砂の飛び方の研究 - 愛媛県立中山高等学校

〈愛媛県高等学校教育研究会長賞〉
砂の飛び方の研究
西条市立西条西中学校
1
(2)
研究の動機
2年
戸
田
彩
花
指導教諭
山
田
雅
也
風の強さと飛び方
砂を入れたケースと大型扇風機までの距離を変え
天気が良く風の強い日には、グランドの砂が部活
ることで、風の強さを調整して研究を行った。
中舞い上がり、砂が目に入ることがよくある。また
近年、中国から日本へたくさんの黄砂が飛んできて、
研究の結果、風が強いほど、加速度的に砂の飛ぶ
アレルギーの原因になっていることを新聞で読んだ。
量が多くなり、砂の粒子が細かいほど、重量が小さ
いため、飛びやすいことがわかった。
そこで、砂が飛ばないようにすれば、部活動も楽
(3)
になるし、アレルギー予防や、砂漠化防止にもなる
植物の模型として弁当に入れるバランを用い、砂
と思い今回研究を行った。
2
植物を植えることによる対策
に差し込む方法をいろいろ変えて研究を行った。
研究の方法
①
砂等を入れたケースに、屋外用の大型扇風機でお
植物の量
植物を直線状に1列、2列、3列と植えた場合、
こした人工の風を当て、いろいろ条件を変えて研究
3列に植えたパターンが一番砂が飛ばなかった。た
を行った(写真1)。
次に、砂を飛ばさないようにする対策を見つけ出
だし、植物が壁となり、植物に沿った風の流れがで
すために、砂の中に植物や壁(フェンス)の模型を入
きるため、植えつけ間隔が狭いと、植物に対して前
れたり、砂に水を含ませたりして研究を行った(写
後から風が当たり、倒れやすくなった。
よって、何列も植物を植える場合、植えつけ間隔
真2)。
をある程度開けた方がよいということがわかった。
②
高さの高い植物
バランを縦に2段貼りつけて高さの高い植物の模
型を作り研究を行ったところ、植物に当たる風のエ
ネルギーが強くなり、植物自体が倒れたり飛んでし
まい、多くの砂が飛んだ。
よって、高さの高い植物を使った対策では、十分
写真1
3
写真2
根づかせ、根が風のエネルギーに対して抵抗体にな
研究の内容と結果
(1)
る必要があると思った。
飛びやすい土の種類
○
山砂、川砂、粘土それぞれをケースに入れて大型
わかったこと
高さのあまり高くない植物を、ある程度間を開け
扇風機の風を当て、研究を行った。
ながら何列かに分けて植えると、風のエネルギーが
研究の結果、川砂は山砂に比べ土の粒の大きさが
徐々に弱まり、砂の飛散防止に効果的であることが
約2倍あるため重く、川砂の方が飛びにくいことが
わかった。
わかった。また粘土は、一つ一つの粒の大きさは小
(4)
地上に壁(フェンス)を作ることによる対策
さいけれど、粘土に含まれている水が粘土の粒同士
壁(フェンス)の模型として、網目が3mm角の
をくっつけ、かたまりで存在しているため、土とし
プラスチックの板と、網目が1mm角のビニールの
ては重く飛びにくいことがわかった。
袋を砂に差し込み、①網目の大きさ、②壁の傾きを
よって、一番飛びやすいのは、土の粒が小さく、
変えて研究を行った。
土としてかたまりになりにくい、山砂であることが
○
わかった。
風に対してあまり抵抗とならないように壁を風下
以上より、研究で使用する土は、一番飛びやすか
わかったこと
側に傾けておくことが、砂の飛散防止に効果的であ
った山砂とした。
ることがわかった。
- 15 -
(5)
地下に壁(フィルム)を作ることによる対策
表2 ①グランドと②黄砂の発生場所である砂漠の特徴
壁(フィルム)の模型としてクリアファイルを用
い、砂を入れたケースの底に着くほど深く入れ、①
地下に入れる壁の数と入れ方、②地下に壁でなく棒
を入れる等の研究を行った。
○
①グランド
狭い
有る
良い
求められる
求められる
土地の広さ
散水施設
植物の生育環境
広場、運動施設としての利用性
経済性
(4)
わかったこと
②砂漠
広い
無い
悪い
求められない
求められる
研究した対策ごとに適応可能か検討する(表
3、表4)。
地下に壁を作る場合は、ある程度硬い材質でない
と、壁が風により振動してしまい、よけいに砂を飛
表3
ばしてしまうことがわかった。
広場、運動施
植物の生育 地上に物を
設としての使
土地の狭いと 散水施設の
環境の良いと 出してはいけ
用性を求めら 経済性
ころで使用で あるところで
ころで使用で ないところで
れる所で使用
使用できるか
きるか
使用できるか
きるか
できるか
(1)土の種類による対策
○
○
○
○
×
○
○
○
○
○
○
○
(2)植物による対策
○
○
○
×
○
×
(3)地上部に壁を作る対策
○
(4)地下部に壁を作る対策
○
○
○
○
×
(5)水分を地中に含ませる
○
○
○
○
○
○
対策(地表面に散水)
(5)水分を地中に含ませる
○
○
○
○
×
△
対策(地表面に散水)
(6)
地中の水分量を増やすことによる対策
①
地中の水の量、②地中に水を含ませた物を混
ぜるなどの実験をして水分量がどの程度砂の飛
び方に影響するかを研究した。
○
表4
わかったこと
①グランドへの対策の評価
植物の生育
土地の狭いと 散水施設の
環境の良いと
ころで使用で あるところで
ころで使用で
使用できるか
きるか
きるか
面が湿る程度散水する必要があり、手間がかかり大
(1)土の種類による対策
(2)植物による対策
(3)地上部に壁を作る対策
(4)地下部に壁を作る対策
(5)水分を地中に含ませる
対策(地表面に散水)
(5)水分を地中に含ませる
対策(地表面に散水)
吸水した状態を長時間地中に保持できれば、散水に
よる労力と水を節約できると考えて研究を行った。
(5)
吸水材を砂に混ぜると、地表面だけでなく、地中
のエネルギーに対して抵抗力を発揮し、飛びにくく
なることがわかった。
まとめ
研究の動機は、『グランドの砂の舞い上がり
対策』と『黄砂の発生防止対策』だった。両方とも、
風によって発生するが、風を止めることは不可能で
あるため、いかに砂を飛ばさないようにするかとい
う対策について研究を行った。
ただし、①グランドと②黄砂の発生場所である砂
漠では面積などが違いすぎるので、それぞれの場所
研究した対策の評価
研究の結果効果の高い対策
飛んだ
距離(cm)
総合評価
×
△
○
○
○
×
○
○
○
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
×
○
○
○
×
○
○
○
×
×
○
○
○
○
×
○
○
○
○
○
○
○
①グランド②黄砂の発生場所である砂漠で使
実際に使用する場合
の工夫
グランドの周辺に花
壇を作る
風の強い日は定期
的に散水する
表6 ②黄砂の発生場所である砂漠で使用できる対策
対策項目
各対策項目の中で 実際に使用する場合
研究の結果一番効 の工夫
果の高い対策
壁を風下側に傾けて 網目の大きさを現地
立てる(3mm角の網 実験で決める
地上部に壁を作る対策
目)
地上に2mm壁を出し 地上に出す壁の量を
た地中壁を2列作る 現地実験で決める
地下部に壁を作る対策
(6)
研究した対策の結果を整理する(表1)。
表1
×
水を含ませた吸水材 吸水材と砂を均一に
混ぜる機械を作る
水分を地中に含ませる対策 を砂に混ぜる
に有効な対策を研究結果から見つけていった。
(2)
広場、運動施
地上に物を
設としての使
出してはいけ
用性を求めら 経済性
ないところで
れる所で使用
使用できるか
できるか
表5 ①グランドで使用できる対策
対策項目
各対策項目の中で
研究の結果一番効
果の高い対策
植物を直線上に3列
植物による対策
植える
地表面に散水する
水分を地中に含ませる対策
砂のかたまりができ、砂の重さが重くなることで風
(1)
○
用できる対策を選定する(表5、表6)。
にも水を保持できるため地表面だけでなく地中にも
4
×
○
×
△
②黄砂の発生場所である砂漠への対策の評価
散水により砂が飛ばないようにする方法は、地表
変である。そこで、吸水性のよい物を混ぜることで
総合評価
飛んだ
全体量(g)
具体的な対策例
①
グランド
・
グランドの周辺に花壇を作る(植物を植える対策)。
(1)土の種類による対策
砂50%に川砂50%を混ぜる。
60
73.3
・
定期的に散水する(地中の水分量を増やす対策)。
(2)植物による対策
植物を直線上に3列植える。
90
137.4
②
黄砂の発生場所である砂漠
75
73.3
・
水を含ませた吸水材を砂と混ぜる(地中の水分
80
87.9
40
73.3
30
24.4
150
219.8
壁を風下側に傾けて立てる。
(3mm角の網の目)
地上に2mm壁を突き出した地中
(4)地下部に壁を作る対策
壁を2列作る。
①地表面に100cc散水する
(5)水分を地中に含ませる
②水を含ませた吸水材を砂に混
対策
ぜる。
(3)地上部に壁を作る対策
(6)無対策
量を増やす対策)。
・
作る対策)。
・
(3)
砂漠の地下へ一定間隔で壁を作る(地下に壁を
砂漠周辺の地上部に壁を作る(地上に壁を作る
対策)。
①グランドと②砂漠の特徴をピックアップす
る(表2)。
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