消費税再増税とアベノミクス 今後の経済財政動向等についての 点検会合 若田部昌澄 早稲田大学政治経済学術院 2014年11月17日 消費税再引き上げには反対 • 1.政策の優先順位:デフレ脱却を最重要課 題としてうたうアベノミクスとの矛盾 • 2.有効性に疑問:消費税増税によって財政 再建から遠のいている • 3.より良い代案の存在:財政再建を可能に するのは経済成長 今回の消費税:純粋増税 • 89年消費税導入 増収:6.6兆円 減収:9.2兆円(物品税廃止, 所得法人相続減税) • 97年税率引き上げ 増収:4.8兆円 減収:4.8兆円(所得・住民税減税, 社会保障給付) • 2014~15年の予定 増収:13.5兆円 減収:??兆円 3 デフレ脱却からの後退 (%、前年比) 4.0 消費者の予想インフレ率 3.0 2.9 2.4 2.0 ブレーク・イーブン・インフレ率(第16回債) 1.0 0.6 1.0 0.0 ‐1.0 ‐2.0 消費者物価指数(生鮮食 品を除く総合) ‐3.0 消費者物価指数(食料 (酒類を除く)・エネルギー を除く総合) ‐4.0 1 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 91011121 2 3 4 5 6 7 8 910 (月) 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (年) 「4⽉消費増税」で失われた⺠間消費 実質⺠間最終消費(兆円) • 概算で年間約⼗兆円 の⺠間消費低下 • 消費税率3%引上で 約7.5兆円増税 335 330 第2次安倍政権発⾜ 325 320 失われた ⺠間消費 315 310 (概算) 305 300 295 2014年9月 2014年7月 2014年5月 2014年3月 2014年1月 2013年9月 2013年7月 2013年5月 2013年3月 2013年1月 2012年11月 2012年9月 2012年7月 2012年5月 2012年3月 2012年1月 290 2013年11月 4⽉消費税率引き上げ (⽇経センター⽉次GDP[年率換算]の実質⺠間最終消費⽀出[⽔準、季節調整済]より作成) 振り出しに戻った?アベノミクス 在庫循環図(鉱工業,前年同月比) 6 意図せざる在庫増 2012/12 ‐15 在庫調整局面 在庫 4 2014/9 2 0 ‐10 ‐5 0 5 10 ‐2 2013/3 2014/1 ‐4 意図せざる在庫減少 ‐6 出荷 15 増税の前提:中期財政フレーム • 2015 年度の基礎的財政収支(PB)の赤字の 対GDP比の2010年度からの半減目標(6. 6%から3.3%へ) • 2020年度のPBの黒字化 • その前提:名目成長率 • 2014年度:3.3% • 2015年度:2.8% 中長期の経済財政に関する試算 (平成26年7月25日)実質成長率 名目成長率 現状:2014年度3.3%達成は難しい IMF、エコノミストの実質GDP成長率見通し 単位:% 14年7~9月期 n/a 2014 0.9 2015 0.8 大和総研 2.8 0.3 1.4 ニッセイ基礎研究所 2.4 0.3 1.1 みずほ総合研究所 2.3 0.2 1.5 バークレイズ証券 2.2 0.2 1.6 日本総合研究所 三菱UFJモルガン・スタンレー 証券 三菱総合研究所 2.2 0.1 1.1 2.1 0.5 1.8 2.0 0.1 1.2 日本経済研究センター 2.0 0.2 1.2 BNPパリバ証券 1.6 ‐0.3 0.7 野村証券金融経済研究所 1.4 0.2 1.8 第一生命経済研究所 1.0 ‐0.2 1.1 SMBC日興証券 1.0 0.1 1.3 1.92 0.2 1.3 IMF見通し 平均 出典:IMF、日本経済新聞2014年11月1日 経済成長⇒財政再建 相関係数:0.84 名目GDP成 長率 対GDP比プライマリーバランスと名目成長率 (日本) 10 対GDP比プライマ リーバランス 4 名目GDP成長率(前年) 8 対GDP比プライマリーバランス 2 6 0 4 ‐2 2 ‐4 0 ‐6 ‐2 ‐8 ‐4 ‐10 ‐12 ‐6 出典:IMF 、2013年対GDP比PBはIMF推計値、 経済成長⇒債務残高対GDP比減少 基礎的財政収支対GDP比国際 比較 純債務残高対GDP比国際比較 アメリカでも同様:相関係数0.79 名目GDP成長 率 対GDP比プライマリーバランスと名目成長率 (アメリカ) 7 対GDP比プライマ リーバランス 4 名目GDP 成長率(前年) 6 2 対GDP比プライマリーバランス 5 0 4 ‐2 3 ‐4 2 ‐6 1 ‐8 0 2001 2002 2003 2004 ‐1 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 ‐10 ‐2 ‐12 ‐3 ‐14 出典:IMF 、2013年対GDP比PBはIMF推計値、 名目成長率増加⇒税収増加 15% 1987 税収(地方税含)伸び率 10% 2005 1990 1986 5% 1991 0% ‐6% ‐4% ‐2% 0% 2% ‐5% 2002 4% 6% 8% 10% 1994 1992 ‐10% 2009 y = 1.4719x ‐ 0.0136 R² = 0.6964 国民経済計算・総務省資料より ‐15% 名目成長率 日本だけ低い名目成長率 何をすべきか?1 アベノミクスの再起動 • ①日銀の追加緩和 • ②再増税延期⇒追加経済対策 – 最善策:5%への消費税減税 • イギリス、カナダなど前例あり – 次善策:低所得者層への給付付税額控除、給付金、 社会保険料の一時的徴収免除、ガソリン税減税 – 軽減税率には反対 – 財政再建計画の確実な実行:名目3%、実質2%成 長率を2年程度達成するまで増税延期 • ③実効性のある成長政策の実行 – 競争政策の推進、TPP参加交渉の妥結 何をすべきか?2 アベノミクスの改良・ヴァージョン・アップ • ①政府と日銀の「政策協定」 – 名目成長率3-4%、実質成長率2%実現に法的根 拠必要 • ②税制改革 – 所得・相続税課税ベース拡充、法人税減税、インボイ スなど徴税インフラの整備 • ③所得再分配政策の強化<アベノミクス第四の 矢> – 社会保障改革 – 給付付税額控除 予定引き上げ論について • ①経済持ち直しの可能性? – 次回も増税⇒景気落ち込みを繰り返す恐れ • ②国際公約? – 安倍首相自ら否定(10月30日衆院予算委員会) • ③先送りで長期金利急騰・国債信認低下? – 現状で長期金利、CDS保証料率ともに安定 • ④社会保障財源として必要? – 経済成長こそ恒久財源
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