真空圧密工法の改良地盤における基礎杭の合理的設計法 国土交通省 北海道開発局 旭川開発建設部 同 北海道開発土木研究所 土質基礎研究室 ○ 田 中 正 善 谷 中 隆 之 冨 澤 幸 一 1. はじめに 一般国道 40 号名寄バイパスに架橋される親和橋は、深さ約10mに液状化対象層の砂質土(DE=2/3)および 軟弱な粘性土が互層で介在する土質柱状のため、橋台のすべりに対して対策工を必要とした。当該橋梁にお いて建設コスト縮減を図る対策工として、橋台の杭(場所打杭φ1200mm)周辺を真空圧密工法により地盤改 良し、増加した改良地盤のせん断強度を杭水平抵抗として反映する新工法(以下、複合地盤杭1)と仮称する) を実用化した。複合地盤杭工法を採用することで、地盤改良を行わない従来基礎形式に対し、杭列数を減じ 下部工を縮小できることから、全体工事費を10%程度削減することが可能となった。 本報では、複合地盤杭設計法の考え方および現場実試験による検証結果を整理した。また、試験実測値を 用いた基礎の耐震性について検討した。 2.複合地盤杭設計手法 杭周辺の真空圧密工法の地盤改良範囲は、杭水 平抵抗を極限状態の地盤の釣り合いと扱い、深さ 1/ β (杭特性長)から杭前面側に受働土圧の作用 工勾配 θ =(45°+ φ /2)で立ち上げた3次元範囲 とした( 図-1)。この際、真空圧密工法は地盤 中のドレーン材を打設し盛土を併用することで圧 密を促進し、地盤のせん断強度の増加を図る地盤 改良工法である。また、改良地盤の設計で用いる 地盤変形係数 E は、試験施工時の地質調査より設 定した。設定手法は、孔内水平載荷試験より求め られている真空圧密工法改良前の降伏応力 Py’ か ら地盤改良後の圧密降伏荷重Pcを推定し、この比 図- 1 真空圧密による複合地盤杭工法 率関係より改良後の地盤変形係数Eを算定するものである。これにより、当該の真空圧密工法の改良効果に よる地盤定数の増加割合は変形係数Eで1.3倍となり、それを用い杭の設計水平地盤反力係数を設定した。 3.実杭水平載荷試験 当該現場において、真空圧密工法を活用した複合地盤杭設計法の妥当性を検証するため、実杭の水平載荷 試験を実施した。試験法は、地盤工学会基準「杭の水平載荷試験方法・同解説」2)に準拠した、周辺杭を反 力とする油圧ジャッキを用いた正負交番荷重制御法とした。水平載荷試験の結果得られた、荷重~水平変位 量~曲げ応力の関係から、弾性地盤反力法により実測水平地盤反力係数を算定した。その結果、基準変位量 3 (杭径 1%=12mm)相当の実測水平地盤反力係数 k'=22850kN/m を得た。これは、計算水平地盤反力係数 3 k=10835kN/m の約 2 倍の水平地盤反力である。この事由は、杭周辺に施工した真空圧密工法が強く作用し てことや試験時に上層に敷設した基礎砂利強度の影響と考えられが、杭支持機構上は安全側と評価される。 4.耐震性評価 表- 1 現設計値を用いた変位法計算結果 水平載荷試験の結果得られた実測水平地盤反力係 数 k'が計算値 k を大きく確保したことから、実測値を 用い震度法 3) (レベル1地震動)による地震時の検討 を行った。表-2に示す現設計値に対する、実測水 平地盤反力係数 k'を用いた変位法の計算結果を表-3 に示す。その結果、実測値を用いた計算では、地盤反 表-2 実測値を用いた変位法計算結果 力が大きいため、杭頭水平変位量は半減する。ただ し、杭反力は多少小さくなるだけであり、このこと を考慮すれば実測水平地盤反力は過大でない範囲の 安全性を確保したものと判断される。 また、別法として、レベル2タイプⅡ直下型地震動を用い非線形2次元 FEM 解析をを実施したが、杭周 辺に施した真空圧密工法により改良地盤内での地盤および杭変形の抑止効果が確認されており、耐震性を向 上させる複合地盤杭工法の有用性が検証されたものと考える。 5.結論 真空圧密工法を活用した複合地盤杭設計法に対する一連の検討から、以下の知見が得られた。 ①当該橋梁において杭周辺を真空圧密工法で地盤改良する複合地盤杭を採用することで、杭水平抵抗の増加 が期待されることから、杭・下部工の規模縮小化が図られ、建設コストを10%程度縮減することが可能と なった。 ②複合地盤杭の改良範囲は、工学的な考察から深さ1/β(杭特性長)から受働土圧の作用工勾配θ=(45°+ φ/2)で立ち上げた3次元範囲とした。また、杭の設計水平地盤反力係数は、事前試験施工の地質調査に より得られた地盤変形係数Eからより実務的に設定される。 ③実杭の水平載荷試験による実測水平地盤反力係数 k'は計算値 k'の約2倍の値を示したが、震度法および非 線形2次元 FEM 解析による耐震性の検討から、杭基礎の支持機構上過大でない範囲の安全性が検証され たものと考える。 ④当該地盤で採用した複合地盤杭工法は、液状化地盤および軟弱地盤において、地盤反力の増加を図る手法 として実用性、有用性が高いことが確認された。 参考文献 1)冨澤幸一・西川純一:複合地盤杭の実用的設計法の検証、独立行政法人北海道開発土木研究所 2002年9月 pp32-43,vol.592 2)地盤工学会:杭の水平載荷試験方法・同解説、1983 3)社団法人道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ耐震設計編 平成14年3月 月報
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