Page 1 Page 2 研究会報告 森川雅博(京大理) ご重力場の粒子生成に

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場の量子論と非平衡・不可逆過程(基研短期研究会「進化
の力学への場の理論的アプローチ」報告,研究会報告)
小嶋, 泉
物性研究 (1987), 47(5): 408-421
1987-02-20
http://hdl.handle.net/2433/92414
Right
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Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
研究会報告
森川雅博 (京大理 ):重力場 の粒子生成 に伴 う揺動的反作用
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n deSi
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阪上雅昭 (広大理論研 ):Evol
佐 々木節 (広大理論研 ):LargeSca
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yUni
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e
l0月 4日
○並木美善雄 (早大理工 ):量子力学の原理的諸問題 と将来展望
○町田茂 (京大理 ):量子論 の観測的問題 とその周辺
柳瀬陸男 (上智大理工 ) :観測 の理論-の コメン ト
e値解析学
。小沢正直 (名大教養 ):量子力学的観測 とBool
l
ber
ts
pa
c
eの構造 と観測 の理論
福田礼次郎 :マ クロな系 のHi
関根克彦 (明星大理工 ):AB効果 とホモ トピー群
世話人 :
並木美善雄 (早大理工 )
鈴木増雄 (東大理 )
細谷暁夫 (阪大種 )
福 田礼次郎 (慶大理工 )
佐 々木節 (広大理論研 )
坂本真人 (九大理 )
田畑謙二 (京大工 )
森川雅博 (京大理 )
′
川 島泉 (京大数理研 )
場 の量子論 と非平衡 ・不可逆過程
京大 ・数研
小
嶋
泉
1
. は じめに
この研究会 の 「
進化の力学-の場 の理論的 アプ ローチ」 とい う耳慣れない名称 と,宇宙論 ・物性論 ・場
ogi
c亘 って一見脈絡な く並んで見えるテーマの配列には,戸惑いや疑問 を感 じら
の理論 ・観測理論か らl
れ る方 も多いか もしれない。それに答 えるのに,私 ごとき駆出 しがあれこれの大義名分 をふ りか ざしたの
では, 口幅 ったい借越 とのそ し りも免れないだろう。 しか し,一応企画に加わった 「
言 い出 しっぺ」 の一
人 とい う事情 もあるので,は じめに, この研究会 の趣 旨,そ の目指す 目標について少 し述べてお きたい。
(勿論, これは,あ くまで私個人の主観的な立場に基 くものであって,報告者 の方 々の講演内容 をまで拘
束するものではないことをお断 りしてお く。)
「
基調報者」 とい う形で世話人か ら講演 を依頼 したテーマは,宇宙論,相転移,協力現象,巨視的量子
og
iC, の 5つであ り,た しか隼,それ らは非常に異 なった対象領域
効果,観測理論及びそれに関連 した l
408-
「
進化 の力学 -の場 の理論的 アプローチ」
●●
●●●●
に またが っている。 これ らの内容 と, 「
進化 の力学」や 「
場 の理論的 アプ ローチ」 とい う標語 とが ど う関
係 す るか とい う問題 には,多少説明が必 要になるが,上記 の異なった諸 テーマを結 びつ ける我 々の共通 な
視点 を一言 でま とめるな ら, ミクロとマクロの関係 とその相互移行 をど う統一的に理解 す るか とい うこ と
に なる。
これは,それぞれの個別領域での研究課題 に即 して形成 されて きた問題意識 における,現時点で の極 め
ri
et
yが み られ る。一 つ の現
て大 まかな共通項 にす ぎず,各領域でのそ の具体的形態には非常 に大 きな va
象領域で得 られた概念 ・方法 を,その成立条件 に対す る充分 な吟味 な く機械的 に他領域-移 す こ とには,
空疎 な結果 と誤謬 を生ず る危険が伴 うものであ り,質的 に異なった諸 テーマの単純 な融合 を,性急に この
研究会 で 目指そ うとす るものではない。そ の趣 旨は, ミクローマ クロ間 の階層移行 とい う共通問題 に関 し
て, 異なる諸分野で の到達点,そ こで開 発 された理論的手法,重要な未解決問題等 を相互交流 し,それ を
通 じて各分野で の具体的課題 に即 した研究 の深化 を図 るこ とにある。
同時に, この階層移行 の問題が,非常 に多 くの異 なる諸分野に亘 って同時多発的 に顕在化 しつつ ある現
在 の特徴的状況 には, よ り長期的 な観点か ら然 るべ き注意 を払 う必要が あるだろう。そ の背後 には,物理
学 の現在 の発展段階が要求す る≪個別分野の深化 を通 じての統合化 ≫-の大 きな流れが あるか らである。
例 えば,私 自身 の問題意識 に即 して素粒子論か ら出発すれば,基本構成子模型 とgaugepri
nci
pl
eの確立
に基いて,諸力 の統一か ら物質 と力 の場 の統一,更 には時空 と物質 の統一-の展望 まで含 んだ く
く
uni
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i
ca-
crophysi
csにのみかか わ って きた素粒子 論
t
i
on progra
m"が問題 となる。それ を通 じて,従来専 らmi
c
alな関連 を議論 し始 め,宇宙進化や量子 重 力 の問題 -導か れ
が,時空構造 と物質の存在形態の dynami
upe
rst
ri
ng理 論に よ
て きた こ とは, ひ とつ の必然的帰結 といえよ う.素粒子 論 プ ロパーの主流は,今や s
る超 ミクロ ・スケール- Pl
ancks
ca
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eでの uni
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hi
ng"に関心 を移 して しまった感 が
あるが, この く
く
uni
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ca
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i
on"とい うこ との中味 には, も う少 し違 った ニ ュア ンスで, 自然 の統一的総合的
記述 とい う方向 も本来含 まれていたはずではなか ろうか ?即 ち, ミクロ世界 での統一的括像か ら逆 に遡 っ
て, マ クロ世界 の多様 な階層的構造 とそ の時間的進化 の過程 を理論的に再構成 する とい う課題である。明
らかに, これは一個別分野 としての素粒子論の枠 内にお さまる問題ではあ りえず,原理的 には,物理学 の
●I●●
すべての分野 (或 いは,すべての科学 ?!)を巻込 む ことになる。勿論, すべて の現象 を素粒子論に結びつ
けることは,それこそ 「
原理的に」不可能 なこ とである し, また無意味 な ことでもあろ う。 しか し,階層
移行 とい う視点 を く
く
uni
f
i
cat
i
on"の問題 に重ね合 せ るな らば, スケ-/
レ(時間,空間,相互作用 の )の変
動 に伴 う物理理論間 の移行 を統制 す る一般的 l
ogi
cの問題 として これ を把 え直す こ とがで きよ う。即 に素
粒子論 の枠内 だけで も,非常 に多数 のスケール とその間 の移行 関係 (dec
oupl
i
ngt
heorem,e
f
f
ec
t
i
ve
La
gra
ng
ia
ns,et
c.)が問題 となってきた以上, その解明 は実際問題 として も重要で ある。それ なしに払
「
窮極的」な mi
cr
ophysi
c
sのみが 「
本物」で,マ クロ現象はすべてそれか ら 「
便宜的な」粗視化 の操作
で得 られ る 「
仮象」 にす ぎない と見た り,或 いは, 2つ の レベルを切離 して各 々を別個 に理解す ることで
満足 し, 多数 の く
ef
f
ec
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vet
heori
es'が如何 なる意味 で <
e
f
f
e
ct
i
ve'か を問 うことな く,現象 との bestf
i
t
だけに終 始 することに もな りかねない。
勿論, スケールによる物理理論の移行 とい うこと自体は何 も事新 しい ものではな く,物理屋 の頭の中で
-409-
研究会報告
は常 に直観的 に も処理 されているはずの問題 である。極論すれば,優 れた物理学者 の物理的 セ ンスとは,
問題 とす る現象領域 において,そ こでの最 も本質的かつ普遍的 な 自由度 を探 し出 し選 び出 す 「勘」 の良 さ
にかか っている とい うべ きか もしれ ない。常 に問題 が 1つの 「階層」内で 閉 じうる ものな らば,従来通 り
この スケールの問題 を各人の直観 に委ねておいて もすむだろう。 しか し,今重要 なことは, 2つ以上 の異
なる レベルの接合関係そ の ものを明示化 して,意識的 に論ず るこ とを要求 す る「群 のタイプの問題 が,最
近 の急速 な理論 ・実験 の進展 を背景 に,物理学 の数 多 くの分野 に亘 って顕在化 しているこ とである。 これ
は,素粒子論 と宇宙論 の交流 を通 じて出て きた,量子 ゆらぎ とマ クロの高 次構造形成 との関連や 「
宇宙全
体」 への量子論 の適用可能性 の問題 (量子重力や Hawki
ngの 「宇宙波動函数」, e
t
c.)に限 った こ とで
D等による巨視的量子効果 の実験的検証,超微細加工技術 の発展が もた らす種 々の新 しい
はない。 SQUI
量子現象,理論 ・実験両面か らの suppor
tによ りかつて の思考実験 のみ に基 く哲学的議論 の色彩 を払拭 し
た観測理論, レーザーか ら生物 をも巻込 む協同現象 の物理,等 々枚挙 に暇がない。 19
83年 に次 いで先 頃
第 2回 目が開かれた国際 シンポジ ウム≪量子力学 の基礎 ≫には, こうした動 きが反映 され てお り, ≪ ミク
ロとマ クロの相互関連 と移行 ≫ とい うこの一般的問題が,単なる理論的研究対象 の域 を脱 して,実験 との
活 発 な交流 を持 ち始 めた こ とを示 してい る。 これは,今後 の理論 発展 を支 える物質的基礎 としてきわめて
重要 なこ とと思 われ る。
2. 非対称性変換 - ≪力学/進化 ≫, ≪ ミクロ/ マクロ≫の相互関係 -の 1つの視点
さて, ライ トモチーフは明 らかになった として も, まだ疑問は残 っている- なぜ 「
進化 の力学」か ?
「
進化」 と 「力学」は矛盾 しないのか ?どうして 「
場 の理論的 アプローチ」 なのか ?等 々。
この問いに答 えよ うとす る と,個別分野 の具体的 内容 を越 えた レベルでの抽象的議論に或 る程度 まで立
入 らざるをえず,現状 では, 「
絵 のない額縁」, く
く
met
aphys
i
csHに陥 る危険 も大 きい こ とを十 分留意 し
なければならない。 しか し,単 なる異分野間 の 「交流」 に終 わ らせ るこ とな く, よ り高次の レベルでの理
論的統合 の可能性 を探 る努力 もなされて然 るべ きだ とすれば,その方向-の 「イメージ」 を語 ることに も
それ な りの意味 はあるだろ う。それ を一言で図式化 してい うならば,従来の 「
対称性」 の概念 に必ず しも
限定 されない一般的な或 る非対称性変換 によって相互に結ばれた,それ 自身で内部構造 をもつ複数 のく
ob-
j
e
c
t
s'の集 ま りとして, 2つ の異なる レベルの関係 を把 える視 点であ る。 これだけでは, あま りに抽象的
で内容がっか めないか ら, も う少 し具体的 にみよ う。
即 に述 べた よ うに,我 々の mai
nt
hemeは≪ ミクロとマ クロの関係 ≫, も う少 し一般 的 に, ≪異 な る
スケール ・階層 の接触,相互 関連 と移行 ≫の問題で ある。 これは,素粒子論 の uni
f
i
cat
i
on schemeの 中
で の,統一的相互作用 の 「分化」 とそ こか ら生ず るef
f
ec
t
i
vet
he
ori
esの位置づ け,decoupl
i
ngt
heorem
とそれ に基 くobse
r
vabl
e
sの構造 変化や,宇宙進化でのゆ らぎと構造形成 の関係,散逸性 ・不可逆性の由
莱,等 々の整合的 ・統一的理解 を求 めて とり上 げた視点であった。前者では, くりこみ群 変換 のよ うなス
ケールを変える変換操作 に伴 なって理論が どう動 くかを問題 にす るわ けであるが, スケールの違いによる
自然 の階層的構造 とい うことを前提 すれば, これは,その 「
共時的7
f
I」断面 を見ているこ とに なる。 「
進
化」 とは, この階層構造 の 「
適時的 な」, c
hronol
ogi
ca
lな理解,そ の形成 のメカニ ズムそ の ものの解 明
-410-
「
進化 の力学 -の場 の理 論的 アプ ローチ」
にかかわ る。膨張宇宙 の進化における時間発展 が時間並進不変性 を破 るように,異なるスケール,質量,
●●●●●
結合定数 をもつ (同 タイプの )異な る理論 を結 びつ け る くりこみ群変換 もまた,理論 の 「
対称性変換」 で
はない。物理学 の理論 にお けるs
ymmet
r
y概念 の重要性 は勿論否定すべ くもないが,異なるスケール間の
●●
移行 関係や宇宙進化 の議 論にはそれだけでは足 りず,非対称性変換 (の うちの或 る クラ スの もの )を系統
的 に扱 う枠組 が必要 である。 「
本来」対称的で あるべ き理論が真空 の c
hoi
ceや量子化操作 のせいで破れた
とす る≪対称性 の自発的破 れ≫や≪gaugeanomal
y≫の考 えは, こうした方向-の中 間的 な一 歩 ともい
うべ きものか もしれない。そ こで得 られ る重要な見方は,縮退 の結果生ず る く
t
f
T
ami
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y ofst
a
t
esり 或 いは
amet
erや背景 ゲージ場 の 1つ の conf
i
gura
t
i
on
く
く
Hi
l
be
rtbundl
e"[1]とい う概念 である。 orderpar
真空」上 の理論 をそれ とはユニタ リー非同値 な
毎 に 「真空」が 1つ定 ま り,破れた対称性変換は 1つ の 「
別の 「
真空」上 の理論-移す。 これは幾何学的 には, homoge
neousbundl
eの構造 であ り, よ り一般 的
な非対称性 変換 の枠組 として, f
i
brebundl
e様 の構造 を我 々にイ メー ジさせ る。変換 群 の下 で の不変性
・共変性 によって幾何学的性質 を同定 した Kl
e
i
nの 「固い」幾何学 (群 ・等質 空間 )に対 して, それ を
f
i
bre-の群作用 によって昼 型 塾に取込 みつつ, f
i
bre
sの非 自明なっなが り方 としてのgl
obalな性 質 を問
題 にす るf
l
brebundl
e的 な Ca
r
t
an幾何学 を対置す るな らば,時間発展 の概念 まで も時間並進対称性 に還
元 して把 えてきた従来 の場 の量子論 はKl
e
i
n幾何 に比すべ き 「
局所理 論」 とい えよ う。 そ れ に対 して,
我 々が今求 めてい るのは,非可換性 を伴 う量子論 の段階におけるCart
an幾 何学 とい うべ き ものか も しれ
ない。実際,町田 ・並木 ・荒木 の観測理論 [2]における波束 の収縮 で重要 な役割 を演 ず る連続的超 選 択
則 も, マクロ対象 のf
uzz
yな記述に由来す るbundl
e構造 にはかな らない。ここで興 味深 い のは, ミク ロ
系 の dynami
c
sは各 f
i
bre(- sec
t
or)の中でユニ タ リー性 を保 って記述 され,非因果的な st
at
echange
-波束 の収縮 は, ミクロの自由度 と超選択則 を与 えるマ クロ変数 とのcoupl
i
ngを通 じて, 観測 - マ ク ロ
化 の レベルで実現 され る とい う構造 である。
勿論,後 で述べ る宇宙論 の文脈 での曲が った時空 にお ける場 の理論 のように,文字通 りのf
i
brebundl
e
構造では必 ず しもうま くf
i
tしない可能性 もあ り, もっと拡張 した意味で柔軟 に把 え る必 要 が あ るが, こ
のよ うな枠組 によって 「進化」 と 「
力学」の内容的 な 「
矛盾」が克服 され る可能性 に注 目したい。一般 に,
反復性 のない現象に対 して科学 は成立 しない と言 われ,それは確 かにそ の通 りなのだが, しか し, これ を
●●
●●●●
額面通 りに受 け止めたのでは,宇宙進化などとい う一回性 の現象 を物理学 が議論す るこ とはそ もそ も不可
能 になる。 けれ ども,上 に見たよ うな形で, ミクロ ・レベ ルでの反復 的な 「力学」 を く
f
i
br
e'の中に把 え,
反復事象 の集積効果 として実現 され る 「
進化」 を く
f
i
br
es
'の集 ま りが形成す る非反復的 ・非対称的 なgl
obals
t
ruct
ureとして記述す るよ うな首尾一貫 した枠組 があ り得 るな らば, 「
進化」 を 「力学 」 と矛盾 す
ることな く,むしろ両者 を 「
相補的」なもの として合理 的に扱 う道が開かれ るこ とにな るだ ろ う。そ の際,
異 なる く
f
i
bre
s'を t
l
oc
al
'に 「
貼 り合 せる」操作が重 要であるが,それが即 ち, 「
非対称性変換」 の役割 だ
ろ う。 こ うした枠 組 を考 えることは決 してないものねだ りではない と思 う。 「
進化」 と直接的 には関係 の
ない くりこみ群変換 のよ うな ものが既 にこ うした構造 をi
mpl
i
c
i
tに含 んで い るわ けで あ る し,再 び幾何
学 に範 を求 めるな らば, cohomol
ogyや分類 空間 の概念,特に最近 のsupers
t
r
i
ng理論 で重要になってい
るRi
e
mann面 のTei
chmal
l
er空間や代数幾何学 でのmodul
iの概念等が,そ うした先例 を与 えて い るの
411-
研究会報告
ではなか ろうか ?
「
進 化 の力学」 とい う言葉 の表面的 由来が,我 々の場合宇宙進化にあるこ とは事実 として も,上 のよう
な視 点か らは,それ を c
hr
onol
ogi
ca
lな意味での宇宙進化 に限定 する必要 は必ず しもな く,相転移現象 の
動的取扱いにお ける時 間変化や温度 ・圧 力等 の環境因子 の変化 への応答 とみ ることもで きる し,異 なる階
層間の移行 .
t して く りこみ群 「的」 な見方で扱 うことも許 され るだ ろ う。 もっ と抽象化す るな らば,小沢
正直氏 (く
く
量子力学的観測 とBool
e値解析学 ")が町田 ・並木 ・荒木理論 の場合 に柳瀬睦男先生 の示唆 [
3]
に沿 って明 らかにされたよ うに, これは自然現象記述 に際 して我 々が採用す る {
l
og
ics
'の相互関係 とそ の
選択 の問題 に まで遡 り得 るこ とにもなる と思われ る。 どのよ うな選択が正 しいかは,古典物理学か ら量子
請 -の移行 の場合 のよ うに, apr
i
or
iに きまるものではな く,実験事実 に よって検証 され るべ き問題 に
属す る。上の観測理論 の場合 には, マ クロ性 の規定 をど う与 えるか とい うこ とが本質的 だが, これ も,巨
視的量子効果 の問題や最近 の新 しい実験 (例 えば Rauc
hの長波長中性子干渉実 験 )等 に照 らして理解 を
深め るこ とが重要 と思 われ る。
言 い訳」 を しめ く
最後 に, 「
何故場の理論的 アプローチか ?」 とい うこ とに一言 して, この長 々 しい 「
く りた い。 これ につ いての私 自身 の立場 は,そ もそ もの≪素粒子論 ・場 の量子論か らuni
f
i
c
at
i
on pr
og-
ram を通 じて宇宙論-≫ とい う出発点 自体が場 の理論 にあって,物 質構造 と時 空構造 のか かわ りが問題
とな った以上不可避 なこ とで あった。連続的超選択則 の由来や相転移 において無限 自由度 が本質的役割 を
演ず るこ とは重要 で,無限 自由度 の量子系 と時間空間構造 (例 えば, スケール )とのかかわ りとい う一般
的な意味での 「場 の理論的 ア プローチ」 は常に必要 と思 われ る。ただ し,すべての分野が場 の理論で記述
されねば ならぬ とい うよ うな馬鹿 げた限定 をっ ける必要 はない と思 う。 む しろ, 協同現象 や観 測 理論 ,
Bool
e値解析的 アプ ローチで有効 と思われ る概念 等 を場 の理論 に拡張 して,例 えば宇宙論の統一的理解 に
資す るよ うな レベルでの量子場 の観測理論 を確立す るこ とや,初 めに も述べた ゲージ理論での obs
er
vaの構造変化 量子重力 と古典重力 の相互移行 の問題,場 の量子論か ら質点系 の量子力学-の移行過程,
bl
e
等 々 といった問題 を考 える方が重要 だ ろ う。
5
. 量子論の代数的定式化 とObser
vabl
e/st
at
e/dynami
c
s
さて,や っと≪場 の量子論 と非平衡 ・不可逆過程 ≫の本題に入る。異 なるスケールにおける理論 の移行
を問題にする以上,我 々が扱 うべ き対象 は固定 された 「1つ の理論」 ではない。 1つ の物理系 の 「ユニタ
リー非同値な」表現 の扱 いだけで な く, くりこみ群 変換 で問題 となるよ うなパラメータ変動 に伴 う複数 の
at
eのタイプを,例 えば真 空状態
「
理論」間の移行関係 をも視野 においた議論が必要で ある。考察す るst
ee
n函数や ver
t
ex函数 のよ うな C-数期待値 に関する く
や温度平衡状態 のみに限定 して しま うな らば, Gr
りこみ群 方程式 を用いた議論 で済むか もしれないが,非定常 な ba
ckground (曲がった時空,外力 )のあ
er
vabl
e,st
at
e及び dynami
c
sとい う量子論 の基本的 な
争状況や非平衡状態 を考 えるには,やは り, Obs
概念装置 に対す る考察 は欠かせな い。無限 自由度系に特徴的なユニ タ リー非同値表現の系統的取扱 いの必
要 を考慮する と,特定 の Hi
l
ber
t
空間での表現 に依 らずに,物理量 をそれ 自体 として取扱 う代数的定式 化
の立場 を要求 され るだろ う。 これには, W i
ht
g
ma
n流に場 をopera
t
orval
ued di
st
r
i
but
i
onとみてそ の
-41
2-
「
進化 の力学 -の場 の理論 的 アプローチ」
t
e
stf
unct
i
on s
paceのつ くる t
e
nsor代数 (Bor
c
hersal
gebra)を出発点 に とる立場 と,有 界 な局所観
測 可能量のつ くる C*代数 に基 く荒木 Haa
gKas
t
l
erの立場 の,二通 りの流儀 があるが,何 れ も一 長一短
あ り,今 の ところ物理的に も数学的に も満足 の行 く仕方で場 の理論 を記述するよ うな oper
at
or al
gebra
の定義 が確立 してい るわけではない。それはむ しろ今後 の重要課題 の一つ とい うべ きだろう。 しか し,だ
か らといって,数学的嘩密性 のた めに物理 とのつなが りを断念 した り,数学的側面 を無視 した物理的計算
だけに終始する必 要は ない と思 う。数学的帰結 を,そ の成立要件 の吟味 もな くやみ くもに応用 を試 る愚は
慎 まねばな らないが,それ の もた らす一定 の定性的描像 を物理的諸概念 の整理 ・検討 に役立たせ, 目指す
べ き理論的枠組 を方向づ けることは必要 で もあ りまた有用な こ とではなか ろ うか ?そ うい う観点か ら,は
じめに,い くつか の初歩的 な数学的概念 と帰結 を,細かい数学的定式化には必 ず しもこだわ らず,そ の定
性的側面 ・物理的解釈 に重点 をおいて再確認 しておこ う。そ のか な りの部分が上記 2つ の立場 の両方で成
立 するが, Bor
c
her
sal
gebr
aの方が細かい限定句がっいた りして複雑 なので,以下は C*代数 の versi
on
で*
)考 えるこ とにする。
i) obser
vabl
eal
gebra, s
t
a
t
eとGNS表現
vabl
e
s或いは f
i
el
dope
r
at
orsのつ くる (C
*)代数 が与 え られて い
対象 とす る物理系 を記述す るobser
る として,それ を剖■
と書 く。 (皆
目こは単位元 1が入 っているもの としてお く。)そ の具 体的 イ メー ジは,
例 えば, Hi
l
bert
空間 夢の中 の有界作用素全体 (B(㊨)と書 く)やそ の (ノルム位 相 で閉 じた )部分代
●●
数 で よいが,実 は既 にそれ は特定 の表現 を指定 した見方になっている。非同値表現 を問題 にす る とい うこ
とは,個 々の表現 には依 らない物理量それ 自身 とい うものを前提 して,それが Hi
l
be
rt
空間上 の oper
at
or
として表現 される仕方が色 々ある とい う理解 に立つ こ とを意味す る。代数 的定式化 とは, この物理量それ
自身 を,演算子 としての個 々の表現か ら区別 して意識的 に取出 し,抽象 レベルでの代数 乳.
として把 えた上
で, しか るのちその具体的表現 を扱 う, とい うことを明確 にす る立場 であ る。それに よって,表現毎 に異
なる性質 とそ うでない一般 的性質が分離 されて,問題 の見通 しが良 くなる とい う 「
思 考 の経済」 が生 まれ
るが, メリッ トがそれだけでないこ とは以下 で見るだろう。
1にその期待値 a
,(A)を対応 させ る とい う一般的 な意味
さて次に, 9
1上 の旦王
室皇Wとは,各物理量 A∈ 9
での期待値汎函数 のこ とであるが, ゲージ場 の相対論的定式化 において現 われ るよ うな不定計量 の問題 を
無視 す る (か又 は,弘が物理的 な観測可能量 だけ しか含 まない と考 える )ならば,薮上 の規格化 された正
値線型汎函数 として定式化 され る :
a) a
'(jA+ pB)- la
'
_
(A)+ pa
l(B)
b) a
,(A*A )_
>o
c) a
,(1)- 1,
た だ し, A,B∈gL , i,J
L∈C。 9
1
上 の st
at
eの全体 を E乳と書 く。 a
l
l,a
'
2が st
a
t
eならば,勝手 な 0<
ス ≦ 1に対
してその凸結合
umann代数 )の正確な数学的定義はあまり必要ではない。気になる人
*)ここの話のレベルでは, C
*代数 (やvon Ne
は,例えば[4]を参照されればよい。
41
3-
研究会報告
- la
・
1+ (1-i)a
,
2
(
1)
a,
es
t
at
eもmi
xedst
a
t
eも区別 な■
く入 って い るこ と
も a)一 C)をみた して s
t
a
t
eにな るので, E
L
軌には pur
es
t
at
eとは, E
.
9
1の選 良 つ ま り(
1)
の形 で nont
r
i
vi
alな分解 が存 在 しな い こ と
に注意 したい。 a
'
が pur
である。9
LのHi
l
be
r
t
空間 泰に掛 ナる表現 7
Eとは,
・
g
Lの代数演算 を保っ準同型 7
E:9
ト B(
、
㊨)のこ とであ
a
,
る。今 Eを& の規 格化 ve
c
t
orとすれば, E(A)≡< E,7
E(A)E>は9
1上 の 1つ の st
a
t
eを与 え るが ,
ve
ct
ors
t
at
eだか らとい って a
,
Eが pur
est
at
eだ と考 えるのは早計で ある。実は,どんなs
t
at
ea・も,pur
e
か否か にかかわ らず, Q
'か らc
anoni
c
a
lに定 まるHi
l
be
rt空間 魯a
,とそ の中で のg・
の表現 7
㌔,
及 び 争a
,
に属
c
t
orJ
2
a
,
に よって ve
ct
ors
t
at
eの形
す る規 格化 ve
(
2)
a
,(
A)- < Ba
,
,7
㌔,(A)3
2
a
,
>
にいつ で も書 けるこ とが, GNS (Ge
l
'
f
andNa
i
ma
rkSe
gal)再構成定理 によって保証 され る。 t
ca
non
-
i
c
a
l
'とい う意味 は, (
2は , Ba
,
のc
yc
l
i
ci
t
y
.
軋,
-7
㌔,(9
1)Ba
,
(
3)
をみたす よ うな三つ組 (卓a
,
,7
㌔,
,Ba
,)[GNS t
r
i
pl
et
, GNS表現 な どと呼ぶ]は uni
t
ar
y同値 を除いて
一意的 に決 まる, とい うこ とであるO証 明は単純 だが, きちん と書 き出す と長 くなるので省略 する。必要
な ら [4]参照 のこ と。 cyc
l
i
c
i
t
y(
3)
の物理的 意味 は,系 9
1の物理 量 の作用 を通 じて s
t
a
t
ea
,に結 び つ け ら
t
at
e, つ ま り, 打払(A)3
2
a
,
, A ∈g
L, の全体が GNS表現 空間 魯a
,
を構成す る とい うこ とで,
れ るよ うな s
これ がふ つ う 「
理論 は真 空 で決 まる」 と言 い慣 らわされていることの内容で ある。 た だ し, この a
'は別 に
1の一般的 な期待値 汎函数 ∈E剖な ら何 で もよ く, a
'を動かす とそれ につれ
「
真 空」状態 に限 らな くとも9
a
,
もどん どん動 いて しま うので,一般 に 1つ の Hi
l
ber
t
空間 を f
i
xす るわけには
てa
,
か ら改 まる 「
理論」 魯`
J
Cl,a'
J
32には,9
L
いかないo例 えば,無限 自由度 系 の重 き 旦 温度 に対す る二 つ の平衡状態 (KMS状態 )a'
の di
s
j
oi
nt表現 7
r
w
p1,㌔ 82が対応 する (i
・e.二 つの表現 の どん な部分表現 の pa
i
rもユニ タ リー同値 に
し,系 の物理量 の作用 で この 2つ の 「
理論」を結びつ けるこ と
な らない )ので, ㊨ W
plと㊨ u
p2は 「直交」
はで きない。つ ま り,温度 を変 える操作
1
/81- 1
/82を物理的過程 と して実現す るには,系融 の生 旦三
互
の何 らか の作用が必要 になるわ けだが, こ うい う具合 に, Hi
l
ber
t
空間 ㊨a
,
の レベル で は滑 らか につ なが
*
-)代数上 の st
at
ea,の レベルでは 自由に動 かせ る とい うのは,代数的定式 化 の メ ・
)ッ
らない ものが, (C
トの 1つ といえよ う。
mi
xedst
at
eまでが 1個 の vect
or3
2
Wで(
21
の形 に書 けて しま うのは奇妙 だ と思 われ る人 もあ るか も しれ
ないが, これ は別 に不思議 な こ とではない. PをHi
l
be
rt空間 卓上 の de
nsi
t
y ma
t
r
i
xとして,mi
xe
d
1
s
t
at
ea
,
(
A)… Tr
(pA )
を考 えるな ら, p豆は Hi
l
be
r
t
Sc
hmi
dtc
l
assの oper
a
t
orがっ くるHi
l
bert
空間
(∼ ㊨㊥ ⑳ )に属 す る t
ve
ct
or'であ って, Ba
,
≡
1
p
喜
, 打a
,
(A)O-Ao(o∈魯⑱ 各 )とすれば,Hi
l
be
r
t
-
sc
hmi
dt内積 < げ, T >HS…Tr(㌔丁)を用 いて
414-
「
進化 の力学- の場 の理論的 アプロー チ」
< Bw,打u(A)1
2
W>HS- T,(p
2
i
AP去)- Tr(pA )- a
,(A)
が成 り立っ。 1つのst
at
evec
t
orJ
2
Wが pur
eか mi
xedかは, Ba
,
だけをい くらい じくり回 して も決 まる こ
とではな く,次 の定理 が示 すよ うに,臥 ,
で表現 された物理量のつ くる代数 打a
,
(g
L)が B(㊨W)の中 で占
めるrel
at
i
veな t
s
i
ze'に依 るこ とな のである :
定理
a
'∈ E9
1
がpurest
at
e
- 表現 (打w,㊨a
,)は壁
£ 三w
s:gu
,
r
,≡ Tf
?…'
B (bw, ;[B,wu(A,]=. VA∈剖 }
;]∈Ci…Cl
㊨W
⇔ 打G
,
(
・
切)
〟- B (
夢a
,)0
-
tllか
直交補空間 を 2回 とる操作 でHi
l
be
rt
空間 の部分空間 K の閉包 K
-が得 られ る :K⊥⊥ -K
q,ように,方Q
,
(
9
1
)
の doubl
ecommut
ant打a
,
(9
1
)
〝は, oper
at
orの弱収束 の意味での閉包 に等 しく (Von Neumannの定
理 ),従 って, a
':pureとい うこ とは,表現空間 軋 ,
の任意 のopera
t
or(∈B(
㊨a
,
))が,上 の位相 の意
,
(
A)(A ∈91)によって十分 よ く近似 され るとい うこ とを意味する。 これ に対 して,三三
味 で物理量 打a
空主
三重 の とき札 すべての物理量 打a
,(A), A∈g
L, と可換 で非 自明 な oper
at
or≠ 11倉
が存在 し :打a
,
(
i
)
(g
L)′≠Cl夢心,従 って,我 々の手持 ちの物理量 の全卵 W(%)を動員 して も, 夢Wの中のst
at
esを区別 し
切 るだけの情報が得 られ ないこ とにな るO即 ち, 打W(9
1)′の中に uni
t
ar
y oper
a
t
orU≠ 11軋 , が必 ず
とれ て,
W (A)- <Bw,7
㌔,(A)3
2
a
,
>- <U3
2
W,7
㌦ (A)UBa,>
となるので, 2つの相異なるve
c
t
orsi2a,, UJ
2
a
,
が同 じ1つの s
t
at
ea
,を与えることになっている。
i
i
)古典系 と量子系 の関係
もうー っ, この一般論 の レベルで見てお きたいのは,古典系 と量子系 の関係 について の理解 の仕方で あ
る。古典系 とい うことを,物理量 め代数 9
1の可換性 として一般的 に把 えるこ とにす る と, (単位元 をもっ
C*
一代数 の範境 では )9
Lは実 は或 る (compac
tHausdorf
f)位相空間 B上 の連 続 函数 全 体 C(B)に一致
す ることがわか る (Gel
'
f
andの定理 )。 ここで注 目したいのは,初 めに函数空間な ど とい うもの を仮 定
せず,単に抽象的な可換 C*
-代数 g
Lとい う代数構造 (+ 由の位相 )だけか ら出発 したに もかか わ らず, 初
にそ の上 の連続函数環 としての具体形 を与 えるよ うな空間 βが 自動的 に出て きて しまうとい う点である。
この空間 Bとは,実 は9
1
上 のpurest
at
eの全体に他 な らないが, I:purest
at
e∈ Bの条件 は1
, この場
令, く
c
har
ac
t
e
r'の条件
x(AB)- I(A)I(B)
(A,B∈9
1)
と同等で ある。抽象的 な可換 C*
一代数 9
1の元 A と 「具体的」 な連続函数環 C(1
2)の元 A とは,
-41
5-
研究会報告
<
A (x)- I(A )
( x ∈ B)
∧
で結ばれ, Gel
'
f
and変換 と呼ばれ る対応 A- Aは Fouri
er変換 の弓投化 で もある。 この対 応 に よって,
t
at
ea
・とは, B上 の確率測度 pa
,と見な され,
敬上 の「股的 な s
人
a
'(A)- Ji
2A (I)dF
e
o
,(I),
<
<
pures
t
at
ex∈ 釧 ま, B上 のDi
ra
c測度 ∂
x ;I(A)- A (I)- ∂
x(A), に他 な らないo s
t
at
ed
,に対
I
)
(
応す る GNS表現は, 軋 ,
- L2(B,〟a
,), B山(x)… 1, (7
㌔,
(A)
<
∈
I)- A(I)E(I)(f 乳 ,
)
,
●●●
で与 えられ, 打a
,(g
L)
〟
- L∞(a,pa
,
)とな る。 この とき,古典的 な意味 のゆ らぎ とは, s
t
at
e叫 こ対応す
る健率測度 pa
,
の (台 の )「
拡 が り」 に対応 す るだ ろ う。それ を pur
est
a
t
eにまで分解 して しまえば, 得
られ る ものは く
phasespace'Bにおける拡が りのない定 まった 1点 xで あ り,そ の GNS表現空間 ㊨x
∼
-C
<
は 1次元, 打x(A)- x(A)- A (I), でそ こには最 早 「ゆ らぎ」 ・「
構造」は残 らない。これ に対 して,
t
at
eとして もうこれ以上分解 で きない pur
est
a
t
ewに到 達 す
9
1が量子系 を記述 す る非可換代数 な らば, s
t
ri
vi
alな非 可換代数構 造 を もった 既約 表
る ところまで完全 に状態指定 を し切 って もなお,そ こには non,
,打W,Ba
,
)が残 る [とい うよ りむ しろ,既約表現 での量子論が, 「普通 の」量 子論 と して イ メー
堤 (率a
t
orst
at
e-pures
t
at
eとい う思 い込 み の原 因 だった わ け なのだが
ジ され てきた ので あって,それが vec
●●●●●
-・
-・
]。そ の nont
r
i
vi
alな内部構造 こそが量子 ゆ らぎを与 えるもの とみ なされ るべ きだ ろ う。 (まだ dynami
csを入 れ てない この段 階で言 うのは多少早 とち りの嫌 いがあるが )しば しば問題 に され る ≪古典 論
な ら,有 限体積 中の有 限 自由度系 で もKf
l
ow (や c
haos)が あ りうるのに, ど うして量子 論 だ とそ うな
らないのか ?≫ とい う事情 の 自然 な理解 には, この観点 か らの比較 が必要 と思 われ る。 つ ま り,力学変数
の視 点か ら, phas
espaceの変数 (q,p)と量子論 的演算子 (q
^ ,a)との対応 を考 えるのは 自然 だ と し
t
at
eの観点か らす るな ら,量子論で の正準交換関係
て も, s
[q,"
p]- i
blの既約表現← pure s
t
a
teに
"
古典論 で対応 すべ きものは pha
ses
paceの 1点 なので ある。解軌 道 の初期条件への鋭敏 な依存性 というよ
うな問題 は,明 らか にこの後 者 の s
t
at
e(と勿論 dynami
c
sも )の観点か らみ るべ き もので あ り,古典 論
での誤差, ゆ らぎに含 まれ る phas
es
pace上 の相 異なる 2点 xl, x2には, uni
t
ar
y非 同値 な 2つ の既 約
表現 が伴 な って いるのに対 して, (無限体積 中の )有 限 自由度 の正準交換関係 に対 す る 2つ の既約表現 は,
Yon Neumannの一意性定理 に よって,つね に uni
t
ar
y同値 になって しま うこ とに注意 したい。
何 にせ よ,上述 のよ うな代数 的定式化 によって,可換 ・非 可換 以外 の点 では何 ら区別 な く,古典系 ・量
子系 を同 じ枠組 で統 一的 に取扱 うこ とが で き, まさにそ のこ とに よって両者 の首尾一貫 した対応 関係 と共
に可換 ・非 可換 に 由来 す る本質的 な違 いが明 らか になる とい う点 は,特 に ミクロ ・マクロの相互関係 を考
える上 で重要 だ と思 われ る。
i
i
i
) dyna
m i
cs
物理系 の時 間発展 を考 え る際, Hami
l
t
oni
an或 いは Lagra
ngi
anの概念 の重 要性 は改 め て繰 返 す まで
もない。 しか し,無限 自由度 系 の量子論 -行 った とき, それが ど うい う形 を とって しか るべ き意味 づ けを
ompl
i
c
at
i
onを別 として も,決 して単純 で は な
与 えられ るか とい う問題 は,周知 の紫外 発散 にまっわ る c
-416-
「進化 の力学- の場 の理論 的アプローチ」
い。通常 の場 の理論におけ る,時間発展-時間並進不変性 の形 で考 えるにせ よ, ひ とたび真空や平衡状 態
を離れて非定常状態 を扱 うことになれ ば,それ は状態による対称性 の破 れ に他 ならず,真空状態に よる破
ymme
t
r
yge
ne
r
at
orとしての Hami
l
t
oni
a
noper
at
orの
れ としての対称性 自滅 と類似 の現象,即 ち s
br
eakdownに導 く可能性 は幾 らもある。Ha
mi
l
t
oni
a
n ope
ra
t
orの表現依存性 とい うこ とは, 無 限 自由度
ri
vi
alな形で理解 で きる。 この場合 ,対応 す るのは
の量子系 でな くとも,既 に古典力学 において非常 に t
phases
pac
e上 の Li
ouvi
l
l
eope
r
at
orだが, これ は, 1つ の時 間 不変 な混合状 態 として の Li
ouvi
l
l
e
measurepに伴 うGNS表現空間 L2(3
2,/
i)上で与 えられてい る. もし, pu
r
es
t
a
t
e-phas
espac
e上
の 1点 xを考 えるなら,それが不動点 でない限 り,時間発展 とともに別 の点 (-purest
a
t
e)に移 って し
pace飢′
∼
-C上 に Hamilt
oni
n ope
a
r
at
orは存在 しえない。 これ は極 端 な例 であ
ま うので, xの GNS s
し
るにせよ, YonNeumannの一意性 定理 の成 り立っ有限 自由度 の量子 力学 での状況の方がむ しろ特殊 ケー
スとい うべきなのである。 だ とすれば, (実 際計算や理論構成 の手続 き上 での便宜は別 として,少 な くと
l
t
oni
a
n ope
ra
t
orをpr
i
ma
r
yobj
ec
tとみなすのは,代数的定式化 の立場 にそ ぐわ
も概念的 には )Hami
な い。
そ こで,通常採用 され るのは,物理系 を記述する 。*
一代数 9
1
上 の 1径数 自己同型群 R∋ t- α.∋Aut乳
として時間発展 を代数的に把 える立場 である.各 t毎 に αt
は肇か ら9
1
、
- の (C*
-代数 の意味 で の )自己同
l)であって,
壁 (∈Autg
ao= Idg, as
.t= aSoato
st
at
ew ∈E.
gが もし室甚 状態, 0
,
。αt- a
,(∀t∈R), ならば, GNS表現 (魯W,打W,Ba
,)に掛 、
て,
Ua
,
(t)(方a
,
(
A)Bw)≡ 7
㌦ (αt
(
A)
)Bw
とす る ことで 軋 ,
上 の 1径数 uni
t
ar
y群 Ua
,(t)が得 られ, さらに t卜 αtが (強 )連 続 な らば, 魯O
,
上に
Hami
l
t
oni
a
n ope
ra
t
orHQ
,
が存在 して Ua
,(t)- el
t
Ha
,とい うf
ami
l
i
arな状 況が再現 され るO [とはいっ
て も, このHa
,
は Odepende
ntであ り,例 えば a
,
が T≠ Oo
K の温度平衡状態 な ら,そ の スペ ク トルは正負
,
≧ 0を要求す るな ら, 叫 まT- Oo
Kの
対杯 で,通常 のエネルギーのイ メージに必ず しも合致 しないo Ha
真空-基底状態以外 ではあ りえな くな るこ とに注意 した い。
] この状 況で,非平衡定常 状 態 の考 察 や不安
定性 と不可逆性 の関連づ けにおいて重要 な Kf
l
ow の概念 等,掘 り下 げるべ き問題 I
i, まだまだ幾 らもあ
るだろ う。
しか し,前節 で述べた よ うに,宇宙進化 の問題 も意識 しつつ我 々が今気 に しているのは,背景重力場や
外力 の もとでの非平衡性 や, さらには散逸性 ・不可逆性 をも取込 むよ うな一般 的 な視点である。た とえば,
背景重 力場や外力 の時間依存性 を許 し時間軸 の並進対称性 を破 った形で時間 発展 を記述 しよ うとす るな ら
ば,ず らしの時間幅 だけでは t
i
mes
hi
f
tは決 まらずに,起点 t
lと終点 t
2の両方 に依存 する。 したが って
先 の 。t
は 。t
2- t
lの形 におきか えねばな らない。多少 とも実際的 な議論がで きるのは今 の ところこの形
だけである (例 えば ,pr
e
l
i
mi
nar
y di
sc
ussi
onとして [5])が, しか し,場 の量子論や一般相対論 の観
点か らはこれでは不満足であるOそれは, 「tlか ら t
2-の t
i
meshi
f
t
」 とい う記述が既 に,時空 多様 体
417-
研究会報告
の中で gl
obalな意味 をもつ時間座標 tの存在 を前提 して しまってお り,そ のた め gl
obalhyperbol
i
c
i
t
y
のよ うな一定 の制 限 を予 め時空 に課す こ とにな る とい うのが まず一つ。 さ らに重要なこ とは, shi
f
tされ
e
l
i
kehype
rsur
f
a
ce上 )で.
,
乳の元 としての意味 をもたね ば な らない
る物理量 は各時 刻 t(の 3次元 spac
が,それ は紫外 発散 に よる場 の演算子 の特異性 を考慮す る と殆 ど不 可能 に近 い。意味 のあ る物 理量 を得 る
には,少 な くとも時間方向
の広 が.
りを許す必要が
あ り,時空 の有 限領域 o毎 にそ の中で時空的 に広 が った
■
.
.
.
.
.
.
.
I
物理量 のつ くる l
oc
alal
gebr
a乳・
Haa
gKast
l
e
rタイ プの枠組が要求 され る所以 である。
●(0)を考 える荒木 この枠組 で も,時間並進不 変性 としての時 間発展 な らば, あ らゆる時空領域 を一斉に時間方 向 - tだ けズ
ラせ る操作 として, 1径数群 αtによる記述 で間に合 ったが,非対称性 が入 る と, 各 局所 領 域毎 に動 き方
が異 な るのだか ら,最早 それ ではす まな くなる。 ど うい う記 述法が最適 か判断 の難 しい所 だが, 多様体上
oc
aldi
f
f
e
0の幾何学的構造 がすべ て擬 群構造 として把 えられ るのに鑑 て, と りあ えず ,時空多様 体 Mの l
mor
phi
smsγ '
.U-Ⅴ(U,Ⅴ:Mの localcharts)か ら成 る或 る擬群 Tを考 えて,各元 γに loca
l a
lge一同型 α,
:
敬.
(U)一 弘 (Ⅴ)が対応 す る としてみ よ う。 γ :U- Ⅴが相互に t
i
me
l
i
keなU,
Ⅴ
bra
sの間 の C*
を結ぶ とき, αγを時間発展 とみ なそ うとい うわ けである。 こんな広 い枠組 で主張で きる こ とが , ご く一
般的 な内容 に限 られ るのは 当然 だが, それで もい くっか の重 要 な教 訓は抽 き出せ るだろ う。
まず, γ1,γ2∈ I'が合成 可能 :γlOγ2∈ I
l
, の とき, α,lOγ2- α,
lOα,2を要求 す るのは 自然 であ り,
de
nt
i
t
yl
D:
0- 0 にほ 乳 (0 )の恒等写像 Id
g
l
(
D)が対応 すべ きである [つ ま り,(9
1
'
,α)は,多
また i
oc
a
lc
hartを obj
ectに もち, γ ∈ I
,をmor
phi
sm とす る c
at
e
gor
yとしての擬群 Fか ら, C
*
-代
様体 Mの l
数 のc
at
e
gor
yへの cova
ri
n tf
a
unc
t
o
r
]
(a*
,a
・)(A)- a
,(αr(A)
)
。
γ:
U- Ⅴ のst
at
ea'∈E封(Ⅴ)- の作用 は
(A∈切 (U)
),
(
4)
で与 え られる。散逸性 とい うこ とを考 えろ と, γが く
非常 に遠 く離 れた 'U とⅤ を結 び つけ る場 合 に まで
。rの同型性 を要求 して よいか ど うか問題 であ るが,少 な くとも,或 る 「狭 い」範 囲で の同勢 性は, 異 な
る時空領域で行 なわれ る 「同種 の」実験 を同 じもの と見倣 して, 「反復 事象」 を実現 させ るた めには不 可
欠 だろ う。それ な しには,量子 論 の確率解釈 [6]は成 り立 ちえない。 きわめて形式的 に単純 化 す るな ら
ば,それは γ-1の存在 に基 く
a
*
,
-1(a
・
)(α,(A))- a
,(α,-1oα,(A)
)- a
・(A)
とい う等式 の成 立 の問題 で ある。
i
v) Hei
s
enbe
rgpi
c
t
ur
e/Sc
hr
6di
nge
rpi
c
t
ur
e
具体性 は乏 しいにせ よ, これ で一応,物理量 , s
t
at
e及 び dy
nami
c
s, とい う最小 限必 要 な道具 立 て だ
けは揃 った ことにな る。そ こで,非平衡性,不可逆性 ,階層移行 の問題 を考 えるために, この三者 の相互
関係 をも う少 しみてお きた い。時間的 に変動 す る背景重 力場 を考 えれば,状 態 の非平衡性 はむ しろ自明の
g.局所温度 分布 や粒子 モー ド毎
こ とで あ り, 問題 は,具体的 に どうい う形 でその状態指 定が可能か (e.
の時間的 に変化 す る温度 を もつ状態 を どう与 えるか ? ),その時間的 変化 をど う記述 す るか, さ らには,
それ をどうや って具体的 に計算 可能 な量 (少 な くとも原理的 に )に結 びつ けるか,等 とい うこ とだ ろ う。
418-
「
進化 の力学 -の場 の理 論的ア プ ローチ」
こ こでは,前二者 において既 に異な る 2つの階層が絡ん でお り, その分離 と統合 の視 点が重 要に なるこ と
el
i
mi
naryな考察 を除 いて,全 くの ope
n pr
obl
em で ある。
を見 る。三つ 目は [5]での pr
i
se
nber
g表示 )とst
at
eのそれ (Sc
hr
adi
nger表示 )との関係 に つ いて
さて,物理量 の時 間発展 (He
は,周 知 のよ うに,通常 の量子力学 では, この二 っ の同等性 に何 ら問題 は生 じない。 しか し,相対論的場
の理論 -行 くと,既 にふれた よ うに, ≪時刻 t- Oでの場 の演算子 ≫ とい うものが (低次元 の時空 は別 に
s
enberg表示 の oper
at
orf
ormal
i
s
m のみが許 され る。 真 空状 態 は Ppl
して )意味 を失 うために, Hei
o>- Oに よって規 定 されて全時空 を雇 う非局所的 な概念 とな り,すべ ては, 4次元時空 の全体 を眺め渡
しては じめて決 まるこ とになる。 しか るに, この
「4次元 の全 時空」 が現実 の世界 にお いて覆 っている範
mul
si
on chamberや bubbl
e
囲 は と問 うな らば,実 の ところ,それ は素粒子反応 の起 こる舞 台であ る e
c
hamber, もっと広 くとって もせ いぜい加速器程度 の拡 が りの空間 と,実験 の継続 され る時 間 間隔程 度
の時空領域で しかな いのである。 (勿論, 素粒子現象 に特徴的 な スケールか らみて, この有限時空領域 を
無限大 とみ なす近似 の妥 当性 は疑 うまで もないこ とだが。)物理的 に見 るな らば, ここで我 々が Smat
ri
x
を介 して見てい るものは,散乱過程 を通 じての t
i
nst
a
t
e'か ら く
out
s
t
at
e
'- の状態
変化以外
巨
≡
:
i
主
≒
:
±
±
!
≠
±
≒
≡
≠ 弓 の何物 でもな
く, ≪物理量 のみが動 いて状態 は不変に留 まる≫ とい うHei
se
nber
g表示 の解釈 を文字通 りに とるこ とは
で きない。温度 ・圧 力や磁場 な どの変化 を通 じて動 的 な相 転 移現 象 を追 うとい うことになれ
ば,state
c
hangeとい うこ との重要性 は尚更 はっ き りす る。
hr6di
nger流 に状態 変化 を扱 う とい う視 点 をす べ
そ うい うわ けで,相対 論的場の理論 といえども, Sc
て追 い出すわけには いか ないのである。他方,異時間相 関 の与 える物理的情報の重 要性 を考 える と, He
n,out
i
se
nber
g流 の物理量 の時 間発展 も不 可欠 であ る。両方必要 となれば, その相互関係 が問題 だが,i
i
ci
tな時 間依存性 は t-±st
a
t
e
sにつ いては,熱 力学 と類似 の見方 で前後関係 のみ を残 して,そ の expl
の彼方に消 し去 られてい る。同 じこ とを, ここでの一般 的枠組 で考 えてみ ると話はそ う単純 ではな い。一
つは,物理量 とs
t
at
eで時 間発展 の 「
進行方向」 が逆転 す る問題 である。 これ は γ
∈Fの state- の作用(
4)
のc
ont
r
avari
anceの単純 な帰結 にす ぎないが,通常 の 1径数群 による時 間並進不変性 と して の時 間 発展
な ら,そ のヨ堕 堕の故 に こ うい うこ とは問題 にな らなか った。 しか るに,擬群 I
lに よる記述 で も,始時刻
t
lか ら終 時刻 t
2への t
i
mes
hi
f
tとい う記述 で も,非 可換性 は避 け られ ない。
α,:
.
g・(U)- {
野 (Ⅴ)
α*
r: Eg(U)- E似(Ⅴ)
αγ10r
2=
αrlO r2 - α
*
r2 ○α
*
rl
αrlOαγ2
*
r lを用 いて α芋-1を考 えれ ば, α,と α
*
;
-1の 「
進行方向」を揃 えるこ とは可能 だけれ ども, これ は標準的
な 1径数群 の時間発展 で の対 応関係 に反す る し,何 よ りも, これでは,不可逆過程 -の拡張 の道 を塞 ぐこ
とにな って しま う。
i
s
e
nberg表示 が果た してあ りうるか とい う問題 であ るO時間 発展 の効 果 を
も う一つは, 「
完全 な」He
すべて物理量 の動 きによ って表 わ し切 り,か つそれ を期 待値 に結びつけよ うとす るな ら,既 に Mi
nkow空間 での真 空状態 で 見た の と同様,時空多様体 Mの全 域 にわたってgl
obalに意味 をもっひとつの s
t
at
e
ski
が用 意 され て い な けれ ば な らない。 しか し,我 々の l
oc
alphysi
csの視 点か らは, まず得 られ る情報 は,
-419-
研究会報告
実験過程 と結びついた局所領域 o上 のl
oc
alst
at
ea
, であ り, く
gl
obalst
at
e'は,各 Oで与 えられた a
・の
全体 を consi
st
e
ntに貼 り合せて得 られ るはずのものだろ う。だが,それは, Mが gl
obal
l
ynont
ri
vi
al
な
●●●●
ら数学的 に不可能 な ことがあ りうる し, また, (不可逆 な )宇宙進化途上 では,過去か ら未来 をすべて見
通す 「
神」か 「
量子論的 La
pl
ac
e'
sde
mon」 の力 で も借 りぬこ とには物理的に実現不可能 な課題 である。
もう一度,相対論的場 の理論 に よる散乱過程 の記述 をふ り返 るな ら, 4次元的 s
pace
t
i
mevi
ewpoi
nt
に立
つ Hei
senbergst
at
eの概念 は,そ の中で展開 され る ミクロdyna
mi
csの boundar
ycondi
t
i
onに お け る
t
r
i
vi
alな構造 変化 が 問
変動 が無視 できるような局所的時空領域に限定 さるべ きものだろ う。時空の non題 にな るよ うな大 きな嶺 域 - の理論 の拡 張 ・接続 は, bounda
ry c
ondi
t
i
on の変化 を反 映 した 壁
cha
nge(それは ミクロ過程 の集積効果 として記述 され るべきものだが )を伴 なってな られ るのが 自然 だ ろ う。
つ ま り, ≪ ミクロの Hei
s
enbergdynami
cs≫ と≪「マクロ」の st
at
ec
hange≫ とい う, (少 な くと も )
2つの異 なる レベル を区別 し分離す る視点 の重要性 である。同 じこ とが,観測 における町田 ・並木 ・荒木
理論 で も特徴的 に見 られた。 これ は,三望生 の概念が,物理系 を特定 の 「
状 態」 に 「
揃 える」 た めの三望塗
prepar
at
i
onの過程 と深 く結 びついて規定 され, ミクロ系 をマ クロ的世界 との接触 を通 じて特徴づ けるも
のであ ることを考 えれば,決 して奇異な ことではない。
一旦分離 された 2つの レベルは,再び結び合 わ されて統一 的連関 を取戻す こ とな しには,一つの理論 を
構成 しえない。始時刻 t
lか ら終時刻 t
2-の t
i
meshi
f
tの場合 の簡単な考察 [5]か らは, この統 合 を可
t
at
eとObse
rvabl
e
能 にする ものは,相互作用表示 の見方であるよ うに思 われ る。実際, この表示 では, s
の時間 発展 の 「
進行方向」 は一致 してお り,
[5
]この段階でな ら無理 な く不可逆性 を持込 め る。相互作 用 表
示 は,相対論的場 の理論 での散乱理論 の場合,無限に広が った時空の Poi
ncar占不変 な真 空 とい う 「理 想
化」が帰結す る 「Ha
喝 の定理」 のために,単 なる摂動計算 の便法 に格下 げされて しまっている。 しか し,
漸近場 とそれ を結ぶ Smat
ri
xに よる巧妙 な定式化 も, よくよ く見れば,一旦否 定 され′
た相互作 用 表示 の
ess
enc
eを,相対論的 不変性 と調和す るきれいな形で ef
f
ec
t
i
veに復活 させた ものに 「す ぎない」o Lか も,
i
tす るが'
,有 限温度 の勢合には,形式 的 に あて はめ る とどんな場合 で もSそれは真空表現 には うま くf
レ
mat
ri
x≡ 1, とい う意味 のない結果 しか もた らさない [7]。重要 なこ とは,上に述べた 2つのスケ-/
の ef
f
e
ct
i
veな分離 とそれ を踏 まえて相互作 用表示 の物理的内容 の ess
enceを,如何 にcons
i
st
e
ntな謝
ヒ
の中に組入れ るか とい う問題 であろ う。それには,時間の ミクロ-マクロ ・スケ-/
レ変換 とそれ に対応 し
た形 での漸近条件- くりこみ条件 の見直 しがカギにな るように思われ る。
4. 終わ りに
本来 な ら, このあ とに不 可逆性 の問題,特 に,完全正写像による不 可逆 な dyna
mi
csの定式化, di
l
aト
segr
ai
ni
ng-条件付期待値- e
nt
ropy
i9ユニ不 可逆系 の可逆系- の埋 め込み とその 「
逆」 としての coar
生成,等 の問題 を,前節 の観点か ら考察すべ きであった。 しか し,既 に長 々 と書 いて しまった ので, これ
く
Ope
ns
yst
em",或 いは,
は他 日を期す こ とに したい。た だ一点触れてお きた いのは, ここで基軸 となる く
≪subs
yst
em →t
Ot
alsyst
e
m ≫, とい う階層間関係 の もう一 つの把 え方 の重 要性である。単純 化 して言
く
えば,対象系 を く
く
s
ubs
yst
em" とし,それ以外 の部分 を 「
環境」 と見倣す観点であるが, この分割 は必 ず
-420-
「
進化 の力学 への場 の理論 的 アブ ロー
ーチ」
●●
Lも空間的配置 に基 くものである必要 はない。 こ うい う視点 は,対象系 だけを扱 っているつ も りの前 節 の
at
e
Obs
er
vabl
eに関す る議論が示すよ うに,実 は量子 論 の一番基本的 な概念設定 の所にま
話 で も,そ の st
で忍び込んでいるもので あ り,町田 ・並木 ・荒木 理論 での観測過程-波束 の収縮 の議論 に も勿論, この間
題 は密接 に絡んでいる。既 に述べた ≪ bundl
e構造 , l
oca
l
o gl
oba
l(
->紫外-赤外 )≫, ≪個別 的構造
-分類空間 (-構造 の分類指標が形成 す る高次構造 )≫ とい う視点 と併 せて, ≪s
ubs
yst
e
m
埋込み
条件は期待値
t
ot
als
ys
t
e
m ≫ とい うこの図式 も,階層移行 を記述す る有力な概念装置 の候補 の一 つ だ ろ うo これ らは
多分別 々のものではな く,相互に深 く結びついてお り,然 るべ き具体例 に即 して,そ の相互関係 を掘 り下
げるこ とも,何れは有用に なるのではなか ろうか ?
文
献
占
[1] P.Nel
son & L.AI
var
e
z
Gaum ,comm.Mat
h.Phys.99,103(1985)。
[2] 並木美善雄, マ クロ系 の量子力学 と観測問題 [
物理学最前線 10 (共立出版 )所収]及 びそ こに引
用 された文献 を参照の こ と。
[3] 柳瀬睦男,現代物理学 と新 しい世界像 (岩波書店 )0
[4] 梅垣寿春 ・大矢雅則 ・日合文雄,作用素代数 入門 (共立出版 ) ;0.Br
a
t
t
e
l
i& D.W .Robi
ns
on,
Ope
r
at
orAl
gebra
sa
nd Qua
nt
um St
a
t
i
st
i
c
alMe
c
ha
ni
c
s,Ⅰ(Spr
i
nge
r)0
[5] Ⅰ.Oj
i
ma,pr
e
pr
i
ntRI
MS532(1986)(t
oa
ppe
ari
n Z.∫
.Physi
kC )0
[6] H.Ar
aki
,ETH Lec
t
ur
e
s(Ei
nf
i
i
hr
ungi
n di
ea
xi
omat
i
s
c
heQuant
e
nf
e
l
dt
he
or
i
eI)
1961/62を参照の こ と。
[7] H.Nar
nhof
er
,M.Re
qua
rdt& W.Thi
r
r
i
ng,Comm.Mat
九.Phys.9
2,247(1983)0
確率過程 の方法 による非平衡熱力学
京大 ・理
長谷川
洋
§1
.序
非平衡熱力学 に関す る昔 か らのテーマは 「エ ン トロピー生成 (e
nt
ropypr
oduc
t
i
on)」の問題 である。
これは文字通 り現象論 としての熱力学に出現 し, これ まで統計力学的 にその基礎 を与 えよ うとす る努力が
60年代初頭
なされ なが らも決 して成功 を収 めた とは云 えない非平衡系 に関す る基本問題 の一 つである。 '
まで の結果は deGroot
Maz
urの教科書 1によ くま とめ られてお り,確率過程 の方法 がこの問題 に有効 な
ものである ことが示唆 されている。一方,確率過程 の数学的手段は 70年代以降量子確率 過程 を も含 め著
しい発展 を遂 げているこ とが認 め られ, これ を駆使 して問題 に光 を当て ることは有意義 な ものがある。
'
60年代か ら'
70年代にか けてエン トロピー生成概念 を非平衡系 の研究 の道具立てに用 いた のは Ⅰ.Pri
gog
ineとそ のスクールで あった。そ の将来-の展望は巨視的体系が くかた ち'を形成 す る法則 を集大成 し
よ うとす るもので,彼がそ の書 2において 「
散逸構造 (di
ss
i
pat
i
vest
r
uc
t
ur
e)」 と呼んだ自然 の秩序形
-421-