第1編 調査研究報告 福井市内における街路樹の根上がり再発防止工事の概要 Overview of the preventative plan for roadside construction regarding the rising recurrence of tree roots in Fukui city 久保 光 ・舟木 亮太*・中島 洋一**・竹内 與幸*** 要 旨 福井土木事務所管内の主要地方道 福井四ヶ浦線沿い(福井市大手3丁目)に植栽されて いる街路樹(樹種:ケヤキ)の根切りを行い、植栽基盤を改良して、街路樹の根上がり再発 防止工事を行ったので概要を報告する。 キーワード:根上り対策、防根シート、舗装の破壊 1.はじめに 福井市内において、街路樹の成長に伴い根が太くな り縁石や舗装が持ち上げられる「根上がり」が発生し、 高齢者やベビーカーを押す歩行者の安全な通行の支障 となっているところが見受けられる。この根上がり対 策として、単純に根を切断し舗装を改修する従来の方 法では、街路樹を弱らせ倒木の危険性が高まったり、 根上がりが再発する可能性が高い。そこで、平成1 8年 度より福井 県 雪 対 策・建 設 技 術 研 究 所 と 東 邦 レ オ 図−1 (株)および(株)竹長は、街路樹の根上がり再発防 止対策の共同研究を実施してきた。 表−1 今回、福井市内の街路樹(ケヤキ)の根上がり箇所 において、根系調査および縁石、舗装ブロックの改修 とともに舗装下に根が良好に生育できる特殊な土壌を 造り、街路樹の良好な生育を図る研究開発した工法の 施工年月日 路 線 施工場所 樹 種 樹木形状 工事概要について報告する。 施工個所 施工個所の概要 平成20年12月8∼9日 主要地方道 福井四ヶ浦線 福井市大手3丁目 ケヤキ(植栽年:不明) 樹高=11. 0m 幹周=1. 5m 根元径=2. 0m 枝張り=11. 5m 2.施工概要 図−1は、施工箇所を示す。表−1は、施工箇所の 概要を示す。写真−1は、根上がりを起こしているケ ヤキの全景を示す。写真−2は、根上がり状況を示す。 ケヤキの植栽年は不明であるが、植栽後3 0年以上は経 過していると思われる。本工事は、ケヤキの根上がり 補修を行い、根上がり再発防止対策を行うことを目的 とする。現状の植樹桝の大きさは縦1. 0m横1. 0mであ るが小さすぎるため、根系調査を実施して植栽基盤の 改良範囲を決定した。 写真−1 ケヤキの全景 * 福井土木事務所 ** 東邦レオ株式会社 *** 株式会社竹長 −6 8− 福井県雪対策・建設技術研究所 年報地域技術第2 2号 2 0 09. 8 の部分を取り除くと、1㎜程度の細根が多く見受けら れた。Ⅱ層目は5㎝程度の敷きモルタルがあり、その 周辺には旧舗装材料やコンクリート廃棄物が散在して おり、根域範囲は極めて狭かった。Ⅲ層目以降の土色、 土性、土壌硬度はAブロックと同様であった。 Cブロックは、舗装ブロック下(Ⅰ層目:約10㎝) は敷き砂で、適度に湿潤であった。Ⅱ層目はモルタル が5㎝程度敷き詰められていた。Ⅲ層目以降の土色、 土性、土壌硬度はAブロックBブロックと同様であった。 写真−2 根上がり状況 3.根系調査および土壌断面調査 3.1 調査方法 街路樹の根がどのように根上がりを起こすのかを調 査するため、平面での根系調査を行った。舗装ブロッ ク直下の敷砂層に根系が侵入し、舗装を持ち上げてい ると考えられるため舗装ブロックを剥がし、根系を切 断しないように手掘りで行った。深さ方向は、5 0㎝程 度までできる限り手掘りで根域を痛めないように行っ た。根の生育と土壌とは密接に関係していることから 以下の土壌断面調査を各層ごとに行った。土色(マン セル表色系に準じた新版標準土色帳[農林省農林水産 技術会監修1 9 6 7] )の判定を行った。土性は指頭法(日 図−2 根系調査箇所の詳細 本農学会法)により判定した。土壌硬度は、山中式土 壌硬度計で測定した。 3.2 調査結果 図−2は根系調査箇所の詳細を示す。写真−3、4、 5は、根系調査状況を示す。根系調査および土壌断面 調査はA、B、Cブロックに分けて行った。 Aブロックは、舗装ブロック下(Ⅰ層目:約1 0㎝) は敷き砂で、適度に湿潤であった。Ⅱ層目はモルタル が5㎝程度敷き詰められていた。Ⅲ層目は1 5㎝程度で 砂質壌土であった。土色は7. 5YR5 4/2であった。 土壌硬度は2 0㎜であった。Ⅳ層目は2 0㎝程度で砂質壌 土だった。土色は7. 5Y6/2であった。土壌硬度は 25㎜であった。根域の露出は水平域に細根が多く、太 根(4 0㎜)が道路標識基礎付近に見られた。 Bブロックは、アスファルトで根上がりによる段差 解消の補修を行っていたが、アスファルト部分を撤去 すると、歩道ブロックがあった。Ⅰ層目(砂質壌土) −6 9− 写真−3 根系調査状況(Aブロック) 第1編 調査研究報告 つつある。この工法は、火山砂利(40㎜∼30㎜前後の 単粒度)を骨材に、乾燥腐植、無機物、有機物、肥料 等を混合した生育助剤を骨材にまぶし、生育基盤を形 成したものである。 今回、地産地消の観点から、骨材に越前廃瓦を使用 できないか含水比試験やCBR試験等を行い検討した 結果、根系誘導耐圧基盤の骨材として使用できること がわかったため、これを用いた(写真−6)。 締固めは タンパを用いて行った(写真−7)。 また、根上がり防止のため、文献2)で用いた福井 県産のBタイプの防根シートを用いた。防根シートの 深さは50㎝まで設置した。この防根シートの特徴は、 根は貫通せず透水性が良いことや背面地形が複雑でも 写真−4 根系調査状況(Bブロック) 取り扱いが容易なことである。植樹桝に用いる縁石部 分(街路樹側)に根上がり防止のため防根シートを用 いることを想定していたが、根の状態から縁石を持ち 上げることは無いと考え設置しなかった(設置する必 要がある場合は、深さ30㎝まで行う必要があると考え る)。完成状況を写真−8に示す。 4.終わりに 写真−5 根系調査状況(Cブロック) 4.植栽基盤改良 福井県緑化マニュアル(街路樹編)1)では、植樹 帯の設置を原則としている。やむを得ない場合は植樹 桝を設置し、歩道幅員は1. 5m以上あることが望まし いこととなっている。今回の施工箇所は、このマニュ アルが適用される前に植樹桝(1. 0m×1. 0m)が設置 写真−6 根系誘導耐圧基盤施工状況 されているため、周辺状況を考慮し植樹桝を1. 5m× 1. 5mに拡大し、なおかつ「根系誘導耐圧基盤」の施 工を行った。施工範囲は、根系調査箇所のA、B、C ブロックである。改良深さは5 0㎝とした。「根系誘導 耐圧基盤」とは、「基礎として締め固められた支持力 のある硬さ」と、「根系が伸長できる柔らかさ」とい う、相反する土壌条件を同時に満たすことができる基 盤のことである。アメリカでは、ストラクチャル・ソ イル・ミックス工法(SSM)として使用され、日本 では「パワーミックス」工法の名称で施工実績が増え −7 0− 写真−7 タンパによる締固め状況 福井県雪対策・建設技術研究所 写真−8 年報地域技術第2 2号 2 0 09. 8 完成状況 街路樹による根上がり再発防止対策のため、福井県 産材料である防根シートや処分に困っている廃瓦を用 いた根系誘導耐圧基盤を開発し施工を行った。この工 法が有効に活用され、街路樹による根上がり被害の防 止に役立つことを期待する。 今回の開発では、生育助剤は県内生産のものではな かったため、今後生育助剤についても県内又は近隣で 製造できるよう、開発を進めていくことが課題である。 5.謝辞 本研究を行うにあたり、国土交通省 総合研究所 環境研究部 国土技術政策 緑化生態研究室 飯塚康雄 主任研究官、 サンワコン顧問 (元福井県立大学助教授) 野田敏秀先生からご助言をいただいた。ここに記して 感謝の意を表する。 参考文献 1)福井県緑化マニュアル(街路樹編)2 0 04 2) 道路緑化樹木の生育による歩道舗装の破壊対策 (防 止)に関する研究,福井県雪対策・建設技術研究 所第1 9号,pp5 7−6 4, 20 0 6 −7 1−
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