第10回 - 名古屋大学

1W 数学演習 II
標準 H210
担当教員 : 浜中 真志
研究室 : A453
E-mail:[email protected]
重積分の変数変換
作成日 : December 11, 2007 Updated : December 12, 2007 Version : 1.0
重積分の変数変換
[重積分の変数変換] D を xy 平面の領域, E を uv 平面の領域とする. uv 平面の領域
から xy 平面の領域への写像 Φ(u, v) = (x(u, v), y(u, v)) により, E は D に1対1に
写像されるとする.
領域 D, E は境界の点を含み, D, E の境界は連続で有限個の点を除き滑らかな曲線
であるとする. さらに x = x(u, v), y = y(u, v) が C 1 級で, x, y の u, v に関するヤコビ
∂(x, y)
xu xv
= det
が E で 0 になることはないとする.
アン
∂(u, v)
yu yv
このとき変数変換に関して次の関係式が成り立つ:
D
f (x, y)dxdy =
E
f (x(u, v), y(u, v))
∂(x, y)
dudv.
∂(u, v)
[コメント] E と D の対応が1対1でなくても, またヤコビアンが 0 となる点があっても,
そのような点の集合の面積が 0 であるならば, 上記の定理は成り立つ.
∂(x, y)
= r であるから (H206 問題 1),
[例] 極座標への変換 (x, y) → (r, θ) の場合,
∂(u, v)
D
f (x, y)dxdy =
E
f (x(r, θ), y(r, θ))rdrdθ.
領域として例えば, D = {(x, y) ∈ R2 | x2 + y 2 ≤ R2 , R > 0} をとると,
E = {(r, θ) ∈ R2 | 0 ≤ r ≤ R, 0 ≤ θ < 2π}. E の原点 (r = 0) で領域同士の対応が1対1
でなかったり, ヤコビアンが 0 になったりするが, 原点1点の面積はゼロなので問題はない.
問題 1. (重積分の変数変換) 下記の積分を適当な変数変換 (x, y) ∈ D → (u, v) ∈ E によっ
て実行せよ. (領域 D, E も図示せよ.)
(1)
D
(2)
D
(x − y)ex+y dxdy,
(x2 + y 2 )dxdy,
D = (x, y) ∈ R2 | 0 ≤ x + y ≤ 2, 0 ≤ x − y ≤ 2
D=
(x, y) ∈ R2 |
x2 y 2
+ 2 ≤ 1, a > 0, b > 0
a2
b
問題 2. (重積分の変数変換) 極座標を用いて次の積分の値を求めよ.
(1)
x2 +y 2 ≤1
標準 H2-1W07-10
x2 dxdy
難易度 : C
1
(2)
x2 +y 2 ≤2x
(x2 + y 2 ) 2 dxdy
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問題 3. (曲線で囲まれた領域の面積)
(1) 極座標表示された曲線 r = f (θ), (α ≤ θ ≤ β) と θ = α, θ = β で囲まれる図形 D の
面積は
S=
1
2
β
α
f (θ)2 dθ
で与えられることを示せ.
(2) R2 において式 (x2 + y 2)2 = x2 − y 2 で定義される曲線 (レムニスケート) で囲まれた
領域の面積を求めよ. (まず極座標表示をして r = f (θ) の関係式を具体的に求めよ.
曲線の概形も図示してみるとよい.)
問題 4. (ガウス積分とその応用)
(1) まず有名な定積分 (ガウス積分)
∞
I=
を証明しよう. I 2 =
R2
e−(x
−∞
2 +y 2 )
2
e−x dx =
√
π
dxdy と書けることを利用して積分値 I を求め
よ. (ヒント:極座標表示.)
√
(2) x → ax, (a > 0) と置き換えることで
∞
−∞
2
e−ax dx =
π
a
· · · (∗)
を示せ.
(3) (∗) の両辺を a で微分し, 次の積分を求めよ.
∞
−∞
2
x2 e−x dx
(4) (暇な人は) 次の積分を求めよ. (n は正の整数)
∞
−∞
2n −x2
x e
1
dx,
0
1
log
x
1
2
dx
今週の宿題 (提出期限は 12 月 19 日の演習開始時です)
問題 5. 次の積分の値を求めよ (m は整数). (m の値について場合分けを行う必要がある.)
D
標準 H2-1W07-10
(x2
1
dxdy,
+ y 2 )m
難易度 : C
D = (x, y) ∈ R2 | 1 ≤ x2 + y 2 ≤ 4 .
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今週のボーナス問題 (提出期限は 12 月 19 日の演習開始時です)
問題 6. (ゼータ関数とその特殊値:2 点)
数学において重要な関数というものはいくつもあるが, 数論において特に重要なものと
して, ゼータ関数というものがある.
∞
1
1
1
= 1+ s +···+ s +··· ,
s
n
2
n
ζ(s) :=
n=1
s はとりあえずここでは s > 1 の実数であるとする.
ζ(2) の値
∞
ζ(2) :=
n=1
1
1
1
=
1
+
+
·
·
·
+
+···
n2
22
n2
を計算しよう.
(1) (ウォーミング・アップ) まず無限和 ζ(2) が収束することを, 数列
n
an :=
k=1
1
1
1
= 1+ 2 +···+ 2
2
k
2
n
の単調増大性と有界性を示すことで証明せよ.
(2) 天下りであるが, 次の 2 変数積分を考える:
I=
D
1
dx dy,
1 − xy
D = (x, y) ∈ R2 | 0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1
∞
1
= 1 + t + t2 + · · · =
tn , (|t| < 1) を利用して, まず I = ζ(2) を示せ. (項別
1−t
n=0
に積分できることは認めて構わない.)
(3) ここから 2 変数積分 I を別な方法で具体的に計算する. まず変数変換
u=
y−x
y+x
, v=
2
2
を施す. この変数変換におけるヤコビアンの大きさ
∂(x, y)
は何か? また積分領
∂(u, v)
域 D を u, v 平面に図示せよ.
(4) 前問の変数変換により求める積分 I は
I =4
1
2
0
u
0
1
dv du + 4
1 − u2 + v 2
1
1
2
1−u
0
1
dv du
1 − u2 + v 2
となることが分かる. (被積分関数の v → −v の対称性に注意.) これを示し, v につ
1
dx の積分値は?)
いての積分を実行せよ. (ヒント:
a2 + x2
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(5) 前問の計算により,
I =4
1
2
0
√
1
Tan−1
1 − u2
√
1
u
1 − u2
du + 4
1
2
√
1
Tan−1
1 − u2
1−u
√
1 − u2
du
が得られている (はずである). 右辺第一項で u = sin θ, 右辺第二項で u = cos θ の置
π2
換を行い, この積分値を評価せよ. (答えは .)
6
こうして有名な等式
∞
ζ(2) :=
n=1
1
1
1
π2
=
1
+
+
·
·
·
+
+
·
·
·
=
n2
22
n2
6
(1)
が証明された.
なお無限和の部分は次のように無限積の形に書き換えることができる (ヒント:素因数
分解の一意性):
∞
n=1
1
=
n2
1
1
p:素数 1 −
p2
=
1
1
1− 2
2
·
1
1
1− 2
3
·
1
1
1− 2
5
··· .
したがって
1
1
p:素数 1 −
p2
=
π2
6
(2)
という関係式が得られるが, これはとても不思議な式である. 左辺は素数全体に関する積
であり, 整数論と関連する. 右辺は円周率を含み, 幾何学的な情報を含んでいる. したがっ
て等式 (2) は, 整数論と幾何学を結ぶ深遠な関係を示唆していると考えられる. (ちなみに
この関係式は 1735 年に天才数学者オイラーによって証明された.)
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