第1章 円借款の概要 本章では、本ガイダンスの導入部として、借款形態、借款条件等の円借款の特徴を説明する。 1. 概要 JBICの「海外経済協力業務」では、1966 例えば、両政府間で予め合意された特定商品 (工業資本財、工業用原材料、農業資本財等) 年以来、開発途上国の政府及び政府関係機関 の輸入を目的とする貸付けや、包括的な経済 に対し、海外経済協力を推進する目的で、社 安定化のための計画に対する貸付け等が挙げ 会経済開発に必要な資金を、非常に譲許性が られる。 高い借款という形で供与してきた。 開発途上国は、電力、農業、交通、教育等 といった広範囲な分野にわたる開発に取り組 3. 借款条件 (1)貸付金利および償還期間 んでいる。しかし、多くの場合、開発計画や 円借款の貸付金利および償還期間は、日本 プロジェクトの実施に際して、資金調達やそ 政府によって決定される。2002年度に供与さ の他の制約から困難に直面している。JBIC れた円借款の平均金利は1.52%、平均償還期 は、民間金融機関から融資を受けるのが困難 間は33年1ヶ月(うち据置期間9年9ヶ月) な開発計画やプロジェクトに対して、長期で となっている。JBICは、環境関連や人材開 低金利という緩やかな条件で融資をすること 発といった特定のセクターやコンサルタント によって、こうした開発途上国の自助努力を 部分について、優先条件を適用しており、金 支援している。 利0.75%、償還期間40年(うち据置期間10年) まで緩和されている。また、我が国の優れた 2. 借款形態 円借款には、下記のような借款形態がある。 技術やノウハウを活用し、途上国への技術移 転を通じて我が国の「顔の見える援助」を促 進するために創設された「本邦技術活用条件 (1)プロジェクト借款 プロジェクト借款は、道路、発電所、灌漑 ( STEP: Special Terms for Economic Partnership)」の貸付条件は、金利0.40%、 施設、通信、植林、上水道、下水道、公害防 償還期間40年(うち据置期間10年)となって 止施設等、開発プロジェクトに必要な設備、 いる。最新時点での金利はJBIC年報やホー 資機材の調達、土木工事やコンサルティング ムページ(http://www.jbic.go.jp)等に掲載 サービスの実施に必要な資金を融資するもの されている。 である。 (2)調達条件 (2)ノン・プロジェクト借款 借款対象となる資機材やサービスの調達を ノン・プロジェクト借款は、一定のプロジェ いずれの国から行うかは円借款の調達条件に クトに限定するのではなく、借入国の国際収 従って決定される。円借款の調達条件は、日 支改善や経済開発計画や構造調整計画を遂行 本政府によってケースバイケースで決定さ する上に必要な資金を融資するものである。 れ、下記の4つに分類される。 1 ① 一般アンタイド 調達適格国を全ての国および地域とする もの。 ② 部分アンタイド 調達適格国を開発途上国(DACパート Ⅱ諸国を含む)及び日本とするもの。 ③ 二国間タイド 調達適格国を借入国及び日本とするもの。 ④ タイド 調達適格国を日本のみとするもの。本邦 技術活用条件がこれに該当する。 4. 融資比率方式 開発途上国では、内貨資金上の制約から公 共投資に支障をもたらすことが多い。従って、 内貨不足を補う目的で、1989年度に融資比率 方式が導入された。 融資比率方式とは、外・内貨を問わず、総 事業費に一定の融資比率を乗じた金額を円借 款の貸付限度額とする方式である。融資比率 の大きさは、借入国の一人あたりのGNIに基 づいている。但し、総事業費に占める外貨コ ストの割合が融資比率を超える場合は、外貨 コストが当該プロジェクトの借款限度額とな 2002年度に承諾された円借款の一般アンタ イド、二国間タイド、タイドの比率は各々、 88.1%、3.5%、8.5%となっている。 2 る。
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