砂質土の標準貫入試験試料の含水比に対する検討

【76】
全地連「技術e-フォーラム2006」名古屋
砂質土の標準貫入試験試料の含水比に対する検討
東邦地水株式会社
1. はじめに
越山
賢一
表-1.含水比の範囲比較
範囲
一般的に標準貫入試験で得られた試料は、土の含水比
試験に用いることができる。
粘性土の場合、地下水はそのほとんどが付着水であり、
土の含水比試験を行えば、含水比は自然含水比に近い値
ω1 (%)
18.7~30.6
ω2 (%)
7.5~21.2
が得られる。しかし、砂質土や砂礫のような粗粒土では、
標準貫入試験後にレイモンドサンプラーから試料を採取
するまでに脱水して、自然含水比より小さな値を示すこ
以上のように、ω2はω1より10%程度低く、さらに全
地点ともω1>ω2で、明らかに脱水が認められた。
とが考えられる。
この脱水量を考えた場合、土粒子が粗く、粒度分布が
悪い程、脱水量が多くなると推定される。そこで今回、
脱水量と土粒子の粒径や粒度分布の関係について検討す
4. 検討結果
地下水の脱水量W(ω1-ω2)と土粒子の粒径,粒度分
布の関係は一次式で次のように得られた。
る。
D60との関係
2. 調査方法
W=0.037D60+11.293
河川敷において飽和度100%(飽和土)の地点で、RI(ラ
ジオアイソトープ)計測器を用いて湿潤密度を求め、土粒
子の密度から計算により含水比を求めた。これと同地点
で標準貫入試験を実施し、得られた試料を用いて粒度試
験,含水比試験を行い、脱水量と粒度の関係を求めた。
W=0.981D50+8.718
……(1)
(R=0.114)
……(2)
(R=0.246)
……(3)
(R=0.289)
……(4)
(R=0.379)
……(5)
D30との関係
W=4.319D30+4.843
D20との関係
W=7.392D20+3.668
調査は34地点で実施した。
(R=0.006)
D50との関係
D10との関係
3. 調査結果
W=15.061D10+1.184
粒度試験を実施した試料の粒径加積曲線を示せば、図
Uc(均等係数)との関係
W=-1.224Uc+18.111
-1.のとおりである。
(R=0.331)
……(6)
(R=0.017)
……(7)
(R=0.673)
……(8)
Uc’(曲率係数)との関係
W=0.652Uc’+10.812
100
90
Fc(細粒分含有率)との関係
80
通過質量百分率(%)
70
W=-7.886Fc+15.604
60
2.00mm 通過質量百分率(F2.00)との関係
50
40
W=-0.132F2.00+16.619
30
(R=0.172)
……(9)
0.85mm 通過質量百分率(F0.85)との関係
20
10
0
0.001
0.01
0.1
1
粒 径 (mm)
0.005
粘 土
0.075
シ ル ト
図-1.
0.250
細 砂
0.850
中砂
粗 砂
10
2
4.75
細礫
100
19
中 礫
75
粗 礫
粒径加積曲線集積図
W=-0.371F0.85+17.190
0.425mm 通過質量百分率(F0.425)との関係
W=-1.660F0.425+18.341
(GPS)および分級された礫質砂(SPG)に分類された。
(R=0.621) ……(11)
0.250mm 通過質量百分率(F0.250)との関係
W=-2.891F0.250+16.047
地盤材料の工学的分類法によれば、分級された砂質礫
(R=0.307) ……(10)
(R=0.685) ……(12)
0.106mm 通過質量百分率(F0.106)との関係
W=-6.474F0.106+15.790
(R=0.699) ……(13)
また、RI 計測器を用いて求めた湿潤密度から、計算に
より求めた含水比(ω1)と、標準貫入試験で得られた試料
の含水比(ω2)の範囲を示せば、表-1.のとおりである。
以上のように脱水量Wと粒径,粒度分布の関係では、
F0.106が最も相関が高い。
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脱水量と0.106mm通過質量百分率
5. 結果の活用
20.0
以上の結果から、例えば F0.106=1.2%で、ω2=17.0%の
18.0
16.0
時、15式に代入すればW=6.4%となる。
脱 14.0
水 12.0
量 10.0
W
8.0
% 6.0
W = -6.474 F 0.106 + 15.790
(R = 0.699)
標準貫入試験試料による含水比が17.0%であるので、
飽和土の真の含水比は17.0+6.4=23.4%を得る。
飽和土の含水比が推定できれば、その粗粒土の湿潤密
度が次のように求められる1)。
4.0
2.0
0.0
0.0
図-2.
0.5
1.0
1.5
F 0.106 %
2.0
2.5
ρt =
1+(w/100)
(1/ρs)+(w/S r・ρw)
……(16)
ρt:土の湿潤密度(g/cm3)
脱水量と0.106mm 通過質量百分率の関係
w :飽和土の含水比(%)
ρs:土粒子の密度(g/cm3)
また、一般的に土粒子の大きさや粒度分布と含水比に
は関係があることから、その点に着目し、脱水量Wと試
Sr :飽和度(%)=100%
験含水比ω2の関係を同様に求めた。
ρw:水の単位体積重量(g/cm3)
脱水量と試験含水比
例えば、土粒子の密度ρs=2.670,水の単位体積重量
20.0
18.0
ρw=1.0とすれば、上記の脱水量を考慮した含水比を代入
16.0
脱 14.0
水
12.0
量
W 10.0
8.0
%
して、ρt=2.03を得る。
6. 結び
今回、標準貫入試験試料の含水比に対する検討をする
6.0
4.0
W = -1.107ω2 + 25.867
(R = 0.720)
2.0
0.0
ことにより、自然状態の飽和土の湿潤密度を物性値だけ
から精度よく推定することの可能性を見いだすことがで
0.0
5.0
図-3.
10.0
15.0
試験含水比ω2 %
20.0
25.0
きたと考える。
ただし今回の場合、試験試料は全体に近似した粒径加
積曲線を示している。したがって、今回の結果は限られ
脱水量と試験含水比の関係
た範囲での検討にすぎない。さらに、全体的には試料数
W=-1.107ω2+25.867
(R=0.720)
……(14)
に対して相関係数が R=0.799とやや小さいため、試料数
を増やして粒度分布に変化のある試料についても検討を
14式のように脱水量Wと試験含水比ω2は高い相関を
示す。
加えたい。
また、地下水が脱水する現象を考えた場合、今回の値
そこで、脱水量Wと相関関係の高い0.106mm 通過質量
が有効間隙率に近い値を示していることも推定される。
百分率(F0.106)と試験含水比ω 2の両者を加えた重回帰分
不圧地下水では有効間隙率≒貯留係数といわれているた
析を行えば、次の関係式が得られる。
め、揚水試験で貯留係数を求めた地層で検討を加えれば、
新しい関係が得られるのではないかと考えている。
W=23.899-3.979F0.106-0.749ω2 (R=0.799) ……(15)
《引用・参考文献》
W :地下水の脱水量(%)
F0.106 :0.106mm フルイ通過質量百分率(%)
ω2 :試験含水比(%)
15式によれば、0.106mm フルイ通過量(F0.106)が多い場
合、つまり細粒土が多い場合は脱水し難いことを示して
いる。また、試験含水比ω2が大きい程、つまり全体的に
土粒子の粒径が小さい程、脱水が少ないことを示してい
る。
1) 地盤工学会編:土質試験の方法と解説,P151,2000.3.