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コミュニケーションチャネルの変遷⑧
2 0 0 5 .1 1
バーチャルコミュニティが影響力を持つまで
1―― リアルコミュニティのクチコミからマス情報へ
1970年代頃まで、生活者の主な情報源はお隣さん同士
のリアルな地域コミュニティーで、情報量は少ないものの発
信元の顔が見える信頼性の高い情報を活用していた。
み、アパートやマンション生活が増え、地域コミュニティは衰
退傾向に。テレビや雑誌、ラジオなどマスメディアの発達が
創刊
1975
1980 85 クッキング雑誌「オレンジページ」創刊
1985 87 パソコン通信「ニフティサーブ」開始
1990 92 日本初インターネットサービスプロバイダ
サービス開始
生活に不便を感じさせないことで、それを加速させた面もあ
の「ブランド」が持つ情報の信頼性へと移行していったのだ。
2―― バーチャルコミュニティの広まりと多様化
90年代半ばからインターネットが広まり、90年代後半に
はポータルサイトや企業サイトが出現。生活に電子メールが
定着し、ネットでの情報収集も
「便利なもの」
として実感され
始めた。また、PHSや携帯電話の普及、ネット接続可能な
携帯電話の登場が、場に縛られない情報交換やつながりに
拍車をかけた。
2000年前後にはネット上の「掲示板」で地域や物理的な
空間に縛られず、好きな時に共通の趣味・興味などをテーマ
に見知らぬ人との情報閲覧や交換も始まった。
3―― 強力な情報源となったクチコミ
これまでマスメディアからの情報を受ける一方だった生活
[※1]
やSNS[※2]の登場で情報発信力を高め、
者が、ブログ
バーチャルコミュニティへ積極的に参加することでコミュニ
ティでの情報は「クチコミ」
として力を持ち始めた。@コスメ
のクチコミランキングで話題になった化粧品がよく売れるな
ど、今やバーチャルコミュニティのクチコミ力は、消費行動
の情報源として大きな影響力を持つようになった。企業もま
た、こうした「クチコミ力」に注目、企業ブログやコミュニティ
可能になる
生活者の情報収集スタイルは、時代と共に変化しています。生
1995 95 「Windows95」発売
93 住宅の一戸建て比率59.2%、
共同住宅35.0%
ト「Yahoo!JAPAN」サービス
1996 96 商用検索サイ
開始
「ポケベル」流行
95 流行語大賞「インターネット」
パソコンの世帯所有率15%超
「Excite Japan」サービス開始
1997 97 「goo」
96 携帯・PHSの普及率20%超
「楽天市場」サービス開始
97 生活者の都心回帰現象が始まる
「CORE PRICE」
(現カカクコム)サービス開始
CATVの世帯普及率11.2%
1998 98 「Yahoo! JAPAN」が1日あたり1,000万
98 コミュニティ放送局数115局
(2年間で60局増)
ページビュー突破
「MSN」サービス開始
「Windows98」
「iMac」発売
1999 99 「iモード」サービス開始
99 西暦2000年問題
「2ちゃんねる」サービス開始
化粧品のクチコミサイト「@コスメ」サービス開始
「たのみこむ」サービス開始
2000 00 「Google」日本語正式版サービス開始
00 パソコンの世帯所有率50%超
「Amazon.co.jp」サービス開始
携帯・PHSの普及率50%超
「デジタルデバイド」が沖縄サミットの
議題に
2001 01 「Yahoo!BB」サービス開始
01 インターネットの世帯普及率
02 「Yahoo!JAPAN」が1日あたり3億ページ
50%超
ビュー突破
2002 03 地上デジタル放送開始
02 「迷惑メール規正法」施行
「はてな」
「ライブドア」ブログサービス開始
04 SNSの「mixi」
「GREE」サービス開始
を立ち上げるなどして戦略的に取り組み出している。
03 住宅の一戸建て比率56.5%、
共同住宅40.0%
ブロードバンド加入者数1000万
突破(世帯普及率2割超)
04 タワーマンション供給戸数が
前年比3割増
2003
※1 ブログ:ウェブログ
(Web+log)
。トラックバック、コメント機能などを備え
た日記的サイトの総称。
※2 SNS:Social Networking Service コミュニティ型のウェブサービス
2004
メディアバリュー研究に関する
お問い合わせはこちらまで
2005 05 インターネット広告市場規模がラジオ広告を抜く
アバターコミュニティ
「Jenka」サービス開始後
約4ヵ月で会員10万人突破
「mixi」会員100万人突破
TEL 03-5225-8725
URL http://www.dnp.co.jp/mediavalue
こちらからバックナンバーもご覧になれます。
8
93 パソコン通信とインターネットの相互通信
る。生活者が活用する情報は、
「顔が見える」
ことによる情
報の信頼性から、メディアのフィルターを通す事による一種
メディアバリューレポート
生活・暮らし・住まい・流行
61 平均世帯人員数が4人を割る
70 白黒テレビ普及率90.2%
(カラーは26.3%)
71 「多摩ニュータウン」入居開始
83 住宅の一戸建て比率64.3%、
共同住宅26.9%
1960
1970 77 マイクロコンピュータ総合誌「月刊アスキー」
Vol.
70 年以降、都市を中心に核家族化や単独世帯化が進
年 表
コミュニケーションメディア
年
● 生活者の買い物行動の変化
(%)0
20
40
05 「電車男」ブーム
総務省、SNS人口399万人、
ブログ人口473万人と発表
活者の食品スーパーマーケットにおける購買行動はいったいどの
正月、ひな祭り、敬老の日……、こうした行事が子
ように変わっているのでしょうか。市場分析から販促効果分析ま
供を中心に祖父母、両親と 3 世代が集まる機会
で、食品スーパーマーケットへの一貫した販売促進支援を行う
になっています。家族が増えれば食卓も華やぎま
(株)
アットテーブルの上田健司さんにお話をうかがいました。
80
変化する食卓、納得する情報を求める生活者
2.6
単独世帯
2.8
核家族世帯
3.0
三世代世帯
3.2
その他
3.4
の楽しみ方をスーパーが提案することが、生活者
に変化が起きています。特に 20、30 代の若い主婦で変化が顕
の納得を創り出します。
「クリスマス=チキン」
と
著だと感じています。
思っている方に「ローストビーフはいかがですか?」
彼女達は日常の食生活で
は「手軽さ」
を追求しています
と」
も大事だと捉えています。
例えば、惣菜のコロッケを買
う時でも、どう工夫すれば「手作り風」になるか考え、自分で作っ
たサラダを添えれば立派な「手作り料理」だと納得し購入します。
またお刺身を食べたい時でも、ご飯を炊く手間を考えると、手軽
で豪華に見えるお寿司を選ぶというように合理的に考え、納得し
て購入します。このような現代の生活者には「納得して購入するこ
年齢層や地域によって、好まれる商品やサー
と」
を促す、わかりやすいメニューの提案をしたり、調味料(ソース
ビスも変わってきます。
「生活者へのわかりやすい
の素)
と素材をセットで売るなど、出来上がりがイメージできる調理
提案」
という基本は共通ですが、誰に、どのよう
法、演出法を提案することが大事だと思います。
な提案をするかという店側の焦点をしぼっていく
※背景の棒グラフは「世帯構造別の世帯構成比」
(厚生労働省「国民生活基礎調査」より)
※背景の折れ線グラフは「平均世帯人員数」
(厚生労働省「国民生活基礎調査」より)
いかなる形式でも本紙の一部または全部の複製および無断転載をお断り致します。内容は2005年11月現在のものです。お断りなしに変更することがあります。
このパンフレットは、100%再生紙に大豆油インキで印刷しています。©大日本印刷株式会社 2005 printed in japan 生活にメリハリ、
「ハレ」の日の重要性増す
高さなど店の強みはどこにあるのか」
。
また、普段の食事にはあまりお金を使わず、旅行や外食にはそ
チラシや店頭販促物での情報提供をどうするかなど、生活者
れなりの予算を使う、というように「ハレ」
と
「ケ」
で上手にお金を使
が受け取った情報で具体的なイメージを創り出すためのコミュニ
い分けています。例えば、穴場と言われるラーメン店を雑誌や
ケーションが求められているのです。
しむためには労とお金を惜しまない生
活者が増えています。
05.11
情
報
を
う
ま
く
活
用
し
食
生
活
に
メ
リ
ハ
リ
ことも必要でしょう。
「どのような層をねらうのか」
「手軽さ、質の
ラーメンを並んで食べるというように、楽
C&I事業部 マーケティング情報開発室
〒162-8001東京都新宿区市谷加賀町1-1-1 TEL 03-5225-8725 URL http://www.dnp.co.jp/cio/ いくのです。
されて
「自分なりに納得するこ
3.8
平均世帯人員数
と提案するなど、スーパーが「ハレ」
を
「演出」
して
が、豊富な生活情報に刺激
100
3.6
パーティ料理が選ばれます。こうした「ハレ」の日
単独世帯と核家族世帯、働く女性の増加と共に、家庭の食卓
かけてドライブし 1 杯 1000 円以上の
(人)2.4
す。さらに3世代がそろいますから、オードブル、お
寿司、ピザなどそれぞれの世代の好みに合わせた
ネット、クチコミで調べ、週末に時間を
60
「ハレ」の日の重要性は増しています。クリスマス、
株式会社アットテーブル
DNPでは3社目の社内ベンチャー事業会社
として、2004年9月1日に設立。スーパーマー
ケットを対象とした販促支援事業を行う。
取締役社長:上田 健司
TEL:03-3266-2486
メディアバリューレポート Vol.8 2005.11
商品を購入する時に情報を参考にする人
買い物を線(プロセス)で楽しむ人々
テレビで見た物を、ネットで調べて買ってしまったり。友達
(%)
MV2003
MV2005
80
お薦めの物をケータイで申し込んだり……最近、こんな買
い物の経験ありませんか?
60
生活者は「どんな商品を買うか?」
といった購入時点だけで
は買い物をしていません。普段から情報を気にし、
「どんな
40
+
1.18
情報をもとに、何を重視し、どういう方法で買い、どう使う
といった買い方のプロセス自体に自分なりのこだわり
か?」
20
+
1.17
伸び率
+
1.15
伸び率
商品を購入する時に参考にする情報源の伸び率(MV2003-MV2005)
(%)
多くの人と情報交換する時代――ネットでは掲示板やポー
250
タルサイトが賑い、生活者は情報通に。そのため、店員は
200
生活者より高度な知識を求められています。
150
いま買い物の情報源として「クチコミ」や「サイト」が元気な
100
のも肯けます。また、DM や通販カタログ、パンフレットへ
50
の注目度も漸増。
普段 比較・検討 最終決定 購入後
0
これら、生活者が自ら能動的に情報収集していくメディアは、
伸び率
を持ち、納得しながら買い物を楽しんでいます。
情報を待つタイミング、攻めるタイミング
新
聞
商品を決定する時により重視される傾向があります。一方
彼らは購買行動を
「点」
ではなく
「線」
で捉えているのです。
︵テ
地レ
上ビ
波
︶
ラ
ジ
オ
雑
誌
車街
内頭
広・
告
折
込
チ
ラ
シ
パ
ン
フ
レ
ッ
ト
通
販
カ
タ
ロ
グ
D
M
店メ
舗ー
サカ
イー
ト・
0
普段
比較・検討
最終決定
新聞、テレビなど、何気なく接する受動的なメディアは普段、
購入後
購買行動のプロセスの各段階(①普段、②比較・検討、③最終決定、④購入後)
における「情報収集熱」は高まってきた。しかも早期(普段)から情報収集を欠
かさない人が多くなっている様子が見られる。
注目されています。
生活者たちは今、
「受動的メディア」
「能動的メディア」
それ
ぞれを購買プロセスの中で、巧みに使い分けています。
コポ
ミー
ュタ
ニル
テ・
ィ
サ
イ
ト
店
頭
の
販
促
物
店
員
か
ら
の
情
報
サイト
か友
ら人
の・
情知
報人
家
族
か
ら
の
情
報
クチコミ
MV2003-MV2005で注目度が上昇した(伸び率・利用率ともに高い)3強メディ
アは「クチコミ」
「サイト」
「店員からの情報」
。これらは、生活者が自分から情報
を取りにいく
「能動的メディア」
という共通点がある。
SNS、ブログといったコミュニケーションツールの出現、
第3の業態とも言われる100円ショップの台頭……
私達を取り巻く環境は、日々変化しています。
生活者の購買スタイルはどのように変化しているのでしょうか?
メディアバリューレポートVol.8では、ここ数年の購買行動の変化を捉えます。
企業発信の情報は「購入」中心の一方通行に
「情報」の「価値」を再認識
普段からメディアを使い分け、情報収集を行う生活者は、
意識・無意識を問わず「カシコイ消費者」へと変貌しました。
なりがちですが、それをプロセスとして捉え直して
商品を購入する際に重視するポイント
(%)
MV2003
MV2005
80
①普段②比較・検討③最終決定(購入)④購入後の流れで、
60
生活者とのコミュニケーション・プランを再構築するのです。
いつもの店で買う商品もあれば、時には意中の一点モノを
求めてネットを、店舗をハシゴして探索する。あるいは 1 年
40
落ち商品が安くなるまで買い控える。
20
今や価格比較サイトで最安値が容易に判ると同時に、実
際の使用感、満足感に関する情報なども入手可能。単純
にいいモノ、安いモノでなく、購入後の生活への定着度合
いなどを含めた総合的な情報の「価値」
を元に、自分にとっ
て必要な物や買い方を判断しています。……それは生活
者が、
「商品」の価値に加え、
「情報」の価値を再認識しだし
ているからに他なりません。
みませんか?
例 えば 購 入 者 の、④ 購 入 後 の 使 用 感に関 する情 報 を、生 活
実感に近い言葉で表現(生活者モニター)するなど、④→①→②
→③……へと「購買ループ」を形成していく。買い方によって差
0
割
安
感
購
入
方
法
周
囲
の
評
判
広
告
・
宣
伝
品
質
・
性
能
使
用
経
験
メブ
ーラ
カン
ード
・
サア
ーフ
ビタ
スー
社
会
性
デ
ザ
イ
ン
限新
定発
発売
売・
「割安感」
「購入方法」
「周囲の評判」を重視する人が目立って増加。その一方で
「品質・性能」
「アフターサービス」なども漸増傾向。安くていいモノを買うのは
は、もはや当たり前。それをどう買うか? に焦点は移りつつある。
がつく時代だからこそ、商品を知り、比べ、選び、買うプロセス
そのものを楽しむ生活者には欠かせないアプローチです。
――変化する生活者の情報収集スタイルに応える、生活
者のコミュニケーション・バリューを創出することが
今日の企業に最も求められているのではない
でしょうか?
メディアバリュー研究とは
● DNP 独自の調査・分析をベースに、マーケティングの
新しい「視点」
を提案するプロジェクトです。
●情報環境が変化する中で、生活者のコミュニケーション
チャネル
(メディア・チャネル)利用実態や購入プロセス
を多面的に捉え、企業のメディア戦略や生活者とのコ
ミュニケーションデザインをトータルにサポートいたします。
●ご紹介した内容は、メディアバリュー研究「定点調査」
(質
問紙調査、15∼69歳男女900名対象、実施:2004年
10月/2002年10月)
の分析結果を基にしています。
メディアバリューレポート Vol.8 2005.11
メディアバリューレポート Vol.8 2005.11