第12回 目標: 目標: 回路と微分方程式 回路解析と微分方程式 ラプラス変換/演算子法入門 回路方程式 過渡応答や,定常状態での直流・交流解析は,数学的には,微分方程式を初期条件の下で解くことと同じ である。はじめに,回路解析で現れる微分方程式の形式について解説する。実際の回路解析では,ラプラス 変換や演算子法を用いて,“このような このような入力 このような入力に 入力に対する出力 する出力はどうなるのか 出力はどうなるのか”という形で,微分方程式を意識しな はどうなるのか いで解くことができる。そこで,詳細な数式や証明は他の講義にゆずり,ラプラス変換や演算子法を用いる 回路解析について,入門的な解説と演習を行う。また,複数のループを持つ複雑な回路網に対して機械的な 操作により回路方程式を導き出す方法を紹介する。 回路と微分方程式 回路素子では,端子間の電圧と流れる電流の間の関係は,電圧と電流の信号波形とそれらを微分または積 分した波形の間の比例関係で表される。このため,回路内の電位や電流の変化は微分方程式で表現できる。 そして,回路の周波数応答や過渡応答は, 「微分方程式を解く」という,数学の問題に帰結できる。 R,L,C などの受動素子で構成される図 12.1 のような 4つの端子を持つ回路を考える。1組の2端子間に入力と して電圧信号 v(t)を加え。もう1組の2端子の電位差を出 力 y(t)とする。このとき,v(t)と y(t)の間に成立している関 係を,一般的な式で表すと,以下の(12.1)式のようにな る。 y (t ) v(t ) 図 12.1 受動素子で構成される 回路の例 an d n y (t ) dt n + an −1 d n −1 y (t ) dt n −1 + ⋯ + a1 dy (t ) + a0 y (t ) = x(t ) dt (12.1) 1 ここで,方程式の右辺の x(t)は,入力電圧 v(t)を基にして計算される関数である。一般的な形は,以下のよ うになっている。 定数係数の非斉次線形常微分方程式 変数が t の1 つだけ an d n y (t ) dt n + an −1 x(t ) = bm dt n −1 d m v(t ) 定数係数: y (t ) , y (n) d n −1 y (t ) dt m ( n −1) + ⋯ + a1 + bm −1 dy (t ) + a0 y (t ) = x(t ) dt d m −1v(t ) dt m −1 + ⋯ + b1 dv(t ) + b0 v(t ) (12.3)・・・入力信号に関する項をまとめたもの dt ・・・の係数が定数 (t ) , 非斉次:右辺の x(t)が 0 ではない (12.2) x (t ) ≠ 0 y ( n ) (t ) = d n y (t ) dt n とする 線形: y ( n ) (t ) , y ( n −1) (t ) ,・・・ y (t ) 相互の乗算項を含まない 常微分:変数が1 つだけ ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------微分方程式(differential 微分方程式 equation),常微分方程式 常微分方程式(ordinary differential equation),非 非斉次(nonhomogeneous)非同次と 斉次 常微分方程式 も呼ぶ,斉次 斉次(homogeneous)同次とも呼ぶ, 斉次 電気回路 配布資料 12-1 この形の微分方程式の解法については,付録を参照してほしい。付録の解説は,回路解析に特化したもの で,一般的な数学の教科書に書かれている「微分方程式の解法」の表現とは異なる部分もあるので,注意し てほしい。 回路解析で用いられる微分方程式解法の例 ラプラス変換法 ラプラス変換法( 演算子法) 変換法(演算子法) 回路は時刻 t = 0 から動作を開始し,全ての信号の値は t < 0 で 0 になっているものとする。回路解析の対象 となる信号をラプラス変換により複素数 s の関数に変換する。x(t ) のラプラス変換は,以下の式で表される。 X ( s ) = L {x(t )} = ∫ ∞ x(t )e− st dt (12.4) 0 この変換により,時間(t)領域の信号と s 領域の関数が一対一に対応付けられる。さらに,ラプラス変換 の変数 s は“演算子”として使うことができる。 微分は s 倍 ・・・“微分演算子” 積分は 1/s 倍 ・・・“積分演算子” → 機械的に扱うことができる 2 ラプラス変換領域 ラプラス変換領域での 変換領域での R,L,C 素子の 素子の特性 素子の端子間の電位差 v(t ) と流れる電流 i (t ) のラプラス変換を,それぞれ V ( s ) , I ( s ) とすると, 抵抗 R: v(t ) = Ri (t ) キャパシタ C: v(t ) = ∫ インダクタ L: v(t ) = L t i (t ′)dt ′ ⇔ V ( s ) = R I (t ) ⇔ V ( s) = ⇔ V ( s ) = sL I ( s ) 0 di (t ) dt インピーダンスや伝達関数の j ω を 1 I (s) sC s で置き換えればよい キャパシタやインダクタのインピーダンスを s 領域で表して 1/(sC),sL のように表すことがある。また, 回路の入出力関係も,正弦波交流解析と同様に正比例関係となる。周波数領域での伝達関数の jωを s で置き 換えた関数も,やはり伝達関数と呼ばれる。 一方,積分を使うラプラス変換とその逆変換の計算が面倒なように思える。しかし,実際の回路で現れる 典型的な信号波形については,ラプラス変換の形があらかじめ分かっている。そこで,時間領域の信号とラ プラス変換された関数の対応を表にした“ラプラス変換表”を利用する。 ラプラス変換法 ラプラス変換法による 変換法による微分方程式 による微分方程式の 微分方程式の解法 ⅰ)インピーダンスを s で表現した回路方程式を解き,入出力の伝達関数を求める→ H(s) ⅱ)入力信号のラプラス変換 X(s)を求め,伝達関数に乗算して出力 Y(s)= H(s)X(s)を求める ⅲ)Y(s)をラプラス変換表に載っている基本的信号に分解する Y ( s) = c0 c + 1 +⋯ s s − aa ⅳ)表を使って,時間領域の信号を求める 3 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ラプラス変換 transform), ラプラス変換表 of Laplace transforms) ラプラス変換(Laplace 変換 ラプラス変換表(Table 変換表 12-2 電気回路 配布資料 それでは,例題を使って,解き方の例を見てみよう。 表 12.1 簡略版ラプラス変換表 関数(全て t<0 では 0) デルタ関数 δ (t) ラプラス変換 1 1 s 1 s −α 1 s − jω ステップ関数 u(t) αt とりあえず,これだけ覚える 指数関数 e 複素三角関数 e jωt 実は, eλ t ⇔ 1 (λ は複素数) s−λ 1 ランプ関数 t s2 n! s n +1 tn 1 つだけ覚えておけば,十分。 dx (t ) dt 微分は s 倍,積分は 1/s 倍。 規則でまず覚えておくのはこの 2 つ。 微分則では,初期値は 0 にしても良いことが多い。 ∫ t x ( t ′)dt ′ 0 sX ( s ) − x (0) [微分則] 1 X (s) s [積分則] 例題 RC 直列回路に,振幅 1[V]のステップ信号を入力した。ステップ信号の立ち上がり時刻を t = 0 として, 時刻 t における出力電圧の波形を求めよ。 vin (t ) v(t ) R Vin ( s ) R V (s) 1 sC C 解答例 ステップ信号のラプラス変換は 1/s,RC 直列回路の伝達関数は H ( s ) = 出力信号のラプラス変換 V ( s ) は, V ( s ) = H ( s )Vin ( s ) = = 1 1 × 1 + sRC s 1/ ( sC ) 1 1/ ( RC ) = = なので, R + 1/ ( sC ) 1 + sRC s + 1/ ( RC ) ラプラス変換表より,ステップ信号のラプラス変換は 1/ s なので, Vin ( s) = 1 s 1 / ( RC ) s {s + 1 / ( RC )} ここで, 1 ⋅ 1/ ( RC ) = c1 + s s + 1/ ( RC ) s c2 とおける。 s + 1/ ( RC ) 係数 c1 と c2 を求めると, c1 = 1 , c2 = −1 なので, V ( s) = 1 1 − s s + 1 RC これに対応する時間領域の信号は, − t /( RC ) ⋯t ≥ 0 1 − e v(t ) = ⋯t < 0 0 ← これがポイントだ! 1 1 / ( RC ) RC c1 = × s = 1 1 s ( s + RC ) s = 0 s + RC =1 s =0 1 / ( RC ) 1 c2 = × ( s + 1 RC ) = = −1 1 ) s ( s + RC s =−1/( RC ) sRC s =−1/( RC ) 変換表より, 1⋯ t ≥ 0 1 1 → u (t ) = , → e −t /( RC ) s 0⋯ t < 0 s + 1 RC ( ) v(t ) = u (t ) − e −t /( RC ) とか, v(t ) = u (t ) 1 − e −t /( RC ) などと書いてもよい 要は,t<0 では 0 となる,ということが,わかっていればよい。 電気回路 配布資料 12-3 演習問題 演習問題[1] 問題[1] 1)CR 直列1次ハイパスフィルタのステップ応答をラプラス変換法により求めよ。 vin (t ) C v(t ) R 解答例 ステップ信号のラプラス変換は 1/s,CR 直列1 次ハイパスフィルタの伝達関数は, R sRC s = = なので, H (s) = 1/ ( sC ) + R 1 + sRC s + 1/ ( RC ) vin (t ) C R 出力信号のラプラス変換 V ( s ) は, V ( s ) = H ( s )Vin ( s ) = = s 1 × s + 1/ ( RC ) s 1 s + 1/ ( RC ) これに対応する時間領域の信号は, e −t /( RC ) ⋯ t ≥ 0 v(t ) = ⋯t < 0 0 12-4 電気回路 配布資料 変換表より, v(t ) e −t /( RC ) ⋯ t ≥ 0 1 →= s + 1 RC ⋯t < 0 0 v(t ) = u (t )e−t /( RC ) てもよい [参考] 参考] 部分分数分解の 部分分数分解の方法 一連の講義でお勧めしている方法は,解答例に用いたような方法(留数定理に基づく方法)だ。計算が苦手な人向き (だから私も使っている)なのだが,皆さん,計算が好きだと見えて,試験では,高校で教わった連立方程式法を使う方 法で計算ミスをする人が続出している。 詳しくは, 「線形システム入門」の講義資料(web で閲覧可能)で見てもらうことにして,簡略版で紹介する。 1)与えられた H ( s ) = P( s ) / Q ( s ) で,分母多項式の 分母多項式の次数 > 分子多項式の 分子多項式の次数を 次数を確認。 確認。 そうなっていない場合は除算して H ( s) = R( s) + P1 ( s ) / Q ( s ) ととし, H1 ( s ) = P1 ( s) / Q ( s ) に対して以下を計算 2)未知係数を 未知係数を含む分数分解の 分数分解の式を作る 分母の 分母の多項式に 多項式に含まれる項 まれる項に応じて以下 じて以下のようにする 以下のようにする C ⋯ → ⋯ ( s − p) ⋯ s− p ⅰ)単根 p を持つ項 ⅱ)重根を 重根を持つ項 実は,この 2)が大事なポイント。 ここで間違うと,後の計算は無駄 になってしまう。 Cn C1 C2 ⋯ + +⋯+ → n 2 s − p ( s − p) ⋯ ( s − p) ⋯ (s − p) n ⅲ)複素共役根 p = α ± jω を持つ項 ⅳ)複素共役の 複素共役の多重根 As + B ⋯ C C* + → または 2 2 s − α − jω s − α + jω ( s − α )2 + ω 2 ⋯{( s − α ) + ω }⋯ A1s + B1 A2 s + B2 An s + Bn ⋯ + +⋯+ → 2 2 n 2 2 2 2 2 ⋯{( s − α ) + ω } ⋯ (s − α ) + ω {( s − α ) + ω } {( s − α ) 2 + ω 2 }n 3)未知の 未知の係数を 係数を決定する 決定する 迷わず機械的に解ける方法。 計算ミスに気をつけて・・・ ( s − p ) H ( s ) s = p ( p は Q( s) = 0 )の根)により求 により求める i 一部の係数だけ求めたい場合に 使えるので,実用性が高い方法 単根のとき 単根のとき ( s − p ) を乗じて s に p を代入 複素積分の「留数定理」を 使って証明できるが,省略。 C = ( s − p) H ( s) s = p この講義では,ここまで。あとは「線形システム入門」で・・・。 重根のとき 重根のとき ⅰ)両辺に ( s − p ) n を乗算した式に s = p を代入して C n を求め, ⅱ)この式を s で微分してから, s = p を代入し整理して Cn −1 を, ⅲ)さらに s で微分してから, s = p を代入し整理して Cn −2 を, ⅳ) C1 が得られるまで, 「 s で微分し 微分し s = p を代入して 代入して整理 して整理する 整理する」を繰り返す する 複素共役根の 複素共役根の場合 方法① 2つの単根として解く C = ( s − α − jω ) H ( s ) s =α + jω 方法② 1 つの係数が求まれば,他方はその 複素共役となるので,計算は1 回で 済む。 As + B と展開して係数 A , B を求める ( s − α )2 + ω 2 本質的には方法①と同じ As + B = H ( s ) の両辺に, ( s − α ) 2 + ω 2 を乗じ,複素共役根の1つ p を代入し, ( s − α )2 + ω 2 ( As + B ) s =α + jω = (( s − α ) 2 + ω 2 ) H ( s ) 方法③ s =α + jω の実部と虚部を比較することで求める As + B と展開して係数 A , B を連立方程式などにより求める ( s − α )2 + ω 2 複素数を使いたくな かったら,この方法 電気回路 配布資料 12-5 回路方程式 回路方程式の 回路方程式の作り方 「誰 誰でも機械的 でも機械的な 手順でできる方 機械的な手順でできる でできる方法」 なお,以下で用いられている“ノード(節点)”や“ブランチ(枝)”などの用語は,グラフ理論でつかわ れているものであり, 「回路の接続点」, 「素子」のことである。 回路が電圧源のみ,あるいは電流源のみを含んでいる場合の解法を示そう。電圧源・電流源が混在する場 合は,以下の図のようにして,等価回路に変換し,電圧源か電流源のどちらかに統一すればよい。 R V V R R I R R RI とりあえずは,電流源を全て電圧源に変換してから行う,1)の閉路方程式法 閉路方程式法を覚えておこう。 閉路方程式法 1)閉路方程式: 閉路方程式:電圧源のみを 電圧源のみを含 のみを含むときに使 むときに使う 以下のようにして,方程式をたてて,解く。 ⅰ)回路に複数のループ(閉路)を設定し,回路の全ての枝(素子)がループのどれかに含まれるように する ⅱ)それぞれのループのループ電流 i1 ~ i N を未知数とする ⅲ)方程式を設定する。n 番目の方程式は以下のようになる。 in の係数:ループ n に含まれる全インピーダンス ik ( k ≠ n )の係数:ループ n とループ k に共通に含まれるインピーダンス (符号は,そのインピーダンス要素を2つのループが同じ向きなら正,逆なら負) 右辺:ループ n に含まれる, in の方向に電流を流そうとする電圧源の電圧の総和 方程式を行列とベクトルで表すと, Ri = v 係数行列 R:(n, k)要素はループ n と k に共通に含まれるインピーダンスの総和 v :第 n 要素は in の方向に電流を流そうとする電圧の総和 2)節点方程式: 節点方程式:電流源のみを 電流源のみを含 のみを含むときに使 むときに使う ⅰ)接地電位(0V)を1つの節点に設定し,その他の節点の電位を未知数 v1 ~ v N とする ⅱ)方程式を設定する。n 番目の方程式は以下のようになる。 v n の係数:節点 n に接続されているアドミッタンス(インピーダンスの逆数)の総和 v k ( k ≠ n )の係数:節点 n と節点 k の間にあるアドミッタンス (符号は,常に負) 右辺:節点 n に接続された電流源から流れ込む電流 方程式を行列とベクトルで表すと, Gv = i 係数行列 G:(n, k)要素は節点 n と k に共通に含まれるアドミッタンスの総和 i :第 n 要素は節点 n に接続された電流源から流れ込む電流 12-6 電気回路 配布資料 演習問題[ 演習問題[2] 図の回路について,設定したループ電流について閉路方程式を立てよ。 L2 Vout L1 Vin C i1 , R i2 図 LC3次フィルタ 解答例 図の回路について,設定したループ電流について閉路方程式を立てよ。 1 1 i2 = v jω L1 + i1 − jω C jωC 1 1 i1 + jω L2 + R + − i2 = 0 jωC jωC L2 Vout L1 Vin i1 C i2 R 行列の形で書くと, 1 jω L1 + jωC 1 − jωC i1 vin = 1 jω L2 + R + 0 i jω C 2 − 1 jωC #この方程式を電流 i1 , i2 について解くと, i1 1 = 1 1 1 i 2 jω L1 + jωC jω L2 + R + jωC + 2 2 ω C これより, vout = Ri2 は, = 1 jω L2 + R + jωC 1 jω C vin 1 jω L1 + 0 jω C R jωC 1 1 1 jω L1 + jω L2 + R + + 2 2 jωC jωC ω C 1 jωC vin 電気回路 配布資料 12-7 3)枝電流法: 枝電流法:電圧源・ 電圧源・電流源混在に 電流源混在に対応する 対応する解法 する解法だが 解法だが, だが,式の数が多い 以下のようにして,方程式をたてて解く。 ⅰ)全ての互いに独立なノード(節点)の電位と素子に流れる電流を未知の変数にする ⅱ)全てのノードに関してキルヒホッフの電流則を適用する ⅲ)全ての独立なループについてキルヒホッフの電圧則を適用して式を立てる ブランチ(素子)に流れる電流による電圧降下とノードの電圧の関係を式にする。 ⅳ)方程式を解く 1.5kΩ 例題 右の回路において,端子開放のときの電圧 VO を求めよ。 2kΩ 12 V VO 10kΩ 1.0 mA 解答例 ⅰ)図のように未知の変数として,電圧 VO , V1 , V2, 電流 i1 , i2 , i3(単位は mA)を設定する。 ⅱ)VO , V1 , V2,に関して,電流則を適用すると, VO :i3 = 0 (1) V1 :i1 + i2- i3 = 0 (2) V2 :1- i2 = 0 (3) ⅲ)2kΩと 10kΩの抵抗を含むループについて,電圧 則を適用すると, 12 − 2i1 = V1 (4) V2 − 10i2 = V1 (5) VO = V1 − 1.5i3 (6) V1 1.5kΩ i1 2kΩ 12 V ⅳ)方程式を解く (1)~(3)より、i1 = -1, i2 = 1, i3 = 0 (4)~(6)より、V1 = VO +1.5*0 = VO,V1 = 12-2 i1 = 12+2 =14 以上より, VO = V1 = 14 [V] 実際には,一部の未知数だけ計算すればよいことが多い。 12-8 電気回路 配布資料 10kΩ V2 1.0 mA i2 i3 VO 《付録》微分方程式の解法 解法の 解法の手順( 手順(例) ⅰ)同伴方程式 an y ( n) (t ) + an −1 y ( n−1) (t ) + ⋯ + a1 y (1) (t ) + a0 y(t ) = 0 の一般解を求める ⅱ)非斉次微分方程式 an y ( n) (t ) + an −1 y ( n −1) (t ) + ⋯ + a1 y (1) (t ) + a0 y (t ) = x(t ) の特解(“定常解”)を求める ⅰ)の一般解とⅱ)の定常解の和が,非斉次微分方程式の一般解になる ⅲ)一般解が初期条件を満たすように未知の係数を決定 解説と 解説と解釈 ⅰ)解きたい微分方程式 きたい微分方程式の 微分方程式の「同伴方程式 同伴方程式」 方程式」の一般解を 一般解を求める an y ( n ) (t ) + an −1 y ( n −1) (t ) + ⋯ + a1 y (1) (t ) + a0 y (t ) = 0 (12.5) 右 辺 の x (t ) = 0 な の で 「斉次微分方程式」 一般解とは,微分方程式を満たす“一般的 一般的な 一般的な解 ”のことで,未定の定数を含む。この定数を,与えられた 条件を満たすように決定することで,特定の1つの解,特殊解 特殊解が得られる。 特殊解 斉次微分方程式(12.5)の解は,定数 c を使って ce st の形になる。これを 12.5 式に代入すると, (an s n + an −1s n −1 + ⋯ + a1s + a0 )ce st = 0 (12.6) となるので,これが恒等式になるためには,s は特性方程式, an s n + an −1 s n −1 + ⋯ + a1s + a0 = 0 (12.7) を満たしていることが必要となる。この式の解(根)を s1 , s2 ,⋯ , sn とすると,一般解は n 個の未 定の係数を使って y (t ) = c1e s1t + c2 e s2t + ⋯ + cn e snt (12.8) となることがわかる。 ((12.7)式に重根はないものとしたときの解。重根の場合の話は省略。) 同伴微分方程式は,右辺が 0 の「斉次微分方程式」であるので,入力が 0 のときの回路の応答に対応する ・・・って変な気がするが・・・ → 外力が加わらない 状態での自由振 動のことだ。 同伴微分方程式の解は,初期値の影響だけで決まる出力電圧の波形を 表している。この波形は,抵抗を含む回路では,時間経過に従って減衰し ていって,いつかは 0 になる。 引っ張った長さ が“初期値” 手を離した時 刻が t = 0 ⅱ)非斉次微分方程式の 非斉次微分方程式の“定常解” 定常解”を求める an y ( n ) (t ) + an −1 y ( n −1) (t ) + ⋯ + a1 y (1) (t ) + a0 y (t ) = x(t ) 入力開始後十分な時間が経過した時点で非斉次微分方程式を満たしているような,特解を求める。回路の 外部から一定の振幅の直流電圧や交流電圧を入力し,入力開始から十分時間が経過して過渡的な変化が減衰 し 0 になった時点での出力である。この解は,直流解析やインピーダンスを用いる交流解析の手法で求める ことができる。ⅰ)の同伴微分方程式の一般解とⅱ)の定常解の和が非斉次微分方程式の一般解となる。 ⅲ)非斉次微分方程式の 斉次微分方程式の一般解が 一般解が初期条件を 初期条件を満たすように未知 たすように未知の 未知の係数を 係数を決定 求められた一般解が初期条件を満たすように未知係数を決定すれば,出力の関数が得られる。 お疲れさまでした。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------同伴方程式 equation)この解を余関数(complementary function)と呼ぶ,一般解 一般解(general solution),特殊 特殊 同伴方程式(associated 方程式 一般解 解(particular solution)または特解 数学は,1 つの用語の和訳が複数あって面倒・・・ 電気回路 配布資料 12-9 例題 正弦波入力の 正弦波入力の過渡応答を 過渡応答を,ラプラス変換法 ラプラス変換法で 変換法で解く RC 直列回路に,振幅 1[V]・角周波数 ω の正弦波信号 sin ωt を t = 0 から入力開始した。このときの時刻 t にお ける出力波形を求めよ。 sin ωt の複素表現は − je jωt 。ラプラス変換は変換表より − j / ( s − jω ) となる。出力信号のラプラス変換 V ( s ) は, V ( s ) = H ( s )Vin ( s) = 1 −j −j × = 1 + sRC s − jω RC ( s + 1 RC )( s − jω ) V(s)は単根 s = −1/(RC)と s = jω を持つので, V (s) = c1 c2 とおける。 + s + 1 / ( RC ) s − jω = ・・・・・ −j −j c1 = ⋅ ( s + 1 RC ) = 1 1 RC ( s + )( s − j ω ) RC ( − RC RC − jω ) s =−1/( RC ) j 1 1 −j + 1 + jω RC s + 1 RC 1 + jω RC s − jω これに対応する時間領域の信号の複素表現は, vˆ(t ) = j −j e − t /( RC ) + e jωt 1 + jω RC 1 + jω RC = j + ω RC 1+ ω R C 2 2 2 e −t /( RC ) + 1 − jω RC 1+ ω R C 2 2 2 ω RC j 1 + jω RC jωt {− je jωt } ・・・・ sin ωt の形にまとめるため, {− je } にした。 1 − jω RC 1+ ω R C 2 v (t ) = Re{vˆ(t )} 1 + ω 2 R 2C 2 = −j −j ⋅ ( s − jω ) = c2 = 1 ω RC ( s + )( s − j ) 1 + jω RC RC s = jω この信号の実部を求めて, = これが第一のポイント。 , 2 2 = 1 + ω 2 R 2C 2 1 + ω 2 R2C 2 ただし θ = tan 1 e −t /( RC ) + 1 + ω 2 R 2C 2 sin(ωt − θ ) ただし, θ = tan −1 (ω RC ) −1 e− jθ = 2 LTspice によるシミュレーションの例 R = 15.9kΩ,C = 10nF ,20kHz 配布資料 2 e− jθ (ω RC ) ・・第2 項は,sin ωt の複素表現に 1 1+ ω R C 2 無理に sin の形にしなくても構わない。 かなり面倒な式変形になるが,それでも微分方程式を解く方法としては楽な方だ。 電気回路 1+ ω R C 2 を乗算しているので,このようになる。 第1 項が過渡解,第2 項が定常解になる。 12-10 1 2 2 e− jθ
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