13の一人握り - タテ書き小説ネット

13の一人握り
舂无 ?春 とたじま はるか
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
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はるか
じゆんじ
くあ
水?︽こくう みずな︾
ます。小説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。
︻小説タイトル︼
13の一人握り
︻Nコード︼
とたじま
N1287BP
?春
︻作者名︼
舂无
︻あらすじ︼
世間では、嫌われ放題のボク、怙空
は高校2年になった。幼馴染みで、彼女でもある純遊寺 久に支え
られながら、なんとか、明るく生きてきた。
突然、ある日、マッドハッター⋮⋮いかれ帽子屋を名乗る女性か
ら、ボクがこれから13人のヒロイン達と出会い、恋愛をし、その
中から一人を選ばないといけないとボクに告げられる。
その日を堺に、奇妙な恋愛が始まってしまったのだ。
1
水?は⋮⋮ある日、幼馴染の久に突然、告白さ
くあ
あまりにも、女々しい外見、なよなよした性格からモテナイ高
︵改定前あらすじ︶
校2年、僕、怙空
れ、人生始めての彼女が出来たんだ⋮⋮! ⋮⋮でも、それはちょっとした事件の始まりでもあったんだ。
﹁少年少女は迷う時間が必要なんだ﹂
2
チャンス1!!﹁始めての彼女﹂
サクラがピンクと、白色が混ざった色で満開となる、高校2年、
新校生の入学式の日⋮⋮。
何の変哲もない、僕の平凡な人生に⋮⋮突如、桜咲く。
下駄箱にあった、一つのラブレター⋮⋮それは、間違いなく、僕
宛に書かれた物。
校門近くの大きな桜の木の下。そこに彼女はいた。
﹁私と⋮⋮付き合ってくださいッ!﹂
僕は、あまりにも予想のできなかった、出来事に拍子が抜けてし
くあ
まって。ただ、呆然と立っているだけで、1秒、2秒が過ぎていっ
てしまった。
じゆん
相手は幼なじみの、純遊 久⋮⋮だった。
﹁え⋮⋮あ⋮⋮えーと⋮⋮﹂
﹁ど、どう、かな⋮⋮ミズナ⋮⋮?﹂
くあ
そういえば、今日の久は確かに少し、違った。いつもみたいなボ
サボサな適当にセットされた黒髪のツインテールではなく、ちゃん
と、セットされて女の子らしくなってた。
くあ
信じられないよ⋮⋮。なんで、僕なんかが⋮⋮? 僕みたいな弱
々しい奴じゃなくて、久はもっと勉強ができて、運動もできて、頼
3
りがいのある優しい男性が好きだと思ったのに⋮⋮。
急に心臓が高まってきたよぅ⋮⋮。
くあ
それか、今日はエイプリルフールで、この告白はモテない僕に対
するからかい⋮⋮? うぅん、久はそんなことしないよね⋮⋮。
﹁ぼ、僕なんかで本当にぃ⋮⋮いいの⋮⋮?﹂
くあ
もしも、僕なんかと付き合って他の女子に久が他のケバイ衣装を
くあ
している不良なんかにいじめられたら⋮⋮。
その刹那、久が、目をギラッと、僕に向けて口をとがらせて。
はっきりして
﹁いいから、こうやって告白してるのでしょ!!! 私が聞いてる
のは、私と付き合いたいか、付き合いたくないか!
よ!﹂
ふぇぇ⋮⋮怒られちゃった⋮⋮。
﹁ご、ごめん⋮⋮﹂
﹁もう! なんか、ドキドキした私がバカだったよ! なんで、ミ
ズナなんかを好きになったのよ!﹂
そんな、恐そうな顔されたって⋮⋮僕は、その恋愛小説みたいな
男の子じゃないし⋮⋮。イケメンでもないから⋮⋮ぅぅ⋮⋮恐いよ
ぉ⋮⋮。
﹁さぁ、どっちなの!﹂
﹁ふ⋮⋮ふぇぇぇ⋮⋮⋮⋮﹂
4
別に僕はいいけど⋮⋮ぅぅ⋮⋮始めてだから、なんだかいいにく
いよぉ⋮⋮。
﹁もう! 早く決めなさいよ! そういう、ミズナのうじうじして
いる所は大嫌いっなのよ!﹂
くあ
久が僕の肩を持って、ぶんぶん前後にゆらして。
あ、あ、あ、揺らさないでぇ⋮⋮。
﹁うぅ⋮⋮ごめんなさい⋮⋮つきあいますぅ、ぅ、ぅ、う、う、う、
う、う、うぅ⋮⋮⋮⋮﹂
くあ
﹁よし!﹂
久は、頬を赤くしながら、僕の肩を放した。
﹁やった! ミズナGET!﹂
そして、大きくにっこり、笑って、ガッツポーズする。
︱︱急に離さないでぇええええええ⋮⋮。
くあ
久よりも小さい僕の体は宙を舞う。あぁ、また、いつものよう
に頭を打つんだ⋮⋮。
ーーゴチーン!
頭に振動が伝わり、痛みが走る。男の子なら、泣いちゃいけな
いんだけど⋮⋮イケメンな男性なら、かっこよく流すんだけれども。
僕は涙をこらえることは出来なくて。
5
﹁うぇぇ⋮⋮いたぁいよぉ⋮⋮⋮⋮﹂
﹁ちょ、あんたなんで、泣いてるのよ!?
ったのね﹂
くあ
くあ
⋮⋮あぁ、また頭をう
そう言って、久は黙ってハンカチを僕に手渡す。
くあ
﹁ひぐっ⋮⋮ひぐっ⋮⋮﹂
僕は久からもらったハンカチで涙を拭いて。
くあ
うぅ⋮⋮だらしないよぉ⋮⋮⋮⋮。これじゃあ、まるで久が僕の
彼氏で、僕が久の彼女じゃないかぁ⋮⋮⋮⋮。
﹁それと、ミズナ?﹂
﹁ふぇ?﹂
くあ
突然、久の目つきが変わって、恐くなった。
どうしたのだろう⋮⋮ぁ。 もしかして、女々しい僕が嫌いにな
くあ
ったのかな⋮⋮﹁やっぱり、あなたとは付き合うのはやめたい﹂み
急にどうして⋮⋮?﹂
たいな⋮⋮。そりゃ、そうだよね⋮⋮。こんなに強気な久の恋人が
僕って言うのも変だし⋮⋮。
﹁今度、デートで、遊園地にいかない?﹂
﹁ふぇ、ふぇーとぉ⋮⋮? 遊園地⋮⋮?
私達は恋人!
デートなん
いや、でも、あれはデートじゃなくて⋮⋮連
急にどうしたんだろ⋮⋮確かに、高校生までは二人でよく、一
緒に行ったけ⋮⋮?
ミズナ、何言ってるの?
行というか⋮⋮。
﹁⋮⋮は?
か、行くのは当たり前でしょ!﹂
6
﹁いやぁ⋮⋮それは⋮⋮ぅぅ⋮⋮どうしよぅかなぁ⋮⋮﹂
くあ
久は、おそらく、昔みたいに⋮⋮僕の苦手なジェットコース
くあ
ターとか乗らせて僕が気絶するのを見て、楽しみたいだけ⋮⋮?
でも、もしかしたら、久のことだ。いつも見たいに、︻今日の目標︼
に、︻ミズナに告白して、さっそく、デートにさそう!︼などと⋮
⋮計画して、言ってるのかも?
﹁ぅ⋮⋮いいよぉ⋮⋮明日の日曜日でいいかな⋮⋮?﹂
いいけど、ミズナにしては、決断早いね﹂
謎の空白が空く。
﹁⋮⋮??
くあ
久は驚いて、不思議そうに首を曲げる。
ひどいよぉ⋮⋮高校もクラス同じだったのに⋮⋮。僕だって、
女々しい自分を変える為に、高校生からいろいろと⋮⋮トレーニン
グしてるんだよぉ⋮⋮。
くあ
⋮⋮じゃあね﹂
私は部活があるから、また、
久は銀色の腕時計を見て、また、驚いて、後ろを振り向いて。
もう、こんな時間⋮⋮!?
時間遅れたら、処刑するよ!!
﹁あぁ!
明日!
!?
くあ
突如、顔が青ざめて⋮⋮久に処刑︽女装︾させられ、街を歩い
た時の自分の姿を思い出す。
ふぇぇ⋮⋮あの処刑は辞めて欲しいよぉ⋮⋮。もう⋮⋮⋮⋮。
7
部活、頑張ってね!﹂
よし。絶対に、遅れないように、5時間前には行こう⋮⋮。
﹁うん。また、明日!
くあ
そういうと、久は校舎の方に急いで走り出した。
僕は笑顔でその後を見送る。
﹁⋮⋮こけないかな﹂
ーーーーーーーーーーーーーーー︻屋上︼
ーーカチャ
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
巨乳の黒縁眼鏡を書けた、文系少女が屋上で、先ほどの彼らの
やり取りを望遠鏡で見ていた。少女は外見から、想像できないほど、
イライラしていた。
そういうと、少女は屋上を去っていた。
﹁ミズナ君は、渡さない⋮⋮!﹂
8
チャンス1!!﹁始めての彼女﹂︵後書き︶
5/16 送れない↓遅れない に変更。ありがとうございました
m︵︳︳︶m
9
チャンス2!!﹁始めてのデート﹂︵前書き︶
誤字、質問があればおねがいしますm︵︳︳︶m
10
チャンス2!!﹁始めてのデート﹂
くあ
今日は約束の日曜日。時間になっても、待ち合わせの噴水には、
久はまだ、来てなかった。
﹁ぅ⋮⋮まだかなぁ⋮⋮﹂
くあ
おかしいな⋮⋮久はいつも、待ちあわせするとき20分前だった
り、随分前に先に来ていたのに⋮⋮。風邪でも引いたのかな⋮⋮?
でも、今日の朝、電話したときは元気だったし⋮⋮。
そんなことを考えてると、どこからか誰かが、走っている音が聞
こえてきて。
﹁お待たせ⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮﹂
﹁うぅん、いいよ、別に︱︱ッ!?﹂
振り向くと、黒い、長めのツインテールの絶世の美女がいた、化
くあ
粧は薄いだろう。今時なギャルがするような、ケバイ化粧とは裏腹
のすっぴんと変わらない。でも、久らしさというか、少女の雰囲気
を柔らかくして、チャームポイントを抑えていた。
くあ
くあ
歩く姿は百合の花。とは、かなりうまくいったものだ。と思う。
普段の久とは正反対の女の子らしい走り方。久はこういうとき、相
当、緊張している。いつも、真っ白なほっぺたに赤面がかかってい
た。
くあ
﹁き、今日の久⋮⋮なんだか、可愛いね⋮⋮?﹂
11
幼なじみの僕でさえ、反応するのに緊張する。実の所、本音を言
うとうれしいものだ。僕みたいな女々しい奴のために、﹁今日は頑
張って女の子らしく振る舞う!﹂とでも、目標を決めたのだろうか。
反対に、僕も頑張って男らしくなろうとしたけど、着こなしがで
きなくて、随分浮いてしまっていた。
﹁い、いつも私はかわいいよ! ミズナのバカ! そ、それにミズ
ナの方が女の子みたいになっているし!﹂
ふぇぇ⋮⋮なんで、怒られるのぉ⋮⋮⋮⋮。確かに、電車の中で
変な目で見られたけどぉ⋮⋮頑張って、昨日に親に頼んで今時な男
らしい、服を買ってきたのに⋮⋮⋮⋮。
くあ
﹁もう、いいよ⋮⋮ほ、ほら、早く行かないと行列できるから⋮⋮
っ﹂
くあ
くあ
くあ
久が恥ずかしながら、僕の裾を引っ張る。いつもの、久だったら、
襟元を掴んで、僕を引っ張るのに。実際、僕と久とでは、久の方が
身長が少しだけだけど、高い。
﹁う、うん⋮⋮いこっか﹂
僕の方もなんだか、ぎこちなくなってしまう。
︱︱恥ずかしい。
これにつきる。
くあ
なんせ、相手が幼なじみの久とはいえ。始めてのデート。僕の心
12
臓もバクバクしていて、緊張しすぎて何を話せばいいのか、段々わ
からなくなってしまう。
目的の遊園地の入り口は、待ち合わせ場所の噴水を真っ直ぐ
7分。開園して、7分しかたっていない。奥
いけば、1分もかからない場所にある。
今は、10時
の方にある、超人気魔法少女アニメ、﹁お嬢様は魔法少女﹂の﹁マ
ジカル☆トレイン﹂なら、まだ空いているだろう。
﹁さ、最初は⋮⋮マジカル☆トレインから行く⋮⋮?﹂
﹁べ、べつに⋮⋮ミズナが行きたいのなら⋮⋮⋮⋮いいけど⋮⋮﹂
遊園地の名前はユネバー猿。猿のワンダーランドだ。ゲートの前
にいる、マスコットキャラクター、サセミストリート達が僕達を迎
えてくれる。中でも、主人公? のかじられたお肉のエモロが僕達
にむかって。
﹁今日は、ユネバに来てくれてありがとうHAHA☆ 君を夢のワ
ンダーランドに招待するYOゥ。HAHA☆﹂
﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂
HAHA☆
HAHA☆﹂
著作権
なんだろう、ものすごくアウトなキャラクター達だ。僕達の知ら
マスコットの僕を無視かい?
ないところで、とんでもないいざこざがありそうな⋮⋮。
﹁HAHA☆
で、君を訴えるよ☆僕は女の子にも容赦無いよ☆
わけがわからないよ。
13
なんて、物騒なマスコットキャラなのだろう⋮⋮。それに、
僕は男の子だ。高校生で、子でもないよぅ⋮⋮。
⋮⋮とりあえず、こいつらは、無視しないと、せっかくのデート
の雰囲気が台無しの気がする⋮⋮。
いつもの久らしくない、おとなしい口調であらかじめ予約で、
くあ
﹁あ、これチケット⋮⋮﹂
くあ
久が買ってくれたチケットを、僕に渡した。
﹁あ、ありがとう⋮⋮﹂
ゲートをとうろうとすると、従業員の人達に声をかけられ。
﹁すいません、アンケートにお答えしてもらってもいいでしょうか
?﹂
﹁あ、アンケートですか⋮⋮?﹂
くあ
まずい、断らないと⋮⋮。こんなところで時間をくっていたら、
久に失礼だし、アトラクションもすぐに行列ができちゃう⋮⋮⋮⋮。
﹁あの、ちょっと急いでるんで⋮⋮﹂
くあ
今日の僕は頑張って男らしくなるという目標があるんだ。いつも
は、うじうじしているけど、久のためにも頑張らないと⋮⋮。
﹁そうですか、すいません⋮⋮。では、またお帰りになられる時に
14
お願いしてもよろしいでしょうか?﹂
向こうも、こちらの事情というか、わかってくれたらしく。
﹁はい、いいですよ!﹂
くあ
とびっきりのスマイルで答える。そして、久の手を握って。
﹁!?﹂
くあ
急に顔が赤くなった久は僕を見て、そして、﹁ミズナなんかに
押されてたまるか﹂と笑って。
﹁それじゃ、行こっか!﹂
くあ
僕と同時に、久も走り出す。さっきの、従業員さんは笑顔で、
右手を振りながら﹁いってらっしゃいませ♪﹂と送ってくれた。
? ?
また、あの女と一緒にいる。いや、今日はあいつらのデートだっ
たか。否、だからつけてきたんだろ、私⋮⋮。
後ろに隠れている私。奴らの行動をビデオカメラに納める私。
チョー
走り出した二人の姿が私なんかよりも、絵になっていて、ウザイ、
ウザイ、兆ウザイ。
困空 水?︽きくう みずな︾。いずれ、私と付き合う男。
15
あいつの好みはしっかり、観察しておかないとな。
チョー
あの女から奪うんだ。難関なミッションだが、私からすれば、簡
単、簡単。兆楽ちん。
息を呑む。
私が立てたプランに狂いはない。
でもね。
あんな、奴でいいのだろうか?
ちょっとくらい悩ませてほしいよ、マッドハッター。
16
チャンス2!!﹁始めてのデート﹂︵後書き︶
次回更新は来週の日曜8時!
薹揮﹁いやぁ、最後の奴こわいな⋮⋮うん。デートも次の回から本
番だな﹂
くあ
水?﹁う⋮⋮うん。僕に、久を満足させられるかな⋮⋮﹂
開沌﹁まぁ、まぁ、お気になさらずに、次いってみよう!﹂
水?﹁ぅ、うん! と、薹揮君。あとはよろしくね!﹂
薹揮﹁あぁ! 9:00、俺が魔法少女?! も更新されるぜ! こっちもよろしくな!﹂﹃ ﹄
17
チャンス3!!﹁初めてのー始めてのー﹂︵前書き︶
始めてのー
始めてのー
⋮⋮⋮⋮。
※別に、サブタイトルのネタが切れたわけではありません。
18
チャンス3!!﹁初めてのー始めてのー﹂
ぐらりぐるり、ぐらんぐらん。
曲がる線路、8つの目。
誰もが予想できないところから回るその様は、恐怖。
ジェットコースター。恋人達が間違いなく、絶対にのるであろう
アトラクション。
しかも、このジェットコースターは、アトラクションであって、
ただのジェットコースターではない。このジェットコースターは、
﹁お嬢様は魔法少女﹂という番組に出てくるブリじゅわーる家のブ
リ男爵という、主人公エリカの財産を狙う男爵と、エリカが闘う、
第4話﹁ツバスもメジロもワカナも結局、ブリじゃねぇか﹂をモチ
ーフにして作られている。
ブリじゅわーる家の娘達が、ブリ男爵の命令で、僕達に水でっぽ
うらしかぬ、情報が詰まった銃で攻撃してくるのだ。その時に揺れ
る震動がさらに恐い。
横から掛けられた水しぶきが顔にかかり、こらえていたナニカが、
体中のソコからでてくる。
︱︱我慢できないっ!!!
駄目だ。駄目だ。絶対に泣いちゃ駄目だ。だって、今日は男らし
くなるって決めたのに。
19
さっき、イケメンスマイルでいろいろと切り抜けてきたじゃない
か。でも、でも。高らかに笑う、グロテスクな人体模型......
見つめ合う、僕と、模型。額から汗の滴がこぼれ落ちた瞬間。悲劇
は舞い降りた。
︱︱ガバッ
刹那。僕の目の前からは、目を閉じた、謎の大きな目玉がぶら下
がってきたのだ。
﹁⋮⋮ふぇ?﹂
声をあげた時はもう遅かった。
﹃ミ⋮⋮﹄
︱︱ガタッガタッガタッ
大きな目玉はこちらを向く。
﹃ツ⋮⋮﹄
︱︱ガタッガタッガタッガタッガタッ
大きなまぶたがゆっくりと開けられていく。
やばい。これって、あの、その⋮⋮。
﹁ひぃ﹂
20
次の瞬間。急に、大きな目玉が目の前に、まぶたが半開きの状態
で、僕の視界に現れる。
﹃ケタァァァ!!!!!﹄
﹁いやぁあああああああああぁぁぁぁあああああ!!﹂
コースターが急に、後ろに回転し。ぐるぐると高速で回りだす。
その時に、お腹から、黄色の液体がこみあがってきたのが確認でき
た。
﹁ミズナ、泣きすぎぃいいいいぃいいいぃいぃぃぃぃいいいいいぃ
ぃぃぃいいいいいぃぃぃぃ!!!!﹂
予想以上だった。いや、そういうレベルなのだろうか⋮⋮? こ
れって、魔法少女のアトラクションだよね⋮⋮⋮⋮???
﹁ふぇぇぇぇぇえええええええええええ!!!!!﹂
どうしよう、あまりの怖さにいつもの僕にもどっちゃうょぉおお
おおおおおおおおお!!!
僕はぼろぼろ、くしゃくしゃになりながら大声で泣き始めて。
どうしよう、どうしよう、どうしよう⋮⋮。
くあ
こんな所、久に見せたら、また怒られちゃうよぉぉ⋮⋮⋮⋮。
くあ
どうしよう、絶対、久はこっちみて、怒ってる︱︱
21
﹁いやぁぁああああああああぁぁぁぁあああああああああああああ
あああああああああああ!!! こんなの聞いてなぁぁああああぃ
ぃぃいいいいいいいいいい!!!﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
くあ
なんだろう。久の珍しい一面を見ているような気がする⋮⋮。
? ?
﹁うっわぁ⋮⋮⋮⋮﹂
﹁ぅぅ⋮⋮⋮⋮﹂
あの後。僕達は降りて、慣れない激しいアトラクションに動かさ
れ、大量の固形物を吐きだした。
今は、アトラクションの隣にある、トイレの前。
﹁なんでだろ⋮⋮なんで、僕を見て、周りの人が驚いたんだろう⋮
⋮﹂
﹁は? どうしたの⋮⋮?﹂
くあ
久が﹁また⋮⋮?﹂っというような感じで、苦笑しながら、目を
細めて僕に聞いて。
﹁さっき、トイレで吐いていたら、周りのおじさんとかがこっちを
見て、なんだかニヤニヤしていて⋮⋮トイレを出ようとしたら、声
かけられて⋮⋮﹂
くあ
⋮⋮⋮⋮??? あれ、どうしてだろう。久が頭を抱えて、嫌そ
うな感じになってる⋮⋮。
22
くあ
と、久が﹁そこぉ⋮⋮ちょっとぉ⋮⋮﹂と、僕の方を指を指して。
︱︱ポンッ
﹁ふぇ?﹂
後ろを振り向くと、さっきトイレで僕に声を掛けたおじさんがい
て。
﹁ぶひひひ⋮⋮君、さっき、トイレにい︱︱ひでぶっ!!﹂
︱︱バタッ
久くあに瞬殺された︱︱⋮⋮⋮⋮。
くあ
﹁ちょ、久!? この人、この前僕を、個室につれこんだおじさん
みたいに、まだ、なにもしてないよ!?﹂
﹁何いってるの!? もう、完全にアウトじゃない!? この息づ
かいといい、蹴られたあとも、ぶひぶひ言ってるのがなによりの証
拠よ!?﹂
﹁ぶひぶひ﹂
えぇ⋮⋮そんなぁ⋮⋮さっき、ティッシュもらったから、いい人
だと思ったのに⋮⋮。
久くあが振り向いて、こっちを向く。
﹁もう⋮⋮ミズナは私よりも女の子みたいなんだから⋮⋮その、少
しはそういうの自覚して、気をつけた方がいいよ⋮⋮⋮⋮﹂
23
ちょ、それ結構傷つくよ!?
くあ
で、でも、なんだか今の久、可愛かった⋮⋮唇に人差し指を当て
ながら、もじもじするなんて⋮⋮。
﹁そ、その久くあ⋮⋮次はどこにいく⋮⋮のかな?﹂
そういえば、このアトラクションに乗ることで頭がいっぱいで、
後の事を考えていなかった⋮⋮。
⋮⋮こういうところって、僕の駄目な所なんだろうなぁ⋮⋮。
くあ
どうしよう⋮⋮久も、口をぽかーんとあけて、困っている⋮⋮。
﹁そ。そ、そういえば、そういえばさ﹂
﹁?﹂
久くあがなんだか、徹夜付けで覚えた英単語を、本番のテストで
ど忘れした時、必死の思いを思い出したような笑顔と、少し、少女
らしい恥ずかしさを含んだ顔で、話を切り出して。
﹁覚えてる? 昔、よく二人でこういった遊園地に行ったよね⋮⋮﹂
うん⋮⋮高校入ってからは、周囲の目が気になって、別に何も言
った訳じゃないけど。二人でどこかに行くことは突然なくなった。
くあ
くあ
と、言うか。僕自体、久への関心も薄れていたというか⋮⋮その、
久くあとの思い出は忘れもしない良い物ではあるけど、僕と、久と
の距離が段々、月日を重ねる毎で遠くなっていた。
24
﹁うん⋮⋮。確か、ここは小学校の遠足の時に、一緒に行動したよ
ね⋮⋮さっき、乗った奴はなかったけど⋮⋮﹂
その時は、僕がアトラクションを乗り終わったあと、あまりにも
くあ
恐くて、泣いちゃってからずっと、カップケーキがぐるぐる回るや
つに久と一緒に泣きながら乗ってたっけ⋮⋮。
くあ
あの時は、久にかわいそうな事したな......って思う。僕
が、臆病とかじゃなかったら、他のクラスメイト達みたいに、ジャ
ンジャンいろんな乗り物に乗れたのに......。
くあ
きっと、久もあまり、いい思い出にはなってないと思う。僕と幼
なじみという理由だけで、僕の子守をしなければならなかったのだ
から。
﹁あの時はごめん⋮⋮﹂
僕は、虹色を黒く塗りつぶしたような表情で。したの方を向いて。
謝った。
おそらく、次に返される、たわいもない笑いで済む、嫌な記憶を
思い出させる言葉を待つが。
﹁どうして、謝ってるの⋮⋮?﹂ その時、自分の耳を疑った。前を見る。
くあ
久は不思議そうな目で僕をじっと見つめていた。
﹁だって、その、ほら、ほら⋮⋮!﹂
﹁だって何⋮⋮?﹂
25
僕は焦った。夏でもない季節なのに、手は汗だらけになっていた。
﹁僕のせいで、他の⋮⋮みんなみたいに。いろんなアトラクション
に行けなかったじゃないか⋮⋮⋮⋮!﹂ 少し強めのメゾフォルテの声。
﹁⋮⋮? なにいってるの?﹂
優しめだが、強い言葉。べつに怒りや、悲観が混じり合った訳では
ない。
僕は耳を疑った。それと同時に、今の展望があけない。
﹁そんなこと、考えたことなかったな⋮⋮ほら、ミズナの子守する
のがあ、当たり前? になってるしね﹂
くあ
久が﹁はは﹂、って笑いながら言った。僕は、少し、涙らしい涙ら
しき物が目からでた。
本当に、まったく、そんなことは思ってもなかったらしい。
﹁あと、私が言いたかったのはそういうのじゃなくて⋮⋮ミズナ、
覚えてる? あの日の帰り﹂
帰り⋮⋮?
何かあったっけ⋮⋮?
26
否、そのあとの出来事は覚えていないわけではないのだ。ただ、
久くあが、わざわざ話題にするまでの出来事ではないと思うからで。
くあ
久は少し、微笑んで見せた。
27
チャンス3!!﹁初めてのー始めてのー﹂︵後書き︶
誤字、質問があればおねがいします。
28
1チャンス ︻星空展望台︼︵前書き︶
改定一話です
29
1チャンス ︻星空展望台︼
ボクは、人間失格だ。
昨日は、さんざん学校でいじめられ、成績が悪いからと親にしか
られ、悪い噂でじろじろ見られ、そんなヤツを殺したいとボクは刃
物を持ち、いじめっ子の方が成績がいいと教師にほめられ、嫉妬し
てしまったボク。
今日は、そんな自分に嫌気がさし、自殺しようとするものの、ロ
ープがきれて、失敗した。父親がリストラされたらしくって、少し
見たら、どうしてだかわからないけど、何の抵抗もできずに2,3
発なぐられた。体育の授業で、ただの50m走で1回目はこけて、
2回目は全学年で断トツのビリをとってしまった。ボクの顔が少々
女々しいからか、同級生に女装させられ、おそわれかけた。
こんな日が毎日続いている。そして、いつも、最後には幼馴染み
の少女を頼ってしまう。少女に依存してしまっている。
あぁ、ボクってどうしてこんなに、ダメなんだろうか。
女々しくって、身体が弱くて、欲張りで、足手まといで、けんか
が弱くて、成績が悪くて、ブサイクで⋮⋮。まだまだ、いっぱいボ
クにはダメな所がある。どうしても、自分のことが好きになること
ができないんだ。
ボクは、山の中にある大きな展望台の望遠鏡の接眼レンズに目を
当てて、片目をぎゅっとつぶって、夜空を眺める。
夜空は学校のやつらみたいに、ボクをいじめたり、ばかにしたり、
避けたりはしない。大きな空という身体を精一杯にぐんぐんのばし、
隠したりせずに全てをありのままに見せてくれる。
30
1度、望遠鏡から目を離し、ありのままの夜空を見ると、自分と
はなんだろうかという疑問を出させてくれる。
﹁ボクは、夜空に生まれたかったなぁ﹂
人間なんかに生まれてくるんじゃなかった。ボクは、大きて美し
い夜空に生まれたかったのだ。このきれいな夜空を誰も嫌いになん
かならないであろう。誰かに頼りにされたい。好きになってもらい
たい。こんな自分を好きになってもらいたい⋮⋮。
お か
こういうところが女々しいのかな。可笑しいのかな? 雨あがりの夜空は雲がひとつもなく、星できらきらしていて、
とてもきれいで。美しくて。
再び、望遠鏡に目をあてて、ボクはピントを合わせながら、ぼん
やりとはっきりしない夜空を見た。
ピントがずれた夜空はまるでボクのようにはっきりしなかった。
ボクは、なんだか、涙が目いっぱいにあふれてしまって、余計に夜
空はもやもやとしてしまった。
﹁ミズナ、また泣いてるの?﹂
じゆんじ
ボクの後ろから、静かでよく聞こえる、凛とした声が聞こえた。
くあ
﹁久?﹂
くあ
その声の主には覚えがあった。それは、幼なじみの少女、純遊寺
久だった。
31
﹁な、泣いてなんかいないょ⋮⋮﹂
くあ
久は、少しため息をつきながら、展望台を昇り、ボクの目に右の
一差し指をそっと、添えて、涙をすくって、一差し指を自分のほっ
ぺたのよこにあげ、
﹁やっぱ、泣いてるじゃん⋮⋮﹂
こら
と、ボクに向かって少し心配そうに言った。ボクは、またわっと
泣き出しそうになったけど、がんばって堪えた。
また、だろうか。どうしてだろうか、どうして、ボクはすぐに泣
きそうになるのだろうか⋮⋮。こんなにも、ボクは心も体も弱いの
か⋮⋮。
泣くのを堪えると、さらに様々な負の感情が込み上がって、ボク
を責め立てる。
﹁⋮⋮ミズナ、ミズナは弱くなんかないよ。ミズナは、ミズナが思
っているよりも強い⋮⋮そして、好きになれるはずなんだよ⋮⋮?﹂
くあ
久が優しそうだけれども、ボクの様子を少し考慮したような目で、
くあ
ボクをじっとみつめた。 くあ
くあ
ボクも久を少しみつめた。お互いの目があった時、ボクはいつの
まにか泣いていた。久に泣きついてしまった。久によりそって、声
にならない泣き声がしみじみとボクの顔からこぼれ落ちる。
﹁ごめん⋮⋮ごめん⋮⋮ごめん⋮⋮﹂
くあ
久は自分の中で泣いているボクを、何度も何度もなで続けた。
32
︱︱︱︱︱︱︿二年後﹀
ボクは、高校2年生になって、多くの桜の木が印象的な道を通っ
て、学校に登校していた。
高校に入ったボクは、少し解放されたような気分になって、前よ
りは笑えるようにはなってきていた。
くあ
﹁久⋮⋮。ありがとう⋮⋮﹂
﹁いいって、別に⋮⋮ただ、私はミズナが泣いているのが嫌なだけ
くあ
だよ﹂
久は少し照れながら笑ってみせた。﹁はは⋮⋮﹂って。
くあ
ボクは、久と同じ学校に行っている。クラスは1,2年どちらも
違ったけれども⋮⋮。
そして、今ではボク達は⋮⋮かけがえのない存在。恋人同士であ
る⋮⋮。
くあ
久が、腕時計をみた後、ボクの方を向いて、ボクをひっぱた。
﹁ほら、ミズナ、早くいこ! 遅刻するよ!﹂
くあ
﹁ぁ⋮⋮うん!﹂
ボクと、久は手をつなぎながら、校門に走っていた。校門を抜け
た場所には、もうすぐチャイムがなる時間なのに、多くの生徒達が
おしゃべりしながら、ゆっくりと校舎の中へ向かう姿が見えた。
すると、もうひとつ、気になる物がみえた。
﹁?﹂
33
校門の横にかかっている学校名がかかれたプレートの前に、赤と
黒のトランプマークがはいった帽子を被り、うさぎ耳のバニーガー
ルのような黒で、そこまで刺激的でもない衣装を着た、身長170
くらいの長身な女性がたっていた。
はっきりとした、顔は帽子の影で見えず、ぱっと見たら、バニー
ガールの衣装を着た男性にもみえなくはないが、ある程度はある胸
と、細長く、女性特有の丸帯びた身体から、それはないとわかる。
もし、これで男性だったら、一種の詐欺だ。
ボクが彼女をみていたら、急に、彼女は不気味な笑みを浮かべな
がら、こっちを向いた。
﹁⋮⋮⋮⋮え?﹂
そして、見えた顔⋮⋮それはあまりにも、おかしくて、思わず笑
うしかない顔であった。
ボクは、しばらく呆然とつったってたようだ。ボクの理解が追い
つかなかった。
彼女の顔⋮⋮それは⋮⋮⋮⋮。
くあ
︱︱トントン
突然、久がボクの肩をたたいて、再び、手をひっぱた。
﹁ミズナ、どうしたの? 早くいこっ﹂
くあ
久は、ちょっと不思議な感じで、ボクのことをみていた。
34
くあ
ボクは、相づちを少し、うってから、久にひかれながら、校門の
中にはいっていた。
そして、後ろをみると、先ほどの彼女は姿を消していた。
35
1チャンス ︻星空展望台︼︵後書き︶
誤字、質問等あればおねがいしますm︵︳︳︶m
36
2チャンス︻マッドハッター︼
学校につくと、一体全体どうしてだかわからないけど、黒いハー
トマークで留めてある白色と、トランプ模様の一種のラブレターを
くあ
思わせる手紙がボクの下駄箱の上履きのやや上に置かれていた。ボ
クには、こんなものとは普段は無縁の存在だし、久という恋人がい
るものだから、このようなものはもらっても嫌な気分になるきっか
けの邪魔物であった。
ボクはラブレターを右手で手にとって、裏返したり、表返したり
した。宛先もないので、イタズラか何かだろうか。
でも、どうしてだかわからないけど、いや、ボクの中に眠る好奇
心という悪戯悪魔が見てみたい、ラブレターの中身を見てみたいと
ボクを誘惑したのかもしれないのだが、ボクはラブレターをそっと、
ズボンの右ポケットにくしゃくしゃに押し込んでしまった。
ーー休み時間、トイレの個室で見てみよう。
くあ
そんな事を脳裏に浮かべながら、ボクは久を待たせないよう
に、すぐに上履きに履き替えて、彼女がいるであろう廊下に直ぐに
走った。
﹁ミズナ、遅かったけど、どうかした?﹂
くあ
ボクがただ靴を履くのにしては、時間がかかっていたのを心
配して、久がボクに聞いた。もちろん、ラブレターのようなものが
あったなどとは言えなくて、ここは、誤魔化すしかなかった。
﹁うぅん、なんでもないよ﹂
37
☆
☆
一目散と男子トイレの個室に飛び込ん
一時間目が終わっての休み時間。ボクはわざとらしいけれど
も、左手をお腹に添えて、
で、素早くドアを閉めた。
心臓が高まって、やばかった。
僕は、右ポケットからくしゃくしゃになったラブレターを取
り出し、黒ハートのシールを切って短い短い爪で強引に剥がした。
そのせいで、ラブレターの留められていた部分はシールの白いあと
残りで汚くなった。
中には、トランプ模様の便箋が入っていた。山折りされてい
あなた
彼方様
る便箋を開いてみると、次のような内容が書かれていた。
拝啓
あなた
、マッドハッター
彼方の思い出深き星空展望台で待っています。
彼方のパートナー
﹁ほ⋮⋮し、空⋮⋮展望台?﹂
確か⋮⋮中学校の時によく言っていた、あの夜空が綺麗な展
望台か⋮⋮?
でも⋮⋮あそこは⋮⋮あれ?
ボクは急に少し気分が悪くなって、ふらついた。どうしてだ
38
工事か何かで⋮
か、展望台という単語が何を意味してるのかが分かっていたのに、
あそこは、今はなくなったんだっけ⋮⋮?
いや。分かった。
⋮⋮⋮⋮。
分からなくなってしまったようだ。
⋮。
じゃあ、なくなった場所に誘っているってこと?
そして、マッドハッター。確か不思議の国のアリスという
小説に出てくるキャラだったか。何のイタズラだろうか。これは、
おそらく、誰かがふざけて、ボクの下駄箱に入れたのに違いない。
なぜ、あの展望台の事が書かれているかは気になるけれど
ボクは、読んだラブレターをさらにくしゃくしゃにして丸め
も⋮⋮。
た。
このラブレターはゴミ箱に捨てておこう。
ボクは、怪しまれないように、念のためにトイレの水を一回
流して、個室のドアを開けた。
開けた時は何にも感じなかったのだが、急にドアの奥に引き
ずられるかのように、ボクの体は個室を出た。
すると、どうだろうか。ボクは学校のトイレの個室から出た
はずで、本来ならば、ボクは小用の便器を目にするはずなのに、ボ
クの目いっぱいに広がっていたには、昔よく見た、あの景色⋮⋮星
空展望台で見たあの夜空であった。
39
﹁い、いったい⋮⋮なんで⋮⋮?﹂
さ
ボクは目の前の光景が信じれなかった。何故だろうか、ボク
はトイレにいたはずなのに。
ほど
﹁いやぁ、いやぁ、待ちましたよ、ははっ。まぁ、待った時間は然
程立っちゃぁいませんがねぇ﹂
そんな声が聞こえると、展望台の望遠鏡に座っている黒い影
が見えた。そして、黒い影は何処かで見たような気がした。
﹁あ、校門に⋮⋮いた⋮⋮﹂
﹁えぇ、ちょっとした挨拶気分でいたんですがねぇ。それにしても、
最近の高校生は何というか、昔の高校生とかよりも、急いでますね
ぇ!いや、現代人にもいえるかもしれませんがぁ、もっとのんびり
変な特徴的なしゃべり方で、関係ないことをつれづれと述べ
でもいいかなぁとは思うんですけどねぇ﹂
た。
案の定、この女の人は通学中に校門前にいた、不思議なバニ
ーガールの衣装をした人だった。
﹁待ってたって⋮⋮このラブレターを書いたのは⋮⋮﹂
﹁えぇ、わっしでさぁ。あ、ご紹介が遅れました。わっしがマッド
ハッターでさぁ﹂
マッドハッター⋮⋮あの手紙は冗談じゃなかったのか、ボ
クをからかっているのか。
ボクが考えてること、感じたことを顔から察したのか、
彼女は話を始めた。
40
﹁ははっ、そんな顔しないでくだせぇ、今回、あんな呼び方したの
は、ミズナさんに朗報があるからなんでさ﹂
こりゃあ、たまげ
な、なんと13人も
マッドハッターはニヤニヤしながら、ボクに近づき、笑だ
﹁⋮⋮朗報?﹂
し。
﹁ミズナさんにモテ期が到来しまぁーすっ!
ののヒロインとのイチャイチャデー13週間!
ますねぇ!﹂
パパッンッ、パパッンッ
マッドハッターはパーティーなどで使うクラッカーを鳴らし
ながら、ゲラゲラ笑いながら、女とは思えないくらい下品な笑いを
している。
ボクはただ唖然とするしかなかった。
ーー何言ってるんだ、こいつ!?
一人のヒロインをベストパートナーとし
﹁そーして、ミズナさんはその13人の中から、たった、たった、
たった一握りの一人ッ!
ボクにはもう彼女が⋮⋮﹂
て、人生一生を共に生きてもらうでさぁー!﹂
﹁あ、え?
くあ
ボクは、突然の出来事に混乱していた、混乱しをざるえなか
った。
もちろん、13人のヒロインが出てこようが、ボクは久とし
か一緒になりたくない。
41
くあ
マッドハッターは手を広げ、僕を見た。
くあ
﹁そんなことわかってるでさぁ⋮⋮久さんでしたっけ?
くあ
長い間、
ミズナさん久さんにベットリでしたもんね。ははっ、安心してほし
くあ
くあ
いですねぇ。ちゃーんと、その久さんも13人のヒロインの中に入
くあ
ってるんでさぁ。久さんがよければ、そのまま久さん一筋で進むの
もよし、久さんを飽きれば、べつのヒロインに変えてもよし。ミズ
ナさんは幸運の持ち主ですねぇ﹂
くあ
久がその一人?
そろそろ、
ボクはイマイチ理解できなかった。それにあまりにも唐突な
話で驚いていた。
13人のヒロイン?
わけがわからないよ。
っといか、君は何者ーー﹂
では!﹂
それは恋のキュービットみたいなもんでさ!
﹁な、何の冗談⋮⋮?
﹁あぁ!
別の人のとこ、行くんで!
﹁ちょっと、ま⋮﹂
シュンッ
そういうと、マッドハッターは消え、それと同時にさっき
まで、星空展望台にいたはずなのに、いつのまにか、トイレにいた。
﹁いったい、どういうこと⋮⋮?﹂
42
︳︶m
2チャンス︻マッドハッター︼︵後書き︶
誤字、質問等あればお願いしますm︵︳
43
3チャンス︻あぁ、爽快な! この世はやはり爽快な!!︼
朝だ。
おそらく、昨日の出来事のせいか、頭痛がして、気分がかな
り悪い。
タチが悪い夢ならばよかったのだが、どうやら、現実らしく。
くあ
﹁今日、学校行きたくないな⋮⋮。でも、久に心配かけさせたくな
いし⋮⋮﹂
ボクはブツブツと、制服のシャツのボタンをしめながら、昨
日、マッドハッターとか言う女の子の話を頭の中を整理していた。
彼女は何者だったのだろうか? 自分では自称、恋のキューピッ
ドを博していたが、あんな恋のキューピッドがいてたまるものか。
あれは、一種の催眠術のようなものでもかけられて、あんな変な光
景を目にしたのかもしれない。第一、マッドハッターが言う13人
のヒロインについても、どうもバカバカしくて信じ切れなかった。
ボクは乱暴にエメラルバッグに、学校の用意をぶちこんだ。
あぁ、あれがどうにか幻影であることを願おう。
▽ ▽
Tom﹂﹁ぱーどぅぅん?﹂
﹁おはよー﹂﹁Good Morning﹂
﹁Hi,I`m
いつも通りの朝から生徒で賑やかな光景が目に映える。ボクの感
覚は少しどこかに上がったような感じになっていた。昨日の出来事
だけでこんなにも、見える世界が違うのだろうか?
44
﹁ミズナ、どうしたの? 難しい顔して?﹂
くあ
どうやら、ボクは無意識のうちにむむむと、声を不気味に上げて
いたらしい。手をつないでた久は足を止めて、心配して、こっちを
気遣ってくれた。
﹁う、うん。昨日、ちょっと夜遅くまでアニメみちゃって⋮⋮﹂
今のボクにはこんな、嘘しかつけなかったようだ。確かに、寝ら
れなかったのは本当なのだが、アニメなどはもちろん見ていなかっ
た。
﹁ふーん⋮⋮。ミズナもアニメとか見るんだ⋮⋮﹂
くあ
どうしよう、怪しまれたかな⋮⋮?
くあ
久はうーん、うーんとうなずきながら、少しにやついてボクの方
を見た。
なんだろう、久のこんなに笑うなんて⋮⋮。突然、何を⋮⋮?
﹁ねぇ、今週の土曜日デートいかない? 先週、期末試験終わった
からさ、お疲れってことでさっ﹂
くあ
で、デート⋮⋮? そういえば、久とデートなんて、恋人同士の
くあ
癖にいったことがなかったんだ⋮⋮。今になって、とても不思議だ。
くあ
しかし、久とのデート悪くない。あのマッドハッターのことを忘
れて、久と一緒に遊べば、このもやもやした感触もふけるだろう。
﹁ぼ、ボクは別にいいけど⋮⋮。場所はどこがいい?﹂
45
﹁ん⋮⋮。東京ディ﹂
﹁いや、そこはやめておこうか﹂
﹁え⋮⋮なんで?﹂
くあ
なにがなんでも、そこはいろいろマズイんだよ! 久、不思議そ
うにボクを見ないで⋮⋮。
あ、そういえば、デートスポットといえば⋮⋮。
﹁千葉ネズミ︱ランドはどうかな? AHa☆ ボクネズミーマ﹂
﹁なんだか、中国のパクリっぽくて嫌だな⋮⋮。それに、あそこは
デートに行く場所じゃないかなぁ⋮⋮﹂
くあ
ううっ、あのおもしろいアトラクションがいっぱいでいいと思っ
たのに⋮⋮。
あれこれ、場所を模索する中、久が思いついたように、こう言っ
た。
﹁あ、そういえばさ⋮⋮ミズナが昔、ミズナのお母さんによく連れ
て行ってもらってたっていう遊園地は?﹂
? そんなところあったっけ⋮⋮?
覚えがない。おそらく、だいぶ昔の話をしているのだろうか。そ
くあ
れに、ボクのお母さんは、ボクが産まれる前に交通事故でいないの
だ。そのことは、久も知っているはず⋮⋮。
﹁そんなところ知らないよ?﹂
くあ
ボクが、答えると、一瞬。一瞬だが、久の表情が曇った様子が見
46
られた。
だが、その顔はボクはどこか懐かしいような、変な感覚に襲われ
た。
﹁そ、そう⋮⋮結構、前の話だったから、忘れてるンだね⋮⋮はは﹂
くあ
久のその言葉はどこか、ボクに隠しているようなモノがあるよう
に見えて、不思議でならなかった。
くあ
結局、そのあとは話が続くわけもなく。久の表情の真意がわから
ないまま、デートの場所は一番近い場所の遊園地になった。
△ △
学校の授業は短短と、進んでいく、1時間目国語、二時間目家庭
科、三時間目数学A、四時間目英語文法⋮⋮。今は五時間目の地理
だったか。
﹁はぁ⋮⋮﹂
くあ
なんだか、最近はいいことがないなぁ⋮⋮。せっかく、久が気を
利かせてくれたのに⋮⋮。ボクはなんということをしてしまったん
だろ⋮⋮。
それに、久の表情も
くあ
しかし、ボクが生まれる前に亡くなった母が僕を遊園地につ
れてうったなんていう非現実なことを⋮⋮?
なんだか変だったし⋮⋮。
﹁はぁ⋮⋮⋮⋮﹂
ボクがため息を吐いて、机につけている膝を前にずらすと、
47
・・・・
・・・・・
・・・・
消しゴムを落としてしまった。
﹁あぁ、﹂
ああ、めんどくさいなぁ。
消しゴムはちょうど、前の席の椅子のしたに落ちてしまった。
身長が女子生徒とあまり変わらないボクはよく男子がやるようなお
おちゃく、机の上にまたがって、手を伸ばしてとるマネなんてはで
きないので、椅子から音を立てずにこっそりと。
まだ、すね毛も生えてない足を曲げて、前の席の椅子の下を
見る。
﹁⋮⋮⋮⋮?﹂
椅子の下に落ちたはずの消しゴムがなかった。おかしい、消しゴ
ムは前に落ちたからここらへんのはずなのだが⋮⋮。
ボクがキョロキョロすると、ボクの目の前に、変な装飾品を付け
ていない、爪の形がキレイな女性の手があられた。消しゴムは、そ
の中にあったのだ。だれだろうか?
上をみあげると、見慣れない女子生徒の顔があった。とんでもな
い美人というか、清楚というか⋮⋮。おとなしめで、優しい感じの
⋮⋮。
﹁はい、消しゴム﹂
﹁あ、ありがとう﹂
こんな人、ボクの前の席だったか⋮⋮? 48
⋮⋮。
⋮⋮⋮⋮。
⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮。
あれ?
そうか
いな
い、いや、何忘れてるんだ。この人は、このクラスの委員長であ
る爽化 伊菜さんじゃないか⋮⋮。新しいクラスになって、もう⋮
何ヶ月も経つというのにどうして忘れてたんだろう⋮⋮きっと、ひ
どく疲れてるんだ⋮⋮。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
その時、なぜだか感じらぜずにはいられない、嫌な予感と、奇妙
な阿寒がした⋮⋮。
︱︱︱︱︱︱︱︱︱︱土曜日
ピピピピピピピピ⋮⋮ピピピピピ⋮⋮
ボクは目覚まし時計のボタンを押した。時計を見ると、朝の7時
⋮⋮7時!?
﹁ま、待ちあわせの時間が7時半に駅集合だから︱︱あ、あぁ!﹂
一人ぼっちの部屋の中で、ボクは大きく叫んだ。
時間がないったらない!
くあ
駅までボクの脚力でいくと、15分とみた。15分⋮⋮。この寝
癖でボサボサの髪の毛は⋮⋮デートだけど、久を待たせると、何が
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起こるかわからないので、後回しにしよう。朝食も⋮⋮。遊園地ま
で我慢すればよいので、後回し。
問題は服だ。いつも、女々しい、女々しいと指摘を受けるからに
は、今日こそ⋮⋮男らしい格好と言うものを⋮⋮。そう、男らしい
格好をしたいのだが⋮⋮ボクとしたことか⋮⋮買い忘れたのだ。
くあ
いや、お金が無かったとかじゃない。気持ちが暗くて、昨日、久
と帰るとき、午後10時頃に別れるとき、﹁じゃあ、明日のデート
楽しみにしてるね⋮⋮﹂と言われるまで、忘れていたんだ。
﹁どうしよう⋮⋮いつも通りの、安いユニシロの変なTシャツと、
スカートしかない⋮⋮ってかなんでスカートがあるの!?﹂
ボクは謎の組合せを自分の体につけて、鏡でみた。いや、この組
合せは⋮⋮アリかもしれない。でも、でも⋮⋮今日はデートだよ!
これはさすがに⋮⋮。
﹁かくなる上は⋮⋮﹂
ボクは、ハンガーにかけてある学生服⋮⋮ブレザーなので、学ラ
ンとかよりはマシだと思う⋮⋮!
ボクはすばやく、服を脱いで、着替えて、あらかじめ準備してい
たバッグをもって、玄関に走った。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮﹂
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うう⋮⋮なんでだろうか、ものすごくつかれる⋮⋮。もうすぐだ
⋮⋮もう⋮⋮。
駅のホームが見えた。ボクは、それを見た瞬間、急に体が楽にな
って、残りの道も早めに走ることができた。
﹁はぁ⋮⋮はぁ⋮⋮おまたせ∼⋮⋮⋮⋮﹂
くあ
なんとか、3分前についた。うん、服装は学生服で申し訳ないが
くあ
⋮⋮仕方ないだろう。
久が周りにいない。
くあ
﹁ってあれ? ⋮⋮⋮⋮久、久?﹂
くあ
ボクは、待ちあわせ場所の時計台に腰をかける。辺りを再び見渡
すが、久らしき人物はいなかった。
くあ
おかしい⋮⋮あの久が遅刻⋮⋮? 実におかしい。時間が刻々と進むのが、ゆっくりと感じられ、ボ
くあ
クのかいた汗がボクの喉を通るかのように落ちる。
久に何か、危険なことでもあったのだろうか? 携帯に、遅れる
ことを示すメールなどなく。
﹁あれ? そこにいるのはミズナくん?﹂
いな
見覚えのある声が、なぜだか、不気味に聞こえた。
そうか
﹁⋮⋮爽化 伊菜さん?﹂
51
なぜ、彼女がこんなところに⋮⋮? そして、なぜだか爽化さん
・ ・ ・
は小綺麗な格好で身を包んでいるように。ボクは思えた。
﹁あ、覚えていてくれたんだぁ ミズナくん﹂
﹁⋮⋮前の席の人ですし。それより⋮⋮ここで気の強そうな、これ
くらいの女の子いませんでした⋮⋮?﹂
ボクは平らにした右手を、ボクの身長よりも少し高い位置を刺し
て、爽化さんに聞いた。爽化さんは、なんだか、不思議そうな顔を
して。
﹁⋮⋮それってここで立っていた子かな。さっき、なんだか怒りな
がら、あっちの方向にいったはずかなぁ﹂
くあ
⋮⋮!
久はやっぱり、帰っちゃったのかな⋮⋮。でも、なんでだろう。
忘れ物とか⋮⋮?
携帯をみても、特にメールなどはない⋮⋮。
﹁あ、ありがとうございました⋮⋮﹂
くあ
ボクは携帯を閉じて、少し礼をした。
一回、久の家に行ってみよ︱
﹁あ、ちょっとまってよ﹂
くあ
爽化さんが、立ち去ろうとしたボクに声を掛けた。
﹁私も、久さん探し手伝っていいかな?﹂
﹁え?﹂
52
﹁困った時はお互い様ってやつだよ﹂
爽化さんは、いいねの手をして、頼りがいのある顔で笑った。
﹁あ、ありがとうございます!﹂
﹁とりあえず、連絡のためにメアド交換してもいいかな?﹂
﹁あ、はい﹂
ボクは、爽化さんのメールアドレスを登録した。 爽化さんは、携帯をカバンにしまい、ボクが来た方向と逆の方向
を指で指して、
くあ
﹁私、こっちの方みるから、ミズナくんは久さんの家に行ってくれ
ないかな?﹂
﹁わかりました⋮⋮お願いします﹂
くあ
ボクは、一つ礼をして、走って久の家に向かった。
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3チャンス︻あぁ、爽快な! この世はやはり爽快な!!︼︵後書き︶
誤字、質問等ございましたら、おねがいしますm︵︳︳︶m
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n1287bp/
13の一人握り
2014年2月1日09時05分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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