「社内の会議よりも面白い!」 ボで、これを強く実感した。 次々と出てくる。筆者自身、第 期生として参加したビズラ この環境に身を置くと、不思議なことに面白いアイデアが も異なる点は、参加者同士の先入観やしがらみがないこと。 スプランを練り上げていく取り組みだ。社内の企画会議と最 業種から集った人々が自由闊達に議論を重ねながら、ビジネ 「ビズラボ」は、新ビジネスを創出するための講座である。 講座といっても、いわゆる〝お勉強〞 ではない。さまざまな るのだ。そして、各参加者の 分間スピーチを全員でじっく ビズラボでは、各回の終了後に開かれる懇親会も重要だ。 懇親会といっても、単にのんべんだらりと食べたり飲んだり つ上のステップに上がることも多い かのグループや講師陣の指摘を受けて、ビジネスプランが一 る方向ヘと作用するのだ。さらに、中間発表や最終発表でほ れる。先入観としがらみのない環境が、議論をどんどん深め 種や職種の多様性が刺激となり、互いに新たな気付きを得ら しているわけではない。全員が〝楽しく〞 仕事の話をしてい り聞く時間を必ず設ける。それによって互いの理解が深ま い。さまざまな業界の現場に自ら足を運んで見聞する中で見 だ。実際には、同氏は決して奇をてらっているわけではな ると、最終的には魅力的なビジネスプランになるから不思議 〝すっとんきょう〞 な 多喜氏の口から飛び出すアイデアは、 ものばかりに思える。しかし、そのアイデアから議論を進め なる。ちなみに筆者は、第 期の B グループとなった。 参加者はいずれかに名乗りを上げることで、グループ分けと さんのアイデアを参加者の投票によって四つに絞り込み、各 ンの出発点となるアイデアを出すというもの。その後、たく 分野や得意技術、悩みなどを聞き出した上で、ビジネスプラ さまざまな刺激を受けて出来上がったビジネスプランは、 どれも甲乙付けがたい。第 期と第 期の参加者が練り上げ リアルツアーのたびにビジネスプランが大きく変わった。 新たな知見を得る貴重な機会だ。実際、筆者のグループは、 い。だから、訪問企業で活躍するイノベーターの生の声は、 のヒントが得られる体験だ。ほとんどの参加者にとって、日 面白い取り組みをしている企業 社を実際に訪問する「リ アルツアー」も、ビジネスプランを練り上げていく上で多く 参加者同士で新事業や協業の話が進むことさえある。 いるビジネスプランとは別に、裏メニューとして懇親会中に 1 最終発表へと進んでいく。ここで大切なことは、ダイバーシ グループに分かれた参加者は、グループごとに議論を重 ねる。その後、中間発表を経てビジネスプランを練り直し、 実現性の高いアイデアに昇華させているのである。 サルで引き出した情報と結び付けることによって、将来性や いだしたニーズがベースにある。世の中のニーズと公開コン ボへの参加を検討した方がいいかもしれない。 に議論しようとするだろうか。もしそうでないなら、ビズラ たの所属先の企画会議と比べて、どうだろう。これほど斬新 た八つのビジネスプランの概要を、左ページに記した。あな 常業務の中で本業と関わりのない企業を訪問する機会は少な 2 1 なアイデアは出てくるだろうか。出てきたとしてそれを真剣 2 12 リアル開発会議 2015 Spring/Summer ティー(多様性) である。グループを構成するメンバーの業 ビズラボでは、約 人の参加者が グループに分かれて特 定のテーマについて議論する。そのチーム分けに当たり、各 参加者は講師の多喜義彦氏から「公開コンサル」を受ける。 1 り、昼間の議論も活発になっていく。時には、昼間議論して 4 2 これは同氏が参加者と 対 で対話し、所属する組織の事業 20 1 2 4 高野 敦 ビズラボ第2期生(日経BP社 リアル開発会議編集) 「ビズラボ」 報告記 最終発表の様子 リアルツアーの様子 これまでに出てきた珠玉のビジネスプラン 第1期 Aグループ「iFood!」 B グループ「粉まみれ」 デジタルサイネージを活用して “ 内装 ” を手軽に変更できる料 粉 (粉体) に関する豊富な技術やノウハウを基に、 粉を必要とし 理店を開発。 日 (週) 替わりで多様なジャンルの料理を提供する。 会 ているユーザーに適切な “レシピ ” を教える 「粉ソムリエ」 サービ 員制にして信頼度の高い評価制度を確立したり、 料理人同士が競 スや、 ユーザーの要望とメーカーのラインアップを照らし合わせて い合うサバイバル企画から “スター料理人 ” を生み出したりする マッチングさせる 「粉コンシェルジュ」 サービスを展開する。 マッチ 仕掛けも用意する。 ングなどによる収入を見込む。 Cグループ「J★Point」 Dグループ「なんくる王国沖縄」 ウエアラブル機器やITを活用し、 人の運動によって生じたエネ 観光業が盛んで、 今後も観光客の増加が見込める沖縄を舞台 ルギーを、 さまざまなサービスに利用できるポイント 「J ★ Point」 に に、 新たなカーシェアリングビジネスを展開する。 住民の自家用車 換算してユーザーに還元。 この仕組みを活用した、 健康支援・運動 をデータベース化し、 利用状況をリアルタイムで把握。 空き時間は 促進ビジネスを展開する。 その過程で得たデータやノウハウを関 観光客が使えるようにする。 住民が観光地や飲食店を紹介する 連企業に提供し、 収入を得る。 サービスも検討。 第2期 Aグループ「三条市役所お仕舞課」 Bグループ「行動レコメンド」 金属加工業で知られる新潟県三条市で、 熟練技術者の技を全 顕在的な価値観と潜在的な嗜好の両方に基づいて人におすす 国に展開する事業を展開する。既存企業の存続ありきではなく、 めの行動を提案する 「行動レコメンドエンジン」 を開発。 就職や結 熟練技術者という個人に焦点を合わせて技術伝承を促進してい 婚など、 どうしても不安がつきまとうライフイベントを対象とした く (三条市として正式に決定した事業ではない) 。 マッチングビジネスに活用し、 利用者や関連事業者から利用料を 集める。 Pork System」 Cグループ「勝手にちょっと待て」 Dグループ「Gungun 自然災害から 「振り込め詐欺」 まで社会のさまざまな問題に対 GPS (全地球測位システム) で畜産の生産性向上を支援する。 し、 センシング技術や ITを使ってその予兆となる現象を観測し、 家畜のイヤータグに GPS モジュールを搭載し、 消費者や流通業 ビッグデータ分析で未然に防止するビジネスを展開する。 スマート 者などが固体単位で生育状況を把握したり、 産地を調べたりでき フォンのアプリとしてサービスを提供し、 月会費モデルでの収入を るようにする。 モジュールは無償配布し、 家畜の売り上げの一部を 見込む。 徴収する。 13 リアル開発会議 2015 Spring/Summer 「ビズラボ」言えない大事 もう1つの開発 「ビズラボ」は、その名称を「ビジネスプロデューサー 養成講座」や「ビジネス・アライアンス講座」などと変え したのです。一切、自分のことは自分でしますので、迷 りません。そんな時、この講座を知り、受講することに ある地方で開催した講座に参加した A さん、最初、 私は自分の目を疑った。松葉づえを両脇にして、どうや 下、この方を A さんと呼ぶ。 既に 1000 人を超える卒業生を輩出したが、中に は講師である私の人生を変えるような受講生もいた。以 いく、まさに実践的な新事業・新商品開発講座である。 が、異業種の受講生と一緒になって実際に開発を進めて ある。主に、開発を業務としているビジネスパーソン 救ってくれないのだろうか。 言葉を失うとはこのことか。 こんなことがあるのだろうか。こんなにひどい目に遭 う人がいるのだろうか。もしも神様がいるのなら、なぜ なってしまった。 鎖。私は、絶句したというよりも、目の前まで真っ暗に 何ということだろう。病気で倒れている間に工場閉 鎖。しかも、それを知らずに一生懸命にリハビリをし 惑は掛けません。どうぞよろしくお願いします」 「脳梗塞で倒れてしまったのですが、リハビリに励み、 ちながら、話した。まさに、真剣勝負。A さんの他に 講義も、真っ直ぐに私の目を見ながら聴いてくれた。 こちらも、目をそらすことができないような緊張感を持 たのです。倒れた時にはとにかく復帰しようと一生懸命 や一時金は出ました。でも、私の人生は終わってしまっ 員解雇。もちろん、上場企業ですからそれなりの退職金 のです。入院している間に、1500 人の従業員は全 他の受講者を激励するくらいのリーダーシップも発揮し ようにして、絵や文字を書いた。時には笑顔で、時には グループワークも、A さんは一生懸命に参加した。 不自由な手でペンを握り、ホワイトボードに寄り掛かる 義だった。 1 リハビリに取り組んだのに、動けるように、働けるよう 1 14 リアル開発会議 2015 Spring/Summer になったのに、工場閉鎖。もうお先真っ暗というしかあ ながら、日本中で 年ぐらい前から行われている講座で ってここまで来たのだろうかと心配になるぐらい、重度 対 で向き合うような感覚 講するだけではなく、グループワークもありますが、大 「なぜ、この 尋ねにくいが、尋ねなければならない。 講座に来たのか」と。心の中では、 「この講座は 人で受 丈夫でしょうか」と思っていた。それが、私の正直な気 さんは、毎回、遅刻もせずに、不自由な身体を、 A 文字通り、松葉づえで引きずるように歩いてきた。皆勤 持ちであった。 ようやく自力で歩けるようになりました。それで、早速 も 人の受講生がいるのに、 対 で向き合うような講 だった。 会社に復帰しようと思ったら、その工場が閉鎖していた 少し、言語障害が残る A さん、ゆっくりと話してく れた。 1 1 て、さあ、これから復帰という時に知らされた工場閉 の障害者だったのだ。 そして、最初に A さんの姿を見て懸念した私は、恥 ずかしくなった。 20 1 20 多喜 義彦 システム・インテグレーション 代表取締役 たき・よしひこ 1951年生まれ。1988年にシステム・インテグレーションを設立し、代 表取締役に就任。現在40社以上のコモン、日本知的財産戦略協議会理事長、パワーデ バイスネーブリング協会理事、ものづくり学校取締役会長、日本トレーサビリティ協会 事務局長、金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。 写真:加藤 康 イラスト:ニシハラダイタロウ その様子を見ながら、考えてもどうしようもない A さんの苦しみに思いを巡らす。 「工場閉鎖は何より辛か ていた。 し、生きる気持ちが続くのか続かないのか、それを確か で働くことは無理でしょう。ですから、この講座に参加 仕事を失い、それも慣れ親しんだ工場が閉鎖されたので に閉鎖とは…」 。ただ見ているだけで何もできない自分 めようと考えて、来たのです…」 す。このようになってしまった身体ですから、他の工場 ったろう…。もう 度、皆と働こう、そう思っていたの に、腹立たしい想いさえした。 ここまで言って、A さんは下を向いて黙ってしまっ た。そして、しばらくして再び話し始めた。 「受講して、私は、この講座でもう 度、自分の人生を る。だから、最終日にはグループごとに、企画したビジ けるだけの座学ではない、まさにリアルな開発会議であ 立ち上げるための企画書をつくる講座である。講義を受 て、もう 度、これからの人生を開発しようと考えまし いるだろうに、そして、死んでもいないのに。そう考え はいるだろうに、自分よりもっとひどい目に遭った人も 開発しようと考えるようになりました。自分より重症者 ビズラボは、グループに分かれて新事業や新商品を実 際に開発し、そのビジネスモデルを構築して、具体的に ネスモデルの発表がある。 1 ような気持ちになった。ちゃんと発表できるだろうか、 代表する発表者が A さんだと分かると、それは、祈る さんのグループの番が回ってくると、私は今まで A にないぐらいの緊張感に包まれた。しかも、グループを 「皆さん、私は死にませんよ。自分からは死にません。 ら、生きることしか考えなくなりました…」 りませんか。だから、前を向くしかない。そう考えた とがルールです。私も、ノーと言っても仕方ないではあ もう 度、しっかりと生きることを考えます。ありがと た。グループワークの開発は、絶対にノーと言わないこ A さん大丈夫だろうか。 うございました…」 ッとした表情を作る余裕さえあった。 さんは、まさに人生の開発をしたのである。今ま A での人生に区切りを付けて、次の人生をもう つ、開発 そこにいた全員が泣いていた。私も泣いた。涙が止ま らなかった。 仕方ないが、それを気にさせないユーモアと、時にキリ 私の心配は無用であった。それはそれは、A さんの プレゼンテーションは立派だった。少し滑舌が悪いのは 1 さぞや、現役の時はバリバリと仕事をされていたのだ ろう、部下にも慕われていたのだろう…。聴きながら、 1 涙が出た。 したのである。 ビズラボには、もう つの開発がある。 と考えたのである。 私もまた、あらためて開発をしようと考えた。A さ んに教えられ、私なりの、これからの人生を開発しよう 1 人生さえも開発する 発表を終えて、最後に A さんが言った。 「実は、この講座がもしダメだったら死ぬつもりでした。 15 リアル開発会議 2015 Spring/Summer 1 1 第3期 次世代リーダーのための 【業種横断】新ビジネス創出講座 業界不問。目標:事業化。期間:3カ月。慣例、常識、持ち込み不可。 リアル開発会議 2015 Spring/Summer 16 ビズラボとは… 「ビズラボ」 は、 幅広い業種の次世代リーダーを集め、 異業種の仲間との闊達な議論によってビジネスプランを練り上げる場です。 ビジネスプランの創出から事業化までを一気通貫で取り組める環境を整え、 企業の新事業創出を強力にサポートすることが目的です。 具体的なプログラムとしては、 全6回の短期集中講座と、 〝開発の鉄人〞こと、 多喜義彦氏による個別カウンセリング (1社1回) 、 新しいビジネスを成功に導いた先駆者と対話する 「リアルツアー」 (2回) で構成します。 全体概要 会場 第1回 8月21日 (金)13:00~17:00 システム・インテグレーション 内容/講義 1『これからの異業種連携 “Field Alliance” の進め方』 グループワーク演習と発表 第2回 8月28日 (金)13:00~17:00 内容/講義 2『経営資源を活かした新事業・新商品開 発の在り方』 公開コンサルティング体験(資源発掘) 開発テーマの決定 第3回 9月11日 (金)10:00~17:00 内容/午前 : リアルツアー 午後: 講義 3『ビジネスモデル概論』 講義 4『ビジネスモデルを堅守する知的 財産戦略』 グループワーク 第4回 9月25日 (金)10:00~17:00 内容/午前 : リアルツアー 午後:グループワーク 中間発表 講義 5『新事業・新商品開発というビジネスモ デル』 第5回 10月9日 (金)13:00~17:00 内容/ 講義 6『ビジネスをプロデュースする視点』 グループワーク 第6回 10月23日 (金)13:00~17:00 内容/グループワーク成果発表 講義 7『ビジネスプロデューサーと Field Alliance の時代』 詳しくは下記のサイトまで 会議室(東京・半蔵門)主催:リアル開発会議 受講料 648,000円(税込み) 講師 多喜 義彦 氏(たき よしひこ) システム・インテグレーション 代表取締役社長 石井 宏司 氏(いしい こうじ) 野村総合研究所 新規事業コンサルタント 受講特典 “ 開発の鉄人” こと、 多喜義彦氏による個別カウンセリング (新事業・新商品の提案その他) 1社1回 これまでの参加企業(順不同) 第 1 期(2014 年 10 ~ 12 月開催) NEC、セイコーエプソン、大日本印刷、IDEC、富士通、富士 通総研、 喜多村、 アイシン・エーアイ、 ベテル、 兵神装備、ロッ テアイス、日本印刷、オーシーシー、四国計測工業、本多電 子、 東洋電機、 光明興業、 松尾製作所 第 2 期(2015 年 2 ~ 4 月開催) 三島光産、喜多村、PFU、三条市役所、松尾製作所、エコト リビュート、アクセル、兵神装備、あおむし、オーシーシー、 ローム、NEC、日本印刷、四国計測工業、ライト国際特許 事務所、 古野電気、 東洋電機 http://techon.jp/real/project/bizlabo.html 17 リアル開発会議 2015 Spring/Summer
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