腎不全患者治療用アミノ酸製剤の開発 静岡県立大学 食品栄養科学部 臨床栄養学 熊谷 裕通 味の素㈱ 赤池 信英 ㈱カネカ 藤井 健志 [研究内容] 腎不全患者において、種々のストレスがたんぱくエネルギー栄養障害などの合併症の発症に強く関わってい ることが知られている。たんぱくエネルギー栄養障害は、患者の生命予後に関係するので、早期に発見し加療 することが必要である。我々は、血液透析を行っている末期腎不全患者のアミノ酸代謝とその異常に着目し、腎 不全患者治療用アミノ酸製剤の開発を試みた。研究方法は、維持血液透析患者の透析前後の血漿中アミノ酸 濃度を測定するとともに、透析排液中の回収しアミノ酸濃度を測定して、アミノ酸代謝についての考察を行った。 透析患者では非腎不全患者に比べいずれの血中アミノ酸も有意に低値(p<0.01)であった。透析前後の血中 濃度平均減少率は総アミノ酸 36.1%、必須アミノ酸 34.1%、非必須アミノ酸 37.2%であったのに、一部のアミノ 酸の減少率は7∼15%と有意に低値であった(図1AとB)。しかし、これらの一部のアミノ酸の透析排液中への 喪失量は、血漿濃度が同等の他のアミノ酸と同程度かより大きかった(図2AとB)。このことから、これらのアミノ 酸は、透析排液への喪失量に比し透析前後の血中濃度減少率が小さく、透析中にある身体構成成分の異化が 亢進していることを示唆している可能性があると思われた。これらの結果を元に、新しい腎不全患者治療用アミノ 酸製剤の処方を開発し、臨床応用を目指している。 ※ ※※ ※ % 60 NEAA ※※ ※ 36.1 50 34.1 ※ : p<0.0001 ※ ※ : p<0.05 37.2 23.0 g 0.6 0.5 40 7.2 30 EAA 0.4 0.3 20 0.2 10 0.1 0 AA EAA NEAA A 図 1.透析前後血漿アミノ酸減少率 B 0 a b cd ef g hi j k ABC 図 2.透析中アミノ酸喪失量
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