Title 里山のチョウ類とゴミムシの多様性 : 里山の林分の - 金沢大学

Title
里山のチョウ類とゴミムシの多様性 : 里山の林分のパッチ構造と都
市化の影響
Author(s)
大脇, 淳
Citation
博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査結果の要旨/金
沢大学大学院自然科学研究科, 平成19年9月: 44-47
Issue Date
2007-09
Type
Others
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/2297/26683
Right
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氏名
学位の種類
学位記番号
学位授与の日付
学位授与の要件
学位授与の題目
論文審査委員(主査)
論文審査委員(副主査)
大脇淳
博士(理学)
博甲第845号
平成18年9月28日
課程博士(学位規則第4条第1項)
里山のチョウ類とゴミムシの多様性:里山の林分のパッチ構造と都市化の影響
中村浩二(自然計測応用研究センター・教授)
岡澤孝雄(留学生センター・縮),木下栄一郎(自然計測応用研究センター・助教授),
)||幡佳一(教育学部・教授),東浩(自然科学研究科・助教授)
AlDstract
SatoyaInaisoneoftllethekeyareasfbrmaintainingtllebiodiversityinJapan・I
investigatedtllepatternofbutterflydiversitymrelationtovegctationdiversityand
effectsofurbamzationandfbrestfra=Inentationonfbreststandstructureandcarabid
diversitymruralandurbanareasofKanazawa,Japan
ButterflyassemblagewasinvestigatedbytransectmetllodfrolnApriltoOctoberm
l999、Studyroutewasdividedintofivesectionsaccordingtotlleenvironmental
differencaVegetationassociationofeachbutterflyspecieswasanalyzedinrelationto
theirlifemstoryfeaturesandendemism・Intotal,856individualsfieom51specieswere
recordedButterflydiversitywaslligllestatthetwosectionswitllfbrestedge・Sixteen
specieswereclassifiedintofbrestinteriorspecies,Z4fbrestedgespeciesandll
openlandspeciesForestinteriorandedgespeciescontainedmanyspecialistssensitive
tohumanimpactsandmanytelnperateEastAsiaendemics・hcontrast,mostopenland
speciesweretolerantgeneralistswiththewidestgeograpllicrange・
Inordertostudyeffectsoffbrestfieagmentationwitllinatraditmalsatoyanlaareaand
urbanizationonstandstructure,standstructurewasexanunedmlOruralfbrestpatches
(O03-11ha),oneruralcontinuousfbrestandtwourbanfbrestpatches・Species
compositionoftlleurbanfbrestswassignificantlydifferentfieolntlloseoftllerural
fbrestSinallthethreelayers,i、e・shrUb,sUbcanopyandcanopylayers、Stemdensitiesof
shmblayerweresignificantlylli窪hermtheurbanfbreststhanmthemalfbrests・The
urbanfbrestslackcddeciduoussaptreesandkeyffuittrees,andweredonmatedby
evergrcensaptrees・Icouldnotfindanyeffectsoffbrestsizeandisolationonstand
structureamongtlleruralfbrests,indicatingthateffectsoffbrestfieagnlentationwithin
satoyamalandscapeisveryweak
lnordertostudyeffbctsoffbrestfragmentationmatraditmalsatoyamaareaand
urbanizationoncarabidassemblage,eightmalfbrestpatcllcs(0.O7-11ha),onerural
continuousfbrestandtwourbanfbrestpatcheswcrestudiedUSmgpitfallsamplmg、
Speciescompositionoftheurbanfbrestswassignificantlydifferentfieomthoseoftlle
ruralfbrests、Comparedwitlltheruralfbrests,nlnespeciesdisappearedorbecame
-44-
signifIcantlylowerdensitymtheurbanfbrests、Aswellasstandstructure,Ifbund
neitllerareaeffectsnorisolationeffectsamongfbrestpatchesmthesatoyamaarea,
However,onecarabidspecieswasrestrictedtothecontinuousfbrest・
Inconclusion,secondaryfbrestsarethekeyfbrconservmgbiodiversityand
endemisminsatoyamaareas・Forestfragmentationmatraditionalsatoyamaareahardly
affectedbiodiversity,butlJrbanizationgreatlyreducedthebiodiversityofsecondary
fbrests.
学位論文要旨
①里山は日本の生物多様性の要として大きな注目を浴びているが、里山の
生物多様』性の特徴や維持機構など多くの点が未解明であり、近年の都市化や管
理放棄によってその生物多様性は危機に直面している。本研究では、特に里山
の生物多様性の特徴と維持機構、都市化の影響に焦点を当てて、金沢市郊外の
里山とその近郊の都市部に孤立した二次林でチョウ類、植生構造、地表性ゴミ
ムシ類について調査した。
②里山の環境の多様性と生物多様性の関係、里山に生息する種の生物地理
的な特徴を明らかにするために、金沢市俵町の里山に約1.1kmのルートを設置
し、1999年4~10月に計24回チョウ群集を調査した。調査ルートは環境の違い
により5区画に分割し、各区画で観察されたチョウの種と個体数を記録した。
観察されたチョウは化性(年1化、年2化、多化'性)、食性幅(狭食`性、広食
`性)、食草タイプ(草本食、ササ食、木本食、マント植物食、2タイプ以上利用
する多食)、地理的分布域(日本・サハリン固有種、狭い温帯東アジア種、広
い温帯東アジア種、広域分布種)についてそれぞれ分類した。本調査で51種856
個体のチョウが記録された。チョウの種数は林内やオープンランドを通る区画
に比べ、林縁を含む2区画で最も高かった(32種と36種)。観察された51種
の植生との結びつきを多変量解析で解析したところ、16種は林内と、24種は林
縁と、11種はオープンランドと結びついていた。林内種や林縁種には人為的撹
乱に弱い年1化・狭食!性のスペシャリストと日本固有種を含む温帯東アジア種
が多いのに対し、オープンランド種の大半は人為的撹乱に強い多化性⑨広食性
のジェネラリストや広域分布種であった。従って、里山におけるチョウの多様
性や固有性を維持するには、二次林が極めて重要であることが明らかになった。
③里山では様々な環境がモザイク的に入り組むため、里山の生物多様性に
とって重要な二次林は本来的に分断化され、小面積化したり孤立化する傾向に
ある。このことは生物群集に大きな負の影響を与える可能性があるが、これま
で全く考慮されてこなかった。また、二次林は近年の都市化により著しく分断
化されつつある。そこで、半径3km以内の同じ地域から、里山城にある二次林
11林分(0.03-11haのパッチ状の10林分と大きな連続林1林分)と都市域にあ
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る二次林2林分(0.4haと1ha)で、里山の環境構造が本来持っている負の側面
(二次林が分断化される傾向)と近年の都市化が二次林の植生構造に与える影
響を調査した。各林分には、東西と南北の林縁から林縁に貫通する5,幅のベル
ト、又は林縁から林内40mまたは60mに入る10,幅のベルトを設置し、そのベ
ルトを5*5mの区画に分割し、各区画内の胸高直径2cm以上の全樹木の樹種を同
定し、胸高直径と高さを測定した。
里山林(里山城にある林分)と都市林(都市域にある林分)では高木層、
雨高木層、低木層全ての階層において種構成に大きな違いが見られた。単山林
に比べ、都市林では特に落葉の液果樹種や翼果樹種が欠落し、常緑の液果樹種
が増加した。従って、都市化によって二次林の植生構造は常緑の液果樹種に大
きく偏りつつあることが明らかになった。一方、里山林の間では、面積や孤立
による種構成の違いは検出されなかった。従って、里山城における二次林の分
断化は植生構造にほとんど影響しておらず、むしろ植生構造には管理方式の影
響が大きいことが示唆された。
④植生構造を調査した13林分のうち、里山域の2林分を除く計11林分(里
山域の8林分、里山城の連続林1林分、都市域の2林分)で、里山の負の側面
である二次林の分断化の影響と都市化の影響を地表」性ゴミムシ群集について調
査した。ゴミムシ類の大半は捕食性であり、特に分断化の影響を受けやすい分
類群である。2003年に各林分で林縁から林内へ3本のトランセクトを設置し、
小さい林分や細長い林分は林縁から0mと10mに、最も大きな林分には0,10,20,
40,80mにピットフオールトラップを設置した。また、林縁から10m以内の草地
や低木地にも計3ケ所、トラップを3つずつ設置した。トラップは5~11月に
毎月1回2日間開放し、落下した昆虫を採集・同定した。2004年には里山域の
調査林分数を8から3に減らしたが(連続林と都市域合わせて計6林分)、里
山域の林分でのトランセクトを5本に増やした。また、2004年には林縁から20m
以上離れた畦4ケ所にトラップを3つずつ設置した。
2003年には43種2437個体、2004年には46種2138個体のゴミムシ類が採
集され、2年間で合計54種が採集された。都市林と里山林ではゴミムシ群集の
種構成は大きく異なり、9種が都市林で欠落したか低密度化した。里山の二次林
に生息する種には林縁を好む種と林内を好む種の2タイプあったが、どちらの
グループも都市林では減少した。一方、都市林を除き、里山林のみで林分の面
積と孤立の影響を解析すると、4種は小面積化か孤立化の負の影響を受けたが、
里山連続林のみで捕獲された種は1種だけで、多くの種は様々な面積の二次林
がパッチ状に配置される里山城でも生息していた。このことは、伝統的な里山
景観の空間スケールならば、二次林が分断化しても大半のゴミムシの多様』性が
維持されることを示している。各種について林縁からの距離と捕獲数の相関を
解析すると、2年とも林内へ入るに従い捕獲数が増加する種は全くおらず、エッ
ジ効果の負の影響を受ける種はなかった。二次林でエッジ効果の負の影響を受
ける種がいないのは、20~30年周期で二次林が定期的に伐採されてきたためで
あろう。これらの結果は、都市化はゴミムシ群集の多様性を大きく減少させる
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こととは対照的である。
⑤本研究の一連の結果をまとめると、里山の生物多様性と固有性の要にと
って二次林は最重要な要素であり、都市化による分断化と周囲の環境の変化に
よって二次林の生物多様性は大きく減少した。一方、伝統的里山景観のスケー
ルに見られる二次林の分断化の影響は、植生構造、ゴミムシ群集ともにほとん
ど検出されなかった。これは伝統的里山景観では、二次林は分断化してもある
程度大きな面積の二次林(1ha以上)が互いに近くに配置されているため、ゴミ
ムシ類は林分間の移動によりメタ個体群を維持可能であるためと思われる。ま
た、里山の二次林は従来繰り返し伐採されてきたため、エッジ効果の負の影響
を受ける種がおらず、このことも分断化の影響が検出されなかった要因であろ
う。しかし、1種は里山連続林でのみ捕獲された種が1種あり、本研究では連続
林が含む環境の異質性(例えば谷筋など)をカバーできていない。今後、連続
林内の環境の異質性を考慮した調査も必要である。
学位論文審査結果の要旨
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