一線地絡電流 教育資料

一線地絡電流 教育資料
1 一般事項
*1
配電線は 6600V が一般的であって、中性点接地方式は、リアクトル抵抗接地方式を採
用するものもあるが、非接地式のものが比較的多い。非接地式の配電線路であっても各電
路の各相は電線が充電されれば、それぞれに静電容量があるため、当然充電電流が流れる。
しかし三相が平衡している場合であれば、3 線の充電電流の和は零となるため、この充電電
流は外部には現われることはなく、特に問題にならない。中性点接地方式については、日
本電気技術者協会電気技術解説の中で述べられている。中性点接地方式
一線地絡すると電流の分布は、図 2 のようになる。この図では C 相が地絡したわけであ
るが、この場合は C 相の対地電位は完全地絡であれば 0 となるため、C 相には充電電流は
流れなくなる。これは母線及び他の配電線であっても同じである。したがって、健全相、
すなわち a、b 相の充電電流が流れるが、これは図示のように母線に向けて流れ、母線に
3 配電線の充電電流は主変圧器の△回路内を通って、合計された電流
3 配電線の地絡点(C 相)を向いて流れる。すなわち地絡点では I˙c = I˙c1 + I˙c2 + I˙c3
集った
は
1、
2、
図1
*1
変電所
この資料は、tex を使って作成しています。
1
主変圧器
6 60 0 V母 線
a
b
c
C B3
G PT
(I c
=
=
CB1
Rn
OVG
In
Ig
CB 2
In
+
D GR
Ic
Ic 3
I c 1 + Ic 2 + I c 3)
c b a
№ 3配 電 線
図2
Ic2
c b a
№ 2配 電 線
Ic 1
c b a
№ 1配 電 線
事故電流
となる。
接地変圧器に電流が流れるのは、地絡時のみで
a
ある。このとき流れる有効電流は開放三角結線に
入れてある rn の大きさによってきまる。この rn
の両端に発生する端子電圧が、接地継電器の電圧
コイルに加わるわけである。したがって地絡時
は、地絡点には有効分 I˙n が加わって流れ、結局
a'
Ea
Ec
c
Eb
o
b'
b
Ib
c'
g
Ia
Ig
I˙g = I˙n + I˙c となり、しかもこの I˙n は健全回線に
o'
は流れないから、地絡回線の選択には有利な方法
図3
となる。配電系統の零相電圧の求め方
計算例のための図
2 計算例
配電線の中の1線、例えばC線が図 3 のようにg点で完全地絡をしたとすると、C点の
˙ c となる。
電位は大地の電位に等しくなって、零となる。この場合中性点 O の電位は −E
˙ c + E˙a となり、b または b’ 点の電位は −E
˙ c + E˙ b とな
従って a または a’ 点の電位は −E
る。次に ac 間および bc 間の電位差 E˙ac および E˙bc は E˙ac = E˙a − E˙ c
E˙bc = E˙ b − E˙ c と
なる。これらは a’ および b’ 点の電位 V˙a および V˙b に等しい。したがって対地静電容量 C
を通じる電流 I˙a および I˙b は
E˙ac
V˙a
E˙a − E˙ c
=
=
= jωC V˙a
(1)
I˙a =
˙
˙
˙
Z
Z
Z
2
E˙bc
V˙b
E˙ b − E˙ c
I˙b =
=
=
= jωC V˙b
(2)
˙
˙
˙
Z
Z
Z
すなわち I˙a 及び I˙b は、それぞれ V˙a 及び V˙b より位相が 90◦ 進むことになる。この場合
c’o’ 間の電位差は零であるから、I˙c = 0、したがって地絡電流 I˙g は、
I˙g = I˙a + I˙b = jωC V˙a + jωC V˙b = jωC(V˙a + V˙b )
(3)
一方
V˙a = E˙a − E˙ c
V˙b = E˙ b − E˙ c
V˙a + V˙b = E˙a − E˙ c + E˙ b − E˙ c
= E˙a + E˙ b − 2E˙ c
˙ c = E˙a + E˙ b
E˙a + E˙ b + E˙ c = 0 から −E
˙ c
V˙a + V˙b = −3E
˙ c)
∴ I˙g = jωC(−3E
(4)
√
V
√
∴ Ig = 3ωCEc = 3ωC
= 3ωCV
3
(5)
ただし、V:線間電圧
√
˙ c より 90◦ 位相が進んで、大きさは線間電圧の 3 倍
すなわち I˙g は (V˙a + V˙b ) すなわち −E
の電圧が加わった充電電流となる。図 4 はこれらの関係をベクトル図*2 に示す。
− E˙
c
a
=
E˙a
E˙a
Va˙
+
V˙ a
=
V˙ b
E˙ c
−3
I˙g
I˙b
I˙a
˙c
−E
E˙b
E˙ c
参考文献
c
図4
V˙b = E˙b − E˙c
b
[1] 千葉 幸『現場の電気計算技法第 1 集』オーム社
*2
ベクトル図は、みなもさんの metapost を使って作成しています。
3
ベクトル図