関西国際空港での大粒径アスファルトを用いた 滑走路の大 - 国土交通省

関西国際空港での大粒径アスファルトを用いた
滑走路の大規模改修工事について
山本
晃也
関西国際空港株式会社 施設管理部企画グループ(〒549-8501大阪府泉佐野市泉州空港北1)
関西国際空港のA滑走路は,開港後10年以上が経過し舗装の劣化が進行してきたことから,B滑走路供
用開始によりメンテナンス時間が確保できることになったので,A滑走路の全面改修を行うこととなった.
改修に当たっては,舗装の劣化のほか,これまでの不同沈下により舗装面の排水性が低下してため,嵩上
げも同時に行い排水性の回復も行うこととなった.嵩上げに使用する材料としては,舗設後滑走路として
暫定運用ができるよう「大粒径アスファルトコンクリート」を用いた.ここでは工事の特徴を中心に,施
工状況や同時に行ったモニタリングの結果について報告する.
キーワード
大粒径アスファルトコンクリート,耐流動性,オーバーレイ,ブリスタリング
厚さとなった.一方で,昼間の混雑時間帯では2本の滑
走路の運用を求められていたため,工事は比較的便数が
少ない夜間の時間帯に限定し,日々交通開放するという
条件下で行った.
本改修を行うに当たっての課題は,効率よく嵩上げ層
を施工しかつ日々交通開放できる方法を選定することで
あった.その方法については,近年,空港舗装での適用
事例が増えていた「大粒径アスファルトコンクリート」
を用いることとした.
ここでは,改修方法の考え方や施工状況について報告
すると共に,大粒径アスファルトコンクリートの適用性
について,事前の室内試験等による検証や本工事でのモ
ニタリング結果を中心に報告する.
1. はじめに
関西国際空港は,1994年9月に泉州沖を埋め立てた人
工島に1本の滑走路(A滑走路)等を建設し,24時間空港と
して開港した.以降,限られた時間でメンテナンスを行
っていたが,開港後10年以上が経過し,舗装の劣化が進
行していた.
2007年8月,2本目の滑走路(B滑走路)が供用開始し,メ
ンテナンスの長時間確保が可能となったことから,A滑
走路の大規模改修を行うこととなった.
A滑走路の舗装は,アスファルトの硬化や舗装内の水
分量の増加,層間剥離やひび割れといった劣化が進行し
ていた.また,海上を埋め立てて造成した人工島である
関空特有の不同沈下により,特に滑走路横断方向の排水
勾配は低下していた.
2. 改修前の舗装状況
改修工事は2007年12月から2008年8月にかけて行った.
改修に当たっては,長期的な耐久性を確保しつつ,近年
他の空港でも同じように懸念されている,ブリスタリン
グの対策についても万全を期すこととした.また,排水
勾配の修正のため,施工厚の厚い箇所では50cm以上の
改修範囲
写真1. 改修工事範囲
図-1 第1滑走路の舗装構造
X=3540m
CL
改修前の勾配
0.44%
1.27%
設計勾配 1.0%
←ターミナル側
写真-3 滑走路のひび割れ
写真-2 滑走路表面の状況
護岸側→
図-3 滑走路の横断勾配の変化状況
図-2 滑走路のひび割れ発生位置
勾配の変化が最も大きい箇所の状況を示している.滑走
路の横断勾配は当初1.0%に設定していたが,その後の不
同沈下により勾配が緩急となっていた.なお,沈下の傾
向としては全般的に空港島の中心に向かって沈下量が大
きくなる傾向となっている.
A滑走路の舗装の断面構造は,安定処理した上部路床
を含め最も厚い箇所で122cmあり,表層は5cmの密粒ア
スコン(ストアスTop20mm),基層は6cm2層の12cmの粗粒
アスコン(ストアスTop20mm)となっている(図-1).
(1) 舗装の路面性状
舗装表面の状況は,写真-2に示すとおりアスファルト
の材料劣化と摩耗により骨材が現れ,グルービングの溝
も浅くなっている部分もある状況であった.
図-2は供用後約10年経過したA滑走路の主なひび割れ
の状況である.ひび割れは滑走路を横断するように発生
しており,その多くが1995年1月に発生した兵庫県南部
地震が原因で発生したものである.ひび割れの部分のコ
アを採取した結果,下部の安定処理層まで達しているも
のもあった.
図-3はA滑走路横断勾配の中でも不同沈下により横断
表層
基層①
基層②
(2) アスファルト混合物の性状
A滑走路舗装の状態を把握するため,2002年から2004
年にかけてコア採取を行った.そのうち,2003年には滑
走路の全般的な状態を把握するため96箇所のコア採取を
行った.採取したコアを見ると,2層ある基層の間で層
間剥離しているコアが多く認められ,また基層と安定処
理層との間でもいくつかのコアで層間剥離が確認された.
写真-4は,その1年後(2004年)に採取したコアの状況で
あり,ひび割れが深く貫通しているとともに,層間剥離
が発生しているのが確認できた.
採取したコアの空隙率,針入度,水分量の室内試験結
果を図-4∼6に示す.2層ある基層①,②の空隙率は良好
な状態にあるが,表層は著しく低下していることが確認
できる.次に針入度については,表層にいくほど小さく
なっており,また年々減少傾向にある.一般に針入度が
25以下でひび割れの発生が多くなると言われているが,
今回採取したコアのうち健全部を含め多くのコアで針入
度25を下回る状況にあり,多くの箇所でひび割れが発生
一部層
間剥離
もあり
路盤
写真-4 滑走路の採取コアの状況
H14.11
2002.11
5.0
空隙率(%)
4.0
3.0
3.0%
塑性流動が
生じやす い
2.5%
2.0
ブ リスタリングが
生じやす い
35
30
針入度(1/10mm)
H15.7:A-1
H15.7:A-2
2003.7
H15.7:A-3
H16.10②
2004.10
25
2.5
H14.3
2002.3
輪跡部
H14.3
2 0 0 2 .3
H14.11は2点の、H15.7は3
H14.11
2002.11
H14.11
2 0 0 2 .1 1
点の平均値
H15.7
H15.7
2 0 0 3 .7
2003.7
H16.10
H16.10
2 0 0 4 .1 0
2004.10
ひびわれ発生大
2.0
水分量(%)
40
6.0
20
15
1.5
H15.7:A-1
H15.7:A-1
H15.7:A-2
H15.7:A-2
2 02003.7
0 3 .7
H15.7:A-3
H15.7:A-3
H16.10
2 0 0 4 .1
H16.10
2004.10
1.0%
1.0
ブリスタリング危険領域
10
0.5
5
1.0
0.0
0
0.0
健全部
表層
基層1
図-4 空隙率の状況
基層2
表層
クラック部
健全部
クラック部
基層1
図-5 針入度試験の結果
健全部
クラック部
健全部
クラック部
表層
健全部
クラック部
基層1
基層2
図-6 水分量の状況
健全部
クラック部
基層2
(ショルダー)
10.000
(滑走路本体)
60.000
30.000
(ショルダー)
10.000
30.000
基層 (粗粒アスコン)
CL
1.2%
1.2%
表層(改質アスファルトⅡ型) t=8cm
表層
(改質アスファルトⅡ型) t=8cm
基層(改質アスファルトⅡ型) t=8cm
基層 (改質アスファルトⅡ型) t=8cm
中間層(大粒径アスファルト)
最大3層施工,
中間層(大粒径アスコン)
t=8∼12cm 一層当たりt=8∼12cm
図-7 滑走路の標準改修断面
30 00
(50 00 )
35 00
(5 500 )
25 00
(4 500 )
2 000
(4 000 )
1 50 0
( 350 0)
1 00 0
(30 00)
500
(250 0)
0
( 200 0)
5000
3500
標高 CDL(m)
標高 CDL(m)
↓護岸側
改修後の高さ
現状高さ
4.0
3.5
3.5
3.0
3.0
2.5
2.5
4.0
2000
0
2500
500
3000
1000
3500
1500
0.080
5%
13.051
(切削工)
↑ターミナル側
5.0
5.0
4.5
4.5
3.003
15.000
表層 (密粒アスコン)
4.
(1) 改修の課題と対策の方向性
a) 断面設計の課題
① 既設アスファルトの含有水分への対応
ブリスタリング対策として表層及び基層の一層厚
さを一定以上確保する.
② リフレクションクラック対策
上層路盤まで達している地震のひび割れによるリ
フレクションクラックの対策としてオーバーレイ厚
を十分確保する.
③ 雨水排水勾配の回復
勾配が低下している箇所を嵩上げすることで勾配
を回復させる.
b) 施工上の課題
① 効率的な嵩上げ方法
早期に工事完了することを求められており,大幅
な嵩上げを効率よく行わなければならない.
② 施工期間中の滑走路供用の確保
昼間の混雑時には2本の滑走路が運用できるよう
にしなければならないため,工事は夜間に限定.ま
た,日々復旧し交通開放しなければならないため,
嵩上げには暫定的に交通開放しても安全に供用でき
る材料でなければならない.
4.
5%
3. 改修方法の考え方
0.100
(3) 舗装状況のまとめ
コア採取の結果より,アスファルトの劣化が進行して
いることが確認でき,塑性流動やひび割れが発生しやす
い状況であったと考えられる.また舗装内水分量の増加
により,舗装内部の劣化も進み層間剥離が進んでいる状
況にあり,出来るだけ早期に改修を行う必要があると考
えられる.また地震で発生したひび割れは上層路盤まで
達していたものもあり,これについても長期的な対応が
求められる.
(2) 滑走路の改修構造
a) 表層・基層
・表層・基層の合計厚は,リフレクションクラックを
極力防止するため,補修要項2)のコンクリート舗装
上のアスファルト舗装によるオーバーレイの場合
に必要とされる最小厚15cmにグルービング分1cmを
加えた16cmとした.
・表層の厚さは名古屋3),新千歳4),福岡5)など最近の
ブリスタリングに対する改良事例より8cmとし,基
層は表層厚を差し引いた8cmとした.
・表層・基層ともにブリスタリング対策として空隙率
を高め,耐流動性と長期間空隙を維持するため,
特に航空機が走行する部分については,アスファ
ルト材料に改質Ⅱ型を用いた.
・横断勾配は,今後の残留沈下を考慮して1.2%とした.
b) 中間層
・16cm以上嵩上げが必要な箇所は,表層・基層の下に
中間層を設けた.
・施工の効率化,弱点となる舗装の施工境界面の減,
滑走路の暫定運用を考え,最大粒径30mmの骨材を
使用した大粒径アスファルトコンクリートとした.
c)大粒径アスファルトコンクリートの配合設計
・仕様・基準値は,NAPA(全米アスファルト舗装協会)
及び他空港の事例6)を参照し設定.
・動的安定度は,他空港の事例及び港湾空港技術研究
所の試験7)を参考に1,200回/mm以上とした.
0.050
しやすい状況にあったと考えられる.また水分量につい
ては,下層にいくほど増加しており,特にひび割れ分で
は1%を超えている状況であった.
4000
2000
4500
2500
図-8 滑走路の嵩上げ高さ(滑走路センター)
3000
5500
25
12
試験平均値
8
15
損失量(%)
カンタブロ損失量(%)
10
10
実線:硬質砂岩
点線:流紋岩
粗粒(50℃)
6
大粒径(60℃)
4
5
試験結果(3供試体)
大粒径(70℃)
大粒径(50℃)
2
ラベリング摩耗量(cm2)
試験結果(3供試体)
20
2.0
粗粒-50℃
大粒径-50℃
大粒径-60℃
大粒径-70℃
大粒径
粗粒
図-9 カンタブロ試験結果
1.0
0.5
0.0
0
0
試験平均値
1.5
0
20
40
60
80
100
試験時間(分)
大粒径アスファルトコンクリートは表面のきめが粗い
ので,そのまま滑走路を暫定的に供用する場合,航空機
の制動や高速での曲線走行時の水平力に対して,骨材剥
離・飛散が懸念された.これについては,新千歳空港な
どでの事例や八谷らの研究8)により検証されているが,
本改修ではは広い面積で最長3ヶ月程大粒径アスファル
トコンクリートで供用すること,配合によって骨材剥離
抵抗性も変化することも考えられるので,本改修の配合
設計に基づき室内試験を行った.試験方法は,カンタブ
ロ試験,回転式WT試験,ラベリング試験により,改良
工事において暫定開放の実績がある粗粒アスコンと比較
することで検証を行った.
試験結果を図-9∼11に示す.いづれの試験結果とも粗
粒アスコンと差がない結果となった.また回転式WT試
験では,開放温度70℃の場合と粗粒アスコン50℃と同等
の性能となることが確認できた.なお,粗粒アスコン
50℃は,粗粒アスコンで開放する場合の温度の基準値で
ある.
以上から,大粒径アスファルトコンクリートの骨材剥
離抵抗性については問題ないと判断した.なお,実施工
の際も暫定開放後,目視観察により逐次骨材剥離の状況
について確認した.
粗粒
図-11 ラベリング試験結果
図-10 回転式WT試験結果
4. 大粒径アスファルトの骨材剥離抵抗性の検証
大粒径
4章で示したとおり,骨材剥離抵抗性は開放温度70℃
程度でも問題ないと判断されたことから,70℃における
わだち掘れ量の算定を行った.その結果,初期わだち掘
れ量は概ね10mm程度と推定された.これは補修要領で
評価B(10∼38mm)に相当し,運用上問題ないレベルと判
断できる.従って交通開放温度(内部温度平均)は70℃と
設定した.
(2) 試験施工及び本工事での検証
施工サイクルタイムを決めるために,仮設ヤードにて
試験施工を行い,交通開放目標温度に達するまでに必要
な時間を求めた.また,本工事では施工厚が厚い部分に
モニタリング箇所(図-13)を設定して,路面の変形量や舗
装温度を計測した.舗装の温度測定の方法は,表面温度
計及び熱電対にて連続的に舗装内部温度を計測した.
図-14は試験舗装の大粒径アスファルトコンクリート
の舗装内温度の測定結果である.試験舗装では6箇所で
計測し,平均78分で目標温度70℃に達し,またモニタリ
ングでは60分程度で目標温度に達した.よって,以後の
開放温度の仮定
( 舗装内温度70℃)
舗装体温度シミュレーション
( 熱伝導FEM解析)
時刻∼ 舗装内温度∼ 交通量の設定
わだち掘れ量の算定
載荷条件の設定
車輪中心
バインダースティフネスの算定
13.0%
2種類の載荷時間に対する混合物のスティ
フネスの算定
11.0%
8.0%
8.0%
5.0%
横断方向交通分布荷重の設定
5. 大粒径アスファルトの交通開放温度の検証
13.0%
13.0%
11.0%
5.0%
3.3%
2.0%
1.0%
多層弾性解析による弾性変位量の算定
わだち掘れ量の算定
-200
-150
↓δ1
-100
オーバーレイ層(12cm)
↓δ2
-50
0
50
横断方向距離(cm)
既設アスコン(31cm)
↓δ3
砕石セメ安(20cm)
(1) 交通開放温度の設定
効率的な施工するには,舗設後の養生時間を短くし,
敷均し時間を長く確保するのが望ましいが,大粒径アス
ファルトコンクリートは,粗粒・密粒といったアスファ
ルトコンクリートよりも動的安定度が高いので,交通開
放温度を比較的高く設定することができるため,養生時
間を短くできる特性がある.そこで当空港での発着回数
と舗装内温度による初期わだち掘れ量をシミュレートし
て,交通開放温度の検討を行った(図-12).なお,この予
測手法は牛尾の方法9)を参考にした.
評価・開放温度の設定
マサ土セメ安(30cm)
上部路床(30cm)
下部路床
図-12 わだち掘れ量の推定方法
図-13 モニタリング箇所
3.3%
2.0%
1.0%
100
150
200
温度(℃)
温度(℃)
180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
初期転圧
表面温度
二次転圧
舗装内部温度
平均温度
外気温
目標開放温度
目標開放温度
表面温度
舗装内部温度
平均温度
外気温
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
経過時間(分)
100
110
120
130
140
150
160
経過時間(分)
CL
高さ
(m)
10.0
9.9
9.8
施工当日
施工翌日
9.7
工当日
工翌日
27
24
21
18
15
12
9
6
滑走路センターからの距離 (m)
3
360 t/h (2基×180 t/h)
ホットサイロ
720 t (6基)
写真-5 空港内の仮設アスファルトプラント
図-14 試験舗装での舗装内温度測定 事例
30
アスファルトプラント能力
0
図-15 大粒径アスファルト舗装の横断形状計測
事例
大粒径アスファルトコンクリートの施工については,最
終敷均し時間を,試験施工で設定した時間より30分遅ら
せて施工するよう設定し,施工の効率化を図った.
初期わだちの状況を把握するため,大粒径アスファル
トコンクリートの施工直後と交通解放後翌日の横断形状
をプロフィルメーターにより計測した(中間層③図-15).
その結果,交通開放による流動と推測される箇所は見当
たらなかった.
6. 工事の概要
(1) 工事中の運用条件
工期の短縮,施工の効率性の点では施工日は多く,1
日の施工時間は長い方ことが望ましいが,B滑走路のメ
ンテナンスが必要であり,A滑走路を閉鎖できる日数に
限りがあることや,23時までA滑走路を使用することが
運用から求められたことから,本改修工事の施工時間の
条件は次の通りとなった.
(2) 資材の搬入
今回使用するアスファルトコンクリートは,総計約16
万トンとなり,ピーク時では日当たり2千トン使用する
ことなった.これを効率的かつ安定的に確保するために,
空港島内にアスファルトプラントを設置し,アスファル
トコンクリートを製造した.その製造に必要な材料のう
ち,大部分を占める骨材等資材は海上輸送した.また,
ピーク時に効率よく供給できるよう,事前にアスファル
トコンクリートを製造し貯蔵しておくホットサイロも併
設した.
(3) 施工状況
・大粒径アスファルトコンクリートの1層施工厚は最
大12cmとし,最大3層に分けて施工した.
・大粒径アスファルトコンクリートの転圧回数は,
NAPA及び他空港の事例 6) を参照し設定した密度
(2.39t/m3)となる施工機械の組み合わせと回数を試験
施工にて求め,初期転圧5回(振動ローラ,初回無振),
二次転圧5回(振動タイヤローラ)とした.
・層間の接着力を強化するため,改質系のタックコー
トを用いて,ブリスタリングの防止対策を施した.
また,改質系は速乾性も併せ持つので,養生時間を
短縮して日々の施工量をアップさせた.
・施工時間や機械の能力等考慮して,安全かつ効率的
な施工計画を検討した結果,アスファルトフィニッ
シャを最大4台用いて舗設した.
・5章(2)において大粒径アスファルトコンクリートの
交通開放温度を70℃としたが,モニタリング以外の
工事期間:2007年10月∼2008年8月末
施 工 日:週5日(日,火,水,金,土)
施工時間帯:23:10∼翌6:40(7時間30分)
(月,木は B 滑走路のメンテナンス日)
写真-6 大粒径アスファルト舗装の表面
て報告した.また,大粒径アスファルトコンクリートを
用いた場合の交通開放の安全性について室内試験により
検証し,本工事における交通開放温度と初期わだち掘れ
量のモニタリングを行い,運用上支障なかったことを報
告した.
大粒径アスファルトコンクリートを舗設する際に表面
が粗くなることがあり,舗装の均一性の確保が難しとい
った室内試験ではわからない問題点が判明した.大粒径
アスファルトコンクリートは,粗粒・密粒といった通常
のアスコンと比べ,舗設する際にはより注意を要する材
料であり,空港舗装へ使用する際には,材料としての性
能だけでなく施工方法を含めた総合的な検討を行うこと
が必要であるということがわかった.
今後は,FWDやPRI調査などを通じて追跡調査を行い,
長期的な耐久性の検証を行っていく予定である.
中間層③
中間層②
中間層①
表層工・基礎工
図-16 工事の展開図
参考文献
写真-7 工事の状況
箇所でも,初期わだちは殆ど発生しなかった.
7. まとめ
本報告では,関西国際空港で初めて実施したA滑走路
の大規模改修について,その改修方法や工事概要につい
1)久保宏,八谷好高,長田雅人,平尾利文,浜昌志:最近の空
港アスファルト舗装の損傷と改良工法について,土木学会
舗装工学論文集 Vol.9,p.35-40,2004.12.
2) 国土交通省航空局:空港舗装補修要領 (案)
3)長田雅人,佐野一三,浜昌志:空港舗装のブリスタリング現
象,舗装 38-3,p.3-7,2003.
4)安部隆二,岳本秀人,衛藤謙介:新千歳空港舗装帯の劣化原
因調査及び対策工法の検討,土木学会舗装工学論文集 Vol8,
p.261-272,2003.12.
5)高田正志:福岡空港における滑走路舗装の変状と対策につい
て,第 6 回空港技術報告会,2005.12.
6)瀧口高,江口秀二,茂崎慎治,福岡知久:シックリフト工法
の空港誘導路舗装への適用,土木学会舗装工学論文集 Vol.10,
p.113-118,2005.12.
7)早野公敏:空港舗装の表・基層を対象とした大粒径アスコン
の耐久性評価試験,舗装工学論文集 Vol.10,p.107-112,
2005.12.
8)八谷好高,高橋修:大粒径アスファルトコンクリートの空港
舗装表層への適用性,土木学会論文集 No.732,V-59,p.214246,2003.5.
9)牛尾俊介:アスファルト舗装のわだち掘れ予測方法に関する
研究,土木学会論文集第 323 号,p.151-163,1982.7.
10)奥田豊:大粒径アスファルトコンクリートを用いた関西国
際空港の滑走路大規模改修について,第 9 回空港技術報告会,
2008.12.