実験のてびき

【はじめに】
人間の体は,さまざまなタンパク質からできています。タンパク質はひとつひとつ
の細胞の中にある DNA(設計図)に基づいて,アミノ酸からつくられます。つまり,
私たち人間にとってこのアミノ酸は最も基本的な要素であり,とても大切なものなの
です。
アミノ酸は「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」に分けることができます。「必須
アミノ酸」は人間の体の中で合成することができないので,外部から食べ物によって
摂取しなければならないものです。「非必須アミノ酸」は体内で合成することができま
すが,人間の体にとって良い効果をもたらすものも多く,こちらもとても重要です。
これらのアミノ酸は,通常の状態では『結晶』の形
で存在しています。皆さんは雪の結晶やミョウバンの
結晶を見たことがあるかもしれませんが,実はこのア
ミノ酸も美しい結晶を作ることがあります。今回は「非
必須アミノ酸」の一つである『アスパラギン』の結晶
を作ってみましょう。また,『偏光(へんこう)顕微鏡』
というものを使って出来上がった結晶を観察してみま
しょう。
5 mm
アスパラギンの結晶
【実験の手順】
1. はかりを使ってアスパラギンを 10g はかる。
2. アスパラギンをビーカーに入れた 80mL の純水に溶かす。
3. 攪拌子(かくはんし)を入れてホットスターラーにセットする。
4. 30 分間,水溶液をかき混ぜながら温める。
5. 完全にアスパラギンが溶けたら,室温で温度を下げる。
6. 結晶が出来上がったら,ろ紙でろ過して,乾燥させる。
7. 偏光顕微鏡で観察する。
*出来上がった結晶はお家に持ち帰ってもらっても結構です。
【考えてみよう!】
1. アスパラギンの結晶の形はどのようになっているのかな?
アスパラギンの結晶がきれいにできると,柱状の大きな結晶になります。これは,
よく見なれた雪の結晶の形とは似ても似つきませんね。どうしてでしょうか?
2. ものが「溶ける」というのはどういうことかな?
アスパラギンを入れた水を温めていくと,水の中で白く残っていたアスパラギンが
のけて無くなっていくように見えます。しかし実際は,決してアスパラギンが無く
なっているのではありません。「溶ける」というのは一体どういうことでしょう
か?
3. 偏光顕微鏡で色が付いて見えるのはなぜだろう?
普通の顕微鏡(光学顕微鏡)とはちょっと違う偏
光顕微鏡。一体どういう仕組みなのでしょうか?
きれいに色が付いて見えるものと見えないものが
あります。さらに,色もそれぞれ違って見えます。
どうしてでしょうか?
プロリン(アミノ酸の一種)
の偏光顕微鏡像
4. この他に結晶をつくる方法はないかな?
今回の実験では,水の温度によってアスパラギンの『溶解度』というものに差が出
ることを利用して結晶をつくっています。このような方法の他に,結晶をつくるこ
とができる方法はあるでしょうか?
【用意するもの】
アスパラギンや使う器具はこちらで用意しています。皆さんは実験ができるように汚
れても大丈夫な服装と靴で来てください。
【皆さんへ】
結晶は私たちの生活の中に深く関わっているにもかかわらず,なかなか普段接するこ
とが無いかもしれません。この機会にぜひ,美しい結晶の世界に触れてみてください。
『百聞は一見に如かず』
皆さんには,積極的に科学の実験にチャレンジしてもらいたいと思います。「自分の目
で確かめて,納得する」ということを,今後もぜひ続けていってください。