情報の入手と加工 P 204 薬歴と SOAP ■ MEMO ■ 1.薬歴から読み取れる患者情報 1)薬歴とは 適切な患者対応を行うためには、患者の服薬に関する情報と、患者の主観的 な情報を収集し、患者のニーズを把握する必要がある。そのために重要なツ ールが薬剤服用歴の記録 (薬歴)である。薬歴は、患者の基本情報 (体質、既往 歴、アレルギー歴、副作用歴など)を記載した表書き部分と、来局ごとの情報 (処方内容、服薬指導内容、服薬状況、体調の変化など)を記載した本体部分 で構成されている。 2)表紙から読み取れる患者の情報・環境 ①年齢 ②性別 ③仕事 ④家族構成 ⑤既往歴 ⑥副作用歴 ⑦体質 ⑧嗜好品摂取状況 ⑨医薬品と相互作用のある食物の摂取状況など 3)一連の処方内容や服薬指導記録から得られる情報 ①患者の状態の変化 ②アドヒアランス ③コンプライアンス ④副作用 ⑤複数の診療科での処方状況 ⑥相互作用 ⑦医師への確認事項など ── 薬局実務実習指導 パーフェクトマニュアル付録 薬歴の表書きの例 1(紙薬歴) ID 123XXXXX 平成 19 年2月4日記載 平成 19 年 12 月 10 日再確認 平成 20 年 11 月 20 日再確認 ○山 一郎 患者氏名 性別・生年月日 男 昭和 40 年 02 月 04 日生 T E L 0 4 2 - 7 7 X - X X X X 住所 〒 228-xxxx 神奈川県相模原市○○ - ○○ 保険者番号 被保険者記号 被保険者番号 1234XX 1234XX X 公費 負担者番号 受給者番号 負担者番号 受給者番号 福祉 負担者番号 受給者番号 保険種別(負担) 有効期限 3 患 者 情 報 患者の体質 胃弱 通院中の他の医療 機関 有 無 (確認済み) 併用薬 有 無 (確認済み) アレルギ-歴 有 無 (確認済み) 薬 食べ物 副作用 有 無 (確認済み) 嗜好品 酒 週2~3回晩酌 たばこ 0本 その他 仕事 自動車運転 視力使用 高所作業 夜勤 機械操作 その他 特記事項なし 妊娠・授乳 その他 ── 薬局実務実習指導 パーフェクトマニュアル付録 薬歴の表書きの例 2(電子薬歴) 2)POS(問題志向型システム、problem oriented system)とは 患者が持っている医療上の問題に焦点を合わせ、その問題を持つ患者の最 高のケアを目指して努力をする一連の作業システム。単に診療記録を作る ことではなく、作成したものを監査し、患者の完全な科学的な根拠に基づ く診療記録をして修正し、患者のケアに活かす仕組みを提供するもの。 (日本POS学会ウェブサイトより) つまり患者が困っている問題の解決を重視する考え方。そのための分析手 法が 「SOAP」である。近年、多くの薬局薬剤師が、POS の考え方に従って SOAPで薬歴を書くようになってきている。 ── 薬局実務実習指導 パーフェクトマニュアル付録 SOAP で書かれた薬歴の本体部分(電子薬歴) 3)SOAPとは S(Subjective Data、主観的情報) 患者さんが話してくれた内容。患者さんが訴える自覚症状 O(Objective Data、客観的情報) 処方内容、検査データ、薬剤師の観察所見 A(Assessment) 主観的情報、客観情報に基づく評価、判断 P(Plan) 実施した (すべき)こと。服薬指導など 例) (S)子供が庭で泣いている。 (O)木の下で一生懸命穴を掘っている。 (A)自分で隠した宝物の場所がわからなくなったようだ。 (P)一緒に探してあげて、次は忘れないように、印をつけておくと いいよと言い聞かせた。今度宝物の在りかを忘れていないか聞 いてみよう。 ── 薬局実務実習指導 パーフェクトマニュアル付録 例) 実際の患者さんのエピソード (会話)と、それに応じたSOAP ■ MEMO ■ 56歳・女性・婦人科・更年期障害 処方せん ツムラ加味逍遙散エキス顆粒 (医療用) 7.5g 1日3回 毎食前 14日分 薬歴 S)症状があまり変わらない。食前に飲むのを忘れてしまいがちで、1 日に1~2回しか飲まないことも多い。薬は飲みきった。 O)前回と同じ2週間処方。前回は4週間前に来局。 A)コンプライアンス不良のため症状改善せず。漢方の服用方法につい て改善の余地あり。 P)食前に飲み忘れた場合は食後に飲んでください。基本は空腹時です が、食後になっても1日3回服用した方が効果は上がります。 2.調剤報酬における薬剤服用歴に求められる記載内容 1)薬歴の評価について ・薬歴の管理は、薬事法、薬剤師法で定められているものではない。 ・調剤報酬のなかで薬剤服用歴管理指導料として点数化されている。 2)薬剤服用歴管理指導料について 薬剤服用歴管理指導料は、保険薬剤師が、患者 (後期高齢者を除く) について、 次に掲げる指導などをすべて行った場合に算定することができる。 ①患者ごとに作成した薬剤服用歴の記録に基づいて、処方された薬剤の重複 投薬、相互作用、薬物アレルギー等を確認した上で、次に掲げる事項その 他の事項を情報提供し、薬剤の服用に関し、基本的な説明を患者又はその 家族等に行うこと。 ・当該薬剤の名称 (一般名処方による処方せん又は後発医薬品への変更が可 能な処方せんの場合においては、現に調剤した薬剤の名称) 、形状 (色、剤形 等) ・用法・用量、効能・効果 ・副作用および相互作用 ・服用および保管取り扱い上の注意事項 ・保険薬局の名称、情報提供を行った保険薬剤師の氏名 ・保険薬局または保険薬剤師の連絡先など ・患者またはその家族などと対話して、患者の服薬状況、服薬期間中の体調の 変化などの情報を収集。さらにその要点を薬剤服用歴の記録に記載すると ともに、これに基づいて、投与される薬剤の適正使用に必要な服薬指導を行 うこと ── 薬局実務実習指導 パーフェクトマニュアル付録 3)薬剤服用歴管理指導料算定に必要な記載項目について ■ MEMO ■ 薬剤服用歴管理指導料を算定する場合は、薬剤服用歴の記録に、次の事項な どを記載する。 ①氏名・生年月日・性別・被保険者証の記号番号・住所・必要に応じて緊急時の 連絡先等の患者についての記録 ②処方した保険医療機関名および保険医氏名・処方日・処方内容等の処方に ついての記録 ③調剤日・処方内容に関する照会の要点等の調剤についての記録 ④患者の体質・アレルギー歴・副作用歴等の患者についての情報の記録 ⑤患者またはその家族等からの相談事項の要点 ⑥服薬状況 ⑦患者の服薬中の体調の変化 ⑧併用薬等 (一般用医薬品、 医薬部外品およびいわゆる健康食品を含む)の情 報 ⑨合併症の情報 ⑩他科受診の有無 ⑪副作用が疑われる症状の有無 ⑫飲食物 (現に患者が服用している薬剤との相互作用が認められているもの に限る)の摂取状況等 ⑬服薬指導の要点 ⑭指導した保険薬剤師の氏名 ── 薬局実務実習指導 パーフェクトマニュアル付録
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