「リアクトルレス昇圧チョッパを用いたインダイレクト - 長岡技術科学大学

リアクトルレス昇圧チョッパを用いたインダイ
レクトマトリックスコンバータの 1 パルス運転
の動作検証
ゴーテックチャン,伊東
淳一(長岡技術科学大学)
Operation verification of the reactor less boost converter with 1 pulse modulation in an Indirect Matrix Converter
Goh Teck Chiang, Jun-ichi Itoh (Nagaoka University of Technology)
近年,ハイブリッド自動車や EV 自動車, 新エネルギー発
spr ssp stp
電の要求が高まっており, 交流電源と直流電源を連系でき
ir
is
it
る電力変換システムが広く研究されている。
著者らは, 小型で高効率のインダイレクトマトリックス
コンバータ (以下 IMC)とリアクトルレス昇圧チョッパを用
いた連系システムを提案した(1)。IMC の問題点は電圧利用
Boost
Inverter
Converter stage
Primary
stage
1.はじめに
Lin
scp
sup svp swp
Motor
srp sps spt
iu
srn ssn stn
200V
/ 50 Hz
Cin
snr sns snt
率が入力電圧の 0.866 倍に制限されることにある。これに1
vo
iv
iw
E dc
scn sun svn swn
75V
ibat
パルス運転を適用すると, 電圧利用率は 0.97 まで改善でき
る(2)。しかし, 1パルス運転では,モータの中性点の電位変
Fig. 1. Circuit configuration.
動によって,バッテリ電流の脈動が大きくなる。
本論文では, バッテリ電流の脈動を抑制することを目的
とし, 1 パルス運転時のフィードフォワード補償を提案する。
結果として,バッテリ電流の脈動を抑制することにより, 出
力電流のひずみを改善できる。本論文では,制御原理と実
験結果を示し,実験により有効性を確認する。
2.回路構成及び提案制御方法
図1に回路の構成を示す。IMC は電流形整流器と電圧形
インバータからなる。昇圧チョッパを DC リンク部に接続
し, バッテリのプラスは IGBT(Scp, Scn)の中点に接続し, バ
ッテリのマイナスはモータの中性点に接続する。 IMC には
大きな電解コンデンサが不要である。加えて, チョッパはモ
ータの漏れインダクタンスを昇圧リアクトルとして用いる
θ*
ため, 新たに昇圧リアクトルを追加する必要がない。よって
本システムはオールシリコンで構成できるので, サイズや
コストを低減ができる可能性が高い。
図2に提案制御方式を示す。インバータの制御には V/f
制御を適用し, 出力周波数によって, 出力電圧を正弦波と 1
パルス運転(方形波)に切り替える。ここでは出力周波数
35Hz から出力電圧指令を徐々に過変調領域へ移行し(方形
Fig. 2. Proposed control block diagram.
波出力),出力周波数 50Hz のときに完全な方形波に切り替
脈動が生じる。そこで脈動分をフィードフォワード制御に
える。
より抑圧する。図2の “Mod reader”はフィードフォワード
リアクトルレス昇圧チョッパはモータの中性点にバッテ
制御の有効/無効を判定するブロックであり,0 または 1 を
リを接続するため,1 パルス運転を行うと,バッテリ電流に
出力する。 0 のとき,従来の PWM 制御のみとなり,フィー
ドフォワード補償を行わない。 整流器のスイッチングはイ
ンバータのゼロベクトルの期間中に行うため,ゼロ電流ス
イッチングとなり,損失を低減できる。一方,“Mod reader”
Input current ir [A] 10 [A/div]
Output voltage vuv [V] 250 [V/div]
が 1 のとき,1 パルス運転となり,補償を行う。
1パルス運転の場合インバータのゼロベクトル期間が存
在しないため, 整流器側に 4-step 転流を適用する。単に, 整
流器にデッドタイムを付加するとデッドタイム期間中に整
15 A
流器が開放状態になり,出力電圧の振幅減少する問題があ
る。4-step 転流を用いることで,電流が連続になるため,こ
Battery current ibat [A] 5 [A/div]
10ms
#4. Output current iu [A]10 [A/div]
の問題を解決できる。
1パルス運転の場合, スイッチング周波数は出力周波数
Fig. 3. Waveforms without feed forward control.
と一致し,出力線間電圧は 120°の方形波となる。 スイッ
チング周波数を大幅に低減できるため, インバータのスイ
ッチング損失を PWM 制御と比較して大幅に低減できる。
このとき出力線間電圧 vuv と DC リンク電圧 Edc の関係は(1)
式となる。
vuv =
6
π
E dc
(1)
また,モータの中性点に接続したバッテリ Vbat は,インバー
タの中点電位を基準とした各相電圧を vu,vv,vw とすれば,(2)
式にて求められる。
Edc 1
= (vu + vv + v w ) + Vbat
2
3
Fig. 4. Waveforms with feed forward control.
(2)
さらに, 1 パルス運転では, 各相電圧は±1/2Edc1 で変化する
方形波となるので,中性点電位は±1/6Edc となる。よって,
バッテリ電圧 Vbat の設計は(3)式を満たす必要がある。
Edc 1
> Edc + Vbat
2
6
Edc >3Vbat
(3)
図 2 のように, フィードフォワード補償信号はインバー
タの出力パルス指令を加算することで得られ, 信号は出力
周波数の 3 倍の波形となる。この信号を ACR の出力に加算
することで,バッテリ電流を補償する。
はインバータの出力周波数 30Hz における PWM 動作であり,
3.実験結果
図 5(b)は出力周波数 50 Hz のとき1パルス運転動作である。
Fig. 5. PWM and square wave modulation results.
図 5 に PWM と1パルス運転の実験結果を示す。図 5(a)
フィードフォワード制御の有効性を検証するために,実
図 5 より, PWM から 1 パルス運転へ移動してもバッテリ電
機実験を行った。実験条件は,入力電圧 200 V, 入力周波数
流 ibat の脈動はほぼ PWM と同じになることを確認した。バ
50 Hz, キャリア周波数 10 kHz, 出力電圧 194 V, モータ電
ッテリ電流の脈動を約 72%低減できることを確認した。
力 750 W, バッテリ電圧 75 V, バッテリ電流 2 A となる。
4.まとめ
図 3 に 1 パルス運転の場合にバッテリ電流補償なしの結
本論文では,1パルス駆動でバッテリ電流の脈動抑制の
果を示す。図 3 より, バッテリ電流 ibat は出力周波数の 3 倍
ためフィードフォワード補償を提案した。その結果補償な
で変動することがわかる。これにより, 入出力電流に脈動が
しの場合と比べて,バッテリ電流の脈動を約 72%に低減で
生じる。図 4 に1パルス運転の場合でバッテリ電流 ibat 補償
きた。今後は,損失解析を行う予定である。
ありの結果を示す。バッテリ電流 ibat の脈動は補償なしの場
合と比べて大幅に低減していることが確認できる。さらに,
図 3 と比較して図 4 の出力電流 iu は 6 ステップ波形であり,
入力電流 ir は正弦波となる。
文
献
(1) Goh, T.C, Jun-ichi Itoh:ECCE, pp.3282-3289, 2009
(2) Goh, T.C, Jun-ichi Itoh:ECCE, pp.1830-1837, 2010