第48回 金城学院大学医療ソーシャルワーク研究会NEWS 「高齢者虐待を考える」 (2006年8月26日開催) 講師 加藤良子先生 高齢者虐待防止法が、2006年4月施行されました。また、地域包括支援センター等による、虐待問題の早期発見、地域での関わりという点が、虐待防止に 期待が寄せられています。そんな中で、実際に虐待を疑うようなケースに出会った時、私たちはどのように「介入」をしていったらよいのでしょうか。 参加者より MSW 谷口祥子(旧姓内田) 私は急性期病院に属する 2 年目の MSW です。入職し てから今までの短い期間で高齢者虐待が疑われるケースに 何度か遭遇したことがあります。生命に危険が及ぶような ケースはありませんでしたが(気付かなかったケースがあ ったかもしれませんが)、ネグレクトや経済的虐待に当ては まるものは珍しくありません。そのようなケースに具体的 介入ができないままクライエントは当院を退院し、その後 関わりが途切れてしまうことがあり、もどかしいと同時に MSW としての自分の無力さを思い知らされることが多々 ありました。MSW でありながら「今まで長年にわたって 築かれてきた家族関係の問題だから・・・」と審判的態度で臨 み、諦めていたのかもしれません。 今回の事例に対する加藤先生の関わり方は、私に大きな 課題を与えてくださった気がします。加藤先生は被虐待者 である A さんと虐待者である息子さんに最期まで目を離さ ずに、どんなに辛い状況においても SW の倫理を忘れずに 専門職として関わり続けていたからです。虐待ケースにつ いてはソーシャルワークの基本である「受容と傾聴」 「共感 的理解」がより必要であり効果的であることを改めて考え させられ、危機場面については受身ではなく MSW 主導の 援助が必要であることを学びました。また、加藤先生は新 規で在宅への調整をしたケースに対しては家庭訪問・モニ タリングを独自に行っていたということにも感銘を受けま した。 私が所属する医療機関では、 「医療講座」というものを行 っています。地域の公民館等で当院のあらゆる職種のスタ ッフが医療・福祉について講演し、地域の方々に無料で参 加していただく活動です。私は現在二ヶ月に一回「ご存知 ですか?高齢者虐待防止法について」というタイトルで未 熟ながら演者を務めせていただいております。この活動が 地域の方々の意識啓発に繋がり、虐待の予防に繋がるよう 私自身日々勉強していきたいと思っています。 参加者より 福祉社会学科4年 岡田真以子 今回初めて研究会に参加させていただきました。以前から 研究会に興味はありましたが、私は医療福祉論も履修してい なければ医療実習への希望もしていなかったため、自分が行 くところではないだろうと決めつけていたように思います。 しかし、今回参加したことでそれは間違っていたと実感しま した。 私は2、3年時に援助技術演習を受け、ロールプレイをし てみても、どうしていいか分からない間に終わってしまって いたり、面接技法を学び、知識を得たとしてもそれを使うこ とができませんでした。できないというところから演習の授 業は正直好きとは言えなかったし、私はソーシャルワーカー に向いていないと確信してしまいそうなほど、苦痛な時間を 過ごしている自分がいたと思います。しかし、私は、大学入 学以前からずっと福祉に興味を持ち続けていたこともあり、 ソーシャルワーカーになりたいという思いは捨てきれませ んでした。今回の研究会への参加は、ソーシャルワークの生 きた姿に触れる機会となりました。そして何より、今まで自 信が持てず迷っていた自分こそが、研究会に参加すべきだっ たということに気づかされたのです。参加して本当に良かっ た、それが率直な感想です。 加藤さんの事例からは、ソーシャルワークとは何かという ことを考えさせられました。事例を聞き進めていけばいくほ ど、当初の依頼とは何であったかを忘れてしまっていまし た。依頼はきっかけに過ぎないことを実感しました。クライ エントの変化や問題点を見逃さず介入することが、難しいこ とだけれども、それがクライエントにとって本当の意味で必 要な援助へとつながっていくのだろうと思いました。そのた めには各種専門職や関係機関との連携は欠かせない、ネット ワークあってこそのソーシャルワークだと改めて感じるこ とができたように思います。 私は最近になってようやく、自分の将来に方向付けをする ことができました。しかし、援助者になるためにはもっとも っと勉強が必要です。これからもこの研究会に参加し、先輩 方の姿からたくさんのことを吸収したいと思っています。 浅野先生より 2006 年 4 月に高齢者虐待防止法が施行され、高齢者に対する虐待の取り組みが行なわれるようになりました。医療ソーシャル ワーカー(MSW)は個別事例のなかにこれらの問題を察知し、すでにその取り組みを行なっていることが今回の講話で明らか になりました。虐待は深刻な生活問題です。虐待問題は、介護をする、介護をされる、という状況から発生する人間関係と密室 性という構造のなかで表面化しにくく、療養生活のなかに埋没し潜在化していくことが特徴です。そこでMSWとして必要とな ることは事例に対する専門職としての積極的関与と、クライエントに対する見立てです。MSWがクライエントの生活問題に積 極的に関わる姿勢を保持することは、困難ではあってもこのような問題を未然に察知し、対処することを可能にします。同時に このような積極的関与には見立ての力が不可欠です。見立ては臨床医学でよく用いられる用語です。見立てとは「クライエント が強調する点をはずして重点を別のところに移すこと」(土居)を意味します。MSWがクライエントのニーズを尊重しながら、 その背後にある生活課題をどれだけ見立てることができるのかといったことは虐待事例の援助にはとくに重要です。 MSW足木みどりさんの素顔 こちらのコーナーでは、現任で働く MSW の方にインタビューし、仕事内容やがんばっている姿をご紹介します! ☆MSWになろうと思ったきっかけは? もともと人に関わることに携わりたかったことと、祖母が、脳 梗塞の肺炎で入退院を繰り返していたことがきっかけです。 ☆お勤め先の紹介 豊橋にある療養病床に勤務しています。入院相談を主として、 各種福祉制度の説明や、療養中の患者さん、ご家族の方々の相 談に応じています。 ☆心に残っているケース 家族から入院費が高いからと言われ、少しでもおむつ代を削 減しようと自らバルーンカテーテルの挿入を望んだ患者さんに 非常に心が痛んだ。 ☆仕事をしていて、嫌になっちゃう時、くじけそうな時はどんな 時? 考え込みすぎてなかなか物事を進められない時。 (性格の問題だ と思いますが。) ☆あなたのストレス解消法 歌を歌うこと。通勤中の車の中では大熱唱です。 ☆最後に、これから MSW を目指す人、または自分へのエールと して何か一言! 初心を忘れず、そして常に向上心を持ってこれからも仕事に励 みたいと思います。
© Copyright 2024 ExpyDoc