緑地帯9 街路樹帯の樹葉中の金属含量(その 3)

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大気汚染物質の植物に対する影響(第 5報)
緑地帯 9 街路樹帯の樹葉中の金属含量(その 3)
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洋,門田正也,佐野
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Plants (3)
Hiroshi OHTA, Masaya KADOTA
Isamu SANO,Akie TSURUIZUMI
人と車の過密な都市環境下における樹木が受ける環境による影響について,樹葉中の C
a,Mg,
Cu,Zn,Mn,F
e,Pb,Ni,Cd,を測定した.一般には葉の乾燥重量あたりの元素含有量で示す
が,一葉あたりの元素含有量で示す ζ とによって生態学的な考察ができた。その結果平均 C
a含有
量は, C
a/Mg比は環境の相違に関連し,樹葉の栄養診断の 1っとしてでなく,都市環境の影響度
を推察する l視点として使えそうである.街路樹のイチョウの F
eが他より多いことは含有率より
顕著で交通量との関連を推定した.また Pbの取り込みは生長期の前半にみられた.
生活環境として自然環境の保全として緑の拡充,篠保
ζ 差異があれば,平均含有量は異
一葉あたりの平均乾重 l
の必要性は,生物園における基礎生産者の位置にある緑
なり,それ故,この含有量の数値のもつ意義は大きいと
の環境との相互作用を利用しつつ都市環境の内部からの
考える.
浄化を図ろうとするものであるといえよう.その緑(樹
木)が人と車の過密な都市環境から受けつつある影響に
ついて緑地帯および街路樹帯のケヤキなどの樹葉中の
Cu,Zn,Mn,F
e,Pb,Cd,Ni,Ca,Mgを測定し,
葉の各種元素の含有状況について,葉の乾燥重量(乾重)
1
で述べた。
あたりの元素量について前報1
生態学の研究においては,本来,土地面積あたりの葉
重あるいは,その土地面積あたりの元素として,とらえ
<
:
:従えば,多量の採
るのが通例であるが,乙の研究方法 1
葉を必要として,今回の調査地の現情では,この様な採
葉は困難であった.
一方,現在までに報告されている文献は全て葉の乾燥
調査地および測定方法
第 3報12)lζ 採取地および採取点を示す.採取した試料
についての分析方法も太田ら3
1
4
1
の方法によった.
測定結果ならびに考察
樹種別,場所別,の各元素の季節毎の含有量(内/枚)
は前報 1
1ζ
1含有率 (μg/g)と共に示した.また各元素の平
均含有量を図 1-1-41ζ 示す.
(
1) 平均
Ca含有量
一葉あたりの重量はサンゴジュが他樹にくらべて,も
っとも重いが,その他の 3種(ケヤキ,クスノキ,イチ
1 又平均
ョウ)はほぼ近い重量であった 2
C
a含有率も,
重量あたりの元素量としてのみで示され,生態学的意味
いずれかといえば,落葉樹群がより多く,常緑樹群のそ
をもっ,一葉あたりの元素含有量でもってとらえた報告
れは低いが,それぞれ同一レベルで:あった 1
1。
は見当らない.乙こで用語の混乱をさけるため,便宜上,
これが一葉あたりの平均 C
a含有量でみると図 1のご
葉の乾重あたりの元素量を「含有率 Jとし,一葉あたり
ζ
とくで;その全般的な傾向は,常緑樹群ではサンゴジュ l
の元素量を「含有量」と区別した.
多く,クスノキは少ない.落葉樹群ではイチョウ l
ζ 多く,
同一樹種でも場所 1
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:従い,葉の生長状況,換言すれば,
*環境工学研究所
料名古屋大学農学部
ケヤキにやや少ない.
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233
大気汚染物質の植物に対する影響(第 5報)
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234
太田
洋・門田正也・佐野
場所別の傾向をみると,イチョウでは街路樹と白川公
f
果・鶴泉彰恵
的な差異から,都市環境の影響度を推察する一視点とし
又ケヤキでも
てとらえたい。つまり,市内の Ca レベ lレは,一種の汚
白川公園と青少年公園に多い傾向がうかがわれる.乙れ
染度と解される面もある. しかしながら,それが直ちに,
園に多く,クスノキでは白川公園に多い
に対し,熱田神宮においては
a
3樹種とも比較的少ない.
乙のような一葉あたりの平均 Ca含有量の場所的差異
i関連をもつものと考える.す
は,場所毎の環境の相違ζ
被害を伴なうと断定するわけでなく,そのような危険の
域にあるとは考えにくいのである e
(
2
) 平均 Mg含有量および平均 Ca/Mg含有量比
なわち熱田神宮の樹林の多くは,古くから継続している
樹種毎ζ
i葉の大きくなるにつれて平均 Mg含有量の推
半自然的な環境下にあって,密度も普通以上であるのに
移をみると,イチョウ,クスノキ,サンゴジュの 3種が
対し,その他の場所は,比較的新しく植裁され,列植状
前項の平均 Ca含有量の推移とほぼ同様な経過をたどっ
であるばかりでなく,何らかの都市的因子の影響をより
ている.しかしケヤキのみは場所によっては Caの推移
受けやすい c たとえば,車の排気ガスばかりでなく,コ
と異なっている.熱田神宮を除き,市街地のケヤキにつ
ンクリー卜構造物などからの Caダストを直接受けやす
いては,秋の Ca/Mgが他¢樹種のそれと異なる傾向を
もつようである.この点については,前報 1) 中の平均含
い場所でもある.
市内としては自然緑地的性格を比較的多く備えている
有率の Ca/Mgにおいても述べたのであるが,さらに一
熱田神宮内と市内の街路樹帯とを安易に比較はしにくい.
葉あたりの平均含有量で Ca/Mgを対比すれば,一部の
その乙とは,同種でも,樹令の差もあろうし,又街路樹
ケヤキ(熱田神宮 8.8i
と対して白川公園 K149
,L=1
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の多くは,風致上あるいは風害予防などのため,往々整
圃
東山公園 1
6
.
1,他の樹種では 5- 9)にMg不足かと思わ
「
枝される機会が多いので,葉の生理あるいは生態的機能
れる傾向の潜在をとらえやすく,その存在の可能性がよ
も自然状態下のそれと差をもつなどの,諸点が,かげに
り強められたかと思われる園
潜在しているからである.もちろん,土の諸条件にも,
また全般的にみて,街路樹のイチョウの Mg含有量は
種々相異があろう.たとえば熱田神宮においては,落葉
比較的多い.乙の乙とは,おそらく列植状で,土地面積
のほとんどが,土ζ
l還えされやすい.市内での落葉の大
あたりの葉量が他所よりも少なく,さらに時折の整枝作
半は清掃されるため,とかく,その場の土へ還えされが
業にもとずく萌芽枝の葉であって,葉も比較的大きく,
乙伴なう Ca補給
たい.乙の点、からみれば,落葉の分解 l
濃緑色であるからであろう c
量は,市内よりも熱田神宮の方が格段に多い条件をそな
(
3
) 平均 Cu含有量
えていて,従って葉の平均 Ca含有量も熱田神宮の方が
サンゴジュの平均 Cu含有量はきわめて多く,また季
多くなろうとの推論に走りかねない。ところが現情では,
節的変化もはげしい. しかし乙の乙とがサンゴジュの特
熱田神宮の方が一般に少ない.その理由の Iつは熱田神
性であるか否かは不明である.また熱田神宮の他樹の含
宮の方が樹木の密度が大きいことによるだろう
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他の l
つは他の場所は, Ca
分の多い土壌およびコンクリー卜部
分が多い乙とによるだろう
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熱田神宮の Ca レベソレが植物の正常な生育 i
乙不足で、あ
有量からみて熱田神宮ζ
l特に Cuを多く含む条件がひそ
まれているとも思われない.
イチョウにおいては,街路樹の Cu含有量が白川公園
熱田神宮のそれよりも多い
e
とのことは度値量の多少が
か否かは,乙の調査の範囲では,厳密にはわからない.
関係するかも知れない.熱田神宮のサンゴジュでさえ,
しかし激しい不足ではないと見て差支えなかろう.また
細部について見れは、,とかく道路ζ
l近い樹に傾向を示し
市内の街路樹などの Ca レベルが過剰であるか否かも同
ている.
様に十分にわからない.けれども,これまた激しい過剰
(
4
) 平均 Zn含有量
状態とはし、いがたい.
春からすでに多量の Znがサンゴジュ ζ
l含まれている.
つまるところ,絶対量ではなくて,相対的に見て,自
然状態に近い熱田神宮よりも,市内公園などにおいて,
Caは多いようである.なお熱田神宮ですら,中央部よ
りも,やや道路ζ
i近い樹木に Caの比較的多い様相が散
見された@
係を思わせる節がないではない.
(
5
) 平均 Mn含有量
平均含有量でみる限り,イチョウ中の Mn含有量は,
乙の Caについての調査結果でみる限り,樹葉の栄養
診断の 1っとして
また街路樹のイチョウも他所にくらべて,平均含有量が
多いので,一見 Cuの場合と同様に,交通量などとの関
Caの多寡をみるよりも,その相対
他樹よりもし、くぶん少ない.他樹はほぼ同ーと見なされ
よう.
235
大気汚染物質の植物 I
L
対する影響(第 5報)
しかしながら,各樹種毎に,場所別の平均含有量には
種I
C注目しても,
PbI
C相応して, Cd含有量も高くな
かなりの差異を示しているが,それにもかかわらず,場
るという傾向はむしろなさそうである.少なくとも今回
所を中心として見た時に,その特異性は見当らない.
の調査内ではそのようである.
(
6
) 平均 Fe含有量
結 論
前報 1
1で平均 Fe含有率をみたとき,街路樹のイチョ
ウが他所よりやや高い傾向を示していたが,図 1の平均
Fe含有震で対比すると,乙の傾向の存在する可能性が
より明らかになった。ともかく,一葉あたりで見る限り,
街路樹のイチョウは乙の調査内では他に比べて多量の Fe
を含む.又含有率 1
1 もやや高い。それ故,乙の 2点から
見て,他所l
亡くらべて,街路樹のイチョウは軽度の Fe
汚染をうけているかも知れないという見解もしうる。し
かし含有率でみれば,生育を阻害するおそれのある濃度
には達していないはずである。
を含有率,後者を含有量で示す)について検討し両者を
比較した.
平均 Ca含有量は場所毎の環境の栢異に関連している
ようである.乙の値は樹葉の栄養診断の 1っとしてみる
より,相対的差異より都市環境の影響度を推察する 1視
点としで使えそうである.乙れはさらに Ca/Mg
含有量
比からもいえそうである。
特長的 l
乙は街路樹のイチョウが Feが他よりも多い乙
(
7
) 平均 Ni 含有量
熱田神宮のサンゴジュの一部
一般的には葉の乾燥重量あたりの元素量で示されるが,
葉の生長状況が異なる乙とから一葉当りの元素量(前者
(
B,-B5) に春から多
量に Ni を含み,しかも季節の進むにつれて急激する特
異現象があった.その他には特記事項はない.
(
8
) 平均 Pb含有量
K, L
)と街路樹のイ
白川公園の 2調査線上のケヤキ (
チョウの Pbは量的に明らかに多い.乙れらの点を除け
ば,その他の量的差異は著しくはない.葉形の大きいサ
ンゴジュが他樹よりもやや多いけれども,それでも秋に
おいて一葉あたり 2
μ 宮程度にとどまっている.
また量的にみた場合であるが,各樹種ともに,生長期
間の前半,すなわち春 夏の聞に比較的速かに Pbを吸
収しているが,後半では一般に緩慢であるか,または停
とは含有率よりも更に顕著で,乙れは交通量との関係が
ありそうである.
Pbでは生長期閣の前半(春→夏)
ζ
I吸収,付着(取り
込み)が多く,後半は緩慢か停滞現象を示した ζ とは生
態学的な ζ とか,加鉛ガソリンの減少によるか判明しな
終りに,乙の研究を行なうに当り,試料の採取に御便
宜を与えられた熱田神宮庁林苑課,名古屋市緑地部,同
公害対策局,同土木局中土木事務所白川公園分所,同東
山総合公園事務局事業係,愛知県青少年対策局青少年公
l協力してくれた
園公園係の方々,又試料の採取,測定ζ
研究生岡部正利君,応用化学科学生安藤元彦君,大島誠
君らに深く謝意を表する.
滞しがちの様相を示す乙とが特長的である.乙の聞にた
とえば加鉛ガソリンの使用状況に急変があったためかと
も恩われるが,乙れらについてはまだ確めていない。
C見れば,白川公閣のケヤキと街路樹のイチョ
全般的 I
ウは, Pbによる汚染度にもとずくかと見て差支えない
程,比較的多量の Pbを含んでいる.
(
9
) 平均 Cd含有量
サンゴジュにやや多く含まれているが,他樹は比較的
少ない.上記の Pb汚染度の高いと察せられる場所と樹
文 献
1)太田,門田,佐野,鶴泉:愛工大研報
N
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3) 太田,安達: i
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4) 太田:昭和 51.中化連講演予稿集 2
(特別討論会「原子吸光分析J)