中学校第2学年2組 理科授業案 平 成 25 年 10 月 4 日 場所 授業者 【キーワード】 思考過程がわかるワークシート 帰納的推論 第1理科室 中尾 裕二 県立博物館との連携 1 単元名 生物の進化 2 単元の目標と評価規準 (1) 単元の目標 現存している生物及び化石の比較などをもとに,現存の生物は過去の生物が変化して生じてきたもの であることを体のつくりと関連付けてとらえさせる。 (2) 単元の評価規準【学力デザイン レベル3】 イ 生物の変遷と進化に関する事物・事象の中に問題を見いだし,目的意識をもって観察,実験などを 行い,現存の生物は過去の生物が変化して生じてきたことと体のつくりとの関連などについて自らの 考えをまとめ,表現している。 【科学的な思考・表現】 エ 現存の生物は過去の生物が変化して生じてきたことを体のつくりと関連付けて理解し,知識を身に 付けている。 【自然事象についての知識・理解】 ア 生物の変遷と進化に関する事物・現象に進んで関わり,それらを科学的に探究しようとするととも に,生命を尊重し,自然環境の保全に寄与しようとする。 【自然事象への関心・意欲・態度】 ウ 生物の変遷と進化に関する事物・現象についての観察・実験などを行い,結果の記録や整理,資料 の活用の仕方などを身に付けている。 【観察・実験の技能】 3 単元を貫く問い 「500 万年後のヒトはどのような姿になっているだろうか?」 4 生徒の実態 生徒はこれまでに,小学校第5学年「動物の誕生」 ,小学校第6学年「生物と環境」でメダカとヒトの命 の発生過程や生き物と環境とのつながりについて学んできている。ここでは,場所や環境のちがいにおけ る生物のからだのつくりのちがいや共通点から,進化という概念を考え学んでいく。このことは,中学校 3年生「生物の成長と殖え方」での生命の発生や「遺伝の規則性と遺伝子」での種のつながりの学びへと 発展していく。そして,本単元を通して自分たちヒトと他の動物との関連性・共通性を見いだし,長い年 月をかけ状況に応じて進化してきたという概念を学んでいくとともに,多種多様な生物や身のまわりの事 物・現象との関わりについて考えていく。 本学級の生徒は,男女間の協力も多く見られ,意欲的に活動する生徒が多い。理科に対する興味・関心 は高く,特に観察,実験を伴う活動には意欲的に取り組んでいる。基本的な知識も充分身に付いており, 理解度が高いことも伺える。しかし,自らの考えの根拠を明らかにして自分の言葉で表現したり,説明し たりすることを苦手としている生徒も多い。これらの状況から,学びの中に表現活動を多く取り入れてい く必要があると考えられる。 5 内容 19 世紀に自然科学者のチャールズ・ダーウィンが「種の起源」を発表したことで, 「個体に変異(後の遺 伝による突然変異)が起こり,環境に適応した個体が生き残る自然淘汰が行われ,その繰り返しによって, 生物は長い時間をかけて環境に適した種を形成していく」という「進化」の概念が広まった。理科の学習 において,科学者の考えをたどり,科学的証拠を基に,過去の事象を考えていくことは,自然の事物・現 象を解釈する上で,重要となる科学的な見方や考え方である。本単元では,動物の進化を探る活動を通し - 29 -(中2年理科) て,動物は世代を重ねる中で環境に適応しつつ,体のつくりや働きが進化していくことを見いださせる。 また, 「500 万年後のヒトはどのような姿になっているだろう?」を単元を貫く問いに設定することで,ヒ トの体のつくりや働きから過去の事象のみならず,500 万年後の生命の歴史について,科学的に探究する活 動を取り入れていきたい。 6 方法 (1) ワークシートの工夫 生徒が自らの思考過程を明確にすることができるようにするために,ワークシートの工夫をし,観察, 実験の結果を分析して解釈し,自らの力で筋道立てて表現できるようにする。 (2) 言語活動 科学的な思考力・表現力を育成するために,今までの自分の経験や知識をもとに,課題に対して帰納 的推論を行わせ,自分の考えを述べさせる。 課題と内容 時間 過程 7 単元の授業過程(全7時間) 導入 教師の指導・支援 評価とその方法 1 植物や動物の各グループの特徴や生活 ア 生物の変遷と進化に関 [言語活動] 1 生物の進化の方向性 1 はどのようになってい の場所を整理させ,水中から陸上へとい する事物・現象に進んで るか調べよう。 う変化の方向を見いださせる。 関わり,探究しようとす 問い: 「500 万年後のヒトはどのような姿になっているだろう?」 展開 2 進化が起こった証拠 2 2-(1) 生物が長い期間をかけて変化して る。 (観察) ウ 観察・実験の結果の記 とは何があるか調べよ きたことに気付かせるために,骨格 録や整理,資料の活用の う。 を比較させ同じ働きをする相同器官 仕方などを身に付けてい に着目させる。 る。 2-(2) 2つのグループの中間の特徴をも (観察,ワークシート) ったシソチョウやシーラカンス,カ モノハシを例に,生物が進化してき たことを見いださせる。 3 進化が起こる仕組み 1 について調べよう。 3 ダーウィンウィンチのくちばし形態変 化やオオシモフリエダシャクの工業暗 化などの具体例をあげて,イメージをも たせる。 4 セキツイ動物の体の 1 4-(1) カエルの心臓の今後の心室,心房の イ 現存の生物は過去の生 つくりと進化の関係を 本時 数の変化についての仮説の妥当性を 物が変化して生じてきた 検討させる。 ことを表現している。 調べよう。 [⑱推論する] (ワークシート) 1 4-(2) 生息する環境に最も適した形に動 物が進化していくことを理解できる 物が変化して生じてきた ように,モグラやクジラを例に,動 ことを理解している。 展望 物の進化についてまとめ直させる。 5 進化について,自分 の考えをまとめよう。 [⑦資料を作る] 1 エ 現存の生物は過去の生 5 今まで学習した知識をもとに,500 万年 (ワークシート) イ 500 万年後のヒトの姿 後のヒトはどのような姿になっている を,根拠をもって予想し, か予想させる。 表現している。 (ワークシート) [⑱推論する] - 30 -(中2年理科) 8 本時の授業 (1) 本時の指導目標 カエルの心臓が,今後どのように進化するかを心臓のつくりと働き,体温,呼吸の仕方の3つの視点 で考え, その動物の心臓のつくりが生息する環境に最も適応した形に進化していることを理解できるよう にさせる。 (2) 本時の評価規準 イ セキツイ動物の心臓のつくりのちがいを動物の進化の考えをもとに説明することができる。 【科学的 な思考・表現】 ア セキツイ動物の心臓のつくりのちがいに興味をもち,資料をもとに,進化の視点から意欲的に調べ ようとしている。 【自然事象への関心・意欲・態度】 (3) 本時に期待する生徒の学び グループや学級全体で科学的な根拠を用いて話し合い,多様な意見とふれあうことで,セキツイ動物 の心臓は,より複雑で精巧という考えではなく,環境へ適応する形に進化しているという考えについて の認識が深まっている。 学習活動と内容 形態 過程 (4) 本時の授業過程【全7時間 本時5/7】 導入 [言語活動] 1 セキツイ動物の心臓のつ 個 くりや働きのちがいを考 斉 教師の指導・支援 1 心臓について学習してきたことを振 評価とその方法 ア 資料をもとに,進 り返ることができるように,セキツイ 化の視点から意欲的 え,本時の学習の方向性と 動物のそれぞれの心臓のつくりの長所 に調べようとしてい 課題を確認する。 や短所について確認させる。 る。 (観察) 課題:カエルの心臓が同じ環境のもとで,今後どのように変化しながら進化するか考えよう。 展開 2 カエルの心臓の今後の心 個 2 カエルの心臓が今後二心房二心室に進 房,心室の数の変化について 化するかどうか, 根拠をもとに考えるこ の仮説の妥当性を検討する。 とができるように, 動物の進化について まとめた内容をもとに仮説を考える活 動を設定する。 3 カエルの心臓の心室の数 G 3 カエルの心臓が二心房一心室から変化 が少ない理由を,心臓のつく せず単純なつくりのまま環境に適応し りと働き,体温,呼吸のしか ているかどうかを探ることができるよ たをもとに考える。 う,セキツイ動物の体温,呼吸のしか た,心臓のつくりを視点として考える 活動を設定する。 4 科学的な根拠に基づいた 斉 4 科学的な根拠に基づいたより確かな仮 イ 科学的な根拠をも ものより確かな仮説へ修正 説へ修正していくことができるよう とに説明することが し発表する。 に,カエルの心臓の進化についての各 できる。 [⑱推論する] グループの考えを学級全体で交流し, 展望 まとめる活動を設定する。 5 セキツイ動物の心臓と進 斉 5 セキツイ動物の心臓は,どちらがより 化について,博物館職員の方 複雑で精巧という考え方ではなく,環 から話を聞く。 境へ適応する形に進化していることを 理解できるように,博物館の方からの 6 本時のまとめを行う。 話しの場を設定する。 - 31 -(中2年理科) (ワークシート)
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