近江鍛工株式会社

バックアップ機を遠隔地に設置して
完全な二重化を図ることが急務
坂本 宏之氏
近江鍛工株式会社
専務取締役
近江鍛工株式会社
設 立:1951年
資 本 金:9945万円
従業員数:242名
本社:滋賀県大津市月輪
1丁目4-6
http://www.omitanko.co.jp
きなダメージとなるだけに、その対策
ビジネスの停滞はこれらの顧客層に大
なっています。突然の災害による同社
信 楽 工 場 で は 現 在、 日 本 の 鍛 造 メ ー
り大きな力が必要になるのだ。同社の
品になればなるほど、その鍛造にはよ
千トンとい
カーとしては最強の
5
部となる部品の鍛造を行なっていま
宇宙産業部品などあらゆる産業の心臓
海洋開発掘削部品、建機用部品、航空
車 輪 用 の 軸 受 け や 船 舶 エ ン ジ ン 部 品、
力によるローリング鍛造で、新幹線の
が、当社が得意とするのは高温・高圧
鍛造にもさまざまな種類があります
の生業です。鉄を鍛えて強い鋼を作る
2007 年秋に完了するタイミング
始した基幹システム再構築が
務︶ と 判 断 し、2 0 0 6 年 春 か ら 開
重 化 を 図 る こ と が 急 務﹂︵坂 本 宏 之 専
アップ機を遠隔地に設置して完全な二
報 シ ス テ ム が 稼 働 す る に は、 バ ッ ク
そこで﹁大地震が生じても支障なく情
大 地 震 の 可 能 性 は 常 に 存 在 し て い る。
そ し て 本 社 周 辺 に は 活 断 層 が あ り、
れる。同社システムの二重化は、世界
基幹産業に与える深刻な影響が危惧さ
面でのデメリットだけでなく、世界の
客企業が他社に流れるというビジネス
遭遇した場合、業務の停滞によって顧
つまり、同社が地震などの大災害に
存在だという。
このクラスのプレス機はごく限られた
り、世界の鍛造メーカーを見回しても
重要な意味を持っていると言えるだろ
す。﹂ と 近 江 鍛 工 株 式 会 社 の 坂 本 宏 之
ることを決定した。
う。
同社では横浜のJBCC運用セン
なサイズの鍛造が可能で、高度な技術
ら トンを超える超大型までさまざま
信楽と長崎に生産工場を持ち、小型か
生産拠点としては、本社工場に加えて
し て 私 達 の 生 活 と も 深 く 絡 ん で い る。
り、世界の重工業を支えるメーカーと
鍛造の大きな特徴であり、最新の技術
厳密に規定されるところがローリング
て、目的に沿って商品の形状も強度も
作業で自由に鍛造する刀鍛冶とは違っ
る。しかし叩き台とハンマーによる手
の 基 本 は 昔 の 刀 鍛 冶 と 同 じ﹂ と 言 え
に よ っ て 強 度 を 上 げ る﹂ こ と で、
﹁そ
鍛造とは﹁金属を叩いて鍛えること
策が実現することになった。
社内外からの強い要望であった災害対
不 測 の 事 態 に 対 処 す る﹂ こ と を 決 定、
ワーク回線も二重化することによって
化 し、 I P V P N に よ っ て ネ ッ ト
クアップ機を設置してシステムを二重
タ ー を 実 地 検 証 し た 後、
﹁こ こ に バ ッ
力を要する分野に強いことが特徴だ。
力に加えて装置も大規模なものが必要
社内外から注目される
災害対策
工業の基幹となるパーツであり、世界
﹁車 軸 を は じ め と す る 鍛 造 部 品 は 重
鍛造まで幅広いジャンルを手掛けてお
するシールドマシン用など大型部品の
造から、ドーバー海峡トンネルを掘削
同社では手の平にのる小型部品の鍛
の産業にとって一企業の盛衰を超えた
う加圧力を持つプレス機が稼働してお
万
については従来から大きな課題となっ
システム再構築と
災害対策を同時に実現
に合わせて、情報システムを二重化す
ていました。
﹂︵坂本宏之専務︶
1
世界の産業を支える
鍛造メーカー
﹁近 江 鍛 工 と い う 社 名 か ら も 明 ら か
近江鍛工株式会社
専務取締役は力強く語る。
なように、鉄鋼を鍛造することが同社
●企業データ
滋賀県大津市に本社を置く近江鍛工株式会社は2007年秋、
基幹システムの再構築と同時にバックアップ機を横浜のJBCC運用センターに設置、
大災害に備えたシステムの二重化を実現した。
新幹線、自動車、航空機、船舶、石油掘削機などの鍛造パーツで
世界にその名を知られるメーカーとして、
情報システムを充実しかつ災害時に備えた対策を確立したことで、
同社への信頼性はさらに高まっている。
の重工業メーカーが同社の主力顧客と
になる。重量が数十トンなど大型の商
今回のシステム再構築の大きな目的
現場が分析ツールを
使いこなす
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C u s t o m e r's
Special feature.3
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vol.194 Spring 2008
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てきた結果、新たなシステム環境への
必要に応じて新規プログラムを追加し
は、
﹁従 来 シ ス テ ム を 使 い 続 け る 中 で
グとなった。
ていた同社にとっても絶好のタイミン
で、二重化を実現する機会をうかがっ
が あ っ た﹂︵坂 本 宏 之 専 務︶ と の こ と
この熱エネルギーを得るために、昔
︵坂本宏之専務︶
の こ と な が ら 大 き な 熱 量 が 必 要 で す﹂
が活発になり、その基本となるデータ
を活用してのデータ分 析
JBCCへのアウトソーシングを基本
て、自社内に専門要員を持つことなく
同社では情報システムの運用につい
への取り組みを重視していることが特
ガス燃料を使用しているが、地球環境
ガス燃料が主力となっている。同社は
クとなることから、現在は電力または
燃焼効率や煤煙やタールの発生がネッ
は重油を使用していたのだが、重油の
対応がそろそろ限界に達していたこ
と﹂ と、
﹁各 現 場 で は 分 析 ツ ー ル
ベースを抜本的に再構築して今後の柔
と し て い る。
﹁ 保 守・ 運 用 は J B C C
データ処理を行なっているので、ユー
を活用して各自が自由 に
えて、石化燃料をエネルギー源としな
鍛造品を生産できるという技術力に加
る同社の技術力とは﹁大型・高品質な
も日本では最初の試みだ。鍛造におけ
w
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ザー企業としては情報システムの専門
がらもできる限り地球環境を保護する
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F
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W
﹁同社の基幹システムは﹃生産管理﹄
要 員 を 置 く 必 要 が な い﹂︵坂 本 宏 之 専
徴で、重油からガス燃料への切り換え
点に集約
軟な活用に備えること﹂の
さんにお願いしており、現場では
と﹃販売管理﹄から構成されます。同
務︶ と い う の が そ の 理 由 だ。 し か し
同社における地球環境重視は、最近
の社会風潮に合わせるという消極的な
姿勢ではなく、鍛造メーカーとして世
界の産業を支えてきた経験による強い
危機感によるものだという。
をも同時に実現するのはなかなか厳し
機を遠隔地に設置しての完全な二重化
造の専門メーカーとして知られていま
鍛造がありますが、近江鍛工は熱間鍛
さらに両者の中間温度で処理する温間
長によって、重工業を取り巻く環境は
さらに中国をはじめとする国々の急成
消 費 量 は 拡 大 の 一 途 を 辿 っ て い ま す。
のであることは言うまでもなく、その
石油といった石化エネルギーによるも
﹁産 業 革 命 以 降 の 近 代 産 業 が 石 炭 や
いスケジュールであった。しかし﹁同
す。熱間鍛造は鉄を真っ赤に焼いて叩
と、 常 温 で 処 理 す る 冷 間 鍛 造 が あ り、
﹁鍛 造 に は 高 温 で 処 理 す る 熱 間 鍛 造
技術力﹂の双方を意味している。
社では﹃生産なくして販売もない﹄と
いれば、いざという時に便利なことは
名でも自社内に専門要員が
生産管理システムが最優先されていま
確か﹂との気持ちもあり、これは今後
﹁た と え
す。しかし生産した商品を世界に出荷
もまた大きいことから、生産管理と販
売管理を含むシステム全体を一気に再
構築することになりました﹂︵光実幸典
主査︶
時に災害対策をも実現するという
大きな変化を遂げています。急成長と
1.当社は自社の活動をとおして省資源、廃棄物の削減、汚染の予防
に努めEMSの継続的改善に努めることを約束します。
2.環境関係法規制、協定等その他の要求事項を順守します。
という日本の最大にして最古の湖の環
同社が本社を置く滋賀県は、琵琶湖
の基本姿勢によるものだ。
してこれに前もって対処していく﹂と
環境方針
いて鍛える方法ですが、これには当然
影響は言うまでもなく、これは人類全
体の問題です。世界の重工業を支えて
きた企業として、まず自ら率先して地
球環境の保護するような形でビジネス
展開を行うことが当社の使命﹂︵坂本宏
之専務︶ というのが同社の地球環境
年 に は I S O 9 0 0 2 ︵現
I S O9 0 0 1 /2 0 0 0 ︶ 認 証、
2001 年にはISO14001 認
9100 ︶の認証を
産業における品質マネジネントシステ
証 を 取 得、2 0 0 7 年 に は 航 空 宇 宙
ム︵J I S
環境優先の理念をもって、自然環境と社会と人に優しい事業活動と
環境作りに努め、環境保全の充実による豊かな企業を目指します。
いう意味では世界のトップをひた走る
億トン
中国を例にとると、世界の粗鋼生産高
億トン中、すでに4. 5 ∼
億トンから 億トンに急増する
5
という大きな変化が地球環境に与える
間で
が中国産によるものです。わずか 年
5
情報のスピードを高める
環境基本理念
JBCCさんの提案は合理的で説得力
さらに加えて、新たにバックアップ
技術力を
地球環境保護にも応用
の課題と言えるだろう。
品質・高信頼の商品を生産するための
いうメーカーとしての考え方から、高
主査は話す。
されるとJBCC京都支店 光実幸典
2
するための販売管理システムの重要性
1
環境への取り組み
から対処するのではなく、危険を予知
も 通 じ る も の で、
﹁い ざ 何 か が 生 じ て
ム二重化を実現するという災害対策に
クアップ機を遠隔地に設置してシステ
護を実践するという同社戦略は、バッ
敏感な世界の重工業メーカーとの深い
きたことも知られている。地球環境に
護に向けた取り組みを早くから進めて
業とが協力して対応するなど、環境保
琵琶湖の保全についても一般家庭と企
付き合いに加えて、滋賀県ならではの
環境への認識の高さが、同社の姿勢に
も色濃く反映されていえるだろう。
基幹システムの再構築と二重化によ
る 災 害 対 策 を 完 了 し た 同 社 に と っ て、
う。
た稼働が大きな戦力となっていくだろ
進出に向けて、情報システムの安定し
成長が見込める宇宙航空分野への本格
る﹂ことが当面の目標だ。今後大きな
重 視 意 識 が 強 い こ と で 知 ら れ て い る。 ﹁情 報 の 収 集 と 判 断 の ス ピ ー ド を 高 め
境に深く関与していることから、環境
登録番号:JQA-EM1346
登 録 日:2001年2月23日
改 訂 日:2004年1月23日
更 新 日:2007年2月23日
適用範囲:本社、信楽工場、
長崎工場
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世界の産業を支えながら地球環境保
2001年鍛造業界での初の
「ISO14001」認証を取得。
1
取得している。
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ISO14001マネジメントシステム
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保護への基本的な考え方で、1999
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構成されている
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一気に再構築
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基幹システムは「生産管理」と「販売管理」から
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vol.194 Spring 2008
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生産管理と販売管理を含むシステム全体を
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近江鍛工株式会社
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C u s t o m e r s
Special feature.3
光実 幸典
JBCC西日本事業部 第二営業本部 京都支店 主査