ミルカー点検事例 NO,29 ガスコインメロット(本多) 検査98年03月00

ミルカー点検事例 NO,29
検査98年03月00日
システム名 ガスコインメロット
設置年月
95年00月
ガスコインメロット(本多)
型式 3W オートタンデムパーラー
静止時検査の結果概要
①波形 Bフェイズ
パルセーターの設置位置がバランスタンクより離れるに従って、波形に乱れが生じています。
これは一斉に6台のパルセーターが同じ動きをして、真空を消費するために発生するものです。
バランスタンクに近い場所はバランスタンクより真空が供給されるために乱れは生じませんが、
バランスタンクより離れると瞬間的な真空の供給量が不足するからです。パルセーター数が少な
く、お互いの距離が離れている3Wのタンデムパーラーでこの様な問題が生じていますので、真
空の供給能力などにも問題があります。
②システムのエア漏れ配管ロスの計算
計算例 68.0-62.5= 5.5CFM となり配管ロスエア漏れ率が 8.1%となります。
配管を糊付けすれば少し小さくなるかもしれません。
③各部位のエアの消費量
パルセーター1台当たり 1.6 CFM(45L) 消費量が多すぎます。点検が必要です。
ブリードホールの空気の消費量 0.5CFM (14L)
ミルクメーターなど 1.0CFM(28.3L)
離脱装置からのエア漏れです。今後更に増えると問題です。
まとめ
今回の検査で大きな問題点となったことは、パルセーターです。パルセーターの分解掃除が必
要です。その他は検査の基準と比較すると問題はありませんが、設定圧を今少し上げて再検査す
ると、問題点が出てきます。低いが上に検査の数値が大きく出たものと思えます。検査の印象と
しては小さく上手くまとまったパーラーといえますが、搾乳者が上手でないと問題が生じやすい
とも言えます。動態検査の結果が重要なポイントになります。
改善のための提言
緊急を要するもの
1 パルセーターの分解掃除をする。
2 配管のエア漏れを直す。
将来変えたが良いもの
1 クリーンラインのエアの取り入れ口の数を増やす。
動態検査の結果概要
①レシ-バージャー真空圧(サニタリー配管代用)
波形図⑱でユニット装着時に真空圧の変動が見られます。これは装着時のエアの流入によるもので、
搾乳者の腕に問題があることを意味します。しかし、ミルキングパーラーでは1人で全ての作業
をこなすという観点からすると、空気が入ることは完全に防ぐことは不可能です。従ってミルキ
ングシステムがこれをカバーする必要があります。変動範囲は 2KPA 以内の規定内ですが、問題(人
と機械)として考えねば成りません。
原因はレギュレターの設置位置(動態検査では問題点)
、バキュームポンプの大きさなどです。
②ミルクラインインレット圧
搾乳中のミルクラインインレット圧を代用としました。最高最低の真空圧の差が大きすぎ、最
高真空圧はシステムの設定圧よりも高くなっています。この原因は波形図⑧~⑭で○印を付けた
部分で測定されています。ミルクメーターの排出時のバルブの動きにより瞬間的に真空圧が高く
なり、その後の牛乳の排出で真空圧が少し低下しています。ミルクメーターの動きにより真空圧
の変動が大きくなっています。
③クロー内真空圧
変動の幅が大きすぎ、最低値も下がりすぎています。波形図⑥⑦で明瞭な様にミルクメーター
の牛乳排出に伴い大きくクロー内圧も低下しています。この大きな変化と、小さな変動も見られ
ます。これは牛乳が流れることによるもので、この小さな変動も 6KPA 以上有り大きすぎます。こ
れはシステム全体の問題です。
ミルクメーターに牛乳が貯まり、貯まった牛乳が一度に流れる為に、流れる度にメーターアウ
ト E の真空圧が低下します。これに伴いクロー内圧(クローアウト B)もかなり低下しています。
乳量が多い牛ほどミルクメーターに貯まっては流す回数が多くなるので、クロー内圧は常に変動
を繰り返しています。これにより乳量の多い牛が嫌がりうるさくなります。
まとめ
今回の動態試験で明瞭になったことは、静止時検査では大きな問題がありませんでしたが、動
態検査では大きな問題点が判ったことです。車に例えると車検では合格したが、走行試験では問
題点が見付かったのと同じです。静止時検査動態検査の重要性を理解していただければと思いま
す。
以下が明瞭になった問題点です。
①第1点は設定圧の問題です。現在の設定圧は今のシステムからすると低すぎます。クロー内圧
が低下しすぎて、乳頭のマッサージが出来ていない恐れがあります。ライナースリップが多い
原因にも成ります。
②第2点はレシバージャーの真空圧の変動が大きく出ているので、レギュレターの位置、ポンプ
の位置を変更し、真空圧の変化に機械がすぐに対応できるようにします。
③第3点は搾乳手順を先に話したように変更し、搾乳者の腕を上げます。機械で全てをカバーす
るには大きな投資が必要ですが、腕の変更は投資が少なくて済みます。
④第4点は以上の変更をしても問題点が解決できなければ、ミルクメーター、真空圧カット部分
を取り外します。外した後どうするかは検討が必要です。対費用効果を検討しなくてはいけま
せん。
緊急を要する提言
1 レギュレターとポンプの位置をバランスタンクに近い位置に変更する。
現在のレシバージャーの真空圧を変化しない様に設定調整する。
2 上記変更後1週間を経て、設定圧を1週間に 1KPA ずつ上げて、44KPA まで上げる。
3 搾乳手順の変更をする。
4 経過観察を行う。
将来変更した方がよいもの
緊急提言で解決しない場合は、再検査後ミルクメータを取り外す。これにはその後のシステム
の変更など、かなりの投資が必要となるので良く検討してから判断する。
コメント
静止時検査では大きな問題点はないが、動態検査で大きな問題点が見つかった事例。特にミル
クメーターの牛乳排出時に、クロー内圧の低下が大きな問題となった。この種の問題点は、古い
ミルクメーターでは多いので注意が必要である。