チームでの家族指導により自宅退院となった遷延性意識障害の一例

第10回 健育会グループ
チーム医療症例検討会 in 熱川
演 題 名
チームでの家族指導により自宅退院となった
チームでの家族指導により自宅退院となった遷延性意識障害の一例
となった遷延性意識障害の一例
施 設 名
いわき湯本病院
発 表 者
○荻津明(
荻津明(PT)
PT)、永山
、永山美枝子
永山美枝子(
美枝子(Ns)
Ns)、新妻由香利(
新妻由香利(Cw)
Cw)、小野恭子(MSW
、小野恭子(MSW)
MSW)、大根田実(Dr
、大根田実(Dr)
Dr)
概
要
【はじめに】
蘇生後脳症により遷延性意識障害を呈した症例。
自宅退院を希望していたが主介護者は介護技術の習
得に拒否的であり介護指導に難渋していた。患者の
ちょっとした変化を大切にしチームで支援した結果、
主介護者の意識が変わり介護技術を習得され希望通
り自宅退院となった。
【症例紹介】
71 歳女性。心房細動に続く心肺機能停止により蘇
生後脳症となった。自発呼吸は可能で開眼は見られ
たがほぼ無反応、筋緊張が非常に高く四肢拘縮が著
明。
PEG 造設の上発症後約 3 ヶ月目に当院へ転院。
家族構成は、息子 2 人、娘 2 人の 5 人家族である
が次男は障害があり介護困難。長男と長女は自宅で
内職をしているが介護を行う事に拒否的。唯一次女
が介護に積極的であるが就労しており時間が不規則
で在宅時間も短い状態である。
【治療(ケア)計画】
車椅子での離床を目的に全身状態の管理及び筋緊
張の軽減を図る。
次女の不在時、長女が介護者として経管栄養、喀
痰吸引、オムツ交換を行い安定した在宅生活を送る
事ができる。
【経過】
長女は自宅退院を希望していると話すが、実際に
オムツ交換時や経管栄養時などケアの場面に声をか
け指導しようとすると“大丈夫です”と席をはずし
てしまい一向に介護技術を習得する意欲を感じられ
ない状態であった。また、同じ話を繰り返し聞くな
どの面が見られた。一方、次女は来院時に自ら足浴
をするなど積極的であったが、就労しているため不
在の時間ができてしまうので、自宅退院のためには
次女不在時に長女が経管栄養や喀痰吸引、オムツ交
換を行うことが必要であった。
ご本人は、転院時は追視もみられず、開眼時は全
身の筋緊張が非常に高まり多量の発汗が見られる状
態であった。しかし、夜間一時的に筋緊張の亢進が
軽減し「ハイ」などの発語が見られる時がある事に
気づいた。観察を続けると意識の改善は不眠のため
処方された睡眠導入剤ゾルビデム酒石酸塩(マイス
リー:アステラス)10mg の投与後にみられるという
ことがわかり、
文献的に検索した結果 2006 年頃から
欧米文献に遷延性意識障害に対する意識改善効果が
あるとの事であった。転院後 1 ヶ月の頃には、日に
よってではあるが睡眠導入剤投与後には「ありがと
う」「おやすみ」などの発語が聞かれるようになっ
た。そこで、同剤の投与を日中に変えてみると同様
な意識の改善が見られ、長女の前で「ありがとう」
と笑顔になる姿を見せる事ができた。意識が改善し
た状態では、車椅子への乗車も安定して行え、平行
棒を使用して介助量は多い状態ではあるが起立練習
を行う事もできるほどであった。ご本人の言葉を聴
いてから長女の態度が変わり介護技術の習得に前向
きとなっていった。しかし、長女は何事にも自信が
無く、何度指導しても同じ質問の繰り返しとなり技
術の習得が難しい状態であった。そこで、チーム内
で相談し、次女と協力のもと“できるだけわかりや
すい簡単な方法に統一する事”“長女の自信を育て
るために声掛に配慮する事”を決めて実行した。
【結果】
転院 2 ヵ月後、長女は吸引と起居動作介助には多少
の不安はあったがその他は一通り出来るようになり、
次女の早期退院への強い希望もあったため、訪問診
察、
訪問看護、
訪問リハを利用し自宅退院となった。
退院直後は毎日訪問看護に電話が入るなどであった
が、退院 1 ヵ月後には在宅生活が落ち着きその後 1
年ほど在宅生活を継続している。
【考察】
特に意識障害を呈した症例の場合、介護者としては
“自分のしている事が合っているか”など不安が大
きく、自信を持ちづらい方も多くみられる。安定し
た在宅生活には家族の精神的負担の軽減が重要であ
るため、今後も家族が安心を感じられるような退院
指導を継続できるよう検討を続けて生きたい。
【参考文献】
Camille Chatelle,Changes in cerebral metabolism
in patients with a minimally conscious sate
responding
responding to zolpidem,Front Hum Neurosci 2014