大阪府医師会館 平成24年3月24日 平成23年度(第39回) 大阪府医師会 臨床検査精度管理調査検討会 「臨床検査の標準化に向けて」 血液学検査(血 液 像) 近畿大学医学部附属病院 中央臨床検査部 岡田 和敏 染色方法と染色液使用メーカーの内訳 H23年度 (回答157施設) 染色法 重染色 M-Gと W-G 2法 メーカー シグマアルドリッチジャパン シスメックス 武藤化学 1 メルクジャパン 和光純薬 複数メーカーを使用 1 メーカー不明 合 計 2 (%) 1.3 * 但し、M-GとG(メーカー不明)1施設と 単染色(不明)1施設を除く M-G 4 20 58 15 6 14 8 125 79.6 重染色と単染色 W-G M-Gと W 2法 単染色 W-Gと W 2法 1 16 2 3 1 1 1 23 14.7 1 0.6 1 0.6 合計 1 1 5 22 75 18 11 18 8 157 1 2 128施設(81.5%) (%) 3.2 14.0 47.8 11.5 7.0 11.5 5.0 5 3.2 M-G:メイ・ギムザ染色 W-G:ライト・ギムザ染色 W:ライト染色 G:ギムザ染色 重染色法であるメイ・ギムザ染色(M-G)やライト・ギムザ染色(W-G)実施施設 複数法を含めメイ・ギムザ染色(M-G)実施施設 W 152施設(96.8%) 細胞分類カウント数 末梢血液像分類カウント数 (回答157施設) 100カウント 200カウント 300カウント 301カウント以上 施設数 104 51 1 1 % 66.3 32.5 0.6 0.6 骨髄像分類カウント数 (回答91施設) 施設数 500カウント 57 1000カウント 23 1001カウント以上 0 その他 11 末梢血液像200カウントが、32.5%(前年度27.0%)へ微増 % 62.6 25.3 0.0 12.1 フォトサーベイの正解と正解率 設問 正解 1 5 2 8 ハウエ ル・ ジ ョリー小体 2 5 2 1 球状赤血球 3 許容正解 正解数 正解率(%) 配点 175 100.0 1.0 171 97.7 1.0 5 1 3 大型赤血球 5 1 7 多染性赤血球 165 94.3 0.5 4 0 1 4 好中球過分葉核球 174 99.4 1.0 5 3 0 2 前単球 144 82.3 0.5 6 3 0 3 単球 168 96.0 0.5 7 5 2 7 破砕赤血球 5 1 6 奇形赤血球 172 98.3 0.5 8 0 3 5 顆粒消失好中球 108 61.7 0.5 9 0 0 2 前骨髄球 123 70.3 0.5 10 0 0 3 骨髄球 154 88.0 0.5 11 1 1 0 リンパ腫細胞( 大型) 147 84.0 0.5 12 0 1 5 ア ウエ ル小体 167 95.4 1.0 13 4 0 9 芽球性形質細胞様樹状細胞( BPDC ) 1 1 2 リンパ腫細胞( その他) 1 9 9 リンパ球系その他の異常 95 54.3 0.5 14 1 0 9 ヘア リー細胞 1 9 9 リンパ球系その他の異常 157 89.7 0.5 15 1 1 2 リンパ腫細胞( その他) 1 1 0 リンパ腫細胞( 大型) 164 93.7 0.5 16 0 2 1 好酸性骨髄球 0 0 7 幼若好酸球 171 97.7 0.5 5 1 2 小型赤血球 3 9 9 単球系その他の異常 1 1 2 リンパ腫細胞( その他) 1 9 9 リンパ球系その他の異常 合計 10.0 設問1 矢印の赤血球内所見で、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を 選えらんでください。 正解 (正解率 ハウエル・ジョリー小体 100 %) 設問2~4 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を選ん でください。写真2から写真4は、同一症例です。 設問2 正解 球状赤血球 許容正解 小型赤血球 (正解率 97.7 %) 設問3 正解 大型赤血球 多染性赤血球 設問4 回答102施設 回答 63施設 (正解率 94.3%) 正解 好中球過分葉核球 (正解率 99.4%) 設問5 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を選ん でください。写真5から写真6は、CMML-1症例です。 核小体(+) アズール顆粒有り 正解 前単球 不正解 単芽球 (正解率 82.3 %) 回答19施設 設問6 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を選ん でください。写真5から写真6は、CMML-1症例です。 正解 単球 許容正解 単球系その他の異常 (正解率 96.0 %) 回答124施設 回答 44施設 設問7 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を選ん でください。 参考データ 68歳 男性 末梢血: WBC 3300 /μ L RBC 3.68 X 106/μ L Hb 10.0 g/dL Ht 30.8 % MCV 83.8 fl MCH 27.1 pg MCHC 32.4 % RDW 27.1 Plt(免疫法) 10.6 X 104/μ L 正解 破砕赤血球 回答144施設 奇形赤血球 回答 28施設 (正解率 98.3 %) 症例: 濾胞性リンパ腫治療中に、 治療関連MDS 「therapy-related MDS (t-MDS)」 のRCMD発症例 設問8 矢印の細胞について、細胞質の異形性所見で最も考えられるものを血液像細胞 コード表から番号を選んでください。写真8は、RAEB-1症例です。 脱顆粒好中球の定義 「無顆粒または80%以上の顆粒減少」 正解 不正解 顆粒消失好中球 (正解率 61.7 %) 偽ペルゲル核異常 (回答66施設 37.7 %) 設問9 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を選ん でください。写真9から10は、CML症例です。 正解 前骨髄球 (正解率 70.3 %) 不正解 Granular blast(WHO分類2008) (回答32施設 18.3 %) 骨髄芽球 (回答16施設 9.1 %) 設問10 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を選ん でください。写真9から10は、CML症例です。 正解 不正解 骨髄球 (正解率 88.0 %) 前骨髄球 (回答17施設 9.7 %) 設問11 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を選ん でください。 参考データ 62歳 男性 入院時現症:頚部腫瘤多発 末梢血: WBC 4200 /μ L RBC 2.77 X 106/μ L Hb 8.2 g/dL Ht 25.0 % Plt 3.1 X 104/μ L 矢印の細胞 3.8 % CRP 12.871 mg/dL LDH 414 IU/L 可溶性IL-2レセプ 12194 U/mL ター(sIL-2R) 正解 許容正解 リンパ腫細胞(大型) リンパ腫細胞(その他) , リンパ球系その他の異常 (正解率 84.0 %) 症例: びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 「Diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)」 設問12 矢印の細胞で重要所見について、最も考えられるものを血液像細胞コード表か ら番号を選んでください。 正解 アウエル小体 (正解率 95.4 %) 症例: t(8;21)(q22;q22);RUNX1-RUNX1T1を伴う急性骨髄性白血病 (FAB分類 M2) 設問13 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を 選んでください。 参考データ 75歳 男性 初診時現症:右頬部に暗褐色弾性硬の皮下腫瘤 末梢血: WBC RBC Hb Ht Plt 矢印の細胞 CRP LDH sIL-2R 59100 3.60 11.1 34.4 4.8 90.3 13.182 617 964 細胞表面マーカー: /μ L CD2(-) CD4(+) X 10 6 /μ L g/dL CD13(-) % CD19(-) X 10 4 /μ L CD34(-) % CD38(+) CD56(+) mg/dL IU/L U/mL 正解 芽球性形質細胞様樹状細胞(BPDC) 許容正解 (正解率 リンパ腫細胞(その他) リンパ球系その他の異常 54.3 %) 不正解 PLL細胞(回答37施設)、リンパ芽球(回答15施設) 設問13 症例の骨髄細胞表面マーカー 骨髄 NCC 10.3 X 104/μ L BPDC 85.4 % CD45 CD45 gating SS Lin 抗体 CD2 CD3 CD4 CD7 CD8 CD10 CD13 CD14 CD15 CD19 CD20 CD22 CD33 CD34 CD38 CD45RA CD56 HLA-DR TCRα β TCRγ δ s-Kappa s-Lambda 陽性率 (%) 1.2 2.0 88.2 0.8 0.2 6.3 3.7 11.7 0.7 9.1 0.6 3.7 3.1 0.5 95.7 98.5 66.8 98.6 1.3 0.5 1.7 0.5 設問13 症例 芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍 「Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm (BPDCN)」の白血化例 2001年WHO分類 Blastic NK-cell lymphoma(芽球性NK細胞リンパ腫)の亜型 2008年WHO分類 Acute myeloid leukemia and related precursor neoplasms 関連前駆細胞性腫瘍 細胞由来 芽球性形質細胞様樹状細胞 「Blastic plasmacytoid dendritic cell (BPDC)」は、 形質細胞様樹状細胞(形質細胞様単球)の前駆細胞由来とされる。 ・樹状細胞には 1.骨髄系前駆細胞起源 2.リンパ球系先駆細胞起源 CD4 + CD56+ hematodermic neoplasmは、リンパ球系先駆細胞を起源とする plasmacytoid dendritic cell(pDC)の前駆細胞が腫瘍化したものとされる。 Herlig M, Jones D ; Am J Clin Pathl 127 : 687, 2007 設問14 矢印の細胞(強制乾燥し染色)について、最も考えられるものを血液像細胞コー ド表から番号を選んでください。 参考データ 54歳 女性 初診時現症:表在リンパ節腫脹なし、脾腫 末梢血: WBC RBC Hb Ht Plt 矢印の細胞 HCL典型例? 正解 許容正解 ヘアリー細胞 リンパ球系その他の異常 (正解率 89.7%) 症例: 有毛細胞白血病日本亜型 「Hairy cell leukemia-japanese variant (HCL-jv)」で 経過観察 日本における病型別頻度 (HCL : HCL-v : HCL-jv = 9 : 2 : 29) *HCL-v(亜型HCL)、 HCL-jv(日本亜型HCL) Machii T, Tokumine Y, Inoue R, et al ; Leukemin 7 : 181- 186, 1993 CRP LDH TP Alb sIL-2R IgG IgA IgM 4300 3.73 11.6 34.0 11.0 13.3 0.114 179 8.2 3.8 596 3814 174 428 細胞表面マーカー: /μ L CD11c(+) 6 CD19 (+) X 10 /μ L g/dL CD20 (+) % CD22 (+) 4 CD23 (-) X 10 /μ L % CD25 (-) CD103 (-) mg/dL IU/L U/mL mg/dL mg/dL mg/dL 塗抹後自然乾燥 設問14 症例の末梢血細胞表面マーカー CD45 CD11c CD45 gating CD11c+CD22+ SS Lin CD22 設問14 症例の細胞表面マーカー 末梢血 骨髄液 CD45 gating Gate B Gate AE リンパ球全領域 CD45 抗体 SS Lin CD3 CD4 CD5 CD8 CD10 CD11c CD19 CD20 CD22 CD23 CD25 陽性率 (%) 陽性率 (%) 34.4 21.4 31.5 12.3 10.9 59.2 68.9 58.4 62.7 1.8 1.7 70.9 45.8 72.3 20.8 1.2 20.5 17.7 14.3 15.6 0.1 3.8 抗体 CD3 CD4 CD5 CD8 CD10 CD11c CD19 CD20 CD22 CD23 CD25 CD103 陽性率 (%) 29.4 18.6 33.8 16.7 2.0 65.7 63.1 63.3 N.T 0.6 2.1 0.8 設問15 骨髄 矢印の細胞について、最も考えられるものを血液像細胞コード表から番号を選 んでください。 参考データ 66歳 男性 主訴 : 発熱、咽頭痛 末梢血 初診時現症 : 左頚部と右耳介リンパ節腫大 末梢血: WBC 1700 /μ L RBC 2.59 X 10 6 /μ L Hb 8.7 g/dL Ht 25.4 % Plt 5.3 X 10 4 /μ L 矢印の細胞 1.3 % CRP LDH 正解 リンパ腫細胞(その他) 許容正解 リンパ腫細胞(大型) (正解率 93.7%) 症例 2.965 mg/dL 1508 IU/L 抗HTLV-1抗体 <16 倍 遺伝子検査: IgH/c-myc(FISH法) 0.0% リンパ節病理所見(抜粋): ・核小体や核の大小不同が目立つ ・starry-sky像を伴っている ・MIB-1(+) B細胞リンパ腫‐分類不能型、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫の中間型 「B-cell lymphoma, unclassifiable, with features intermediate between DLBCL and BL」 設問16 矢印の細胞(骨髄標本)について、最も考えられるものを血液像細胞コード表か ら番号を選んでください。 参考データ 78歳 男性 主訴 : 呼吸困難 現病歴 : 肺炎、腎炎 末梢血: 骨髄検査: WBC 6900 /μ L 有核細胞数 7.1 Blast 0.0 % Eo Myelo 4.6 Eosin 47.5 % Eo Meta 6.3 6 RBC 2.77 X 10 /μ L Eo Stab 6.1 Hb 8.7 g/dL Eo Seg 14.0 Ht 26.5 % Plt 11.4 X 10 4 /μ L 正解 好酸性骨髄球 幼若好酸球 CRP 3.953 mg/dL BUN 30 mg/dL クレアチニン 1.78 mg/dL AST 125 IU/L ALT 61 IU/L IgG 3369 mg/dL IgG4 1380 mg/dL X 10 4 /μ L % % % % 遺伝子検査; FIP1L1-PDGFRA(FISH法)0 % (正解率 97.7%) 症例 :特発性好酸球増多症候群 「idiopathic hypereosinophilic syndrome (HES)」により 好酸球性心筋症、好酸球性肺炎および好酸球性間質性腎炎の併発例 誤回答の多い施設と正解率の低い設問順位 設問 施設 a b c d e f g h i j k 1 2 3 4 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 設問 13 7 8 9 10 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 5 前単球 リンパ腫細胞( 大型) 12 ○ 14 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 15 16 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 13 ○ ○ ○ 11 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 芽球性形質細胞様樹状細胞( BPDC ) 顆粒消失好中球 9 6 正解 8 11 5 ○ 許容正解 リンパ腫細胞( その他) リンパ球系その他の異常 リンパ腫細胞( その他) リンパ球系その他の異常 前骨髄球 14 ヘアリー細胞 リンパ球系その他の異常 15 リンパ腫細胞( その他) リンパ腫細胞( 大型) 血液像まとめ ・ 今回、基本所見や典型症例以外に、WHO血液腫瘍分類疾患(あるいは病型) カテゴリーの細分類症例についても設問した。 ・ 日常検査では、「異形性の有無や、腫瘍性疑いでコメントすべきか否か 」の 判断困難症例に遭遇する。そのため、「その他の異常」の認識を許容正解と して総合判定した。 ・ A評価とB評価の施設合計が90%以上であり、成績は良好であった。
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