「非接触動力伝達装置」 プロスパイン(大崎市)

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年ほど前のことだ。社長の小林敬と二人で向かっ
たビジネスマッチングの商談会で、風力発電機用の新
研究開発を行うR&Dセンター長の操谷欽吾は「あ
の日」を振り返る。
「まさかあんなにダメ出しされまるとは、思ってい
もいなかった。でも、あの日が契機になったんです」
コーナでは、そんな企業を紹介する。
しい増幅器の開発をプレゼンした。すると、審査員か
ら「そんなものは無理だ」
「勉強不足」と厳しい声を
浴びた。
金型メーカーのノウハウを生かし、追い風が吹いて
いた風 力 発 電 事 業に参 画しよう と、入 念な準 備 をし
て臨んだつもりの商談会だった。だが結局は、厳しい
指 摘 を 受 けるだけで、開 発のための資 金を 得ること
はできなかった。
無念のまま帰途につこうとしたとき、審査員の一人
が「 もし興 味があれば」と、東 北 学 院 大の鶴 本 勝 夫
教 授を紹 介してくれた。鶴 本教 授は非 接 触の伝 達 機
少 し ずつ、取 引 先 ができ 始 め、半 導 体メーカーへ
の 納 入 が 決 まっていた 矢 先の2008 年、リ ーマン
ショックに見舞われた。取引が中止になり生産体制の
見 直 しを 迫られた。2011 年には東日 本 大 震 災の
影響でまたもや新規取引のチャンスを失った。あきら
めかけていた時、それまで取引のなかった食品や医療
分野から声がかかり、窮地を救われた。
そして現 在、自 動 車 関 連の取 引に力 を入れる。わ
ず か な 電 気 を 通 せ ば 歯 車のかみ 合 わ せや 分 離 がで き
る 磁 気 ク ラッチ の 開 発 や 車 両 生 産 設 備 用 の 試 作 に も
とりかかった。
「 宮 城ではこれから 自 動 車 産 業 が 核 となっていく。
県内のメーカーが成長するとともに、我々も躍進した
伝達装置。機械的に接触しなくとも「歯」の噛
場、医療機器など)で作業をする事業所などに、
製品を供給している。
■会社基本情報
社 名 : 株式会社プロスパイン
2 億 6,950 万円
38 人
大崎市松山次橋
http://www.prospine.co.jp/
資 本 金 :
従 業 員 :
所 在 地 :
WEBサイト :
2011年 10 月1日に松栄工機から社名変更
※2013年5月現在
(1)非接触動力伝達装置:試作品~量産までの開発、
設計
(2)熱処理加工:真空熱処理、安定化処理、サブ
ゼロ、超サブゼロ処理
(3)焼入型精密モールドベースの製作
(4)精密キャビ・コア、ポンチ・ダイの部品製作
(5)プラスチック・プレス精密金型の設計製作
■主な事業
■主な経歴
2003 年 「非接触磁気伝動ユニット」が「第7回み
やぎものづくり大賞(主催 宮城県)で最
高賞のグランプリを受賞
2006 年 「新連携事業」認定
2006 年 経済産業省「明日の日本を支える元気な
モノ作り中小企業 300 社」に選定される
2009 年 経済産業省「地域イノベーション創出研
究開発事業」に採択 誤を繰り返した。
と思いながらも、
実用化へ向けた可能性を感じた。
「こ
の「みやぎものづくり大賞」に出品。見事にグランプ
新しい装置の売り込みは容易ではなかったが、県内
外への展示会に積極的に参加してはメリットをアピー
2度の苦労を乗り越え、いま
さまざまな応用品を開発した。
事業の拡大を目指し、国の募集事業に積極的に応募。
リ を 受 賞 した。販 路 支 援の道 筋 をつけ ると、さ らに
商品化に向け、事業は大きく動き出した。
磁力を強化するため、鶴本教授が使っていたサマリ
「既存のものを入れ替えていくのではなく、自分た
ちで市場を創出していく必要があった」と操谷は話す。
工の技術、そして磁気歯車装置のアイデアがそろい、 ルし続けた。
記録装置のエンジニア。磁石の知識と、金型の精密加
プロスパインはもともと、機械加工用の金型部品を
手 掛 けていた。操 谷は大 手 電 機メーカー時 代、磁 気
実用化への挑戦
しれない」
。数日前の落胆が希望に変わった。
れな ら、う ちの会 社の技 術で( 商 品 化 )できるか も
さっそく 操 谷は研 究 室を訪れ、装 置の性 能 を確か 約半年に2回の作り直しと9回のテストを経て、社
めた。
「 磁石の形 状や設 置 技 術に改 善の余 地がある」 内の評 価で満 足のいく ものが完 成。す ぐさま 県 主催
食料品等の攪拌機などへの応用を期待されていた。
かくはん
ウムコバルトからネオジムに変更。さらに、磁石の吸
非接触動力伝達装置「プロスパインシリー
構 として、磁 気 を 使った装 置 を開 発。動 力 を 伝 える
ズ」は、磁石の吸引・反発の力を利用した動力
引・反発 力を最 大限に引き出す 歯 車づくりに試 行 錯
非接触
動力伝達装置
歯車が互いに接触しないことから、クリーンルームや
準が要求される場所(クリーンルーム、食品工
❶
発する企業や、先端技術を支える企業など
(文中敬称略)
触れ合わないため、高いクリーン度や衛生基
❹
宮城には、優れた技術を持つ中小企業が
い」
。常に先を見据えた挑戦が、成長を支え続けてい
る。
❸〜❼非接触の技術がさまざまな
かたちで応用されている。縦軸と
横軸という伝達方向の変更や隔壁
を通じた伝達も可能だ
❺
が、さまざまな分野で活躍している。この
❷顧客、現場に合わせてどういっ
た製品を作れば良いのかを事前に
分析できるのも同社の強みだ。
❻
たくさんある。世界トップシェアの製品を開
❶プロスパインを支える社員たち
み合いの力によって回転を伝える。金属同士が
❼
中小企業の挑戦
❷
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株式会社 プロスパイン(大崎市)
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