NEC DEVICE TECHNOLOGY No.69 - SmartData

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第四世代シグナルリレー超超小形
UA2/UB2リレー
沖
原
尚
★
人
はじめに
彩にするため,
搭載する部品数を増やした
消費電力(mW)
とリレー体積(立方cm)
の
シグナルリレーは,電話交換機・伝送装
いという要求が高まってきました。
これらの
積を接点組数で除したものを小形化性能
置などの基幹系通信分野,パソコンモデ
要求を満たすためには,
リレーの実装面積
指数と定義し,小形化の動向を見ます。
リ
ム・ターミナルアダプタなどの端末系通信
を小さくしたり,重量を軽くするなどの対応
レー開発・製品化年と小形化性能指数との
分野に主として使われるメカニカルリレー
が必要となります。そこで,
当社ではリレー
関係を図1に示しました。MR22/24リレーか
です。
これら通信分野の装置に使われるシ
の実装面積を従来の58%,重量を従来の
ら,第三世代シグナルリレーと呼ばれる
グナルリレーには,
より省エネルギーに,
より
約2分の1にした超超小形シグナルリレー
EA2・EB2・EC2・EE2リレーまで,
約10年間
小形にという要求が,
どんどん高まってきて
UA2/UB2リレーを開発しました。
で小形化性能指数は約1/10になりました。
います。
とくに最近,
従来と同じサイズの基
板で,
搭載する通信回線数を増やしたいと
いう要求や,
消費者へのサービス機能を多
1000
mWxcm
小形化性能指数
技術動向
リレーの小形化性能指数は,
30以下が望ま
シグナルリレーの技術動向として,
コイル
れます。
MR22/24
3
接点
EA2・EB2・EC2・EE2リレーに続く第四世代
第2世代
500
MR62
300
MR602
200
有極化
100
EC2
EB2
50
高効率
磁気回路
30
第3世代
EE2
EA2
EF2
ED2
第4世代
50mW低消費
20
UA2/UB2
超小形
10
'80
'85
'90
'95
2000
開発・製品化年
図1 小形化性能指数
★
エレクトロメカニカル・デバイス事業部 応用技術部
リレー構造
アマチュアブロック
アッセンブリ
アマチュア
1. 磁気回路
図2に,UA2/UB2リレーの基本構造を
示します。磁気回路は,
コの字形断面を
持つコアの両端部に板状の永久磁石を
挟むように保持した有極型磁気回路のひ
可動接点
永久磁石
固定接点
とつであるシーソーバランスアマチュア
型を採用しました。シーソーバランスアマ
チュア型磁気回路は,左右に対称で,閉
磁気回路における磁束の漏れが少なく,
永久磁石から発生する磁束を効率よく用
いることができます。
コア
2. リレー基本構造
ベースアッセンブリ
(二重成形)
コイルアッセンブリ
リレーは,大きく3 つの部品に分かれま
コイル
す。可動接点とアマチュアを持つアマチュ
アブロックアッセンブリ,
コアとコイルを持つ
コイルアッセンブリ,
そして,固定接点を持
図2 リレーの基本構造
ちコイルアッセンブリを内部に収容する
ベースアッセンブリです。
コイルアッセンブ
リは,永久磁石とともにベースアッセンブリ
の成形型内にあらかじめ設置されます。そ
して,
ベースアッセンブリの成形と同時にコ
イルアッセンブリは,ベースアッセンブリと
一体となって得られます。
この成形技術を
二重成形と呼びます。
アマチュアアッセン
ブリは,永久磁石の上に搭載され,
アマ
チュアの裏面中央部にある突起を支点と
するシーソー動作を行います。
3. 磁気回路設計
写真1 リレー外観
リレー体積が小さくなっても従来のコイル
性能項目
EC2
UA2
15×7.5
10.9×6.0
9.4
100∼200
8.3
100∼230
2
1
化)
を採用しました。
コイルは,
細く,
長く,
た
30W/125VA
30W/37.5VA
くさん巻くほど発生する磁気エネルギーの
開放接点間
1000
1000
隣接接点間
コイル/接点間
1000
1500
1000
1500
いため,
効率のよいコイルが得られます。磁
サージ耐圧(V)(コイル/接点)
2500
2500
気吸引力を得る源となる永久磁石・コア・
重量(g)
約1.9
実装スペース(mm)
実装高さ(mm)
コイル消費電力(mW)
最大開閉電流(A)
最大開閉容量
耐圧
(VAC)
表1 従来製品との仕様比較
約0.9
消費電力140mWを維持するため,
コイル
の中央に永久磁石がない板状の三極磁
化永久磁石(両端がS極,中央がN極に磁
効率はよく,
コイルの中央に永久磁石がな
アマチュアからなる磁気回路の設計は,
磁
極ギャップ,
コア断面積,
アマチュア断面
積,
コア磁極面積などの磁気パラメータの
●
重量
決定がポイントとなります。
これら磁気パラ
約0.9g(EC2約1.9gに対し約2分の1の軽
メータは,磁気シミュレーションを用い,実
量化)
。
験結果と照合することにより効率的に決定
リレーの外観を写真1に示します。
しました。
コイル定格電圧印加時の磁気エ
ネルギの指標となる起磁力は,
小形化にも
まとめ
かかわらず,従来とほぼ同じ大きさが得ら
以上述べたように,
耐電圧はそのままで
れました。
小形化を実現した超超小形シグナルリ
レーUA2/UB2リレーを開発しました。その
4. 絶縁設計
(1)接点ギャップ
小さなサイズは,
その軽量とも相まって,
ま
すます電子部品との共存に寄与できるもの
従来とほぼ同じ定格起磁力が得られた
です。同じ基板サイズにおける搭載通信
ため,
開放接点間耐電圧AC1000V,
1分間
回線数の倍増,
リレー軽量化による他搭載
を満足できる接点ギャップを確保すること
部品の増量によるユーザサービスの拡大
ができました。
など,今後ますます発展するマルチメディ
アの通信分野において,
シグナルリレーの
(2)
コイル・接点間沿面距離
ベルコア規格準拠の2μs×10μsのサー
ジ波において耐電圧2500Vを満足するた
めには,
コイル・接点間の絶縁距離(沿面
距離)
を2mm以上にする必要があります。
このため,
二重成形したコイルアッセンブリ
に加えて,
コイルを巻くスプールの鍔に凹
部を設け,
このスプールの凹部形状により,
沿面距離を2mm以上に確保しました。
リレーのおもな仕様
リレーには,
スルーホールタイプのUA2と
表面実装タイプのUB2リレーがあります。
そ
の違いは端子形状だけです。UA2リレーの
おもな仕様を既存のEC2リレーと比較して
表1に示します。
●
外形寸法
リレー実装面積は,
EC2の58%。体積は,
EC2の51%。
●
消費電力
標準は同じ1 4 0 m W(シリーズにより
100mWから230mWの範囲となります)
。
●
耐電圧
開放接点間AC1000V(1分間)
。
コイル・
接点間2μs×10μsサージ耐電圧2500V
(ベルコア規格準拠)
。
用途を広げるものと期待できます。