下顎の不随意運動が起こり舌を噛む - e-CLINICIAN

◎下顎の不随意運動が起こり舌を噛む
不随運動について、下顎が自然に咀囑様に動く
状 態 が 急に出現し、発音 し よ う と す る と 舌 を か ん
でしまうとの訴え。神経学的にはこれといって異
常はないのですが、少し上腕二頭筋反射が充進し
ている位です。CT、MRIなど異常はありませ
ん。どのような病態が考えられるのかご教示くだ
さい。ま た そ の 治 療 も 併 せ て お 願 い い た し ま す 。
︵堺市、外科︶
り、口をとがらしたり、ゆがめたりなど、方向性
が不規則で突発的な運動がみられ、舌や口腔粘膜
を容易に咬んでしまう。舌辺縁に潰瘍を形成し、
言語も不明瞭となる。やがて舞踏病症状は全身に
拡がり、頭部を前後にふったり、ねじったりし、
肩をすくめる。上下肢におよび、歩行も困難とな
る。咬傷のため栄養障害を起こし、痩せてくる。
知能は正常である。四肢の筋緊張は低下し、深部
反射は低下する。
以上の臨床症状は、本例の下顎が自然に咀囑様
病︵3曾8 嬉 8 暮 ぎ 昌 8 巴 ω ︶ が よ く 知 ら れ て い
舌症を呈する疾患として有棘赤血球症を伴う舞踏
を咬むほどに強度のものはまれである。一方、咬
下顎の不随意運動には種々のものがあるが、舌
とが重要な特徴である。走査電顕標本により観察
本症では、末梢血中に有棘赤血球がみられるこ
極めて初期である可能性が残る。
症状がみられないことも異なる。しかし、本症の
また腱反射が充進していること、下顎以外に神経
に動く振戦様の不随意運動とは異なるものである。
る。二〇 ∼ 三 〇 歳 代 に 発 病 し 、 女 性 に 多 い ︵ 四
れる。しかし本例では、CT、MRI上異常はな
される。また頭部CTでは、尾状核萎縮が認めら
回答近畿大学神経内科助教授 高橋光雄
る。初発症状は口周囲の不随意運動で、その性状
かったとされており、問題が残る。
倍 ︶ 。 孤 発例もあるが、常 染 色 体 劣 性 遺 伝 様 式 を と
は舞踏病 様 で あ る 。 舌 う ち し た り 、 口 唇 を な め た
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動 き で 、 咬舌もまれである 。
レサール五㎎∼三〇㎎︶、口唇ジスキネジアの場
㎎∼一〇〇㎎︶、バクロフェン︵ギャバロン、リオ
ン症状がみられる。
本例の下顎の不随意運 動 は 、 発 語 し よ う と 舌 を
合、クロナゼパム︵ランドセン、リボトリール○・
本例の不随意運動が口周囲に限局しているとい
動かしているときの下顎筋の姿勢保持位あるいは
五∼六・○㎎︶、パーキンソニズムの場合、抗コリ
︵○・七五∼一・五㎎︶、クロルプロマジン︵五〇
企図時の状態における振戦である。振戦とは二次
ン剤︵アーテンニ∼六㎎、アキネトン三∼六㎎︶、
治療としては、舞踏病の場合、ハロペリドール
元に展開されるある種の リ ズ ム を も っ た 動 き で あ
姿勢保持位振戦の要素がある場合、βブロッカー
う点で、口唇ジスキネジア︵曾巴身葵ぎ8富︶が
り、安静時、姿勢保持位、企図時、などでみられ
︵インデラール、アルマール︶などが用いられる。
疑われるが、この場合も 、 口 唇 が ね じ れ る と い う
る。姿勢保持位振戦は各種の要因でみられ、こと
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に本態性振戦、老人性振戦などでみられる。企図
時にみられるものは小脳性であって、小脳半球、
上小脳脚に関連して発現す る 。 病 因 と し て 血 管 性 、
炎症性、腫瘍性など種々あり得るが、口唇に限局
して振戦するのは極めてまれである。パーキンソ
ン病に関 連 し て 振 戦 を き た す の は 、 口 唇 に お い て
も安静時にみられるが、舌堤時にさらによくみら
れる。ものを咬もうとするときには、振戦はとま
ることが多い。これらの場合も全身にパーキンソ
黛、