生徒の発言を受け、既に学んだ内容と関連付
意見発表
けながらまとめる。
○字形、文字
他者の意見を踏まえ
の大きさと ・「愛」をテーマにして創作する文字を決 自らの鑑賞を深める
全体構成に
める。
ことができる。 【鑑】
ついて理解 *留意点
↓
する。
・生徒のイメージがふくらむよう、身近なこと 机間指導による観察
を例にとって声を掛ける。
○自分の表現 ・運筆法・用筆法について、具体的な古典名を 文字の配置や大きさ、
意図に即し 挙げることにより、生徒が既に学んだ内容と 字形、それに伴う余白 ・生徒作品を一部
て表現の工 結び付けながら考えることができるようにす の取り方、落款の位置
黒板に貼り、参
夫をする。
る。
や大きさなどについ
考にして考えさ
・生徒が、全体構成や字形のデフォルメについ て考え、意図に基づく
せる。
てイメージしやすくするため、紙面の使い方 創造的な表現をして
や概形についての例を幾つか示す。
いる。
【工】
↓
プリント・作品の提出
2
○用具・用材 ・筆の種類、墨の濃淡、潤渇、紙質から生 筆の種類、墨の濃淡、 ・大げさに表現し
と表現の関
まれる表現の違いについて考える。
潤渇、紙質などを考え
た作品を用意し
係について *留意点
て、線質、字形、全体
ておき、比較す
理解する。 ・前時に提出された作品の一部を貼り出し、見 構成などに生かせる
ることで理解を
比べながら生徒一人一人が考えられるように よう積極的に工夫し
助ける。
○用具・用材
する。
ている。
【工】
を考えて表 ・柔毫筆など、生徒の持っていない用具につい
↓
現の工夫を
て準備しておく。
プリント・作品の提出
する。
○展示方法の ・作品の展示方法を工夫し、仕上げる。
工夫をする。*留意点
・前時の終わりに必要な材料などについては連
絡する。作品の展示例などを幾つか紹介する
ことで、生徒の工夫を引き出す。
6
第11時の学習指導案
本時の位置
11時間目(全12時間)
ア
本時の学習目標
鑑賞により、書のもつよさや美しさを感じとるとともに、用筆法・運筆法との関係につ
いて理解を深める。
(鑑賞の能力)
イ 自分のイメージを表現するための構成の工夫と、用筆法、運筆法について考えて試し書
きする。
(芸術的な感受や表現の工夫)
事前の準備
・プリントを印刷しておく。
学習内容
導 □本時の学習内容と
入
目標
5
分
展
□漢字一字作品の鑑
賞
学習活動
指導上の留意点及び評価
①必要な用具を準備する。
・下敷き・文鎮・硯・水滴
②墨をする
・始業前に用具を準備するよう促す。
・プリントの配布
③井上有一と上條信山の「花」
を鑑賞して発表する。
・配布プリントにより二つの作品を比較しながら
鑑賞させる。
開
・書き手によって、表現が大きく異なるところに注
目させる。
40
分
[予想される発表]
井上有一
・迫力がある
・力強い ・雑に見える
・蔵鋒 ・速度ゆっくり
・筆圧大きい
等
上條信山
・勢いがある
・紙からはみ出している
・速度速い
・太細の変化がある 等
□「愛」をテーマに
創作する文字を決
める。
④「愛」とは○○なもの。
[予想される発表]
・温かい ・優しい
・強い
・与える
・前時までの臨書学習を簡単に振り返り、創作にお
いて意識することをはっきりさせることで、直感
的鑑賞から分析的鑑賞へとつなげる。
目標 アに対する評価規準と評価方法
〔規準〕書の美に対する第一印象を大切にし、
積極的に意見を発表できる。 【鑑】
〔方法〕机間指導による観察・指名による発表
〔状況Cの生徒への手立て〕
・拡大したもので特徴的な部分を指し示し、考
えさせる。
・「愛」という言葉のイメージをもとに○○に当て
はまる言葉を考えさせる。
・他者の意見についてもメモを取るように指示する。
・自分のイメージを表現するための工夫について、
できるだけ具体的にプリントに記入させる。
・文字の配置と概形を決め、デフォルメさせる。
⑤当てはめた言葉を基に創作
する一文字を決める。
⑥文字の大きさ、線の太さ、
デフォルメ、用筆法・運筆
法などについて考える。
⑦半紙1/4のサイズに試し
書きする。
ま
と
め
5
分
□本時のまとめ
□次時の確認
⑧プリントと作品を一緒に提
出する。
目標 イに対する評価規準と評価方法
〔規準〕字形・余白などを考え、意図に基づく創
造的な表現をしている。
【工】
〔方法〕机間指導による観察
〔状況Cの生徒への手立て〕
・生徒作品を一部黒板に貼り、参考にして考え
させる。
<評価方法>
・提出されたプリントと作品による。
4
・
筆
・
用
筆
法
(
(
(
(
柔
筆
圧
大
遅
露
(
濃
い
・
・
並
薄
・
い
・
筆
圧
小
法
・
・
速
蔵
)
(
鋒
剛
)
)
曲
)
そ
の
他
(
・
参
考
に
す
る
書
風
(
古
典
)
・
直
)
・
字
形
3
2
表
現
の
工
夫
を
し
よ
う
1
を
基
に
創
作
す
る
一
文
字
を
決
め
よ
う
1
愛
」
・
運
筆
法
「
書
き
上
げ
た
感
想
・
墨
の
濃
さ
と
は
○
○
な
も
の
(
○
○
に
当
て
は
ま
る
言
葉
を
考
え
よ
う
)
漢
字
一
文
字
で
創
作
し
て
み
よ
う
組
番
(
)
)
)
(略)
(井
上
有
一)
(上
條
信
山)
(略)
【生徒の感想】
・愛は幸せな感じとかもあるけど、早く誰かに逢いたいとかそういったうきうきした感じも
あると思ったので、速く書いて躍動感を出しました。
・「思いやり」という言葉の優しい感じが出せるように書きました。はねを強くしないで優
しく書くことができました。
・人が笑顔になっている姿を「笑」で表現できてうれしかったです。自分の名前にもあるこ
の字を書いて改めて大切にしようと思いました。自分で考えて書くことは難しかったけれ
ど、表現したいものを工夫できたのでよかったです。
・半紙と書き心地が違ってあまり上手に書けなかったが、蔵鋒でゆったりとした線で書けた。
・思い通りに書きあげるのはとても難しかったけれど、イメージに近づくことはできたので
よかったです。
・自分がイメージしたような字が書けた。一文字書くだけでもいろんな表現の仕方でイメー
ジが変わってくるのがおもしろかった。
・初めて字形などを自分で考えながら書きました。自分の思うように書けて楽しかったです。
墨の濃さや線の太さでとても変わるんだなと改めて思いました。
・半紙で書くのよりも墨のにじみ方も違うので、難しかった。運筆の速さや力加減を意識し
て丸く書くことができました。