入院治療の新たな展開 く法改正を視野に入れて) 豊田 恵美子 (国立国際

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Kekkaku Vol.82,No.4,2007
入院治療の新たな展開(法改正を視野に入れて)
豊田 恵美子(国立国際医療センター呼吸器科)
【目的】今後結核は感染症法のもとに管理されるこ
みならず、治療継続の確保が入院治療の目的と考える。
ととなった。感染症法は急性感染症を主眼としている
法改正下で新たな展開の一歩は、行政、医療機関、国
ため、慢性感染症の側面が不明確である。退院後を含
民の結核への関心を維持することである。
め結核対策の視点で適正な入院治療を検討する必要が
【考察】法改正は病原体等の管理体制を確立し、最新
ある。
の医学的知見に基づく分類を見直し、結核を感染症法
【方法】1)法改正で変わる事項の確認 2)国立国際
に統合して総合的な対策を目的としている。蔓延防止、
医療センター結核病棟に2006年1月∼2006年12月の1年
人権尊重を念頭においた結核発生時の対応として法に
間に入院治療した結核患者の現状分析から、感染症法
従うべきであるが、結核治療、結核対策についてはそ
下で予想される問題を抽出する。3)残された問題と
の後が重大である。結核患者を治癒させることが結核
入院治療における対策を検討する。
対策の要であることは変わらない。ヒトヘの感染性が
【結果】1)結核は2類感染症に分類され、結核患者は
減少すれば拘束の必要はないが、治療を完遂させるこ
診断後直ちに届け出、72時問以内に「入院勧告」が強
とが患者の義務であり結核行政/医療の責任であるこ
制力をもって可能となり、入院延長は30日ごとに更新
とを強調したい。入院治療の適応は決して感染防止の
されることとなる。退院後の治療継続については想定
みではない。急性感染症との違いを十分認識し、安全
されておらず、適正医療への法的規定はない。多剤耐
で適正な治療が完遂されるように患者中心の医療が行
性菌については3種病原体に分類され、所持について
われる展開を期待する。
厚生大臣に届け出が必要となる。2)170人の新規結核
【結語】結核予防法が感染症法に統合され、結核医療
入院患者を対象として、現状分析を実施中である。3)
は変化している。入院治療は感染防止や拘束のためば
結核対策の最優先事項は今も「結核患者を治癒させる」
かりではなく、治療のバックアップのために機能した
ことである。入院治療も通院治療も適正な治療が行わ
いものである。
れ治療が完了することが肝要である。単に蔓延防止の