【教授の研究紹介】 現在私は、経済成長と失業に関係する研究に取り組んでいま 上手に制度を設計すれば、人口減少は日本にコンパクトで効率 す。とりわけ、少子高齢化・人口減少が進む日本において、ITな 的な社会をもたらしてくれるというのです。社会保障の問題を筆 どを含む技術の進歩、経済成長、若年失業のあいだにどのよう 頭に何かと厄介者扱いされる少子高齢化・人口減少ですが、案 な関係があるのかに関心があります。失業と経済成長の理論研 外良い経済状況をもたらしてくれるのかもしれません。 究は一定数ありますが、若年失業など年齢別の失業を経済成長 私の研究では、このような経済環境を念頭におき、技術進歩 と関連させた研究はあまり多くありません。以下ではこの研究の が若年失業にどう影響するかに着目しています。若年失業にこ 背景について書きたいと思います。 だわる理由は、若年労働者が失業すると、就職して身につけるは 技術進歩にともない経済が成長している とき、失業は減ると思われる方は多いでしょ う。確かに、経済成長を経済活動が活発で あることの延長としてとらえ、このように考え ることは自然に思えます。経済活動が活発に なればより多く働く人が必要になりますし、 また、将来の経済活動が活発になると人々が 予想すれば、将来の生産・販売を拡充するた め雇用が増えるからです。 しかし、反対の影響も考えられます。技術 進歩により労動生産性が向上するため必要 ずだった技能や知識を蓄積できず、社会の中 国 内で 働く人は 、仕事をめ ぐって機 械と競 争するのみ ならず、クラウドソーシング (Crowdsourcing)により 海 外の労 働 者とも一層激し く競争せざるをえなくなる可 能 性も 指 摘されるようにな りました 。労 働 市 場 の 分析 は、マクロ経済学の中でます ます重要になるでしょう。 心となって働くことが期待される将来、その経 済への貢献が、若年時に就業できたときより も少なくなってしまうかもしれないからです。 若年失業対策を考える際の政策分析に応用で きるような経済モデルを構築できればと思っ ています。 とされる労働量は少なくなり、経済は成長し たとしても失業は増えるかもしれません。オートメーション化さ れた大規模工場などを思い浮かべてみてください。経済学者の シュンペーターは1940年代に、技術進歩が失業を生み出す「創 造的破壊」という概念を用いて経済成長について研究しまし た。 二つの効果のどちらが大きいかについて理論モデルだけでは カタはつきませんが、近年は後者の影響を懸念する声が広がっ ています。遠くない将来、単純労働だけでなく、これまでは人間 み や け 経済学部国際経済学科 三宅 でなければできないと思われていた仕事までもコンピュータに (部分的にせよ)とって代わられるのではと言う人もいます。後者 し ん じ 伸治 准教授 大阪大学大学院博士後期課程修了。博士(経済学)。研究分野は、公共経済 学、 マクロ経済学、経済成長論。研究テーマは、経済成長論。主な論文に 『失業と 経済成長:若年失業と中高年失業を区別した世代重複モデルによる分析』西南 学院大学経済学論集42巻3号45-70頁など。 に関しては反対に、人口が減少するのだから、コンピュータが人 間の代わりに仕事をしてくれて丁度良いと主張する人もいます。 コンピュータが仕事を奪う 著者:新井紀子 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2010年 コンピュータによる計算の仕組みを説明した上 で、 コンピュータが苦手とする作業を提示し、 我々がどのような能力を身につけるべきかを提案 しています。後半の教育論も勉強になります。 “A S e ed of K nowled ge” 11
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