継続的な中高生スタッフの育成を伴う科学教室の開催 ノートルダム清心学園 清心中学校・清心女子高等学校 山田直史 2 『大人のためのわくわく科学塾』対象:中学生以上 ⑤11月10日「抗酸化食品を科学する」 前半は、抗酸化食品が注目されるようになった社会背景を勉強した。後半は、 「DPPHラジカル捕捉活性法」で飲 料水の抗酸化活性の強さを測定した。普段、高校では使わないマイクロピペットや分光光度計に触れることも重要な 勉強であった。納得のいくまで自主的に繰り返し、技術を身につけた。 ⑥3月16日「化粧品を科学する」 前半では、化粧品ができるまでとメラニンのでき方について勉強した。メラニン生成と美白成分効果の実験では、 ● 研究・実践活動のねらいと期待する効果 参加者がお互いに意見を交換したり、自発的に追実験を行ったりと、まさに科学研究の現場がそこで展開されて、大 ₁ 小学生を対象とした科学教室は草の根的な活動を通して、地域の子どもたちや保護者の科学的好奇心の育成に役 変驚いた。後半は肌と乳化について勉強をし、化粧水と保湿クリーム作りをおこなった。 立っている。しかし、中学生になると科学教室への参加者は劇的に減ると共に、科学そのものへの好奇心の低下が問 題となっている。過去に岡山県立児童会館において年₆回の科学教室( 「わくわく科学教室」 )を実施し、高校生や大 ● 得られた成果及び評価 学生が実験スタッフとして参加していた。平成23年₃月に児童会館が閉鎖された後の₂年間は科学教室を実施できず、 ※毎回スタッフとして₃名の高校生が参加していた。 その間に生徒対象に行ったアンケートでは高校生の科学教室に対する意識が大幅に低下した。この結果から、身の回 りに科学教室に主体的に参加できる環境が、科学教室を身近にさせる効果が高いと考えた。本研究では、本校中高生 対象に実験スタッフを募集し、定期的な科学教室のスタッフ活動を体験しながら、生徒自身が科学教室の指導員とし その生徒によって③では説明が行われた。 [高校生の主な動き] ①高校生スタッフは、溶剤をつけたり、針金での型 の作成を手伝った。後半は、スタッフも参加者と て活動できるように、教材開発などの指導を行う。 ₂ 活動を通して、本校生徒に限らず、広く生徒スタッフの育成にも携わる予定である。スタッフという関わり方から 一緒に、割れにくいシャボン玉作りを楽しんだ。 科学教室に足を運び、中高生の科学的知識の育成とともに、地域の科学の裾野を広げるための主体者として関わって ②スタッフは、ろうそく作りのほとんどをサポート し、片付けでは「どうやったらクレヨンがきれい いく、生涯一貫した科学教育活動の構築が期待できる。 2013年₄月に開館した岡山県生涯学習センター「人と科学の未来館サイピア」で『わくわく科学塾』として開催した。 また、当初は実験スタッフとして科学教室への参加をねらったが、中学生以上に生涯学習の一環としての科学教室への 参加の機会を作るため『大人のためのわくわく科学塾』を開講した。 1 『わくわく科学塾』対象:小学3年生〜6年生 ①シャボン玉 ②ろうそく 高校 大学 一般 3 2 小学 保護者 中高 15 7 大学 一般 3 5 16 7 ③光 5 3 8 6 1 1 ④味覚 2 1 9 8 1 1 2 2 1 14 ⑤抗酸化食品 ⑥化粧品 1 3 1 1 作業時間のペースを考えて、工夫をして説明をした。 ④食材の準備を人数分そろえるのが大変であったが、スタッフが 協力し合って行った。味覚修飾植物の体験はスタッフも行った。 ⑤五大栄養素に続く第六の栄養素を「食物繊維」と答えられた高 校生には、日頃からの関心の高さがうかがえた。始めて触れる ①9月22日「シャボン玉を科学する」 先端の実験器具にもすぐに慣れて、ハイレベルな実験にも予想 前半は「シャボン膜は最も小さい面積になるように作られる」という『極小曲面』に挑戦した。いろいろな形を針 金で作り、乾燥すると固まる溶剤につけて、それぞれの極小曲面を作った。後半は、『割れにくいシャボン玉作り』 に挑戦した。 を立てながら取り組んでいた。 ⑥スタッフ参加していた高校生・大学生も先端器具に興味を持っ て、参加者と一緒に実験に取り組んでいた。 ②12月22日「ろうそくを科学する」 ※スタッフという形で参加した学生も、科学教室を通して参加者と一緒に学習し実験に参加をする姿が見られた。ま 前半は、「ろうそくが明るいのはなぜか」。液体窒素を用いて、ガスバーナーの炎と比較し、炎中に含まれている成 分について実験した。後半は、「手作りキャンドル作り」 。自分の好きな色をクレヨンを溶かして着色して作った。た だ、クレヨンが散ってしまい、床や机の掃除が大変だった。 た、サイピアが募集するボランティアスタッフと一緒に活動することで、大学生や社会人の方々と交流ができたる 機会にもなった。 ※グラフは、実験スタッフに参加しやすい傾向にある課題研究活動に取り組む高₂(14〜25名)に対するアンケート ③1月12日「光を科学する」 結果である。 「大変そう思う」 「まあまあそう思う」 「どちらともいえない」 「あまり思わない」「全くそう思わない」 前半は、 「光の三原色」と「色の三原色」について。『光の をそれぞれ、 「1.0」 、 「0.5」 、 「0」 、 「- 0.5」 、 「- 1.0」として、割合に乗算し集計した。本人の参加がなくても、周囲に 足し算』 『光の引き算』を実際にLEDライトを使って学習し 参加する生徒がいると実験スタッフに対する評価が高くなった。 た。後半は、人間の目の見え方について。「ベンハムのコマ」 ● 残された課題とその解決への展望 を作って、ヒトの体の不完全さについて体験した。赤色を感 中高生が実験スタッフとして自主的に名乗りを上げるまでには、学内で科学教室を体験するなど、もう少し科学教室 じる視細胞が疲れやすいことを利用して「残像」を見る実験 自体を身近なものにしていかなければいけない。 では、驚きの声があがった。 ④2月9日「味覚を科学する」 講座参加者が、30名近い参加数であった₃年前と比べて大幅に減少している。これは全国的な傾向だが、「小学中高 学年」から「小学低学年以下+保護者」という参加者層へと変化している(2013全国科ボ研大会にて)。講座内容の検 味を感じる仕組みや、味覚障害について学習しながら、甘 ベンハムのコマを参加者・保護者・スタッフが一緒に作成 果汁をおかわりする子どもたちの姿がこの講座の特徴ですが、今回もレモンが大人気でした。 68 中学 参加者 ③ベンハムのコマの作り方は、高校生が説明をした。説明時間と 事前の調査で、参加者は高校よりも科学館等の公共施設での科学教室の方が参加しやすいという結果を得ていたため、 る「ミラクルフルーツ」を実際に体験した。酸っぱいレモン スタッフ に落ちるか」について検討する姿が見られた。 ● 研究・実践活動の内容と方法 さを感じなくなる「ギムネマ」と、酸っぱいものが甘く感じ 参加者 証とともに、中高学年を科学教室に呼び戻す取り組みが必要である。 (執筆者:山田直史) <連絡先> 清心女子高等学校 (山田) (電話:086-462-1661) 子どもたちの学力向上を図る研究・実践活動 69
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