障害福祉サービスの利用者を中心 とする 新たな福祉コ

2003年10月13日(月)
第51回日本社会福祉学会 地域福祉④
障害福祉サービスの利用者を中心とする
新たな福祉コミュニティの形成のために
セルフアドボカシーとエンパワメントのための
コミュニティワーク
東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程
岡部耕典 (5461)
[email protected]
1
構成
問題意識
米国における先行実践と研究
日本における2つの実践プロジェクト
まとめ
2
セルフアドボカシーとエンパワメントのため
のコミュニティワーク
3
セルフアドボカシーとエンパワメントのためのコミュニティワーク
障害福祉におけるコンシューマリズムとアドボカシーの実現に向けて
福祉
利用者本位
福祉サービスの供給におい
て、考えや行動の基準を利
用者に置くということ
運動
当事者主体
障害をもつその人が、自分自
身の生活の在り方を決定する
権利を持っているということ
利用者
その人
福祉サービス
生活全体
規制
権利
利用者=運動主体の形成
4
セルフアドボカシーとエンパワメントのためのコミュニティワーク
コンシューマリズム支援のための現行システム
選択・契約のための情報
判断能力が弱い利用者のための権利擁護事業
苦情解決のしくみ
利用相談事業
加えて、もとめられるのは・・・
コンシューマリズムを行使しうる
「社会福祉サービスの利用主体の形成」(北野誠一)
5
セルフアドボカシーとエンパワメントのためのコミュニティワーク
措置制度と集団処遇の社会福祉
パターナリズム
社会福祉サービスの利用主体の形成のためには・・
セルフアドボカシーとエンパワメント
「闘うアドボカシー」(平田厚)
制度改革・資源創出
運動
「支えるアドボカシー」
制度理解・資源活用
福祉
6
Developing a Curriculum to Help People with Disabilities
Take charge Against Abuse,Neglect and Financial Exploitation
障害をもった人の援助プログラム
~虐待、放置、金銭搾取に立ち向かうために~
1997年8月~2000年7月
イリノイ州立大学シカゴ校
障害と人間発達学部虐待と障害イニシアティブ研究チーム
主任研究員 ナンシー・フィッツシモンズ=コバ
Nancy Fitzsimons=Cova
7
Take charge Against Abuse,Neglect and Financial Exploitation
障害をもった人の援助プログラム~虐待、放置、金銭搾取に立ち向かうために~
プロジェクトのゴール
コミュニティにおいて、障害をもった人およびその家族、およびその支
援者に対し、虐待、放置、金銭搾取に対抗する知識、技能、リソースを
提供することにより、障害をもつ人の権利の主張をエンパワメントする
セルフアドボカシーとエンパワメントのためのプロジェクト
8
Take charge Against Abuse,Neglect and Financial Exploitation
障害をもった人の援助プログラム~虐待、放置、金銭搾取に立ち向かうために~
プロジェクトの特徴
大学のプロジェクトをコミュニティに根ざした実践として行う
主要な地域の関係者とのパートナーシップの実現
障害の種別を超えたコラボレーションの実現
CIL等の地域団体と大学の共催
障害当事者を中心とするコミュニティ・インストラクター
多彩な立場の参加者(障害当事者・福祉関係者・家族・一般住民)
パワーポイントおよびロールプレイの多用による視覚的・参加体験型演習
9
障がい者虐待防止ワークショップ
2001年8月~2003年3月
全国自立生活センター協議会(JIL)
人権委員会
日本財団助成事業
10
障がい者虐待防止ワークショップ
11
障がい者虐待防止ワークショップ
ワークショップの構成
ステップ 1
虐待とは、何か
身体的虐待・言葉による虐待・性的虐待・放置・金銭搾取の5つの逆九
対について、パワーポイントを使った説明とロールプレイでの実演をふ
まえ、参加者のフィードバックを確認しながら理解を図る
ステップ 2
なぜ、虐待に立ち向
かえないのか
同じくパワーポイントとロールプレイを活用し虐待に立ち向かうことを妨
げる2つのバリアの構造を理解する
外的バリア(外からの圧力):物理的なバリア・無知によるバリア・偏見
によるバリア・悪意によるバリア
内的バリア(自分の心の壁):加害者の支配・しかえしの恐れ・逆亭の
否定と自己責任・あきらめと無力感)
ステップ 3
さあ、やってみよう
自分の力を信じて
参加者が小グループに分かれて実際にロールプレイを行い、どんな気
持ちを感じたか、どんな圧力や気持ちに気が付いたのか、エンパワメ
ントとはなにか、社会資源を役立てるとはどういうことか、を体験的に
学ぶ
ステップ 4
こうすれば立ち向か
えるよ
虐待に立ち向かう「力の三要素」として、「知識・仲間・勇気」をあげ、逆
亭に立ち向かうための制度や地域資源を知り、一緒に立ち向かう仲間
から勇気を貰って、自己信頼を取り戻し、虐待に立ち向かうことについ
て整理し、まとめとする
12
障がい者虐待防止ワークショップ
虐待防止ワークショップの開催
期
間
ワークショップ名
種
別
場
所
2002年 9月
長浜ワークショップ
CIL湖北(トライアル)
滋賀県
2002年10月
秋田ワークショップ
全国障害者市民フォーラムin 秋田
秋田県
2002年 2月
大阪ワークショップ
ピア大阪
大阪府
2002年 3月
文京ワークショップ
スタジオIL文京
東京区部
2002年10月
熊本ワークショップ
ピープルファースト熊本大会
熊本県
2002年11月
八尾ワークショップ
CIL八尾
大阪府
2003年11月
高松ワークショップ
自立生活センター高松
愛媛県
2003年 1月
小平ワークショップ
自立生活センター小平
東京都多摩
2003年 2月
静岡ワークショップ
アシストMIL
静岡県
2003年 3月
宮城ワークショップ
CILたすけっとクラブ
宮城県
13
障がい者虐待防止ワークショップ
虐待防止ワークショップの意義
•
•
•
障害当事者が中心となり、当事者をエンパワメントする活動であること
障害の種別と障害に関わる立場を超えた活動であること
地域を育て、地域と他の地域をネットワークする活動であること
虐待防止ワークショップの今後の課題
•
•
•
継続して取り組む人材・地域基盤の育成と費用の調達
プログラム内容の更なる検討 (知的障害者・継続的参加者のために)
虐待防止だけでない広範な権利擁護活動とどのように結び付けてゆくか
14
あどぼ三鷹武蔵野
プロジェクト
2002年4月~2003年3月
心のバリアフリー市民会議
社会福祉・医療事業団(高齢者・障害福祉基金)助成事業
15
あどぼ三鷹武蔵野プロジェクト
事業目的
「平成15年度に予定されている障害福祉サー
ビスの支援費制度への移行を控え・・(中略)・・
多様なネットワークと市民としての立場性に基づ
き当事者のアクセシビリティの高い利用支援の
サービスを、セミナー、ワークショップ、個別相談
の三形態(チャンネル)で提供し、東京武蔵野・
三鷹地域のサービス利用支援を行うことにより、
障害当事者主体のネットワークおよび恒久的な
サービス利用支援システム構築のための実践
研究を行うために、当事業を計画する。」
(事業計画書より)
16
あどぼ三鷹武蔵野プロジェクト
あどぼ三鷹武蔵野のサポート
あどぼ相談 (週1日)
窓口等への付添支援、生活支援センターやピ
ア・カウンセラーの紹介もします
あどぼセミナー (年2回)
単なる制度の説明に留まらず、利用者の権利や
使いこなすためのしくみなどについてわかりやす
く説明します。
あどぼワークショップ (年2回)
あたりまえに地域で暮らし、サービスを使いこな
す勇気をもらうワークショップ
あどぼ会 (月1回)
様々な立場の人が参加する福祉サービスや支
援ということをめぐっての相互勉強会
17
あどぼ三鷹武蔵野プロジェクト
あどぼ三鷹武蔵野プロジェクトの実績
セミナーとワークショップ
日程
参加人数
第1回目あどぼ セミナー
02年
7月27日
第1回目あどぼ ワークショップ
02年
9月 7日・8日
第2回目あどぼ セミナー
02年 12月 8日
68名
第2回目あどぼ ワークショップ
02年
42名
3月 1日・2日
115名
57名
個別相談と連絡調整予備会議(あどぼ会)
日程
参加人数
サービス利用相談
延べ46日
延べ10件(平均2.2・最小0・細大4)
ミニセミナー
計12回
延べ81名(平均8.7・最小5・最大12)
18
あどぼ三鷹武蔵野プロジェクト
あどぼ三鷹武蔵野プロジェクトから得られたもの
・ サービス利用と虐待防止(差別禁止)の2つの地域生活権利擁護の対象化
・ 市民の立場(障害の種別と立場を超えて)
・ エンパワメント・情報提供・個別支援の融合
あどぼ三鷹プロジェクトにおいて残された課題
・ 地域行政・福祉関係者との連携
・ 重度知的障害当事者への対応
・ 「親の会」をはじめとする既成の地域活動団体の問題
19
障害福祉サービスの利用者を中心とする
新たな福祉コミュニティの形成のために
20
障害福祉サービスの利用者を中心とする
新たな福祉コミュニティの形成のために
障害福祉におけるコンシューマリズムの実現のためには、サービスの
利用者・障害当事者個人の権利主体化とエンパワメントを通じた「障害
福祉サービスの利用主体の形成」が必要である。
その手段としては、米国での先行研究の成果を踏まえ、日本の実情に応じ
たカスタマイズを行うことで、セルフ・アドボカシーとエンパワメントのための
ワークショップという技法は、充分に有効であることが確認された。
しかし、形成された利用主体が維持されるためには、それを支える「新た
なネットワーク作りと福祉コミュニティの形成」が重要である。
それは、ワークショップの開催とプログラムの工夫だけでは、実現する
ことはできなかった。
21
障害福祉サービスの利用者を中心とする
新たな福祉コミュニティの形成のために
当事者主体のネットワーキング : アライアンスの結成
権利擁護とサービス供給のためのアライアンス
組織の垣根を超えた連合
関係機関の代表が特定のコミュニティの課題に対して共同して取り
組んで いくことを合意する
それぞれの関心を関連づけて、共通のゴールを明らかにする
自立・自律する地域主体の形成
当事者主体で 第三者性が担保されている 多様な主体
闘うアドボカシー
22