閉山から32年目の黄渓を訪ねて 閉山から32年目の黄渓を訪ねて そうべつエコミュージアム友の会(三松三朗会長)による、黄渓地区 (幌別硫黄鉱山跡)調査が6月11日に行われ、寄稿を受けました。町内 の他地域の資源調査も行われており今後、季刊で紹介する予定です。 かつて標高930m、北海道一高い 峠道として、洞爺湖と登別を結ぶ人 気路線であったオロフレ峠に向かう バスの車窓から、急崖にへばり付く ように密集する居住区間が現れ、こ んな山中に何があるのと驚かされる 光景が見られた。それは、幌別硫黄 鉱山であった。 が、今日ここを通り過ぎる時、こ の地が最も栄えた昭和13年、壮瞥の 全人口6,500人弱の頃に、400戸2,500 人余の人々が、この狭隘の地に生活 していたという痕跡を微塵も感じな い。壮瞥史の重要な一ページを刻ん だ「黄渓」が、すでに人々の記憶か ら消え、その生活の場も年々緑に呑 み込まれ消えようとしている事か ら、当時ここで生活していた長谷川 富雄さん(現滝之町在住)に案内を 請い、現地を隅々まで探訪した。 長谷川富雄さんにとって久しぶり に訪れるこの地は、まさしく青春そ のもの思い出の地であり、草木をか き分けて歩き回るほどに記憶が鮮明 に蘇り、雄弁となり、時の経過を忘 れるほどであった。当時の施設や社 宅の位置の特定の他、当時の生活に ついても熱っぽく語っていただき尽 きることがなかった。 その詳細に紙面を使えないので、 所々に残る往時の痕跡の写真と、現 在の状況と対比できる絵葉書に残さ れた全景写真に施設名を注記したも のを紹介する。 機会を見て黄渓に足を運び「強者 どもが夢の跡」を探索し、近くて遠い この地の歴史に思いを馳せて欲しい。 本調査に際して「壮瞥町郷土史料 館友の会」が多年にわたり集積し、 写真集として配布された「変遷1,2 集」を参考にさせていただいた。謝 して篤く御礼申し上げる。 【2区と1区の中間 中心市街】 【2区】 【1区】 ■昭和13年頃の元山全景と現況(※元山資料(変遷1) ■昭和13年頃の元山全景と現況(※元山資料(変遷1) 現況2005.6.11撮影) 現況2005.6.11撮影) プロパンガス庫前で 2区浴場跡 病院跡旧小学校グラウンドから −2− ドラム缶保管庫 【1区】 【2区】 組合事務所 破砕場 真田木工所 (クラッシャー) 郵便局 病院 地獄長屋 (焼失前) 消防 寮 小学校校門 浴場 坑道イ斜面 ▲昭和30年代幌別鉱山 ▲昭和40年北海道硫黄㈱幌別鉱業所社宅(昭和41年町勢要覧) ※現地調査案内役の長谷川富雄さんに聞き取り調査した当時の鉱山関連施設(写真:変遷第1集より) ※現地調査案内役の長谷川富雄さんに聞き取り調査した当時の鉱山関連施設(写真:変遷第1集より) ▼黄渓小学校グラウンド跡 堆積施設 ▼黄渓中学校門柱跡 ■幌別硫黄鉱山の盛衰 その詳細は大正10年・昭和33年村 で太刀打ちできず、事業は急激に先 史及び町史に詳述されているが、概 細り、遂に昭和48年6月に閉山とな 要を紹介すると、弁景在住の高橋新 った。 三郎氏が明治35(1902)年、偶然に硫 その他の鉱工業も時を同じくして 黄鉱床を発見し、2年後から採掘が 衰退し、最盛期8,200余人であった壮 始められたが、生活の不便さと鉱石 瞥の人口も昭和48年には4,400人余 搬出の難しさで採算がとれず僅か4 に減り、時の流れとはいえ、今日 年程で操業中止となった。 3,200人となってしまったのは残念な 明治末から再度本格的採掘・精錬 ことである。 が始められ、事業拡張に伴い、大正 壮瞥の発展を支えた幌別硫黄鉱山 3年には弁景簡易教育所黄渓特別授 ではあるが、今日では負の遺産とな 業所が開かれ、そこに学ぶ学童が35 っている。それは廃鉱から湧き出す 名に及ぶ程であった。 硫黄鉱山に特有の鉱毒を含む強酸性 大正9年には北海道硫黄幌別鉱 水(PH1.8)が毎分4トン余排出されるこ 業所となり、120戸650人が生活し、 とである。 採鉱量10万トンと飛躍的に発展した。 環境問題が見過ごされていた頃 戦時色の深まりの中、国策事業とし は、この廃水が長流川経由で洞爺湖 て増産が叫ばれ、最盛期には硫黄産 にも流入、長流川・洞爺湖の水質を 出が30万トン余に及ぶ頃には2,500人余 害し、生態系にダメージを与えた。 が暮らすようになり、この山間の地 ために、国・道の支援で多大の予算 に小中学校・高校分校・診療所・郵 を費やして中和処理・鉱毒処理が続 便局・劇場等が整備され賑わいをま けられている。 していた。 もともとオロフレベツのアイヌ語 この大勢の人々の生活を支え、ま 源が「水の中が赤い川」の意である た産出物の集積地であった弁景・久 ことからもこの問題をうかがい知る 保内も繁栄の一途をたどった。 事が出来る。 が、石油精製の副産物として安価 (文責:そうべつエコミュージアム友の会) な硫黄が市場に出るに至り、採算面 −3−
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