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建コン協会と九州地整の平成28年度意見交換会開く
技術力の選定や品質確保等で改善、熊本地震の緊急提言「熊本レポート」を発行
労働環境改善などについて協議した建コン協会と九州地整の意見交換会
(一社)建設コンサルタンツ協会(長谷川伸一会長)と九州地方整備局(小平田浩司局長)
の平成28年度意見交換会は9日、福岡市の八仙閣で開き、熊本地震対応と今後の復興や要
望と提案などについて協議した。この中では、熊本地震の支援業務で採用されたPM、CM
方式について主任技術者らの専任常駐についての課題や地方自治体の成績・表彰など業務実
績の活用、土木設計業務等変更ガイドライン、労働環境改善試行業務などについての質疑が
あり、九州地整は「若手技術者配置試行業務で、年齢の引き上げを行い、評価のバラツキな
どの改善にも努めている」
、「土木設計業務等変更ガイドラインに沿って対応するよう、事務
所に周知している」
、
「地方自治体業務実績の活用は全国の動向を見ながら検討していきたい」
などと回答。また、九州支部が中心になって熊本地震の被災状況等をまとめた「熊本レポー
ト」発刊の報告があった。
この日の意見交換会には、九州地整から小平田局長、笹森秀樹副局長、小平卓企画部長、
佐藤克英河川部長、土井弘次道路部長、堀田治港湾空港部長、園田康行総務部契約管理官ら
幹部職員19人、協会側から本部の長谷川会長(パシフィックコンサルタンツ㈱)
、村田和夫
副会長(㈱建設技術研究所)、木谷信之顧問(建設コンサルタンツ協会)、常任理事の永冶泰
司総務部会長(㈱長大)
、野崎秀則企画部会長・対外活動委員長(㈱オリエンタルコンサルタ
ンツ)、高野登技術部会長(日本工営㈱)、馬場直俊情報部会長(セントラルコンサルタント
㈱)、花岡憲男資格・CPD部会長(八千代エンジニヤリング㈱)、事務局の高野匤裕氏(建
設コンサルタンツ協会)の9人、九州支部の村島正康支部長(西日本技術開発㈱)、柴田貴徳
副支部長(㈱福山コンサルタント)、中村哲己副支部長(㈱建設技術研究所)、田中清支部理
事(第一復建㈱)、入江達雄対外活動委員長(㈱建設技術研究所)、吉田事務局長の6人が出
席した。
冒頭、長谷川会長は「熊本災害に対しては、東日本大
震災等の経験を活かし、また、九州地方整備局や国の迅
速で適切な対応、協会の活用などをいただき、お礼を申
し上げます。今後も復旧復興に貢献していきたい。公共
事業費は4年連続安定し、来年度も6兆円程度で、長期
的な構想を立てられる経営状況となっている。平成26
年度までは純利益を確保し、経営改善が出来た。このよ
うな事業量の安定にも配慮いただきたい」と感謝、要望
し、
「国との意見交換会の中では、技術力の選定、品質の
確保等について積極的な改善をいただいている。地方公
共団体の業務実績が国で反映されるようにとの声が出て
きており、協会としてもこのような技術力の選定にも踏
長谷川伸一会長
み込んでいきたい。今回、九州支部が中心となって熊本地震の被害調査等をまとめた熊本レ
ポートを発行しましたが、技術力の考察とか、今後の対応、防災・減災にも言及しており、
今後の社会資本整備に活用していただきたい」などと挨拶した。
また、小平田局長は「皆様には日頃から国土交通行政に対し、また、4月に発生した熊本
地震でも応急復旧など様々な面でご尽力、ご協力をいただき、大変感謝しています。熊本災
害で思いましたのは、交通についてのあり方、土砂崩壊の可能性があるような箇所が沢山あ
り、今後は生産性向上、持続ある社会、安全安心のため
にしっかりとした社会資本整備をやっていくことが必要
ではないかと思っています。さまざまな側面で皆様のご
協力をお願いしたい、また、担い手不足については若い
人や女性が入ってくるような環境整備が必要であり、一
方、社会全体の人口が減ってくる中で、i-Construction
をはじめとした効率化の選択も考えていかなければいけ
ない」などと挨拶した。
意見交換会は、田中対外部会長の司会で進行。まず、
小平企画部長が九州地整の熊本震災対応状況や今後の復
小平田浩司局長
興についての説明に続き、協会は①熊本地震の災害協定
に基づく支援業務のPM(2件)
・CM(7件)で、専任・常駐の主任技術者等についての要
望提案(旅費、宿泊、人件費、打合せ作業等)
、②適正な必要工期の確保や納期の平準化等へ
の取組み強化、③土木設計業務等変更ガイドラインの内容充実と契約執行状況の改善、④若
手技術者・女性技術者の活用・育成、⑤地方公共団体の成績・表彰など業務実績の活用など
について要望提案した。
九州地整は、女性・若手技術者試行業務について「27年度に女性技術者配置12件、女
性技術者評価8件、若手技術者配置11件を実施したが、今年度も継続して実施する。若手
技術者配置の年齢は要望に沿って引き上げて改善。技術提案の統一化や評価のバラツキにつ
いても改善している。試行業務は、昨年より少なくなりそう」。労働環境改善試行業務は「2
7年度実施の47件のうちアンケート回収27件で、適正工期や納期の平準化など環境改善
に向けて積極的に取り組んでいきたい。28年度は60件を予定している」。「土木設計等業
務変更ガイドラインに沿って対応するように事務所に周知。適正な見積りや条件明示、中間
打合せの明示などについても28年3月に文章通知している」
。地方自治体業務実績の活用に
ついては、
「成績評定や表彰の評価基準などが違うのでそのままダイレクトに適用できないの
で、全国的な動向を見ながら検討していきたい」などと回答した。
熊本地震の被災状況等をまとめた「熊本レポート」の主な教訓では、
「地震外力想定(設計
地震力)
」について①震度7の地震は九州で初めて、どこでも起きる可能性があることを再認
識、②設計地震力の地域係数などが九州で低く設定されており、見直しを考える必要、③今
後は震度7の連発も想定検討、
「地盤性状把握」について①地盤の性状把握と対策検討の重要
性が再認識された、
「構造物設計・補強」は①支承部のゴム支承等の損傷と側方移動が目立っ
ており、これらの改良が課題、②橋梁取付け部の段差が数多く発生しており、段差対策は要
検討。③道路被害は、斜面部の亀裂や側方流動、地表地震断層被害などが目立ち、今後の課
題、④トンネルは地震断層変位の影響と思われる被害があり、今後の課題、「災害協定業務」
について①本格的なPM業務とCM業務は、九州では初めてのことで、注目される、
「新しい
機器等の有効活用」では、ドローンや3次元測量機器などの動画などが現状把握に大変有効
で、これらの改善活用が望まれるなどとしている。