2.2 緒言 Bayer Yakuhin, Ltd. 2.2 Page 1 of 2 緒言 アフリベルセプト(一般名 aflibercept(INN)/アフリベルセプト(遺伝子組換え)(JAN)、以 下、本文書中では VEGF Trap と表記)は、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)受容体(VEGFR)である VEGFR-1 及び VEGFR-2 の細胞外ドメインをヒト免疫グロブリン(IgG1)の Fc ドメインに結合し た組換え融合たん白質である。VEGF Trap は、遺伝子組換えチャイニーズハムスター卵巣 (CHO)細胞で発現させ、培養液中に放出された VEGF Trap を分離・精製する製造工程により得 られる。VEGF の過剰発現と、その結果生じる、網膜における血管からの漏出性変化を特徴とす る眼性血管疾患に対する新規の治療薬として Regeneron Pharmaceuticals, Inc.で製造・開発さ れ、Bayer Schering Pharma AG(現 Bayer Pharma AG / Bayer HealthCare group)と共同開発 された。 投与経路は、眼球内の漏出性脈絡膜血管近くで薬剤の治療濃度を最も高め、その一方で全身曝 露を最小限にするため、硝子体内(IVT)投与とした。VEGF Trap の IVT 注射用製剤(以下、VEGF Trap-Eye)は、原薬に IVT 注射用に適した添加剤を加えて調製した製剤であり、単回投与製剤と してバイアル製剤及びプレフィルドシリンジ製剤がある。 本申請は、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(AMD)(以下、滲出型 AMD)を予定 効能・効果として製造販売承認の取得を目的としている。現在、IVT 投与経路において黄斑浮腫 を伴う網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、 、及び への治療効果も検討されてい る。 VEGF Trap-Eye は、薬理学的に VEGF 阻害薬に分類され、滲出型 AMD に対して現在承認されて いる 2 つ治療薬、ラニビズマブ(ルセンティス)及びペガプタニブナトリウム(マクジェン)と 同クラスに属する。ペガプタニブナトリウムは VEGF-A165 アイソフォームの阻害薬で、約 70%の 患者で中等度の視力低下(15 文字未満の低下)を抑制した1)。ラニビズマブはすべての VEGF-A ア イソフォームに対する阻害薬で、約 95%の患者で中等度の視力低下を抑制し、約 33%の患者で は視力が改善(15 文字以上の増加)した2,3)。VEGF Trap-Eye は、汎 VEGF-A 阻害薬として、網膜専 門医にこれまでの AMD 治療に加えて新たな選択肢をもたらすものである(2.5.1.2.2 参照)。 VEGF Trap の安全性プロファイルは、in vitro 及び in vivo での生物学的活性、全身投与及 び IVT 投与後の薬物動態プロファイル、並びに IVT 投与後の毒性プロファイルを評価するために 計画された非臨床プログラムにより検討された。 VEGF Trap は、ヒト VEGF-A、VEGF-B 及び、別の眼性血管疾患でのメディエーターであるヒト 胎盤増殖因子(PlGF)に高い親和性で結合する。レーザー照射による脈絡膜新生血管(CNV)モ デルを含むげっ歯類及びサルを用いた非臨床試験において、VEGF Trap が活動性の病変部位で CNV の伸展を明らかに阻害し、網膜浮腫を縮小させたことから、ヒト疾患における重篤な視力障 害を伴う眼性血管疾患に対する有効性が示唆された(2.4.1,2.4.2 参照)。VEGF Trap をマウス、 ラット、カニクイザル、ウサギに単回投与し、VEGF Trap の非臨床薬物動態を検討した。マウス、 ラット、カニクイザルには静脈内又は皮下投与し、ウサギには IVT 投与した(2.4.1,2.4.3 参 照)。カニクイザルは、眼の構造がヒトに類似していること及び長期にわたる IVT 投与が可能で あることから、IVT 投与による VEGF Trap の眼に対する慢性毒性を評価するのに最も適した動物 種である。げっ歯類では VEGF Trap に対して免疫原性があること、及び眼の構造がサル以外の動 物種とヒトでは形態学的に異なるため IVT 反復投与による慢性毒性評価はサルに限定されること から、IVT 投与による安全性プロファイルはサルを用い評価した。また、比較的高用量を全身投 与(皮下又は静脈内投与)したときの安全性プロファイルをサル及びげっ歯類を用いて評価した。 2.2 緒言 Bayer Yakuhin, Ltd. Page 2 of 2 生殖毒性は、サルとウサギを用いて評価した。また、in vitro での組織の交差反応性を、ヒト の組織パネルを用いて評価した(2.4.1,2.4.4 参照)。 滲出型 AMD における VEGF Trap-Eye の臨床的有効性については、第Ⅲ相試験として VIEW 1 (VGFT-OD-0605)試験 及び VIEW 2 (311523)試験の 2 試験が計画(試験期間:2 年)され、VEGF Trap-Eye の複数の用法用量についてラニビズマブを対照に 1 年目の主要評価項目が検討された。 両試験とも、主要評価項目である「1 年目に視力が維持〔最高矯正視力(BCVA)における視力低 下が 15 文字未満〕された被験者の割合」において VEGF Trap-Eye はラニビズマブに対して非劣 性を示した。本申請時点(2011 年 6 月)には継続中であった両試験は 2 年目データについての サマリーレポートが 20 年 月に作成された。2 年目においては、再投与基準に従い 1 年目と 同じ用量が最短 4 週、最長 12 週間隔で投与され、1 年目に達成された有効性変数の改善は 2 年 目終了時までおおむね維持されていた(2.5.4 参照)。 また、滲出型 AMD おける臨床的安全性評価は、主として第Ⅲ相の 2 試験(VIEW 1 及び VIEW 2)の 1 年目の併合解析データを用いて行い、第Ⅰ相及び第Ⅱ相試験の 1 年目の併合データも補 助的に用いた。長期の安全性は、第Ⅰ相及び第Ⅱ相の延長(VGFT-OD-0702)試験及び、第Ⅲ相試 験の 2 年間の有害事象データを用いて評価した。また、眼科領域において他の適応症で開発中の DME 及び CRVO を対象とした試験についても、安全性の評価に用いた(2.5.5 参照)。 本申請資料に含まれる非臨床試験成績及び臨床試験成績に加えて、審査過程における照会事項 の内容、さらに日本の眼科診療における医療環境等を踏まえた販売名、効能・効果及び用法・用 量とした。本申請の概略を以下に記載する。 申請区分 医療用医薬品、新有効成分含有医薬品 販売名 バイアル製剤: アイリーア硝子体内注射液 40mg/mL プレフィルドシリンジ製剤: アイリーア硝子体内注射用キット 40mg/mL 一般名 aflibercept(INN) / アフリベルセプト(遺伝子組換え)(JAN) 効能・効果 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性 用法・用量 アフリベルセプト(遺伝子組換え)として 2mg(0.05mL)を 1 ヵ月ごとに 1 回、連続 3 回(導入期)硝子体内投与する。その後の維持期において は、通常、2 ヵ月ごとに 1 回、硝子体内投与する。なお、症状により投与 間隔を適宜調節する。 引用文献一覧 1) Gragoudas ES et al., N Engl J Med 2004:351:2805-2816 2) Rosenfeld PJ et al., N Engl J Med 2006:355:1419-1431 3) Brown DM et al., N Engl J Med 2006:355:1432-1444
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