Ⅲ 授業研究 2.2年生の実践 第2学年学級活動(食育)「すききらいなく たべよう 」 1.題材について 核家族の増加や外食産業の発達など社会環境の変化に伴い、子どもを取り巻く食環境は、急 速に変化している。生活習慣病が子どもにも増えつつある現在の食環境の中では、バランスの とれた食事をすることは、非常に大切なことである。また、生涯を健康で過ごすためには、体 が大きく成長する小学校の段階で、将来の良好な食生活の基本を培うことが必要である。それ が健康な体つくりに大きく影響を与え、さらには生活習慣病の予防につながっていくと考える。 本学習では、日常の食習慣を振り返り、食品は3つのグループに分かれることを理解し、バ ランスよく食べようとする態度を身に付けさせることをねらいとする。毎日何気なくとってい る食事であるが、自分たちの健康に大いに役立っていることに気付かせたい。 2.子どもの実態(男子14名 女子11名 計25名) <給食について> 給食を好きな子どもがほとんどである。休み時間に献立表を見て、その日の給食について友 達同士で楽しく会話をしていることからも、給食についての興味の高さが伺える。給食の時間 に、気を付けていることや頑張っていることとしては、「残さないようにしている」「苦手な物 も食べる」と答えた子どもが半数以上いる。日常指導の内容を意識はしているが、実際に残し てしまう子どもが約半数いることから、実践には結びついていないことがわかる。食べられな い時は、食べられる量に減らしてから食べるように指導しているが、それでも残してしまう子 どもも4名いる。残してしまう理由としては、野菜が入っているからという子どもが多い。実 際の残菜を見ても野菜が多い。そこで、食べ物の働きについて興味を持たせ、なぜ残さず何で も食べることが大切なのかについて考えさせたい。 <好き嫌いについて> 【好き嫌いはありますか】 好き嫌いについては、 「ある」と答えた子ど どんな物が好きか(複数回答) もが18名とたいへん多い。好きな食べ物 としては、麺類や果物類を挙げている子ど もが多かった。嫌いな食べ物としては、野 菜がほとんどを占めており、子ども達は、 苦みや酸味が苦手なようである。また、好 き嫌いはよくないと23名の子どもが思っ ・麺類 15名 ・果物類 12名 ・肉類 4名 ・野菜類 4名 ・菓子類 2名 ており、自分の成長にとっては、よくないことであると気付いている子どももいるが、その 理由を正しく書けている子どもは少ない。食べ物の働きと3つの食品が揃わないと丈夫な体 が作れないことを知らせ、バランスよく食べることの大切さに気付かせていきたい。 <食品についての知識・理解> 嫌いな食べ物として一番多かった野菜につ いて聞いてみた。毎日お昼の放送で放送委 員会から食品の3つの働きについて聞いて いるはずだが、漠然と聞いている子どもが 【野菜を食べると、どんなよいことがありますか】 ・栄養がある 5名 ・背が伸びる 2名 ・元気になる 4名 ・うんちが出る 2名 ・体の調子を整える 3名 ・わからない 9名 多い。食品それぞれに体を丈夫にする働きのあることを、本時の学習で気付かせていきたい。 3.視点との関連 視点1 実践の元となる子どもの「思いや願い」をもたせる工夫 ○資料提示の工夫 本学級の子ども達は、読み聞かせが大好きである。 そこで本時は、紙芝居の「ぺラペラ」を読み聞かせる ことにより、食べ物が体の中に入ってどのような働き をするのかに興味をもたせられるのではないかと考 えた。おにぎりを食べて元気になったペラペラから、 おにぎりは黄色の食べ物で「力や熱になる食品」であ ること、魚を食べて筋肉がもりもりになったことから、 魚は赤の食ベ物で「血や肉や骨になる食品」であるこ と、野菜を食べて肌がきれいになったとから、野菜は <紙芝居「ぺラペラ」の読み聞かせ> 緑の食べ物で「体の調子を整える食品」であることを知らせ、これらの3色の食べ物をバラ ンスよく食べていかないと丈夫な体が作られないことに気付かせようと考えた。 ○専門的な人材の協力 当日の給食で使われていた食品を、赤・黄・緑の3 色に分類する活動を通して、それぞれの仲間の主な食 品を知らせる。そして、給食が3つの食品群をバラン スよくとれるように作られていることを、実際に献立 を作っている栄養士から聞くことによって、より理解 を深めることができると考えた。3つの食品が揃わな いと丈夫な体が作れないことから、バランスよく食べ ることの大切さに気付かせようと考えた。 <栄養士との T・T による授業> 視点2 学習で得た知識や体験を実践につなげる工夫 ○ワークシートの活用 「元気れっしゃをはしらせよう」のワークシートを用 意し、それぞれの色の働きについて書きこむ。更に、 当日の給食で使われていた食品を、3つの色に分けて いく活動を取り入れることで、元気な列車を走らせる ためには、好き嫌いをせずバランスよく食べていくこ とが大切であるということを理解しやすいと考えた。 そして、自分の苦手なものを振り返る活動を取り入れ、 これから気をつけていきたいことを考えさせていった。 また、本時で学習したことを実践につなげるため、 <ワークシートに食品を分ける活動> 「元気っ子チェックカード」を活用して、給食を残さず食べられるように意欲化を図ろうと 考えた。 4.題材計画 時間 主題名 事前 学習内容 ・「食べ物アンケート」の実施 ・紙芝居「ペラペラ」を見て、食べ物が体の中に入ってど 学級活動 すききらいなくたべ よう のような働きをするのかに興味をもつ。 ・給食の食品を3つの色に分け、好き嫌いをせずにバラン スよく食べることの大切さを理解する。 事後 ・元気っ子チェックカードの活用 5.学習活動の実際 (1)本時のねらい ○食品の仲間分けやこれから気をつけることを考える活動に、進んで取り組むことができる ようにする。 (関心・意欲・態度) ○バランスのよい食生活のために、これから気をつけることを考えたり、選んだりすること ができるようにする。 (思考・判断・実践) ○食べ物の3つの働きと3つの仲間の食品が揃わないと、丈夫な体が作られないことを理解 することができるようにする。 (知識・理解) (2)展開 学習内容と活動 1 給食の献立で使わ れていた食 教師の指導・支援(○)評価(◇) 資料 ○給食の画像を提示し、献立や食品を想起 今日の給食 品について知る。 させ、食べ物の学習をしていくことを知 の画像 ・ご飯 らせる。T1 献立表 ・さばの塩焼きおろしソース ・けんちん汁 ・カラフル和え ・オレンジ ・牛乳 ○残さず食べられたかについて問いかけ、 食品カード 自分の食生活を振り返らせる。T1 食べもののはたらきを知ろう。 2 紙芝居「ペラペラ」を見る。 ○紙芝居を読み聞かせ、食べ物の働きにつ いて興味を持たせる。T1 3 食べ物が体の中に 入ってどの ような働きをするのか知る。 紙芝居「ペラ 【視点1】 ペラ」 ○ペラペラが、何を食べてどうなっていっ 赤・黄・緑の たかを振り返り、赤・黄・緑の食べ物の カード 仲間の働きについて知らせる。T2 紙芝居 赤…「血や肉や骨になる食品」 黄…「力や熱になる食品」 緑…「体の調子を整える食品」 給食は、毎日3つの仲間をバランスよ くとれるように作っているんですよ。 <栄養士による指導> 4 ワークシートに食 品の働きを まとめる。 ◇食べ物の3つの働きを理解している。 ワークシー (知識・理解)【ワークシート】 ト 5 今日食べた給食の 食品を3つ ○『「ペラペラ」のように、今日の給食に の仲間に分ける。 食品カード も3つの仲間が入っていたのかを確か めてみよう』と声をかけ、今日の給食の 献立で使われていた食品を3つの色に 分けさせる。T1・T2 6 分けた結果を確かめ合い、今日 の学習でわかったことを書く。 じゃがいもは野菜だから緑か な?それとも、黄色かな? 【視点2】 ○分けられない子どものために、3つの食 品群の表を用意しておく。 3つの食品 群の表 ◇食品の仲間分けに、進んで取り組もうと している。(関心・意欲・態度)【観察】 ○1つのグループを指名し、元気列車に仲 間分けをさせる。誤った分類をした食品 元気列車 食品カード を取り上げ、説明する。 T1・T2 ○給食が、3つの食品群をバランスよくと れるように作られていることを知らせ る。T2 <分類した食品について話し合う活動> 7 苦手な食べ物を振り返り、これ ○赤・黄・緑の中で、自分が苦手なものが か ら気 をつ けた いこ とを ワー ク 多い仲間は何かを考えさせる。自分の食 結果 シートに書く。 生活を振り返らせることで、バランスよ 昨年度の元 い食生活を送るために、これから気を付 気っ子ワー けることを考えられるようにする。 T1 ク 緑の仲間に苦手なものが多いの で、食べるようにしたい。 アンケート 【視点2】 ワ ー ク シ ー ◇バランスのよい食生活のために、これか ト ら気をつけることを考えたり、選んだり している。(思考・判断・実践)【ワー クシート】 好 き嫌い をなく してペラ ペラの よう <これから気を付けることを書く> 6.成果と課題(○成果 に元気に楽しく過ごしたいな。 ●課題) ○3つの食品をバランスよく食べることの大切さを、実際に献立を作っている栄養士から聞くこ とによって、より理解を深めることができた。 ○児童の実態に合ったワークシートを活用したため、授業をスムーズに進めることができた。 ○視聴覚機器の活用で子どもの心を引き付けることができた。 「元気列車を走らせよう」の言葉通 り、正しく食品が分類できると、PC上で元気列車が動き出したことは、子ども達にとって「本 当に走るんだ」という感動につながった。 ●T1・T2 の役割を明確にし、事前によく協議し、連携を取りながら授業を進めることが大切で ある。専門的な T2 の出番を多くするとよい。 ●学級活動ではより良いクラスにするために、個人の振り返りの他に、学級全体で考える場が必 要である。また、学習したことを家庭に啓発していくため、家庭からのコメントを書く欄を設 けるとよい。
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