法人税014 - 日商1級、解答速報、fin01

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法 人 014( CPA 2010類 )
問
A社は、不動産販売を目的とする内国法人であり、その事業年度は毎年1月
1 日 に 始 ま り 12月 31日 に 終 わ る 。 X2年 1 月 に 、 A 社 は 、 そ の 不 動 産 販 売 に 関 す
る広告を、広告制作会社に無償で制作してもらうとともに、同月から3月にか
けて、放送局に無償で放送してもらった。A社は、確定申告にあたり、このよ
うな無償による広告宣伝を、法人税法上どのように取り扱ったらよいか、理由
とともに述べなさい。
資格試験のFIN
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法 人 014
解答
無償による役務の受け入れ
【 重 要 性 : A 】【 難 易 度 : 難 】
法 人 税 法 第 2 2 条 第 2 項 に よ る と 、「 益 金 の 額 に 算 入 す べ き 金 額 は 、 ① 資 産
の販売、② 有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、③ 無償による資
産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の
額 と す る 。」 と さ れ て お り 、 本 問 の よ う な 「 無 償 に よ る 役 務 の 受 け 入 れ 」 は 例
示 列 挙 さ れ て い な い 。 こ の た め 、 法 文 条 の 解 釈 と し て は 、「 無 償 に よ る 役 務 の
受け入れ」からは収益は認識されず、それとの見合いで、広告宣伝費も発生し
ないと考えるのが自然である。従って、当該取引からは、法人税法上の課税関
係は生じないと考える。
法 人 税 法 第 22条 ( 各 事 業 年 度 の 所 得 の 金 額 の 計 算 ) 第 2項
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額
は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務
の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年
度の収益の額とする。
資格試験のFIN
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法 人 014
解説
無償による役務の受け入れ
法 人 税 法 第 22条 に 関 す る 問 題 だ と い う こ と は 、 す ぐ に 分 か る は ず で あ る 。 非
常 に 興 味 深 い 問 題 で 、「 法 人 が 無 償 で サ ー ビ ス の 提 供 を 受 け た 場 合 に 、 課 税 関
係 が 生 じ な い 。」 と い う 結 論 に 見 解 の 相 違 は な い が 、 そ の 根 拠 に つ い て は 見 解
の分かれる論点となっている。どちらの見解に立って解答しても、合格点は貰
え る は ず で あ る が 、( 見 解 1 ) で こ の 論 点 を 理 解 し た 上 で 、( 見 解 2 ) で 答 案
を作成するのがスマートだと思う。
資格試験のFIN
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法 人 014
無償による役務の受け入れ
(見解1) 無償による資産の譲り受けと同様に考える見解
広 告 宣 伝 費 と し て 、 通 常 支 払 う で あ ろ う 正 当 な 対 価 の 見 積 額 が 1,000千 円
であったとする。
ま ず 、 こ の 1,000千 円 を 支 払 っ て 、 広 告 宣 伝 を し た と 考 え る 。
広告宣伝費
1,000
/
現
金
1,000
現 実 に は 、1 , 0 0 0 千 円 は 支 払 っ て い な い の で 、こ れ が 受 贈 さ れ た と 考 え る 。
現
金
1,000
/
受贈益
1,000
損 金 と 益 金 が 1,000千 円 生 じ る が 、 損 益 ゼ ロ と な る た め 、 結 果 と し て 課 税
関係が生じない。この見解に立った答案を作成するにしても、現金を利用し
た取引擬制の説明はしない点、収益を先に計上する点に留意して、次のよう
な解答を作成することになる。
資格試験のFIN
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法 人 014
無償による役務の受け入れ
(見解1) による解答
無償による資産の譲り受けによって生じる収益が益金の額に算入されるので
あ れ ば ( 法 2 2 ② )、 無 償 に よ る 役 務 の 受 け 入 れ に よ っ て も 収 益 が 生 じ る は ず で
ある。従って、無償による役務の受け入れがあった場合、通常支払うであろう
正当な対価を見積もり、その金額を益金の額に算入すべきである。ただし、こ
の 収 益 と の 見 合 い で 、同 額 の 広 告 宣 伝 費 を 損 金 の 額 に 算 入 す る 必 要 が あ る た め 、
結果として、損益はゼロとなる。従って、当該取引からは、法人税法上の課税
関係は生じないと考える
( 見 解 2 ) 22条 ② に 無 償 に よ る 役 務 の 受 け 入 れ だ け が 例 示 列 挙 さ れ て い な い 点
に着目する見解
解答参照
資格試験のFIN
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法 人 015( CPA 2010類 )
問
A社は、不動産販売を目的とする内国法人であり、その事業年度は毎年 1 月
1 日 に 始 ま り 12月 31日 に 終 わ る 。 X1年 4月 に 、 A 社 は 、 資 金 繰 り の 苦 し く な っ
た 取 引 先 に 対 し 、 利 息 制 限 法 の 定 め る 利 率 を 大 幅 に 超 え る 利 率 で 1,000万 円 を
貸 し 付 け た 。 A 社 は 、 X2年 4月 に 、 元 本 全 額 と 利 息 の 支 払 を 受 け 、 利 息 制 限 法
の 定 め る 利 率 を 超 え る 利 息 部 分 の 全 額 ( X1年 4 月 か ら の 1 年 分 ) を X2事 業 年 度
の 益 金 の 額 に 算 入 す る こ と と し た 。法 人 税 法 上 、こ の よ う な 処 理 は 許 さ れ る か 。
その理由についても述べなさい。
資格試験のFIN
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法 人 015
解答
違法な収益に対する課税
【 重 要 性 : C 】【 難 易 度 : 難 】
益金の額に算入すべき金額は、原則として、会計上の収益の額とされており
( 2 2 ② )、 会 計 上 の 収 益 は 経 済 的 価 値 の 増 加 で あ っ て 、 違 法 性 の 有 無 に よ る 制
約を受けない。従って、利息制限法の利率を超える部分も益金の額に算入すべ
き 金 額 を 構 成 す る 。 問 題 は 、 X1事 業 年 度 に 期 間 帰 属 す る 受 取 利 息 の 益 金 算 入 を
X2事 業 年 度 に ま で 遅 ら せ る こ と が 許 さ れ る か で あ る が 、 未 収 の 収 益 が 違 法 な も
のである以上、回収が確実とはいえないため、益金への算入を回収まで遅らせ
ることは許されると考える。
資格試験のFIN
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法 人 015
解説
違法な収益に対する課税
論 点 は 、 X1 事 業 年 度 に 期 間 帰 属 す る 利 息 ( 制 限 利 率 を 超 え る 部 分 ) を X2事
業年度の益金とすることが認められるか、である。結論については、基本通達
2-1-26を 知 っ て い る か 否 か ? の 問 題 で あ る 。
【 基 本 通 達 2-1-26】
制限利率超の利息
未収の場合には、益金の額に算入しないことができる。
既に収入している場合には、益 金 の 額 に 算 入 す る 。
制限利率内の利息
原則として、 当期に対応する利息は
未収でも、益金の額に算入する。
資格試験のFIN
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法 人 015
解説
違法な収益に対する課税
例 え ば 、所 得 税 の 講 義 で は 、恐 喝 で 得 た 収 入 に も 所 得 税 が 課 せ ら れ る( 判 例 )
といった話をするので、制限利率を超える違法な利息部分についても、法人税
が 課 せ ら れ る こ と は 判 断 で き た は ず で あ る 。 論 拠 と し て は 、「 益 金 の 額 に 算 入
す べ き 金 額 は 、 原 則 と し て 、 会 計 上 の 収 益 の 額 と さ れ て お り ( 2 2 ② )、 会 計 上
の 収 益 は 経 済 価 値 の 増 加 で あ っ て 、 違 法 性 の 有 無 に よ る 制 約 を 受 け な い 。」 と
いう趣旨のことが書ければよい。
問題は、違法な超過利息が未収となっている場合に、益金への算入を回収ま
で遅らせることが許されるか?である。結論は、判例も通達も「許される」と
し て い る 。 そ の 論 拠 と し て 、 各 専 門 学 校 で は 、「 現 実 に 受 領 し て 管 理 支 配 下 に
置 か れ た 段 階 で 益 金 の 額 に 算 入 す る 。」 と し て い る が 、 判 例 や 学 説 に 沿 っ た 答
案 作 り ま で 目 指 す 必 要 は な い 。 こ こ は 、 通 達 の 結 論 を 前 提 に 、「 未 収 の 収 益 が
違法なものである以上、回収が確実とはいえないため、益金への算入を回収ま
で 遅 ら せ る こ と は 認 め ら れ る と 考 え る 。」 と い う 内 容 が 書 け れ ば 十 分 で あ る 。
通達をベースに作問したと考えられる事例問題も出題されるため、通達の結
論を覚える作業は重要である。ただし、通達は結論しか示していないことが多
い の で 、理 由 づ け は 会 計 知 識 や 常 識 的 判 断 の も と に そ の 場 で 考 え る 必 要 が あ る 。
資格試験のFIN
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法 人 015
違法な収益に対する課税
法 人 税 法 基 本 通 達 ( 利 息 制 限 法 の 制 限 超 過 利 子 ) 2- 1- 26
法人が利息制限法に定める制限利率を超える利率により金銭の貸付けを行っている場合
に お け る そ の 貸 付 け に 係 る 貸 付 金 か ら 生 ず る 利 子 の 額 の 収 益 計 上 に つ い て は 、 2- 1- 24及
び 2- 1- 25に よ る ほ か 、 次 に 定 め る と こ ろ に よ る も の と す る 。
(1)
当該貸付金から生ずる利子の額のうち当該事業年度に係る金額は、原則としてそ
の貸付けに係る約定利率により計算するものとするが、実際に支払を受けた利子の
額を除き、法人が継続して制限利率によりその計算を行っている場合には、これを
認める。
(2)
当該貸付金から生ずる利子の額のうち実際に支払を受けたものについては、その
支払を受けた金額を利子として益金の額に算入する。
(3)
(1)に よ り 当 該 事 業 年 度 に 係 る 利 子 の 額 を 計 算 す る 場 合 に お け る そ の 計 算 の 基 礎 と
な る 貸 付 金 の 額 は 、原 則 と し て そ の 貸 付 け に 係 る 約 定 元 本 の 額 に よ る も の と す る が 、
法人が継続して既に支払を受けた利子の額のうち制限利率により計算した利子の額
を超える部分の金額を元本の額に充当したものとして当該貸付金の額を計算してい
る場合には、これを認める。
資格試験のFIN