主要製品の製造工程 主要製品と製造工程 塩安・ソーダ灰 まず,原料塩を粉砕し,マグネシウム,カルシウム,硫酸イオン等の不純 物を洗浄除去し,遠心分離機で脱水し精製塩とする。 炭酸化工程からアンモニア吸収器を経て,送られて来た塩安母液を結晶 槽に導き,ブラインで冷却しながら精製塩を添加すると塩安が晶出する。 これを遠心分離機で脱水し,重油燃焼式回転乾燥炉に送って乾燥し,製品と し,貯蔵サイロに入れる。 塩安工程から炭酸化工程に戻った塩安母液は炭酸化塔上部に送られ,下 部からの炭酸ガスと反応しながら冷却され,粗重曹の結晶を析出する。こ れをフィルターで粗重曹と母液に分離し,粗重曹はソーダ灰工程に,母液を 塩安工程に送る。 粗重曹はライト灰 S TD(S te a m-tube -drye r)に送り,熱分解してライト 灰とする。ここで発生する炭酸ガスは,洗浄後炭酸化工程へ送る。また, ライト灰に加水して 2 水塩結晶とし,デンス灰 S TD で乾燥してデンス灰と する。 (注) ①蒸留工程,石灰炉工程,圧縮工程,原塩精製工程,冷凍工程 は省略した。 ②ライト灰(軽灰);微細粒子で見掛け比重が 1.0 以下のもの。 デンス灰(重灰);粒状で見掛け比重が 1.0 以上のもの。 塩安・ソーダ灰製造工程図 − 245 − 重 曹 苛性ソーダ液を重曹用炭酸化塔の上部から送入し,塔底からの炭酸ガス と反応させ,冷却すると塔の下部で重曹結晶を析出してスラリーとなる。 分離機で重曹と母液に分離し,重曹を乾燥篩分けて製品とする。 重曹製造工程図 苛 性 ソ ー ダ (電解・水銀法) まず,塩水精製工程で,原塩を淡塩水で溶解し, カルシウム, マグネシウ ム,硫酸イオン,鉄および重金属などの不純物を除去し電解工程に送る。 水銀法電解ソーダ製造工程では,精製塩水を TOS O 型電解槽に送り,これ を電気分解して液体苛性ソーダ(48%),塩素,水素を製造する。陰極(水 銀)で生成したナトリウムアマルガムは,解汞塔で加水分解され,48%苛 性ソーダ製品となり,水素を発生する。一方,陽極で発生した塩素ガスは冷 却,乾燥して製品とする。 苛性ソーダ(水銀法)製造工程図 苛 性 ソ ー ダ (電解・隔膜法) 隔膜法電解ソーダ製造工程では,精製塩水を複極式隔膜電解槽に送り, 陽極に金属電極,陰極にアスベストの隔膜に覆われた金網を使用し,電気 分解する。発生した塩素,水素は水銀法電解と同様に処理する。 陰極室から出た薄い苛性ソーダ液は蒸発缶によって 48%苛性ソーダに濃 − 246 − 縮する。未分解の食塩は,冷却して析出した食塩を除去して,製品とす る。 苛性ソーダ (隔膜法) 製造工程図 燐 酸 反応槽に微粉砕した燐鉱石を入れ,硫酸で分解すると燐酸と 2 水石膏が得 られる。次に石膏を分離した燐酸溶液中の,硫酸根,硅素等を薬品で除去し て燐酸原液を作る。 溶媒によって燐酸原液から燐酸を抽出して不純物を除去した精製燐酸を 濃縮し,肥料用,工業用等向けにそれぞれ濃度調整を行い,食品用はさらに 抽出精製を行って製品とする。75%燐酸はほとんど,隣接する東洋ストー ファ㈱に送液する。 石膏は結晶中に燐酸を含んでいるので,改質槽に送り,硫酸で処理した後 過してα型半水石膏とする。これに石灰乳を加え造粒機で造粒し,製品 とする。 燐酸製造工程図 − 247 − 臭 素 海水中には,臭化マグネシウム,臭化ナトリウムなどの形で臭素が約 60P P m存在している。海水に塩素を吹き込むと,塩素の作用で臭素が遊離 する。海水そのままでは,P H = 7.2 と弱アルカリ性であるため,遊離臭素 が再び海水のアルカリを中和して臭素酸塩を生じ,また希薄状態では遊離 臭素は加水分解して臭化水素酸となり,海水に再溶解する。 これを防ぐため, 海水を廃硫酸などであらかじめ P H = 3 ∼ 4 に酸性化し ておいてから,塩素を吹き込む。こうして遊離された臭素を含む海水を発 生塔の上部から流下させ,下部より多量の空気をブロワーで送り,臭素を海 水中から追い出す。 発生塔からの臭素を含んだ空気を,つぎに吸収塔でカセイソーダなどの アルカリ液で洗い,臭素を吸収分離させる。臭素を吸収したアルカリ液は 硫酸で中和後,蒸留塔で水蒸気蒸留して液体臭素が得られる。 臭素製造工程図 E D B (ニ臭化エチレン) EDB は,当社が唯一の国産メーカーであり,エチレンと臭素の付加反応 で製造している。 反応塔の上部から臭素を供給し,下部からエチレンを吹き込み EDB を生 成させる。反応液の一部は反応塔とクーラーの間を循環し,発生した反応 熱を吸収する。 反応塔から出た液は,微量の未反応臭素および副生臭化水素が溶解して いるので,苛性ソーダ液で中和洗浄して臭素を除き,その液を水蒸気蒸留し て副生高沸点物質を除去する。 比重差で水を分離した EDB に乾燥空気を吹込み水分を除去して製品とす る。 − 248 − EDB製造素工程図 塩素化パラフィン 当社で作られる塩素化パラフィンには,粘稠な透明液体 3 種類および白色 粉末の 4 種類がある。 《商品名トヨパラックス A―40,145,150》 パラフィンワックスまたはノルマルパラフィンを反応槽に入れ,塩素ガ スを吹き込み,外部から冷却しながら塩素化する。 反応終了後,反応生成物中に含まれている塩化水素・塩素を完全に除去 し,安定剤を添加して製品とする。 《トヨパラックス A―70》 40%塩素化パラフィンと溶媒をグラスライニング製反応槽に入れ,塩素 含有量が 70%に達するまで塩素化する。反応は発熱反応なので外部から冷 却しながら反応温度を制御する。 排ガス中の溶媒は,水およびブラインで冷却凝縮させ回収する。 反応終了後,反応生成物中に含まれている塩化水素,塩素を,水およびア ルカリで洗浄,除去し,反応生成物中の溶媒は溶媒回収器で回収する。 溶剤を除いた高粘度の塩素化パラフィンをベルトフレーカーで冷却固化 させフレーク状とし,粉砕,分級して製品とする。 塩素化パラフィン製造工程図 − 249 − 塩 化 ビ ニ ー ル (モ ノ マ ー) エチレン,塩化水素および空気を反応器に導き EDC を合成する。反応器 から出てくる生成物を冷却し EDC を分離する。 未凝縮ガス中の EDC を中和塔でアルカリ洗浄し,吸収塔で EDC を回収す る。得られた EDC を直接塩素化法の EDC と共に洗浄器でアルカリ洗浄し 粗 EDC を得る。 これをまず脱水塔で EDC に溶解している水分を除去し,ライト塔,ヘビ ー塔でそれぞれ低沸点物質,高沸点物質を除く。 精製 EDC を分解炉に供給し,高温,高圧下で熱分解し塩ビモノマーと塩 化水素を生成する。この分解ガスを冷却し塩酸塔で塩化水素ガスを分離す る。分離したガスを反応塔に戻す。 塩酸塔から出る塩ビモノマーを塩ビ塔で精製し製品とする。 塩ビモノマー製造工程図 高圧法ポリエチレン 原料を 1 次圧縮機で約 300 気圧まで圧縮し,改質剤を加え,循環ガスを 合わせて,2 次圧縮機でさらに 1000 気圧∼ 2500 気圧まで圧縮し触媒を注 入すると重合反応が起り,ポリマーが生成する。反応器で生成したポリマ ーと未反応ガスを高圧分離機に送り,約 300 気圧まで減圧し,未反応ガス を一部分離する。それを低圧分離機に送り,常圧近くまで減圧しポリマー と未反応ガスを完全に分離し,分離したガスを加圧して原料エチレンに混 入する。 低圧分離器を出た溶融ポリマーを押出機で押出しカッターでペレットと する。ペレットは用途に応じ添加剤を加え混練して再度ペレット化し袋詰 めして製品とする。 − 250 − 高圧法ポリエチレン製造工程図 クロロプレンゴム ブタジェンと塩素との混合ガスを,反応器で反応させると,1.4. ジクロロ ブテン―2 と 3.4 ジクロロブテン―1 の混合物が得られる。これを脱ガスし て 1.4 分離塔に送り,1.4 ジクロロブテン―1 の一部を 1.4 ブタンジオール, THF 工程に送る。残りを異性化器に送り触媒によって異性化し,全部 3.4 ジ クロロブテン―1 とする。 これを反応器に送って苛性ソーダを加え,粗クロロプレンを得る。これ を蒸留塔に送って塩分を除き,さらに精留塔で精留するとクロロプレンモ ノマーとなる。 このクロロプレンモノマーを重合器に送り,乳化剤と重合開始剤を加え て乳化重合を行い,ラテックスとする。これを酸で中和し,冷却した回転 ドラムに送って,表面にクロロプレンゴムを析出させ,洗浄,乾燥してシ ートとし,細いロープ状に裁断しさらに切断してチップ状の,製品とす る。 クロロプレンゴム製造工程図 − 251 − トリクロロエタン 塩ビモノマーと塩素ガスを反応器に入れ,触媒を加えて反応させ,1.1.2. (商品名トヨクリーン) トリクロロエタンを得る。また,塩ビ工場からの重質廃液を蒸留し,1.1.2. トリクロロエタンを回収する。 1.1.2. トリクロロエタンと石灰乳を反応器に入れ,攪拌しながら加熱して 塩化ビリニデンを発生させ,これを蒸留精製する。 塩化ビニリデンと塩酸ガスを反応器に入れ,触媒を加えて反応させ, 1.1.1. トリクロロエタンを生成し,水洗して触媒と塩酸を除去する。 粗 1.1.1. トリクロロエタンを蒸留により精製し,さらに安定剤を添加して 製品とする。 トリクロロエタン製造工程図 − 252 − セ メ ン ト 当社のポルトランドセメントの製造は,乾式工程と湿式工程の 2 系列があ り,原料は石灰石,粘土,軟硅石,鉄滓などである。 以下主流である乾式について述べる。石灰石と粘土質原料の 2 系列に分 け,それぞれの系列で乾燥,微粉砕し,コンピューターで原料成分になるよ うに調合してブレンディングサイロに送る。 焼成工程は,サスペンションプレヒーター(以下 S P とよぶ)の上部から 原料を供給し,S P 内を浮遊させて排ガスと熱交換させ,サイクロンで捕集 する操作を 3 段に行い,さらに助燃炉に導き,重油燃焼によって分解を早め て底部サイクロンに戻し,キルンに送入する。キルン内で約 1.450 度 C まで 加熱してセメントクリンカーに焼成し,これを急冷する。 クリンカーと石膏を仕上ミルで,微粉砕して混合し製品とする。 セメント製造工程図 − 253 −
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