冬 ニボルマブ 新薬ファイル 日本の研究が生んだ抗体医薬 ニボルマブ(製品名は「オプジーボ点滴静注20m容」、小野薬品工業ノ米Bnst01・Myers Squibb(BMS片幻は、PD・1を標的とする初の抗体医薬。 2014年9月に世界に先駆けて 日本で発売となった。適応症は「根治切除不能な悪性黒色腫」であるが■市がんをはじ め多くのがん種への応用や作用機序の異なる抗かん剤との併用も多く試みられている。 1992年に京都大学の本庶佑教授、 PD・1に関する知的財産を保有して 筆すべきことは、肺がんで効果が得 石田靖雅博士らによってT細胞の細 いる小野薬品は2005年5月、ヒト型 られたことにあるニポルマブの開発 胞死誘導時に発現が増強されるPD・1 抗体開発システムである「ultiMab」 では、免疫療法がより効きゃすい黒 遺伝子が単離・同定されたしかし、 を運用する米MedareX社と提携、共 色腫や腎細胞がんの臨床試.験が先行 その機能は不明であったが、98年に 同研究を開始した 1年後の2006年 していた。2012年の米国臨床腫傷学 作製されたPD、1欠損マウスから にはニポルマブが創製されている 会(ASCO)において、肺がんの第1 PD、1が生体内において免疫反応を制 仭年7月にはBMS社がMedareX社 相試'験における奏効率が18%と発 御していることが明らかとなると、 を買収したため、同剤の北米の権利 表。2013年の世界肺がん学会 創薬の標的としての研究が進んだ がBMS社に移転された (WCLC2013)では、長期観察の結果 PD、1は、活性化したりンハ球およ 日本では小野薬品が2014年9月に び骨髄系細胞に発現するCD28に属 根治切除不能な悪性黒色腫の治療薬 する受容体であり、抗原提尓細胞に として発売した 発現するPD、L1およびPD、L2と結合 することで、りンハ球の活性化状態 を負に調節する PD、L1を強制発現 として奏効期間は74.0週と効果が持 続的であることが不された 今まで肺がんで有効性を不すこと ができた免疫療法は無いこと、既存 治療歴を有する肺がんに者肋 の治療を受けた肺がん患者でも奏効 ニボルマブのトピックスとして特 を尓したことから、ニポルマブが一気 させたがん細胞は、抗原特異的CD8 陽性T細胞の細胞傷害活性を減弱さ せることが分かり、 PD、1/PD、L1経路 図1 PD・VPD・L1の作用機序 は、がん細胞が抗原特異的なT細胞 MHC からの攻撃等を回避する機序の1つ TCR ^^^ であることが明らかとなった(図D。 ^^^^ ^^^^^ がん細胞 ゛ 16日経メディカル CancerRevieW 2015.6 PDL・1 ゛ 伊藤勝彦 東京薬科大学卒業、東京理科大学大学院薬学 研究科を修了。吉富製薬(現田辺三菱製薬) で創薬研究に従事した後、証券会社でアナ リスト、ベンチャーキャピタル業務を手掛け た。薬学博士。 T細胞 PD・1 著者 ゛゛ . . B PD・1とPD・Uが結合するとT細胞に抑制性シグナルが流れ、免疫応答が抑制される。 PD、1とPD、LI の結合を阻害すると、T細胞の免疫応答が維持され、抗腫傷効果となって現れる。 ニボルマブ 図2 NSCLCに対するニボルマブの効果(ASC02015) 投与する群、またはドセタキ七ル 0 2015年の米国臨床腫傷学会 ASC02015)では、ニポルマブの肩 平上皮性の非小ホ朋朗市がん(NSCLC) 表されたこの試験は、治療歴を有す るNSCLCの患者を対象にした非盲 検無作為化臨床試.験(n=272)。ニポ % olpolients(95% CI) NO.of Deolhs NNolumob(N.135) 92(7313.3) 42(34-5の 86 Doceloxel(N"137) 6.0(5.1・73) 24(17・31) 113 HOZσrd rolio for de0小,0.59(0.4407の Pく0.001 Nivolumob Docetoxel 3 6 9 12 15 113 103 86 68 69 45 52 30 31 M 21 24 00 期問(月) 18 72 する群のいずれかに割りイ、1けられた NO.at Risk Nivolumob 】35 Docetaxel 137 1・Yr over011 SurYiYal mo(95 CI) 巧7 乃mg/m2を3週間に1回静脈内投与 生存率(%) のCheckmate・017試験の好結果が発 Medion oゞ引011 SurⅥ如1 ﹂ ルマプ3mg/kgを2週間に1回静脈内 櫛卯即 刀的釦 如即⑳ 円0 に注目を浴びることになった 主要評価項目は全生存期間 1年 時点での生存率はニボルマブが4200、 4538-06試験は非肩平上皮進行 例に係るデータが集積されるまでの ドセタキセルが2400、全生存期問中央 NSCLCを対象としていた 間は、全症例を対象に使用成績調査 値はそれぞれ92力月と6.0力月 両,式.験ともに、白金系抗がん剤を の実施となっている。 この市鴇矣では、ニポルマブにより死 含むレジメンを少なくとも1つ以上受 承認の基になった国内第Ⅱ相試験 亡りスクが41%低減したハザード比 けた経験のある3B期 4期または再 のONO-4538-02試験(n=35)の重大 059 [95%信頼区間:0.44-079]、 P= 発NSCLC患者で、 ECOG PSが0ま な副作用として、間質性肺疾患、肝 0.00025)。 checkmate017試験は初 たは1の20歳以上の患者が対象だっ 機能障害、肝炎、甲状腺機能障害、 めてPD、1抗体が肺がんに対して生 た主要評価項目はRECISTVI.1に Infusion Reactionが報告されてい 存期間の有意性を尓した試験となっ 基づく独立評価委員会による奏効率 る'な即H乍用は、掻庠症が31.4%、 た(図2)。 PD、L1発現にかかわらず に設定された 遊離トリヨードチロニン減少が ニポルマブは全ての評価項目で優位 試験の結果、肩平上皮NSCLC患 229%、血中TSH増加が20.0%、白 性を不している奏効率はPD、L1高 者においては奏効率が25.フ%。非肩 斑、白血球数減少、遊離サイロキシン 発現および低発現、陰性患者で同様 平上皮NSCLC患者では奏効率が 減少がともに17.1%、甲状腺機能低 の結果となり、ドセタキセルと比較 197%だった薬剤関連のグレード 下、疲労、 AST (GOT)増加、血中 してニボルマブで高い結果となっ 34の副作用は162%に認められた AI、P増加、血中CK CPK)の増加、 た原因の解明が待たれるところで 多く。忍められたグレード3/4の副作 血中LDH増加、CRP増加、りンパ球 ある 用は、りンノ証求数減少が3.6%、食欲 数減少がそれぞれ143%、下痢、ALT 日本人の肩平上皮または非肩平上 減少、掻庠がともに09%。全グレー (GPT)増加、γ・GTP増加、好酸球数 皮の既治療進行NSCLCにニボルマ ドの問質性肺疾患、は45%、グレード 増加、サーファクタントプロテイン増 ブが効果を示した結果も発表されて 3 4は18%に認められた。 加、皮膚色素減少Ⅱ.4%がそれぞれ いる第Ⅱ相試験であるON04538、 ニポルマブは世界に先駆けて日本 05試験(n=35)とONO-453806試験 で承認となった訳であるが、承認、条 分子標的治療の利用でNSCLCに (n=76)。 ONO-4538-05試験は肩平 件として、国内の治験症例が極めて 後れを取ってきた小細胞肺がん 上皮進行NSCLCを対象とし、 ONO、 限られていることから、一定数の症 (SCLC)でもニボルマブの有用性を に見られた 日経メディカル CancerRevieW 2015.6 17 W 新薬ファイル 表ニボルマブの主な開発状況 ^^ 適応症 根治切除不能な悪性黒色腫 悪性黒色腫 26 奏効率 35 イヒリムマブでの治療後、かつ、BRAFV600変異陽性 の場合は、BRAF阻害剤での治療後に病勢進行が認 められた切除不能または転移性悪性黒色腫 奏効率ノ 全生存期問 390 未治療で切除不能または転移性悪性黒色腫 全生存期問 410 全生存期問/ 無増悪生存期問 945 全生存期問 822 未治療の進行性、転移性腎細胞がんに対してニボルマプ 無増悪生存期問 とイヒリムマフを併用とスニチニブ単剤投与の比載 /全生存期問 化学療法歴のある局所進行または転移性の胃がん、胃 食道接合部腺がん イヒリムマブの併用試験 腎細胞がん ^^^^^^ 未治療で切除不能または転移性の腎細胞がんに対す る工ベロリムスとの比較 発売 (14/09) j義而'0 (15/03、韓国) 発売 14 12 申a青受理 1504 申請中 (14/09) Ph1Ⅱ PhⅢ PhⅢ PhⅢ PhⅡ1 PhⅢ 1070 Ph1Ⅱ PhⅢ PhⅢ 全生存期問 480 Ph1Ⅱ PhⅢ 10 胃がん Ph1Ⅱ (韓国、台湾) Ph1Ⅱ (台湾、韓国) Ph1Ⅱ 頭頸部がん 2 再発、転移性悪性黒色腫 全生存期問 360 胖芽腫 2 イヒリムマブの併用とべバシズマフとの比較 忍容性ノ 全生存期問 440 ホジキンリンハ腫 3 自家幹細胞移植失敗後のホジキンリンパ腫 最良総合効果率 120 全生存期問 100 2 TGFβ R1キナーゼ阻害薬のGalunisertib LY2157299)との併用 進行性肝細胞がん 安全性 405 バルリルマブとの併用 奏効率 190 肝細胞がん 固形がん 抗CCR4抗体モガムリズマフとの併用 PhⅡ PhⅡ1 PhⅢ PhⅢ PhⅢ PhⅡ PhⅡ Phl Phl (台湾、香港、韓 国) Phl Phl Phl 小野薬品工業の公表資料、 C11nlcalTrialS80V から作成 検討する臨床試験が始まっている 肝細胞がん、ホジキンリンノ明重を対 する抗体のBMS986016との併用試 CAS209032試験は再発SCLCを対 象とした臨床,式験を実施中である .験などが進行中だ国内でも固形が 象にニボルマブ単独とニポルマブ十 免疫チェックポイントはPD、1 んを対象にモガムリズマブとの併用 イヒリムマブを比較する第1 Ⅱ相試 PDL、1以外に多くの分子があり、今 試験が開始された 験で、その結果がASC02015で報告 後はほかの標的分子の探索と、創薬 ほかにぺムブロリズマブキート された 標的としての可能性を検討すること ルーダ、米Merck社)、そのりガンド ほかのがん種についても、適応拡 力垳牙究の方針の1つとなるニポルマ であるPD、L1に対する抗体のMPDL、 大が検討されている海外において ブに先行して開発されたヒト型抗ヒ 3280A (スイスRoche社中外製薬) は、現在BMS社が腎細胞がん トCTLA、4モノクローナル抗体イヒ と MED14736 英Astrazeneca社) 恨CC)、頭頸部がん、血液がん、艝芽 リムマブとニボルマブとを併用する などが臨床試験を進める抗体の開 腫、大腸がん、縢臓がん、胃がん、肝 臨床試験も開始されている。 発では常に議舖されることである 細胞がん、トリプルネガティプ乳が さらにキラー細胞免疫グロブリン が、受容体のPD、1、りガンドである ん、小細胞肺がん、跨胱がんなどを対 様受容体(KIR)に対する抗体のりり PD・L1のどちらの働きを阻害する方 象とした臨床試験を進めているま ルマブ、 CD137 (4-1BB)に対する作 が、副作用の発生率を含めて有利な た、小野薬品がRCC、非小細胞肺が 動抗体のウレルマブは、りンパ球活 のかは、今後の進展を見なけれぱな ん、頭頸部がん、胃がん、食道がん、 性化遺伝子3(LAG3、 CD223)に対 らないようだ 18日経メディカル CancerRevieW 2015.6 屈
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