J apanese tex t 2013年 春/夏号 日本語編 デザイン その唐紙を、数百年前から伝わる板木を用いて手作業でつく 京都のある暮らし 。「桜草唐草」も り続けてきた、ただ一つの老舗が「唐長」 ―優美なデザイン、手仕事の美しさ そんな歴史ある板木の一つ。広く上へ広がる唐草の文様は 繁栄を意味し、特に京都の町人に好まれたデザイン。かつ 写真=小林庸浩 コーディネート=八木咲代 文=編集部 ては襖などの建具が主流であった唐紙は、唐長によって現代 撮影協力=公益財団法人日本ナショナルトラスト 生活にも活きている。 撮影地=旧安田楠雄邸 p.082 名刺サイズカード(50 枚入り)3500 円 1200 年続く歴史をもちながら、常に未来を見据えている町、 京都。そんな町から生まれた品々は、やはり伝統と未来の香 唐長 四条烏丸 りがする。古いだけでも、目新しいだけでもない、家に持ち 京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町 620 COCON KARASUMA Tel. 075-353-5885(火曜休) 帰ることのできる「京都」たちを紹介しよう。 www.karacho.co.jp [email protected] 「絞り」の技術を軽やかにまとう p.084 さまざまな「絞り」の技法を駆使して、現代に合う製品を作 り続ける「片山文三郎商店」 。「唄絞り」の技法で作られたス カーフは、波のような地紋のシルクシフォン生地を、萌葱か ら浅葱色のグラデーションに染めた春の彩り。イヤホンジャッ ク穴に差し込むアクセサリーは埃を防ぐだけでなく、星の煌 めきであなたの電話を見つけ出しやすくしてくれる。一見金 属にも見えそうなツノも、布製のため電話やポケットを傷め ない。 砂糖で描く、あなただけの絵 原材料、砂糖、水飴、澱粉。これらを練り固め、型押しした 干菓子が落雁である。お茶席にも使用される格調高い菓子 であるが、「UCHU wagashi」の落雁は一味違う。その名も 「drawing」 。置き方次第で自分だけのデザインを描ける、落 雁の新しい形である。「 『今』の和菓子を作ることが、100 年 先 の 和 菓 子 文 化 を 創ることに なる」と語るオーナー の 木本勝也さん。見た目だけではもちろんない。使用している スカーフ 2 万 1000 円 砂糖は国産の高級砂糖、和三盆。黒砂糖をまろやかにした イヤホンジャックアクセサリー 1050 円 ような、やさしい味わいが、口の中でほろりとほどける。 片山文三郎商店 Drawing 1 箱 20 個入り 630 円 京都市中京区蛸薬師通烏丸西入ル橋弁慶町 221 Tel. 075-221-2666 UCHU wagashi bunzaburo.com 京都市上京区猪熊通上立売下ル藤木町 786(月曜休) [email protected] Tel. 075-201-4933 uchu-wagashi.jp p.083 [email protected] 「唐紙」を贈る、「唐紙」で贈る 8 世紀頃中国から日本に渡ってきた文様のある紙。これを手 本として国内で独自の発展を遂げたものが「唐紙」である。 Copyright - Sekai Bunka Publishing Inc. All rights reserved. Reproduction in whole or in part without permission is prohibited. Spring / Summer 2013 Vol. 31[ 京都デザイン ] 1 p.085 夫紀子さんは「涼むというよりは、クラッチバッグの代わりに ポリエチレンの可能性に魅せられる 持つ手元のアクセサリー」と語る。扇ぐ際は顔ではなくバス ビニール袋などに多く使われるポリエチレン(略称 PE) 。こ トラインで。手首を使って風を送れば、ひときわエレガント のフィルムを数枚ずつ重ね、さまざまな電気ゴテを使い分け である。 ながら、1 秒間に数センチずつ溶かし固めていく。そうして できあがるのが PE(ぺ)のバッグ。厚い所では 50 数層に もなるというから、その手間や推して知るべし。デザイナー であり職人でもある佐藤延弘さんがたった一人で作り上げて 檜扇 2 万 5000 円 坂田文助商店 京都市下京区五条通柳馬場西入ル塩竈町 379(水曜休) いる。「普通のプラスチックバックと同じ?」 。全然違う。フィ Tel. 075-351-7689 ルム層の間には微細な空気が閉じ込められ、生地に弾力と [email protected] 耐久性を生む。表面には熱による凹凸が生まれ、独特な質 p.087 感と光沢を醸し出す。耐久性、耐薬品性、耐水性に優れた 素材。軽くて丈夫、彩りも豊か。そう言われてみるとこんな 気分に合わせてインセンスを楽しめる贅沢 にバッグに向いている素材はないような気がしてくるから不 この国には古くから香りを「聞く」という文化がある。目に 思議だ。 見えないものに意識を向け、読み取ろうとする力。感情の波、 天候、温湿度、体調などによって欲する香りはさまざま。「リ A4 トートバッグ:320 × 540 × 150mm 約 250g 2 万 1000 円 スン」は 150 種類以上ものラインナップで人々のニーズに応 A3 バッグ:520 × 330 mm(手提げ部分除く)約 380g 1 万 8900 円 える。7cm 長のインセンスは 1 本焚くのに約 20 分。流れて A4 バッグ:365 × 230mm(手提げ部分除く)約 180g 1 万 3650 円 ※ 時期によって販売されている色が変わります。 ゆく煙をゆったりと眺めながら遠い国に思いを馳せれば、空 気の色すら変わる心地がする。 ※ 色のオーダーは数ヶ月お時間をいただく場合があります。 インセンス 1 本 31 円∼。 PULL + PUSH PRODUCTS. ガラスケース 105 円∼。 comado / shop & gallery インセンスホルダー RINGO 8820 円 京都市右京区龍安寺五反田町 15(不定休) Tel. 075-882-5010 LISN pe-product.com 京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町 620 COCON KARASUMA [email protected] Tel. 075-353-6466(不定休) www2.lisn.co.jp p.086 [email protected] 京の風を感じるアクセサリー 黒檀の角材から薄い板をスライスする。形を整え、下部を要 (かなめ)で、上部を一本一本色合わせをした糸で繋ぐ。ア p.088 広げればそこが京都 クセントのぼんぼりは四代目当主の古 裂コレクションから。 商品誕生のきっかけは唐紙店のご主人、嘉戸浩さんが、国 30 を超える工程、すべての始末の良さから生まれる存在感 外の展示会で商品を展示する台を探していたこと。小さく畳 は、17cm と小 ぶりな がらも圧 倒 的。 八 代目当 主 の 横 山 んで持ち運べること、安定性があること、上に載せた商品が Spring / Summer 2013 Vol. 31[ 京都デザイン ] 2 際立つテクスチャであること。それらすべてを兼ね備え、オ りだけでなく、シャープな風合いも醸し出す。またこの切れ ブジェとでも呼べそうなシンプルかつ美しい机ができあがっ 込みによって「手に馴染む」感触をも味わうことができる。 た。表面は唐紙を貼る下地の紙。黄みがかった、目にやさ 竹の特徴の一つ、軽さも忘れてはならない。約 77g のカッ しい色。夏の日差しを感じながら、縁側で読書をしたり、手 プの外側は、拭き漆をして生地の美しさを生かしつつ深い光 紙を書いたり。広げれば、そこが自分だけの京都になる魔 沢を出し、内側はウレタン塗装により耐久性を持たせている。 法の机である。 よく冷えたビールを口にしながら、伝統の技に想いを馳せ る。 紙の文机 /10 万 5000 円(税込)∼ ※受注生産 ※サイズ、紙の種類、色柄等のご相談が可能です。 竹カップ 各 9800 円 ※受注生産 ※納品まで約 2 ヵ月かかります。 高さ 165mm ※納品まで約 50 日かかります。 かみ添―kamisoe― ※+ 5950 円で内側を天然漆にすることも可能です。 京都市北区紫野東藤ノ森町 11- 1(月曜休) ※自然素材につき口径には多少違いがあります。 Tel. 075-432-8555 kamisoe.com 高野竹工 [email protected] 京都府長岡京市勝竜寺東落辺 14-15 Tel. 075-955-2868 a. 畳まれた状態では、30 × 30cm の正方形。綺麗に畳んで収納でき るのも職人の技の賜物。 www.facebook.com/TakanoChikko [email protected] b. 二つ折りの足パーツは、くの字に開いて左右対称に。 c. 三つ折りの天板パーツを足パーツの上に載せれば完成。紙でできた 蝶番は、表にも裏にも曲げられるこの机の要。 p.090 野山の変化を眺めるように、織と色の光を見る p.089 竹で味わう夏の涼味 京都のお寺や神社の竹林や古材を預かり、さまざまな形に 昇華させていく「高野竹工」 。嵐山駅のコンコースも高野竹 工の手によるものだ。今回は大切に寝かせていた京都・嵯 峨の竹から Kateigaho International Edition 特注の竹カップ を作っていただいた。竹の節をカップの底とし、自然な形を 生かしながら美味しいビールを飲める形を探る。しかし竹は 厚みが不揃いで、しかも中心線がとりにくいため、使える材 自体が少ない。茶道具の製作にも長けた高野竹工の看板職 人、増田宗陵さんは、花入れや茶筒などの製作経験を生か し今回のカップ作制にあたった。外側に同心円状に切れ込 みが入った特徴的なデザインは、竹の持つ素材としての温も 冨田潤、テキスタイルに詳しい人ならばこの名を聞いてピン とくるかもしれない。国際的に活躍する染織家である。富山 で生まれ、京都、オーストラリア、イギリスで学び、現在は 京都北西の田園地帯に拠点を置く。野菜を育て、半自給自 足の暮らしを送っている。古い民家を増築した自宅や、温室 を改造したアトリエの大きな窓からは、京都の大自然が広が る。「山をはじめ、日々変化する風景をぼーっと眺めること」 、 それがとても大切な時間なのだと冨田さんは語る。同じよう に見えて、毎日違う。対象物の変化もそうだし、受け取る側 の気持ちも違う。そのような気持ちを、この絣(かすり)作 品を見て感じてもらえたらと言う。 作品はどこまでも奥が深い。経糸と緯糸で織られたこの作 品は、糸の持つ物質感が折り合いながら、波を描き、光を 弾く。絵の描かれたキャンバスとは違い、立体であり、触感 Spring / Summer 2013 Vol. 31[ 京都デザイン ] 3 があり、温度があり、光がある。経糸に何度も染められた深 い深い色と相まって、何ともいえない情景を作り上げる。 パネル(S)210 × 295mm 2 万 6250 円 パネル(M)320 × 410mm 5 万 400 円 ※作品はすべて手作りのため個体差があります。 ギャラリー遊形 京都市中京区姉小路通麩屋町東入ル姉大東町 551 (第 1、3 火曜休)4、5、10、11 月は無休 Tel. 075-257-6880 Fax 075-212-8020 ※ P.82-91 の価格は、すべて消費税込みで表記しております。 Spring / Summer 2013 Vol. 31[ 京都デザイン ] 4
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