北岡 隆 原 英彰 鈴間 潔

第 54 回日本網膜硝子体学会総会・第 32 回日本眼循環学会 合同学会
モ-ニングセミナ-2
12.5
2015.
sat.
7: 45 8: 45
東京国際フォーラム 第2会場
Bブロック7階 ホールB7 ⑴
座 長
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
眼科・視覚科学 教授
講演 ❶
「基礎的キーワード」
岐阜薬科大学生体機能解析学大講座
薬効解析学研究室 教授
講演 ❷
北 岡 隆 先生
原 英 彰 先生
「臨床的キーワード」
京都大学大学院医学研究科
感覚運動系外科学 眼科学 准教授
鈴 間 潔 先生
共催:第 54 回日本網膜硝子体学会総会・第 32 回日本眼循環学会 合同学会/株式会社三和化学研究所
第 54 回 日本網膜硝子体学会総会・第 32 回 日本眼循環学会 合同学会 モーニングセミナー2
“ 網膜血管病変克服のキーワード ”
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
眼科・視覚科学 教授
きた
おか
〈ご 略 歴〉 ◦1983 年 京都大学医学部 卒業
たかし
北岡 隆 先生
◦1990 年 京都大学医学部眼科 助手
◦1991 年 カリフォルニア大学デイビス校 留学
◦1993 年 長崎大学医学部眼科 講師
◦1998 年 長崎大学医学部眼科 助教授
◦2003 年 長崎大学医歯薬学総合研究科 眼科・視覚科学 教授
現在に至る
座長の言葉
糖尿病黄斑症や網膜静脈閉塞症をはじめとする網膜血管病変の治療については、血管透過性・血管新生
の両方に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)を抑制する抗 VEGF 薬や、炎症を抑えるステロイドの注射薬、
レーザー光凝固術、硝子体手術等が選択される。
このうち、最近注目されている抗 VEGF 薬硝子体注射については、浮腫等に対する短期的な治療効果
は優れるものの、薬剤効果の消失も早いため複数回の投与が必要で、患者の身体的・経済的負担軽減が
課題となっている。
また DME に対する硝子体手術は、侵襲が大きいことや、比較試験による十分なエビデンスがないこと
から、国際的にみると治療手段としての評価は決して高くない。
一方カリジノゲナーゼは、従来からいわれている網脈絡膜循環改善作用に加え、最近では VEGF の発
現抑制や VEGF を直接切断する等の抗 VEGF 作用が注目されており、網膜血管病変への有効性が期待
されている。
本講演では、網膜血管病変治療に関する基礎・臨床のエキスパ-トをお迎えし、網膜血管病変克服に直
結する最新情報をご紹介いただく予定である。このセミナーで、明日からの「網膜血管病変克服のキーワー
ド」を見つけていただければ幸いである。
MEMO
第 54 回 日本網膜硝子体学会総会・第 32 回 日本眼循環学会 合同学会 モーニングセミナー2
講演 1
“ 基礎的キーワード ”
岐阜薬科大学生体機能解析学大講座
薬効解析学研究室 教授
はら
ひで
〈ご 略 歴〉
◦1983 年 岐阜薬科大学 卒業
◦1988 年 東北大学医学部脳疾患研究施設神経内科 留学
◦1994 年 ハーバード大学医学部ニューロサイエンスセンター(神経内科) 留学
◦2004 年 岐阜薬科大学生体機能分子学講座 客員教授
◦2007 年 岐阜薬科大学生体機能解析学大講座薬効解析学研究室 教授
◦2010 年 岐阜薬科大学 薬科学科長
あき
◦2012 年 岐阜薬科大学 薬学研究科長
◦2014 年 岐阜薬科大学 副学長
原 英彰 先生
現在に至る
糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症の病態には、血管内皮細
細胞死および網膜透過性亢進の抑制が関与している可能性
胞増殖因子 VEGF が深く関与していることが明らかになっ
を明らかにした。さらに、我々は最近マウス網膜静脈分枝
てきた。事実、これら病態の治療には、抗 VEGF 薬が有効
閉塞症(BRVO)モデルの確立も行った。
である。しかし、これら薬剤は硝子体への直接投与のため
これまでのモデルは嚢胞様浮腫が形成されず、病態を正
に、患者へのコンプライアンス維持や身体的な負担、眼内
確に反映しているとは言えなかったが、今回嚢胞様浮腫を伴
炎などの副作用など課題もある。我々は基礎薬理学的な検
うマウス BRVO モデルを確立することができたことで、よ
討の結果、カリジノゲナーゼは VEGF を切断し、眼内での
り詳細な病態解明を行うことが可能となった。
本シンポジウムでは、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性およ
VEGF の増加を抑制している可能性を見出した。
また新たなマウス網膜虚血モデルを確立した。そのモデ
び網膜虚血などによる網膜血管病変に対するカリジノゲナー
ルを用いてカリジノゲナーゼは、眼虚血による網膜障害に対
ゼの可能性について、基礎薬理学的視点から述べ、さらに
して抑制作用を示し、その作用機序には eNOS のリン酸化
は最近確立したマウス網膜虚血モデル並びにマウス BRVO
上昇および NF-κB のリン酸化抑制作用を介した網膜神経節
モデルの紹介を行う。
第 54 回 日本網膜硝子体学会総会・第 32 回 日本眼循環学会 合同学会 モーニングセミナー2
講演 2
“ 臨床的キーワード ”
京都大学大学院医学研究科
感覚運動系外科学 眼科学 准教授
すず
ま
きよし
鈴間 潔 先生
〈ご 略 歴〉
◦1993 年 京都大学医学部 卒業
◦1998 年 Joslin Diabetes Center, Harvard Medical School 留学
◦2001 年 京都大学医学研究科眼科学 助手
◦2006 年 静岡県立総合病院 眼科長
◦2008 年 長崎大学医歯薬学総合研究科 眼科・視覚科学 講師
◦2010 年 長崎大学医歯薬学総合研究科 眼科・視覚科学 准教授
◦2014 年 京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学 眼科学 准教授
現在に至る
糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症等の網膜血管病変では、
カリジノゲナーゼは、網脈絡膜の循環障害改善の適応で
血管透過性亢進によって黄斑部に浮腫を来す症例が多く、
長く臨床使用されてきたが、最近、VEGF の発現抑制と直
視機能障害の大きな原因となっている。
接切断による抗 VEGF 効果が報告されており、抗 VEGF
これまでレーザー光凝固や硝子体手術による治療が行わ
れてきたが、近年、血管透過性や血管新生を亢進させる
薬やステロイドの注射剤との併用による上乗せ効果が期待さ
れている。
VEGF に対する抗 VEGF 薬や、炎症に対するステロイドの
我々はこれまで、CRVO に対する抗 VEGF 薬との併用
注射剤が相次いで眼科適応となり、網膜血管病変に対する
効果や、DME に対するトリアムシノロンテノン嚢下投与併
薬物治療が見直されつつある。
用毛細血管瘤凝固術との併用効果を検討し、若干の知見を
一方で、これらの薬剤は概ね短期成績は良好であるもの
の、本来の網脈絡膜障害に対する治療効果が未確認であり、
蓄積してきたので、その一端を紹介する。
なお、本講演で紹介する臨床研究については、全て所属
注射数ヶ月後の薬剤効果消失により浮腫等が再発するケー
医療機関の倫理委員会承認の元、インフォームド・コンセン
スも多く、低侵襲で長期的に安定した薬物治療の方法論が
トを取得して実施した。
模索されてきた。
MEMO