情 報 新 時 代 2001. SEPTEMBER No.194 C O N T E N T S ペリスコープ 3年単黒、5年累損一掃 山田基成 や ま だ もとなり 名古屋大学大学院経済学研 究科助教授。1954年生まれ。 77 年名古屋大学経済学部卒 業。82 年同大学大学院経済 学研究科博士課程修了後、 同大学助手となり、91年10月から現職。日本中小企業学 会常任理事他委員として活動中。専門は生産管理論、中 小企業経営論。「トヨタ生産方式の研究」「中小企業21世 紀への展望」などの著作多数。 ペリスコープ ………………………………1 山田 基成 特集 IT時代のCI 平野 憲兒 ……………………………………2 IT時代におけるCI戦略 広野嘉代子 ……………………………………6 企業経営者に新事業の開発や海外へ 評価が与えられているからではある が。 インターネットで いかに企業イメージを伝えるか の工場進出、ベンチャー創業などにつ 行政の窓……………………………………10 5年累損一掃」という言葉をしばしば れ従来の7、8年分に相当する変化が 耳にする。これは新規投資を決定する 1年で生じるといわれるIT分野で、 さいに、当初は減価償却額が大きく赤 数年先の黒字化、その後の累損一掃、 字はやむを得ないが、3年目くらいに 純利益の蓄積というシナリオを本当に 景気動向……………………………………11 翔 魅力ある愛知の中小企業 (5) ……………12 (株) ティムス いてインタビューすると、「3年単黒、 しかしながら、ドッグイヤーと称さ は単年度の業績が黒字になり、5年目 期待してよいのであろうか。「3年単 地域の話題…………………………………14 には過去の累積損失を一掃できそうな 黒、5年累損一掃」にドッグイヤーの 稲美会の「観月会」 プロジェクトかどうかが、投資判断を 原則を当てはめれば、1年目の終わり 産業労働部便り……………………………16 行うときの1つの目安になるというも には投資を回収した上で儲けが出てい 技術の広場…………………………………17 のである。 るべきではないのか。 学問的にはそうなるべきとの根拠は 仕事がら、常時複数台のパソコンを ほとんどなく、むしろ過去の経験則に 保有しているが、2、3年も使えばそ よるところが大きいが、多くの企業や の時点の最新モデルに比較すれば、恐 次号予告……………………………………20 経営者が投資決定の判断基準として用 ろしいほど陳腐化している。もちろん、 表紙 いている。製造業をはじめとする多く 個人レベルではスピードさえ我慢すれ 円光寺の萩(稲沢市) のビジネスにおいて、こうした体験を ば、使い物にならないわけではないが、 重ねて成長してきたからこそ、これを ビジネスとしては先発者として投資額 有効な物差しとするに至ったのであろ の回収が進んでいることが、最新設備 う。そして、同時にこの考え方は、6 を用いて参入する後発者に対して競争 年目以降は建物や機械設備の償却負担 優位の源泉となるとは考えにくい。 INFORMATION …………………………18 あいちの花めぐり…………………………20 ASJ Investigative Report あいち産業情報 調査レポート ……………はさみ込み が小さくなるので、その後は操業を続 パソコンを購入する時点では、短期 ければ続けるほど儲けは累積的に増え 間で陳腐化することは覚悟の上と自ら ていくという暗黙の仮定によって支え に言い聞かせても、1年後には新モデ られている。 ルのカタログを眺めてその格差にため この「3年単黒、5年累損一掃」を、 さらに重ねる自らの愚かなIT投資を ることは可能であろうか。周知の通り、 振り返るとき、一方でITの飛躍的な インターネットを活用したネットビジ 進歩に驚嘆を覚えつつも、であるがゆ ネスにあっては、年度業績が黒字の企 えにビジネスとしてIT投資を判断す 業は一握りとされる。それにもかかわ る難しさ、ならびにITへの投資から らず株式公開を行い、高額な株価によ 長期にわたって利益を稼ぎ出すビジネ り資産価値の大きな企業が続出してい スモデルの存在可能性に、思いを巡ら る。もちろん、その前提として営む事 せるのは小生だけであろうか。 業に大きな将来性が見込まれるという 1 息をつき、挙げ句は無駄な過剰投資を 情報技術(IT)投資の世界に適用す
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