キカレス工法 - 国土防災技術株式会社

外来植物侵入抑制工法の開発
【目的】
適地適作といった言葉があるように,植物には『好きな土壌』があります。セイタカアワダ
チソウやナルトサワギク等キク科の外来植物が好まない土壌の特性を生かし「外来植物の侵入
を防止し、在来植物の緑化を可能にした生物多様性配慮型の緑化工法を開発することを目的と
しました。
【メカニズム】
日本は降水量が多く,森林土壌中の石灰や苦土といった塩基が流出しやすいために土壌
が酸性へと傾きます(図-1)。そのため在来植物の中には,古来より日本の酸性および貧栄
養な土壌環境で生育してきたため酸性土壌に対する高い耐性があります。
一方,セイタカアワダチソウやナルトサワギクなどの外来植物は在来植物に比べ酸性土
壌での生育が難しく,土壌 pH が中性から弱酸性の比較的富栄養な土壌環境で有利に生育し
ます。
その性質を利用して,特殊酸性資材を混合し,日本の森林土壌に模した『植生基盤(キカ
レス(帰化 less)ソイル』を導入することで,在来種に良好で,外来植物が好まない土壌
環境を作りだす(図-2)ことに成功しました。
日本の土壌
酸性
乾燥地の土壌
アルカリ化
降雨
降雨
蒸発
蒸発
浸透
浸透
土壌
土壌
外部へ溶出
基岩
基岩
(含石灰,苦土などの塩基)
(含石灰,苦土などの塩基)
図-1 日本の森林土壌の特徴
塩基類
高い
外来植物が好む
土壌環境
土壌改良
pH
低い
高い
在来植物が好む
土壌環境
低い
図-2 メカニズ
【実験-1】
キカレスソイルと通常緑化基材の上に播種し発芽率を調べました。
ススキやノシバ,センチピートグラスといったイネ科の発芽率にあまり差がありませんが,メド
ハギは発芽率が若干低下しました。外来植物のナルトサワギク,セイタカアワダチソウ,ヒメムカ
シヨモギ,や在来種のヨモギといったキク科植物では酸性化の影響を受け著しく発芽率が低下しま
した。
このことから,キカレス工法は,キク科を中心とした外来植物の侵入を防除することがわかり
ます。
100
87
91
8986
中性環境
酸性環境
85
60
キク
60
57
40
40
マメ
22
11
0
ソ
ウ
ギ
チ
モ
シ
ヨ
ワ
カ
カ
メ
ア
ム
ト
タ
ル
ナ
5
1
ク
ギ
ギ
モ
サ
ヨ
ギ
ド
メ
グ
ト
ー
ピ
チ
ン
ハ
ラ
ス
バ
シ
ノ
ス
ス
キ
0
0
ダ
20
イネ
ワ
3530
ヒ
発芽率 ( %)
80
セ
イ
セ
【実験-2】
キカレスソイルと通常の緑化基盤材にメドハギ,ノシバ,セイタカアワダチソウを播種し経過を
観察しました。その結果2〜4ヶ月後には成長に明瞭な差が見られました。
キカレスソイルではセイタカアワダチソウでは発芽しても,5mm程度しか成長しませんがメドハ
ギやノシバといった在来種では,通常の緑化工以上の成長を示します。
このようにキカレスソイルは外来植物の生長を抑制しつつ,在来植物を健全に成長させ,植生転換
を可能にします。
メドハギ
キカレス
通常
ノシバ
キカレス
通常
セイタカアワダチソウ
キカレス
通常
※ナルトサワギクは特定外来生物であるため,環境省の許可を得た研究機関と協同で実施しまし
た。
【施工事例】
発注機関 :国土交通省九州地方整備局佐賀国道事務所
工事名 :唐津地区外保全工事
施工年度 :2009 年 1 月
面積
:341m2
工事目的 :セイタカアワダチソウに覆われた盛土法面の植生転換
▲セイタカアワダチソウ
に覆われた法面
▲施工 6 ヶ月後
在来植物に植生転換した法面
▲メドハギが優勢
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